112話「緑の国のカイゼル王様と謁見!」
ホテルでバイキング楽しんでたら、緑の国の勇者が直々に伺ってきたぞ。
「なにか用事があるのかなぞ?」
「ええ。今、時間はよろしいですか?」
まだ食べているウイルとクックさん。そして、こっちを見ていたヤマミが頷く。
「……晩飯済ませてからな」
こうして数十分経った後、オレたちは勇者ププラトについて行って王城まで連れてかれたぞ。
もう夜なので、王城への階段を含む道路の両側で、街路灯が等間隔で灯っていた。徐々に人気が少なくなっていく。
まるでゲームの世界に入ってるみたいな感覚だぞ。
ようやく城門まで来ると、警備の兵士が敬礼し、思わず頭を下げた。
「い、いいんかな? 入っても……」
「何を言っているんですか? ナッセさんとヤマミさんはS級冒険者として、当然の入城資格を持ってます。それに王族や貴族だって貴方たちを知らない人はいませんよ?」
「うへぇ……。そうなんか……」
「そうですよ!」
彼ら上級階級の人たちの情報網は凄まじい。
オレたちが悪魔の教皇、魔境、マリシャスを攻略した事は周知。現に幻獣界へ避難された時に、活躍の場面をモニターで見ている。
マリシャスを倒して平和を取り戻した功労者として有名なのは必然。
「この城……、世界樹と合体してる?」
「うん。魔力を帯びた世界樹と連結してますからね。精霊や妖精の力も感じるでしょ?」
「確かに……ぞ」
この国の王城はとある一つの世界樹と連結している。
なので幹が壁になっている通路もいくつかある。葉っぱが漏れてて観葉植物みたいな雰囲気になっていた。
厳重に警護する兵士が次々と勇者ププラトとオレたちに敬礼していく。
「この先は我が国の王様です。そそうのないようにお願いします」
「分かった。わ、分かりました」
オレは息を呑んだ。
大きな扉は開かれて、豪勢な装飾の柱に壁、シャンデリア、奥行きの壁から世界樹の枝が突き出てて葉っぱの傘を広げている謁見の間が目に入った。
そして王座二つの両脇に、花を模した妖精像。
「カイゼル王様。申し付け通り、星の英雄様をお呼びいたしました」
「勇者ププラト、ご苦労であった」
「はっ!」
勇者ププラトは跪いて王様と受け答えしていく。
オレたちはププラトに倣って跪いて頭を下げる。ウイルは初めてなのか緊張しながら跪く。
王様が直々に呼んだ? 一体……?
「ようこそはるばる来られた……。妖精の白騎士ナッセ殿」
「は、はい」
「そう畏まらずとも良い。主には助けられた。人生を賭してでも諸悪の根源を滅ぼし世界を復活させてくれた大恩は何代かけても返しきれん」
緑のフォレスト王国の王様。“深緑の智王”カイゼル。厳かな顔で白ヒゲをさすっている。
そして隣の王座には冷静に鎮座するミシュアル王妃。
周囲を“緑将五衆人”と呼ばれる高位の騎士が囲み、宮廷魔道士の“精霊導師”サリアという女エルフが佇む。
「さて、頭を上げよ。早速だが単刀直入に質問させてもらおう」
「は……はいい」
緊張してかオレもカチコチだ。
「獄界オンラインは悪人を収容し、以前の魔族と同じように人族界への侵略行為を許している所だったな?」
「はい。漆黒の魔女アリエルはそのようにシステムを組みました」
なんとヤマミが代わりにキチンと答えた。
「うむ」
「な、なにか不満な事がありますか?」
恐れ恐れと聞くと、カイゼル王は首を振る。
「むしろ、人間社会においては不満どころか好調じゃ。経済も潤ってきている。全ては社会に潜む反社や裏社会の暗躍によって阻害されなくなったからに他ならない」
カルト宗教とか、犯罪者ギルドとか、悪徳商人とか、悪の貴族とか、そういう悪人が人間社会から甘い蜜を啜る為に裏から侵害していた。ところが急に獄界オンラインシステムが適用されてから、それらは一掃された。
だから経済は邪魔されなくなって、スムーズに回るようになったのだ。
「逆に魔族たちは生態が変わった為に大人しくなってしまった。なので我が国も徐々に交流を許してきている。まだ納得いかない人も多いが、それ以上に……」
もう魔族に人族界を侵攻する理由がなくなってしまったもんな。
この理由も、王様がこの後言う課題に含まれていた。
「獄界オンラインから侵略してくる悪魔族は、魔族と違って欲と悪意だけで暴れまわる邪悪な存在。魔族たちのように各々の矜持や信念は持たない」
「うん。本当に戦ってみて分かったよ。ひたすらに欲を貪るだけの下劣な奴らだった」
王様に続いて勇者ププラトもそう説明してきた。
「故に、魔族たちと連携して情報網を広げて侵攻に抗する防衛策を練っている。悪魔族は我ら人間世界と魔界にも土足で踏みにじってくる故」
「魔族と……?」
「うむ。これまで“魔樹王”ヘリギリオン勢力と争っていたものだが、悪魔族の方が悪辣過ぎて共闘せざるを得んのじゃ」
「そこまでになってるのね」
「さよう。そこで質問をする。正直に答えよ」
息を呑む。真剣に見据えられたら萎縮もする。
「獄界オンラインを運営している魔女アリエルを倒しても、解かれぬか?」
「いいえ。概念として組み込んでいるようなので、例えアリエルを殺してもシステムは恒久的に運営されるようです」
「うむ。分かった。ありがとう」
思った以上に深刻なのかな?
