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108話「冒険の始まり! ウイルの冒険者登録!」

 どこか古風な神殿の内部……。

 囲むように円柱が等間隔に並んでいて、外はファンタスティックな天空の風景が広がっている。


「報告ご苦労様です……」


 なんとクッキーとアリエルが揃って、とある人物を前に向き合っていた。


「結局ぅ~マリシャスパワーで全部解決しちゃったけどねぇ~」

「今回の“災厄”はかなり大きかったから、それを逆用できた結果になったね」


 なんとマリシャスみたいな現象は、下界で言えば台風とか地震みたいなものだったのだ。

 数億年の周期で起きるらしい災厄。

 人などから怨念や欲望がチリとして流れていって、それらが渦を巻いて一定の大きくなっていくと混ざり合って濃度を増しつつ(わず)かな思念が長い年月をかけて合体していく。

 そこから纏まった意思により高い知能を獲得して悪意を撒き散らす台風となって、異世界に襲いかかるものだった。


「大抵はナッセとヤマミみたいな若手の浄化で(はら)って事を収めるのが多いんですけども……。今回は色々大変だったっていうか……」

「直接やればぁ~、マリシャスなんて楽勝でしょお~!」

「そーそー! 創世神さま、今回やばかったんだよぅー!」


 しかし創世神と呼ばれた方は首を振る。


「いいえ! 例えマリシャスのような巨大な災厄が相手でも、若手が乗り越えるべき試練として見守らなければなりません!」

「えー!」

「ダルいわぁ~」


 不満を漏らすクッキーとアリエルに、創世神は「めっ!」と可愛らしく顰める。


「心配なのは分かりますが、神々は決して下界に直接手を下してはならない。もし手を下せば力でもって自分の思想を押し付ける独裁と何らも変わりません。彼らの可能性を信じて見守る事こそ真の優しさなのです! 例え恨まれんとも下界の為に……!」


「はい! お母さん……! いえ、創世神アテナ様!」

「むぅ~分かったわよぉ~!」


 渋々ながらも承諾するクッキーとアリエルに創世神はクスッと微笑む。

 金髪に流れるロングで、クッキーと同じデフォルメ調のウニ頭。(けが)れのない蒼い眼は、透き通った湖を閉じ込めたかのようだ。

 広々とした純白に満ちたドレス。床にも及ぶほどの長い裾は小波のように揺れる。背中から大きく広がっていく五枚の花弁のような翼。それは本体の背丈すら超えて、大きな花のように咲き誇っている。

 心が安らぎそうな、とても優しい雰囲気。

 神殿内の大きな花の上で微笑むアテナ。後光の輝きと共に、巨大な威圧が四方八方に放たれる。


「そしてついに貴方たちにも孫ができたのですね……。早く会いたいものです」


 アテナは映像で見せてもらったナッセとヤマミを脳裏に心待ちと微笑む。

 思わずクッキーとアリエルは孫という言葉にドギマギし始めた。


「えへへ……。そ、それほどでも」

「まぁ~、自慢の娘な、なんだけどねぇ~」


 親を前にして二大魔女ですら、照れ照れモジモジとする。


「それに、きっと孫たちに再びの障害が来るそうよ。こっそり見守ってあげてくださいね」


 嬉しそうにクッキーとアリエルは「はい」と頷いた。



 


『大祓祭』が終わってから五年が経った──────。


 光のライトミア王国。

 相変わらず平穏な日常で人々の喧騒が続いている。

 オレは十歳となったウイルを連れて、大きな通路の歩行人通路を歩いていた。公道を馬車が行き交い。


「これで俺が勇者(ブレイバー)だったらどうよ? トーチャン!」


 自信満々にニヤッと笑うウイル。金髪ショートで悪ガキっぽい雰囲気。新調された冒険用の丈夫な衣服。

 オレは「ああ。そうなったらいいな」と笑む。

 今日は十歳になったウイルを冒険者ギルドで登録の手続きするのだ。


 大通りの道路の側で堂々と大きく立つ建物。看板は『ライトミア冒険者ギルド』と異世界の文字。

 オレも五年前は初めてここへ来て登録してたもんだと、しみじみ。


「何、ふけってんだよ! 早く入ろうよー!」

「急がなくとも逃げねーって!」

「俺はずっと楽しみにしてたんだよ! 早く早くー!」


 急かすウイル。元は大災厄の円環王マリシャスの生まれ変わりのようなものだ。

 色々あって、今は普通の人族の子ども。

 手のかかる生意気なクソガキではあるが、ここまで人間として馴染(なじ)めたのはリエーラ婆さんやヤマミとの教育のおかげだ。



 相変わらず綺麗に設備されているギルド内部。

 オレたちは真っ直ぐに受け付けのカウンターへ向かっていった。


「ご用は何ですか?」

「息子ウイルが十歳になったんで、冒険者として登録したい」

「かしこまりました!」


 受け付けの美女は丁重に会釈。

 ウイルの手を魔導装置において承認。そこから冒険者カードが作られる。

 ちなみに各国へ旅する為に、ウイルが十歳になるのを待っていた。本来なら十五歳にならないと冒険者へ登録はできない。

 だがA級以上の冒険者が同伴するに限り、適正年齢を十歳に引き下げれる。


「そろそろ属性とクラスが判明するぞ」

「どんなのだ!? 早く早く!」


 待ちきれないウイルを落ち着かせるが興奮してて手に負えない。


「ウイル様の初期ステータスが判明されました。どうぞ」


 ステータスが書かれた紙を差し出され、カウンターへ食い入るウイル。

 オレも登録時にそういうのあったなー。どれどれ?


