111話「華やかな国! 緑のフォレスト王国!」
星々煌く真っ暗闇の夜……。列車は光の線路を敷きながら大陸を横断していた。
この時間帯では光の線路の両端から等間隔で街路灯が伸びてきて明かりが灯っていく。最後尾へ過ぎ去ったら線路と共に掻き消えていく。
オレは窓へもたれかかったまま、断続的に通り過ぎる明かりを浴びていく。
「眠くない?」
横で座っていたヤマミは本を畳んで聞いてくる。
ウイルとクックさんは既に寝台部屋で夢の世界に入っているぞ。
「なんかこう、ドキドキするんだよな」
「明日はライトミア王国とは違う、他の王国へ着くもんね……」
「ああ」
これまで色々あって、光のライトミア王国、闇のダークロス王国、幻獣界のイリリス聖域しか行っていなかったぞ。
いや、人族では行けないような場所も入っているんだけどね。
でも異世界を満喫するなら他の王国も回りたい。
各国の勇者とは『大祓祭』の時に会ってはいるが、それぞれの王国へはまだ。
「乗ってから五日目だね……」
「ってもこの寝台列車の車両にはゲーセンもレストランも図書館も仮想対戦も充実しているから、当分は飽きずに済んだしな」
「魔界の列車はそんなに豊富じゃないもんね。仮想対戦ぐらい?」
「タッドを思い出すなぁ……」
「ふふ、嫌そうな顔してる」
同じ列車でも人族と魔族とでは違うみたいだ。
これまでの魔族は闘争を重んじていたし、元々子どもが存在しなかったから、人族ほど娯楽がなかった。
オレとヤマミはいつもの『心霊の会話』に耽った。
「おし、寝るか」
「うん」
しっとりした気分で、ヤマミと一緒に寝台部屋へ向かっていった。
二人並んでベッドに寝入り、ベッドサイドランプの灯りを消す。
おやすみ、とゆっくりと安らかな闇へ委ねていく……。
地平線の雲海から眩しい太陽が覗き出す。
なおも列車は広大な大陸を走り続け、向こうに見える王国へ目指していた。オレたちは窓から見える王国に呆気に取られた。
山かと思うほどに大きな大樹が聳えていて、所々雲がかかって霞んでいる。
その根っこの麓に王国が階段状に広がっている。更に上に建つ王城も窺えた。
その王国周辺はのどかな田舎町。農業が発達しているのが分かるくらい広大な畑と田んぼが広がっている。
緑生い茂っていてキラキラ反射光で美しい。
「いくつもの世界樹がくっついて、下の中層地殻ガイアプレートにまで及ぶほどの大樹になってるわ」
「す、すげぇ!!」
「すっごくおっきな木ー!!」
ウイルもクックさんも興奮気味だ。
オレもなんだかワクワクしてきて落ち着かないかも。
「王城と一部の世界樹でセットになっているから、他の王城へ合体する時は脱着できるみたいね」
「合体してた、あの巨神像だったっけ?」
「私たちが見た時は、既に合体してたけどね。でも元はあの形みたい」
合体するところ見てみたかったなぁ……。
でもま、不死鳥みたいなヤツでもなけりゃ合体する機会ねーもんな。ともあれ平和ならそれでいいか。
こうして見れば世界樹には圧倒させられる。
ヤマミの説明によると麓から約一三〇〇〇メートルもの高さになるのだそう。
中層地殻の大陸から根を張ってるので、全高約五〇〇〇〇メートルほどに及ぶっぽい。多くの世界樹が重なっているとは言え、驚くべき高さだ!
周囲長は約六〇km! 直径約一九km! スケール違ぇ!!
「か、描かなきゃ!」
そわそわしたウイルが慌ててスケッチブックを取り出し、絵の具をパレットに乗せて混ぜて、水で濡らして、目に映った世界樹を描き下ろしていく。
ゆっくりと近付いてきている大樹は、麓までたどり着くと全貌が見えなくなってしまう。
だから、見える内に描こうって事か。
「その思い切り、見習いたいもんだな」
「ふふ」
夢中になっているウイルの背中を眺めながら、オレは苦笑する。
カクンと王国に向かって列車が直線に入って、大樹が見えづらくなってもウイルは記憶を頼りに書き続けていた。
急ぎ急ぎで描いているとはいえ夕景のよりクオリティ上がってねぇ?
しかも記憶力が凄まじくてカメラ並だ。最初に見た風景をそのまんま写している。オレも絵を描いている方だが、そこまでできねぇぞ……。
「なんか寒気すっぞ……?」
「あなた、うかうかしてられないんじゃない?」
小悪魔的な笑みを浮かべたヤマミに肘でツンツン突かれたぞ。
クックさんも真似してスケッチブックに絵を描いているけど、絶望的に絵心ねぇな……。
得意分野が違うって事を改めて思い知らされたぞ。
「うにゅう……」
落ち込むクックさんをよしよしと撫でる。
そんなこんなで数時間かけて、ついに王国へたどり着けたぞ。
王国の駅はトンネルのように変形している木々に囲まれていて、屋根のように生い茂る葉っぱの隙間から陽が差し込んでいる。
「みてみてー! 花いっぱーい!」
等間隔で街路灯やベンチと共に並ぶ花壇には色んな花が咲き乱れていた。
思わず感嘆漏らすくらい多種多様の花が、旅行者を迎え入れていた。街路灯も花を模していて幻想的だ。
多くの人が行き交いしているがエルフや御獣族がやや多く見えた。
見た事のない様々な蝶々が飛び交っていて、思わず目で追ってしまう。
「ちょうちょうさーん!」
クックさんは両手を広げると、何故か蝶々が集まってきてウニ頭、鼻の上、肩、掌、腕に止まっていく。え、魅了スキル?
