11話「傍若無人な邪教徒の強襲!!」
疾風が如く、風閃のティオスは両足に翼を象った風の魔法を付加させて、ローラースケートのように獣道を駆け抜けていた。
同じ方向に走っていた馬車を、あっという間に追い越していく騎士。
「こんな時に……!」
ティオスは焦燥を滲ませていた。
ライトミア王国の門から怪しげな黒いローブの男が二人出て行ったと報告を聞き、後を追いかける事にしたのだ。
事前に、ナッセとヤマミの動向は随時伝えられていたからこそだ。
二人は魔女の末裔のクエストを受けて王国外へ出ている。
「狙いはナッセとヤマミか? それとも魔女の末裔か……!? いずれにせよ見過ごせねぇッ!」
ティオスもまた『新緑の森』へと突入していった……。
一方、新緑の森でオレは複数の丸太を両肩に抱えルンルンと歩いていた。クックさんも一緒だ。
「ナッセってば、サバイバル能力高いのねー!」
「まぁ、並行世界で師匠に鍛えられたからなぁ。これくらい平気平気」
師匠と一緒に山奥へこもった事があって、それで自給自足する術をヤマミと共に学んだ。
最初は何も知らなかったから戸惑うばかりで何もできなかったが、こうして教えられたものが今で活かされるのは助かる。
もしかしから、異世界ではちょくちょくあるだろうと見越しての事だったのかもしれない。
「ご苦労様。もう魚焼けたわよ」
「おお! 美味しそう!」
「わーお!! さっかなさっかなー!!」
パチパチ燃える焚き火で、串に刺した魚が美味しそうな匂いを漂わせている。
ヤマミはとっくに食料は調達していたみたいだ。
オレは丸太をドスンドスンと降ろし積み重ねておく。そしてヤマミとクックさんと囲んで昼飯を平らげていった。うん、白身が美味しく焼けててジューシーだなぞ。
「小屋造り手伝うわ」
「ああ、サンキュー!」
具現化したナイフでサッサッと綺麗に切断し、土台を作ってから木材を連ねていって即席の小屋が作られていった。
魔法も多用して建築を続けていって、最低限生活に必要なものが揃えられた。
完成する頃は夕日になっていた。
「ふう!」
「お疲れ様」
ヤマミがタオルを渡してきて、オレはそれで顔を拭う。
クックさんは目をキラキラさせて「完成!? 完成ー!?」とそわそわしていた。オレは「ふっふっふ」と含み笑いし、玄関のドアを開ける。
いくつかの部屋に分けた、広間、トイレ、キッチン、寝室、押し入れ、とジャジャーンと紹介していった。
「二人はできてるのー?」
寝室のセミダブルにクックさんは気になったようだ。
オレは照れて、ヤマミはそわそわして顔を逸らす。聞かれるのは慣れないなー。
「ふん! これも師匠ってヤツからかねぇ……」
冷めたリエーラがカツカツと入ってきた。オレは「あ、ああ……」と頷く。
もちろん許可は取ってあるので小屋を作ったのだが、反応は薄いなぞ……?
と思ったら、リエーラさんトイレに入って「ふん!」とした後、ジャーと水に流す音を響かせながら、何も言わず帰っていった。
「えええっ!? トイレ行って終わりかよっ!!?」
オレのツッコミにもくれず、リエーラは自分の小屋へと帰っていった。な、なんなんだぞ!?
「水洗トイレなのー?」
「ん? ああ、『刻印』を記して水魔法で流しているんだ」
「下水処理も私が『刻印』で記した浄化管で分解して新鮮な水に戻してる」
これ本当に学ぶの大変だったからな?
師匠から「必要な事」ってたから、スイッチ可動式やら、自動魔法発生やら、文明機器に等しいプログラムを教え込まれた。
おかげで野糞とかしなくて済むし、衛生的にいいからな。
ちなみに生活に必要ってだけなら火、水、土、風など各属性の初歩魔法を覚えるだけで充分だしな。それを応用して『刻印』を用いた機器を作れる。
「なんかすっごーい!! あったまいいんだなー!!」
なんか元気いっぱいなクックさんを見ていると、娘ができた気がしていい気分だなぁ。
するとゾワッと悪意の気配を感じた。
「魔女の末裔はどこにいる?」
振り向けば、黒いローブを着た怪しい二人が佇んでいた。
しばしすると、二人は黒いローブを脱ぎ去り、不気味に赤い法衣があらわになった……。
「マリシャス教ッ!!?」
寝不足のような陰険な顔、少々ボサボサの黒髪。ニッと笑ってみせた歯は真っ赤だ。
もう一人は太り気味でパイナップルのような顔面と髪型で、眠たそうな目が特徴の男。
……一見すれば、どこにでもいそうなパッとしない二人組の男だ。
「こんな森にも襲ってくんのかよっ!?」
「マリシャス教の邪教徒が魔女の末裔を……?」
オレとヤマミが警戒して身構える最中、クックさんは「なになに? 悪者??」とこちらとあっちを交互に見やる。
だが二人組の邪教徒はフッと嘲笑う。
「僕は中立の存在……。むしろ自己中心な君らが悪者では?」
「ちゅふふふ! 僕チンは善悪を超えた真なる教徒なのですぜ!」
「話が通じねーヤツは問答無用だぞッ!!」
オレは地を蹴って、間合いを一瞬に縮めて光の剣を振るう。しかしガキィンと腕をかざされるだけで防がれる。
「む!?」
「こうなると思って、前もって二錠すでに飲んだかて!」
二人とも恐ろしい形相に変貌していって髪が逆立ち、メリメリと体格が筋肉質に膨れ上がっていき、殺意まみれた威圧を開放していく。
「ふんッ!」
中立男がパンチを見舞ってきて、オレは剣を盾に「グッ!」と弾かれていく。後ろへ滑りながらザザッと着地。
すると中立男を包んで、巨大な女性の像が描かれていく。
「『偶像化』ドエロバディ!!」
紫に流れるロング、舌をべろーんと垂れさせた笑顔の上目遣いのアヘ顔女、ツヤが走る褐色肌、そして特記すべきはボイーンと異常に大きすぎる爆乳、露出度の高い水着のような服。手には曲刀が握られている。まさか『偶像化』まで!?
