104話「ナッセとヤマミのお別れ! そして……!」
ついにナッセとヤマミは千年後の成長した妖精王となって、中ボスはおろか大災厄の円環王マリシャスまで打ち倒す事ができた。
だが、その代償はあまりにも大きかった…………。
違和感がして足元を見ると、星屑となってパラパラと分解し始めていた。
セロスたちは驚きに満ちて戸惑っていく。
「ええっ!? まだ丸一日経ってないのに!?」
「……済まねぇ。どうやら思った以上に消耗しすぎたみてぇだ」
苦笑いしながら後頭部をかく。
「今、疲労による眠気が催してるから、きっと千年分使い果たしたのかも……」
ヤマミも申し訳ない顔で目を逸らす。でも確かに眠くなってきてるな。
クックさんは震え始め、涙が溢れ出してくる。
その間も、徐々にオレたちの足はなくなっていって腰にも及ぶ。
「いなくならないでぇ────!! ナッセぇ、ヤマぁ────っ!!」
飛び出したクックさんに、意識がまどろんでいくオレは「ごめんな」と優しく笑い、散っていく胴体の最中で右手を伸ばす。
抱きつこうとするクックさんの頭を微かに撫でるのが精一杯で、右手すら星屑に散り始めた。
オレの胴体が消えて抱きつけず、泣きじゃくるクックさんを見下ろしながら「最後に……」と声を搾り出す。
「宇宙を……世界を! オレたちの代わりに『星塔』の願いで蘇らしてくれ!」
「じゃあ後は……よろしく……ね…………」
切なく微笑みながら、オレたちは顔までも星屑となって流れていった。
見慣れたアクトたちと泣き崩れるクックさんが見納めになっていくと思うと、胸が張り裂けそうになる。
ああ……、もっといたかったなぁ…………。
異世界を回ってワクワクドキドキな冒険をしたかった……な…………。
クックさん…………、ウソついたみてぇでゴメンな………………。
残照のような想いと共に薄れゆく意識は光の彼方へと溶け込んでいった。
ついにナッセとヤマミは消え、僅かな星屑が余韻として上昇しながら虚空へ溶け消えていった……。
それを見上げながらクックさんは爆発したかのように泣き喚いた。
「うわああああああああああああああああああああああああ!!!」
一人の少女がわんわん泣き叫んでいるのを、セロスやアクトたちは悲しみを堪えて立ち竦むしかなかった。
リョーコは潤む涙を堪えるのも精一杯だ。アクトは静かに目を瞑る。
ティオス先輩は俯いて「ばっかやろ……! 無責任に放り出しやがって……!」と震える。
その翌日、幻獣界発の魔導列車でセロスなど勇者勢やアクトたち大勢は宇宙に漂う『星塔』へたどり着いた。
リョーコと手を繋いで歩くクックさんは泣き腫らした目で元気なく俯いたままだ。
アクトもリョーコも煮え切らない気持ちが滞っている。
しかし今は壊れた宇宙を元に戻すのが先決だ。
巨大な塔へ入場すると、まるで城の内部のように広い空間に圧倒させられた。
所々、緑のコケがかぶってる。
どちらかというとずいぶん昔の遺跡みたいだ。
中心部に位置する円柱にある魔導エレベーターに乗って最上階まで昇っていった。
「ようこそいらっしゃいましたー」
「……おつかれ様。ようやく『大祓祭』も終わりを迎えそうだよ」
なんと『星塔』最上階では二人の塔の魔女が丁重にお辞儀し、神々しく輝く宝珠へ片手で指し示した。
「これは……?」
「燦々と暖かく輝く宝珠!?」
「こんな……途方もないエネルギー!? 信じられない……!!」
「んふーふ! そりゃマリシャスの野郎も来てたし、浄化された大災厄が凄まじかったものねー」
「そうだよ……。なんでも一つだけ願いが叶うほどにね……。うふっ」
「後は宝珠に向かって、最初に『お願い玉、お願い玉、どうか叶えておくれ』と唱えてから叶えたい願いを述べるだけ。それで叶うよー」
塔の魔女は相変わらずな調子で説明してくれる。
セロスはツバを呑み込み「そうか! なら」と一歩踏み出して、後ろの一同へ振り返る。
アクト、リョーコ、クックさん、マイシ、ジャオガ、四魔将、ラルゴ、ウォタレン、ププラト、マグア、バベナス、モリッカ、メーミ、ファリア、クーレロ、マブポルト、光の国王オルキガ王、風の王国ナムベジ王、土の王国コマ王など勢揃いだ。
「あー、相談? いいよー! それと言わせてもらうけど、後悔しないような願いにしてねー?」
サラカートはにっこり微笑む。
セロスは緊張して息を飲む。なんでも叶えられる願いはたった一つだけ。
「こ……、後悔しない願いか……!」
「そう……、後にも先にも一度きりかもしれないよ……。うふっ」
「わ、分かった……! 待ってくれ」
彼は気付かなかったのだが、クックさんは自分に言われているように聞こえていた。その察しをサラカートは「ね? クックさん」と片目ウィンクしてきた。
エムネも細目で優しく微笑んでいる。
「そのなんだ、オレはナッセとヤマミの想いと頼みを汲んで世界を蘇らそうと願う。異論はねぇか?」
セロスの提案に、アクトもリョーコも誰もが同意するように首を振る。異論はない。
ラルゴとジャオガは「民が暮らせる場所がないと始まらんしな」「うむ、同意見だ」と意見が合った。
ずっと幻獣界に甘んじて暮らすワケにはいかない。
かと言って、他の異世界へ移住するにも色々面倒な手続きもあるし、馴染むのかも未知数だ。
それにこの為にナッセとヤマミは自ら犠牲になった。
未来へ繋げる為に身を扮して戦い、大災厄マリシャスをも打ち倒すに至れた。
だから、もし個人的な願いを叶えてしまえば、その想いを無下にしてしまう。そう覚悟したセロスはみんなの総意と想いを背負って、宝珠へと振り向く。
ゆっくり息を吸って吐いて、気分を落ち着かせて「よし」と身を奮い立たせた。
「お願い玉、お願い玉、どうか叶えておくれ! 壊された世界を元に……」
前置きの呪文によって宝珠は一層輝きを増す。ウオオン!