ベンチに座っているウイルは駅内をスケッチするのに夢中だ。
「カメラ買ってあるぞー」
「描きたいんだ!」
オレがカメラを掲げても、ウイルは見向きもせず景色とスケッチを交互に見ながら筆を走らせている。
「ちぇ……」
しょうがないから、オレはオレでカメラでパシャパシャ撮っていく。
昼頃なので、駅内のレストランで料理を堪能したぞ。見た事もない野菜や米みたいなのは違った味をもたらしてくれた。
思わず「うっめぇ!」と漏らすほどだ。
しかも肉も、特有の味がしていて肉汁が香ばしくて、噛むほどに旨味が染み渡る。
駅を出ると、大きな道路から巨大な階段状の都市が広がっていた。斜め上から下まで並ぶ建物と木々が新鮮さを感じさせる。
大樹を中心に放射状に川が引かれている。
花畑もあちこちあるから華やかだ。吹いてくる風も気持ち良い。
「うわぁ……」
大きく聳える太い幹を追いかけるように見上げれば、緑生い茂る傘が広がっている。しかし意外と暗くはなく、隙間から陽が木漏れ出てて美しい。影からキラキラが窺える。
ふと蝶々見てみる。影へ飛んでいくと羽が輝き始めた。
「光った!?」
「キチョウ科ね。漢字は輝く蝶。シャインアゲハ、ライモンチョウ、アオビカリ、ウロコチョウ、結構種類ある。太陽光を溜めて発光するものと自ら発光するものがあるわ」
だから大樹の影でキラキラが多かったのか……。
「やけに詳しいなぞ……?」
「列車の図書館の本を読みあさってた。たっぷり時間あったから」
あー、列車内ではずっと本読んでたもんなー。
そうと知らず、オレはクックさんとゲームしてたり対戦してしたりしてたなぁ。
「散策てがら、泊まる宿決めていきましょ!」
「だな」
数時間くらいブラブラして王国中を堪能したった。
巨大な植木鉢を模したホテル。
『プランクス・ホテル』
無数の窓が並ぶ褐色の円柱で上部にリング状の膨らみが窺える。そして頂上からは盆栽のような曲がりくねった木が生えている。
広いエントランスでは緑のツルが無作為に壁を這っていて葉っぱを生い茂らせている。
並べられたプランターの花が見るものを飽きさせない。
受付で冒険者カードを提示して手続きした後に、鍵をもらった。
ホテル内部は中心が吹き抜けていて、輪状の階層が上まで並んでいる。オレたちはカーブを描く階段を登って、五階層の輪状通路を通り、該当する番号の扉を見つけて、中に入った。
明るい大窓には階段状の都市が見下ろせる風景。
ウイルとクックさんが駆け寄って風景を眺めているぞ。
オレとヤマミは「ふう」と息をついて、広間のガラステーブルを挟むイスに腰掛けた。
「結構広いな」
「そうね。それに木目の壁とか天井とか趣があっていいわね」
「いい匂いもするしな」
クックさんはベッドの上に飛び込んでポンポン跳ねている。
盆栽のような大樹が生えている頂上部のでは、バイキング形式の食堂があった。
夕方頃になると、オレたちはそこで好きな食べ物をかき集めて色々な味を堪能していた。うむ美味しい。
すると誰かがやって来る気配を感じて振り向く。
「妖精の白騎士ナッセさんですね」
センター分けの緑髪、無垢な丸い目で素直そうな青年。ジャンパーを着た緑の軽快な服。緑のマントをなびかせている。
どっかで見た事があるような……? そ、そういや!?
「あ、確か……勇者の……!?」
「うん。久しぶりだね。僕が“神聖樹の勇者”ププラトだよ」
「ええっ!? あの時の少年っ!?」
「うん」
なんと勇者ププラトが来た!? 身長伸びてて一瞬気付かなかったぞ。
あとがき雑談w
月の魔女リルラーナ《ププラトちゃん。あのナッセが来るそうよ》
大精霊ドリア《ヤマミもクックもね》
ププラト「えっ?? なんで??」
リルラーナ《旅行で来てるそうよ》
ププラト「う、うわぁ~! 緊張しちゃうよ! あのナッセさんが来るだなんて、まだ心の準備ががが」
ドリア《マリシャスをも倒した妖精王さまだもんね……。落ち着いて》
ププラト「すーはすーはー! 会うワケじゃないけど緊張するよ!」
リルラーナ《ところがね、王様がナッセを呼んできてくれって頼んできたよー》
ププラト「ええっ!! ぼ、僕が!?」
ドリア《適任は他にいないですよ。会ったのププラトだけですし》
ププラト「ひ、ひええ~~~~~~!!」
落ち着くまでに時間がかかったそうだ……。
次話『緑の国の王様がナッセに尋問を!?』