僕チン男はオーラで包んだフレイルを手に、トゲ付きの鉄球をブンブン回す。
「申し遅れたな。僕は正義の使徒テンチュでいい」
「僕チンは同じく正義の使徒ボホモ! よろしくチーン!」
「それ中立かよ……!?」
ビリビリ感じる威圧に、オレは太陽の剣に切り替えて油断なく身構える。魔法少女化したヤマミも杖をくるくる回したのち構える。
さっきのアホ新聞野郎と違って信じられないくらい強そうだ。劇薬を二錠っつったしな。
クックさんは「え? え? ちょっと!! あたしはー!?」と蚊帳の外。
「ここ守りきるぞっ!!」「ええ!!」
手を合わせ、オレとヤマミは『衛星』による火炎球の連射で波状攻撃を繰り出す。
しかしボホモの振るうフレイルのチェーンが長く伸びて、まるで生き物のように鉄球部分が縦横無尽に暴れまわって火炎球の弾幕をことごとく弾き散らし、空中で爆発がドドドンと轟く。
「無駄ですぞ!! そーらっ!!」
「させっかよォ!」
オレは太陽の剣で迎え撃つ!
ガギッガギギギッギギギンガギギッ!!
嵐のように襲いくる鉄球を粘り強く捌いていたが、ヌウッと現れた巨大な爆乳女の振るう重い剣を受け止めきれず二人揃って吹っ飛ばされて、後方の断崖絶壁に叩きつけられた。バゴォォン!
「ぐあっ!」「ああっ!」
破片と共に地面に落ちたオレとヤマミは激痛の身をこらえ、ググッと立ち上がる。
するとボホモの鉄球がオレに急降下。
咄嗟にヤマミが「メガバクボッ!」と光球を撃ち、鉄球を爆発で弾いた。
「おおおッ!!」
その隙を突いてオレはボホモへ追撃しようと瞬足で駆け出す。
しかしテンチュは手で払いながら「くだらん!」と一言。
すると見えない衝撃に、オレは剣ごと弾かれて後ろへすざった。ザッ!
「な、なんだよ? 今の……?」
「僕の中立能力『くだらん』は敵の攻撃を弾いて無効化できるんだよ」
「オレの攻撃無効化みてーなもんか!?」
「なんだそれは? 知らん」
冷たく突き放す一言。
一方でヤマミは杖から生やした刃で、ボホモの放つ鉄球の嵐を捌いていくのに精一杯だ。
オレは歯を食いしばって天高く跳躍して「フォール!!」と剣を振りおろす。
「くだらん!」
目に見えない衝撃でバンと弾かれ、急下降の勢いが殺され体勢を崩す。
そこを巨大な爆乳女が剣を振るってきて、オレの脇にメキメキとくい込む。たまらず「ぎがッ」と吐血し、吹っ飛ばされる。その勢いで木々をバキバキへし折って数度地面をバウンドして横たわる。
「がかっ……!」
再度地面に血を吐く。いってぇ……!
ヤマミは火炎球を数発放つが、テンチュの「くだらん!」の一言で一斉に爆散。
しかしそれは囮。すぐさま巨大な氷塊の槍が飛び込んでくる。
見開くテンチュは慌てて横に飛ぶ。通り過ぎた氷塊の槍は向こうの森に着弾して氷山がズーンと聳えた。
「このアマが──ッ!!」
ヤマミへ高速で襲いかかる鉄球を、オレは太陽の剣でガキンと弾く。
互いに寄り添って「大丈夫?」と気遣い合う。
思った以上に強ぇえな……! 劇薬二錠でこれほどとは……!
「あ────も────ッ!! 仲間はずれすんな────ッ!!」
激怒になったクックさんが両拳を振り上げて、飛び上がった。
しかしテンチュは見向きみせず「知らん!」と無視を決め込む。ボホモも同じく見向きもしない。
クックさんはフルフルと顔を真っ赤にして、怒りのボルテージが限界に達したぞ。
あとがき雑談w
森の茂みで隠れたまま、ナッセとヤマミを見ていた邪教徒の二人。
テンチュ「あのナウォキがやられるほどだし、慎重に行こうか」
ボホモ「そうだぜ! アイツは良いヤツだったな。一緒に女を追っかけまわすの楽しかったぜ!」
テンチュ「くだらん。だが劇薬は飲んでおけ!」
ボホモ「あの黒髪の女をリョナりたいぜ!」
テンチュ「あのガキは即殺して、あのロリも黒髪と一緒に慰めにしようぜ! ひひへへへへへw」
ボホモ「お主も悪よのうw へへへへw」
そう言いながら劇薬をバリボリ咀嚼して飲み込んだ。
表向きは中立だの正義だの言っているが、本性は下劣なものだったぞ。
次話『キレるクックさん!! 大爆裂だー!!』




