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106話「塔の魔女の秘められた想い!」

 幻獣界へ戻って神殿上のマシュ様と一緒に、遥か向こうのコロニーを眺めていたぞ。

 ライトミア王国の避難者は、勇者セロスやオルキガ王の邂逅に歓喜した。それぞれ各国の避難者も同様だ。ただ水の国はぎこちないようだ……。

 とにかく、ロープスレイ星行きの魔導列車でぞろぞろ帰っていったぞ。



「ナッちゃん……」


 振り向くと穏やかな顔のサラカートとエムネがいた。

 なぜだか、最初会った頃とはまるで印象が違いすぎるぞ……。


「もうクックさんを悲しませるような事はしないでねー」

「そんな事になったら承知しないよ……」


 その豹変が気になった。


「なぁ、なんで急に優しくなったんだよ? 以前は意地悪でボコボコにしてくれたのに?」

「あーあー! 忘れて忘れてー!!」

「うふっ」


 黒歴史に悶えるようにサラカートが頭を抱えてブンブン振ってる。エムネは微笑む。


「ナッちゃん、ごめんなさい。あの時は素直になれなくて……」


 しょんぼりなサラカートにオレは思わず「いいよ。済んだ事だし」と手を振る。

 ヤマミは「甘すぎ」とジト目。


「似たような事が……私たちにもあったんだよ」

「え?」

「うんうんそー! 大切な人が自分の人生と引き換えに戦ってたんだよー!」


 オレもヤマミも驚く。

 こっちと似たような事があったんだな。ってか大切な人かぁ……。

 クックさんは今でもオレとヤマミの手を握ったままだ。


「なんでも願いを叶える宝珠は、壊れた世界を復活させる為に創ってくれた」


 あの宝珠か。『星塔(スタワー)』の最上階にあったヤツ。


「大切な人が『賢者の秘法(アルス・マグナ)』によって創ってくれた贈り物……。己の人生を犠牲にして世界を復活させる為に遺してくれたもの……」

「それで、私たちは“世界の復活”の方を願ってしまったの」


 サラカートはしんみりと後悔しているような一言を述べてきた。


 大切な人、つまりマロハーとパヤッチの事を言っているのかもしれない。

 前にマロハーが二人の事を頼むって、夢に出てきたもんな。

 大昔で何があったか知らないけど、塔の魔女こと二人はすごく寂しかったんだと思う。ずっとずっと数百年も後悔しながら塔の管理をし続けて……。


「なぁ、だったらさっき宝珠に願えばよかったんじゃ?」

「塔の魔女になってから……、管理者としての制約で自分から願いを叶える事はできないし、願う者に代理を頼む事もできないんだよ……」

「そーなのよ! もどかしいーって思うわー!」


 不満そうに頬を膨らますサラカート。プンプン!