サラカートとエムネは強張る。
その時、誰かがサッと駆け出してッ!
「おねが──いっ! ナッセとヤマを元に戻してぇ──────っ!!!」
気持ちを爆発させたクックさんは涙を零しながら腹の底から叫んだ!
セロスもアクトたちも見開いて、それぞれ振り向いてクックさんへ注視する!
戸惑ったのか遅れて「え……!?」と掠れた声をだす。
サラカートとエムネはひっそりガッツポーズと拳を作った。グッ!
そんなクックさんの想いが込められた願いを叶えるべき宝珠が輝き出して、放射状に閃光を撒き散らしていく。その眩しさに誰もが腕で顔を庇い、目を瞑ってしまう。
するともう一つの光源からナッセとヤマミが星屑を散らしながら現れてきた!
「え? え?」
「な、なに??」
意識が途絶えたと思ったら、急にクリアになってきてアクトたちが視界に入ったのだ。
隣のヤマミへ見やる。
するとクックさんが嬉しそうに咽び泣き始めた。ぽろぽろ涙が溢れていく。
「勝手にいなくなっちゃダメぇ────!!」
すっ飛んできて強く抱きついてきたぞ。震えながらギュッと締めてくる。
戸惑いながらも、しんみり安心して「ごめん……」と抱き寄せて、優しくウニ頭を撫でて宥めていく。
それにしても……?
「……どういう事?? もう千年経ったの?」
ヤマミは怪訝そうに、オレとクックさんを見てから戸惑っているセロスたちへ視線を移した。
どう見ても千年経ったとは思えない。
それとも何らかの方法で、そのままの状態で千年越したのか?
ってかここどこだ? 周囲の柱が並んでいる奥行きでは破片漂う真っ暗な風景が広がっている? なんかデッカい水晶玉浮いてるし、一体何が……?
オレはふと違和感がして、自分の手を見て、下半身を見下ろす。千年後の姿になったはずなのに、秘術を使う前の姿に戻っていた。
ヤマミも同じだ。そして威力値も元通りになっていた。
「ああっ! お、オレもヤマミも戻ってる!?」
「うそ……」
ヤマミも両手を見て目を丸くしたぞ。
今までのインフレ合戦が夢のようだ。夢か現か俄かに掴めない。
肩を落としたセロス。それとは対照的にニッと笑うアクト。
「悪い。クックさんに先取られた」
「あァ……」
「へっ! そうこなくちゃなし! 置いてかれるのも困るっしょ」
マイシは嬉しそうに不敵な笑みを浮かべる。
ジャオガは柔らかく笑んで「全く、騒がせな妖精王だな」と安心した。ホノヒェラは微かに涙を浮かべ、それを指で拭う。
ソネラスもアマリビグもホッとしているのが窺える。
「いえー!! やっぱりナッさんはこうでなくちゃねー!」
「ええ、なんだかホッとしたわ~」
はしゃぐモリッカ、そして涙を拭うメーミ。ファリアは「へっ」と笑う。
ティオス先輩は顔が緩む。
リョーコは「おっかえりー!」と涙ぐみながら嬉しそうに手を振ってくる。
状況が分からず「た、ただいま……」と苦笑いするしかないぞ。
その後、セロスたちから事情を聞いた。
せっかく『星塔』の願いで世界を蘇らそうって話だったのに、クックさんが先走ってオレたちを元に戻したらしい。
正直ビックリしてる。
……ってかさ!
「それはそうとして、世界はどうする気?」
やや不機嫌に腕を組んで目を細めるヤマミ。
もうすっかり宝珠は輝きを失って、ただの透き通った水晶玉になっていた。しーんとしている。
しかし上機嫌なサラカートとエムネはにっこり微笑んでいた。
「ざんねーん! もう願いは叶っちゃいましたー!」
「うふふ……、やり直しは効かないよ……」
セロスとラルゴは絶句。
「ってか! 元に戻ったのはいいけど、これからどーすんだよっ!?」
ティオス先輩が声を張り上げるが、一同は黙りこくるしかなかった。
あとがき雑談w
マリシャス「ぐがーぐがー(寝)」
マシュ様「……置いてけぼり感ぱないです。あとイビキうるさいです」
次話『どうやったら世界を元に戻せるんだー!?』