とは言え悪魔族が猛威を振るっていれば、元を断ちたいと普通は思うもんね。
「もう一つ、もし獄界オンラインがなかったら……、我々人間は破滅の道を歩むと思うか?」
「はい!」
オレは頷いた。
と言うのも、人間が天下を取っても星にとって為にならない。
増え続ける人族は星の資源を貪り尽くし贅沢な暮らしを確立しても、不平不満を述べて更なる暴利を貪る。そのせいで大昔に大きな戦争を起こして人口を減らす事で、星の破滅を食い止めたという歴史があった。
それにオレも、元いた並行世界でも同じような事が起きてて、人族同士で醜悪な争いを繰り返していた。
悲しいかな人類は業の深い生き物なのだから……。
「確かに聞き届けた。主は人族の繁栄を快く思わぬ考え」
「誠にすみません……」
「故に、主の元いた並行世界の事情を教えてくれぬか? そのような思想に至ったにもワケがあろう?」
「は……はい」
ププラトはボソッと「大精霊と月の魔女が説明した故、本人さまから聞くがよかろうとおっしゃってました」と告げてくれた。
オレは深呼吸し気分を落ち着かせてから、元いた並行世界の事を思いつく限り話した。
想像を絶する苛烈な競争社会。絶えぬ残酷な戦争。貧富落差。正義や平和を騙る反社組織。自然汚染。ブラック企業。そんなおぞましい事情は、異世界の人間にとっても聞くに耐えないものだった。
「ううむ……。生々しい……」
「あなた、こんな事が……、とても信じられませんわ」
「だが、しかし、リアリティーがありすぎる!」
同じように聞いていた“緑将五衆人”も“精霊導師”サリアも戸惑いをあらわにしていた。
ウイルは呆然としていた。
かつてマリシャスとして人間を下賎な存在と見下して、もがく虫をいたぶるように蹂躙を愉しんできた。しかし同じ人間として生きてきて、初めて地獄がどのように凄惨なのかを知った。
同じ目線で見なければ気付かなかった感覚……。
ウイルが青ざめ震えていく最中、王様たちはあれこれ話を交わしていた。
「逆に獄界オンラインに助けられたって事ね」
「……確かに、反社組織が紛れ込まれていると国は足を引っ張られる。むしろ今のシステムの方が勧善懲悪で分かりやすい」
「ですわね。悪と善で分かれて争う方が人間社会に欺瞞を呼び込んで疑心暗鬼を生まずに済む」
「悪魔族と魔族を滅ぼしたとしても、今度の敵は我々人類か……」
「同じ人間で争う方がどうかとしてますね」
「……うむ」
カイゼル王様は優しく笑んで納得してくれた。
「これで腑に落ちた。ありがとう」
城門前で勇者ププラトは「ありがとうです。これで整理がつきそうです」と柔らかい笑みを見せてくれた。
オレたちは頭を下げて、手を振って別れを済ませて、宿へ向かう。
ウイルが悲しげな顔で「なぁ」と聞いてきて、オレは「ん、何?」と振り向く。
「トーチャン地獄で苦しんでいたんだな……」
「まぁ……」
「なんにも希望がない世界ってあんまりだ。お、俺はそんな世界を……」
オレはウイルの頭をクシャッと撫でた。
「気にすんな。もう終わった事だ。それにおまえはオレの息子ウイルだ」
「うん……。ごめん…………」
「はは」
項垂れるウイルの肩をポンポン叩く。
ヤマミとクックさんはそれを見て、ニッコリ微笑む。血は繋がってないけれど、こうして気持ちは繋がっていく。それが実の親子以上に絆を育めるかもしれない。
ウイルも色々な事を学んでいって、善悪の区別がついて、人生を歩んでいく。
「明日から、世界樹登っぞー!」
オレは陽気に拳を突き上げて、気分を盛り上げた。
ウイルも「へへ」と微かに柔らかく笑う。
あとがき雑談w
ナッセを呼び込もうとする前の話……。
カイゼル王様「つ、ついにあのナッセが我が国へ……っ!」
ミシュアル王妃「わ、私も初めて会います……! ど、どんな方かしら……!」
大精霊ドリア《聞きたい事がございましょう? 堂々としていてもいいのですよ》
カイゼル王様「ワシゃ、本物の英雄さまに会うのだ! しかも妖精王というではないか! 立場的に上じゃないかな?」
ドリア《ご心配なく。ナッセはまだ妖精王としてはまだ幼少期。それにまだ人族の人生で生きてますので、立場はまだ貴方様の方が上ですよ。なので堂々としてていいんですよ》
リルラーナ《そろそろ電車着くよー》
カイゼル王様「う、うむ!」
ミシュアル王妃「堂々とすればいいのですね」
カイゼル王様「よし! 勇者ププラトに呼んでもらおう!(巻き込み)」
彼らも落ち着くまで時間がかかったそうな……。
次話『世界樹を登るぞー!!』