 でもエムネが言ってた通り、確かにオレたちが願いを叶えている時に願いを言わなかったよな。


「オレさ、マロハーとパヤッチを元に戻す方法、探してみようかなと思う」


 サラカートとエムネは目を丸くした。


「バッカじゃないの! 浄化装置として『星塔(スタワー)』を創作して概念になったんだよー?」

「会いたくねぇのか?」

「……ッ!!」


 即座に切り返してやると、サラカートは言葉を詰まらせて怯む。

 本当はものすごく会いたいって気持ちでいっぱいのはずだ。クックさんがそうだったように……。

 唇を噛んで少し震えているのが分かる。


「んもー! 会いたいならそうしてるよー!」

「……私たちも魔女になる前に、色々旅してたけど、見つからなかったよ……。だから諦めて塔の管理者になったんだ……」


「諦めたら、そこで冒険は終わりだよ」

「え?」


 某漫画のセリフをもじったけど、エムネには衝撃だったみたい。


「代わりに探してみるよ。全然成果出ねーかもしんないけど、諦めるよりはマシだろ?」

「また難題を増やして……」


 ヤマミのジト目に怯みそうになるけど、やっぱ放っておけないぞ。

 クックさんがそうだったように、大切な人がいないままじゃバッドエンドだ。

 サラカートは儚げに目を潤ませてくる。


「こちとら異世界ロープスレイを冒険するんだって目的あるしな」


 そう言い、オレは清々した笑みを見せた。


 するとサラカートがオレに抱きついてきた。すごく寂しかったのかギュッと強く締めてきて震えていた。嗚咽(おえつ)している。

 エムネもやや俯き気味に涙を拭う素振りを見せている。


「もう大丈夫、だよ!」


 サラカートは泣きっ面で見上げて、更に涙を溢れさせてくる。

 子供みたいに「うわぁ~~」って再び泣きついてきたぞ。そんな彼女の頭を優しく撫でる。するとエムネも耐えかねたのか抱きついてきた。

 すごく甘えたかったってのが分かるほどに二人は泣き喚いていた。



 後ほどエムネがコソッと、オレがマロ姉さんに映っていたと教えてくれたぞ。純粋で意志が強くて優しいのがそっくりだってさ。見た目にも面影があるらしい。


「また遊びに来るからねー!」「うふっ」


 そんなこんなで塔の魔女とも仲良くなれたぞ。





 そして二大魔女から厄介事を押し付けられたぞ。

 漆黒の魔女アリエルが抱えていた五歳くらいの子ども。金髪でどっか面影があるなと思った。


「マリシャスよぉ~」


 思わず緊迫して構えたぞ。ヤマミも一緒の反応だった。

 ……っても、もう力失ったんだよな。

 なぜ小さくなったって言うと、アリエル(いわ)く限定的に大人の姿にしてただけで今は元に戻ったとの事。



「んあ?」


 アリエルの腕の中で目が覚めたマリシャスは瞬きし、キョロキョロするとオレを見るなり、降り立って構えてきたぞ。

 なんか十字に腕を左右に伸ばし……、しばしの硬直。


「む、力が沸いてこぬ!?」

「あらぁ~」


 見下ろしてくるアリエルに振り向いて、ビクッと竦むマリシャス。

 戸惑って自分の手や下半身を見渡して「ち、小さくなっている!?」と焦りだしたぞ。冷や汗いっぱいに「どういう事だ!!」と喚き始めた。


「貴方様の為に()()()()として~、って言ったんだけどぉ~?」

「なんだと!? 嘘偽りなく説明せよ!」

「か弱い人間の体を自ら破壊しないよぅ~、私がちょい補助してたのよぉ~。そのおかげで貴方様は概念時の能力をそのまま使えてたのよぉ~。まぁ()()()()惨敗だったけどねぇ~」


 せせら笑うアリエルにマリシャスは激昂したぞ。


「貴様ぁ!! 騙しやがったな!! ただでは置かんぞッ! 出ろ! 『真紅熾天使(クリムゾンセラフ)五十聖神王(フィフティゴッド)』ッッ!!」


 両手で万歳するように振り上げて叫ぶが何も起こらない。しーん。


「あの、それって……支配した異世界の?」

「ああ!? 我が唯一神として数々の異世界を支配し、その中で優秀な者に不老不死と圧倒的な力を与えた我が忠実なる精鋭の下僕(しもべ)!!

 それが『真紅熾天使(クリムゾンセラフ)五十聖神王(フィフティゴッド)』なり!」


 あー、その支配している世界から大災厄パワー回収してしまって、なかった事になったっけな。

 おそらくその五〇人とやらも力を失ってるんじゃないかな?