 城路(ジョウジ)ウイル・人族・男・地属性・『戦士(ファイター)

 国籍:光のライトミア王国

 冒険者ランク:F

 筋力:B 耐久:A 器用:A 敏捷:D 知力:C 魔力:E HP:A SP:B MP:E


 この年齢にしてはFがない上にバランス取れてんな。

 魔法の才能はともかく、アタッカーとして伸び代があるなぞ。


「ふざけんな!! こんなんクソステじゃねーか!!」

「おい! 止せ!」


 怒り出したウイルを、引っ張ろうとするが背後にヤマミの気配を感じた。


「やっぱりね」


 ウイルはビクッと竦み、サーッて青ざめて冷や汗タラタラ。

 オレはため息をつく。

 ツカツカとヤマミが歩いてくる。ウイルは振り向くなり「ひっ!」と怯えていく。やはりヤマミは目を細め、静かな怒りを顔に表していた。


「少しは大人しくなったから、お父さんと一緒でいいかなと思ったけど」

「あ、いや……、興奮してだな……」

「自分のステータスが不満だからって、関係ない職員に当たるのはいけません!」

「ご……ごめん……なさい」


「職員さんにも謝ってやれ」と口添えする。


 ショボンとしたウイルは職員に向かって頭を下げた。


「ご、ゴメンなさい……!」

「あ……、いいですよ。割とこういうトラブルは起きるものなんです」


 職員さんは寛大(かんだい)に手を振ってくれるが、オレとヤマミは「すみません」と頭を下げる。

 子どもの責任はオレたち親の責任でもあるからだ。

 その事はリエーラ婆さんから念入りに言われている事だった。ホント子どもの世話は大変。


 ぶすくれるウイル。納得いかないのが胸中に滞っているのだろう。


「ウイル。誰もが望んだステータスになれるワケじゃねぇんだ。大半の人はきっとお前みたいに不満なのかもしれないぞ?」

「そうなのかよ!?」

「お母さんだって普通に魔道士(マジシャン)だし、クック姉さんだって僧侶(プリースト)だぞ?」

「私は別に不満じゃないけどね」


 ウイルに冒険者カードを渡す。そして頭を撫でる。


「次は武器買いに行くんだろ? 行こうか?」

「……うん」


 渋々ながらもウイルは頷く。

 オレはヤマミと顔を見合わせて頷く。一緒に行く事にしたぞ。

 ギルドでも武器防具は売ってるけど、最低限のものしかないので別の店へ行く事にした。武器防具が売られている商店街へ向かった。


 やはり冒険者がたくさん行き交いしていて賑やかだ。

 露店でも武器やアイテムなどを並べているのもある。ダンジョンなどでゲットした物が多いけど、今はスルーだぞ。


「土属性は『堅強』の性質を持っている。あながちハズレじゃないぞ」

「堅強?」

戦士(ファイター)と土属性は相性あるからラッキーだと思うぞ。頑強なのはいい事だ」

「どんな感じなんだ?」


 オレは歩きながら説明した。

 頑強という事は、体が頑丈で力持ちが多い傾向にある。

 それに攻撃力が高ければ高いほど体に返ってくる反動は強くなる。なので頑強だと防御力が高くなるので、相対的に反動のダメージを軽減できるから攻撃力の高い技を繰り出せやすい。

 だから戦士(ファイター)は一発がデカい技を持ってる事が多いのだ。


「オレはそんな頑丈じゃないから補助強化魔法ありきで大技を繰り出している。だからその必要がないウイルが(うらや)ましいと思うぞ」

「慰めなんていらねぇ!」

「マジだよ。リョーコだって同じ戦士(ファイター)だ。この間の仮想対戦(バーチャルサバイバル)でのビッグタイトル優勝してたろ?」


「あー金髪のネーチャンか! 去年、あのタッドを抑えて春秋のエンペラーズカップ優勝してたな」

「そうそう。変身したオレとも互角だからな。攻撃力だけなら上だ」


 ウイルが少し自信を取り戻した気がする。

 確かにあん時一緒に観戦していたけど、オレも興奮してたなー。

 タッドとのギリギリ間一髪の接戦を競り勝ったリョーコが喝采を浴びた時は、思わず飛び上がったもんだ。

 その時の興奮と歓喜は昨日の事のように覚えている。


「まぁ、でも冒険者ギルドはあくまで戦闘力に関しての才能を見出して登録する所だから、もしかしたら別の才能があるかもしれないわよ?」

「カーチャン……」


 全員が全員とも冒険者になって冒険や戦闘するワケではない。死を伴う危険な職業なので、むしろ少数。大半の人間は戦闘以外の才能を見出して、国の中で役立てたりして経済を(うるお)している。

 なので戦闘系よりも生産系や芸能系の人が圧倒的に多い。


 するとウイルはオレたちに振り向いて指差してくる。


「でも、必ずトーチャンとカーチャンに勝つって決めてんだ!!」


 ウイルは元のマリシャスとして力を取り戻して、オレたちを倒す事で再び返り咲くぞーって意気込んでいる。

 ……本当は戻れる保証なんてないけど、オレは()()()こう言い返す。


「ははは! そん時は秘術(ズル)なしで勝ってみせるぞ!」

「へん! 言ったなー!! じゃあ武器だ! 武器!! そんで強くなってやるー!」


 強さに憧れる子どものようにウイルは飛び跳ねたのだった。

あとがき雑談w


ナッセ「まさか子どもが産みにくい体質になってたとはなー」

ヤマミ「結婚初夜から頑張ってたけどね……」


 妖精王としての成長に伴い、結果的に人族としての妊娠の確率が極端に落ちてしまったようだ。

 なのでまだ自分の子どもが産まれていないのです。

 気長にやるしかない……。



 次話『お別れ会!』

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