 アリエルは指で輪を作って覗き見しているポーズをしている。


「確認したけどぉ~、とっくの昔に死んでる事になったわぁ~」

「な、なんだとおッ!!?」


 やっぱかー。これでは力も手下も皆無。もう丸裸の王様だなー。


「ええいッ!! さっさと余を元に戻さんかッ!!」

「確かぁ~『有限とは言え余に合う肉体さえ手に入れれば、不老不死、転生、我が力をもってすれば全てが叶う』ってたわねぇ~? ソレどぉしたのぉ~?」

「ぐぬ……! 魔女如きがァ!! もう容赦せぬぞッ!!」


 なんかオーラ出そうと踏ん張ってるようだが「ぬぬぬ」とプルプル震えているだけだ。まるでトイレしてるみたいだなぞ。しかも見た目子どもだから真似事に見えてしょうがない。

 はぁはぁ息を切らして「そんなバカな……」と絶句してる。

 なんか可愛いな。


「笑うなー!!」


 オレがクスッとしてたか、マリシャスが怒鳴ってきた。


「って事だからぁ~~、観念して“人生”を謳歌(おうか)しなさぁ~い!」

「最初っから、()()が狙いだったのかァッ!!」

「いいじゃなぁ~い? 独り寂しくチートで生きるよりも有意義よぉ~~?」

「ゆ……許さんッ!! 許さんぞ──ッ!!」


 突っかかるがアリエルに後ろをつままれて、手足をばたつかせるしかない。

 せせら笑いながら、オレに放り投げてきたぞ。咄嗟に受け止めた。


「え?」


 ばたつかせるマリシャスを抱いたまま、アリエルへ視線を向ける。


「人族のただの子どもでしかないからぁ~、親代わりになってくれるぅ~?」

「ええっ!? ち、ちょっと待ってくれぞ!!」

「どういう事!」


 するとクッキーはにっこり微笑んで、オレとヤマミの肩にポンと手を置く。


「ナッセ、ヤマミ、貴方たちは私たちと違って()()人族としての人生がある。無茶を承知で引き受けてくれる?」

「人族の人生……」

「それに、マリシャスはチートに頼ってた甘えん坊なの。だから色々教えてやってくれない?」

「余、余を甘えん坊だとッ!? 侮辱しおったな──ッ!」


 オレはモヤッとしながらも頷く。

 暴れていたマリシャスはオレの腕からスポンと抜けて、尻から落ちて「いてぇ!」と呻く。


「余をこんな目に遭わせたなッ!! よくも──!」


 ヤマミがマリシャスの頭にゴツンと軽いゲンコツを落とした。


「『余』ではなく『僕』でしょう!」

「う……うう……、な、殴ったぁあああ~~~~~~ん!!」


 わんわん泣き喚いたぞ。

 まるっきり子どもだなぁ。今までラスボス感出してたのが嘘みてぇだ。


「この子、頼んだわよ」

「……ああ!」



 決意したオレはしゃがんで、ぐずるマリシャスの頭を撫でる。


「お前に世界を見せてやる!」


 マリシャスが後悔するくらい、異世界の素晴らしさを教えてやる!!

 てめぇが壊そうとした異世界がこんなんだったぞって、思い知らせてやる!

 それがお前に対する宣戦布告だぞ!





 塔の魔女サラカートとエムネは、そんな彼らを見て感傷に暮れる。

 かつて親を失い暗い将来しかなかった孤児の自分たちを、マロ姉さんとパヤッチが優しく迎えてくれたのと連想して……。


「マロ姉さん……。貴方の子どもはこんな立派に大きくなったよ」

「うん……、まるっきり母と同じ事してるよ……。うふっ」


 和やかな顔の塔の魔女の背後で、薄らとマロハーとパヤッチが浮かび上がって優しく微笑んだ。


《それは喜ばしい限りだ》《そうだね》

あとがき雑談w


マシュ様「いい加減、私の前で勝手に話進ませないでもらえますか? 蚊帳(かや)(そと)で寂しいんですが?」


ナッセ「あ、す……すまねぇ……」

ヤマミ「ごめん。すっかり忘れてたわ」

サラカート「んふーふっw 石像みたいに影薄いからねーw」

エムネ「こら! サラ!」


 マシュ様は数百数千も長い間じっとしている事に慣れすぎて影が薄くなってたらしいぞ。

 あまりにも生活感がなくて現地人にすら石像と間違われる事も……?



 次話『そして後日談……!』

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