100話「大災厄の円環王マリシャスが現れた!!」
先ほどの激戦で周辺の星が消えて、煌きが少なくなった宇宙で破壊が及ばなかった天の川が横切っている。
漂う半壊の巨神像。
死んだ星が昇天した後も、オレとヤマミはその肩の上で立っていた。ふうと息をつく。
「かかかかかっ!! これはこれは~愉快愉快いぃぃぃ~!」
ゾワッと寒気がして振り向くと、巨神像の肩の端っこに黒い沼みたいなものが広がって見えた。その沼からズズズッとピエロを模した『偶像化』と共に道化師風の男が這い出てきた。
ニタリと不気味な笑みを見せてきて、思わず警戒する。
オレたちに疲労やダメージがあるものの、勝てない相手ではない。
「もっちろん事の顛末を見させてもらいましたよ~~! かっかかか~!!」
道化師の男は拍手して、大仰に笑い始める。
「お前は一体なんなんだっ!?」
オレは星光の剣を具現化し、衛星が周回する。ヤマミも黒い小人を無数召喚。
一〇〇八万の威力値は今も健在だから、どんな敵だって倒せる!
だが油断せず出方を見るぞ!
「やぁやぁ、そ~いえば初顔でしたねぇ~~! ひぇっひぇっひぇ! 申し遅れました~!
ボクはトビーでぇ~す! 二つ名は“白面の疫病神”ってか~~!」
おちょくるような仕草で挨拶してくる。
「何をしに来たッ!!」
コイツの名は聞いた事ある!
確か四首領ヘインが別の並行世界で七皇刃の一人をやってたけど、突然謀反して皆殺しにしたヤツだ!
当時はオレもなんで勝手に壊滅してたのか不可解だったけど、今の並行世界でヘインが直々に言ってくれた。恐るべき実力を秘めていて、全く敵わなかったらしい。
だから「ヤツには気を付けろ!」ってた。
「今回の活躍に祝辞を述べたいと思いまして~~!」
「祝辞……?」
呆気に取られる……。
得体の知れない気配は感じるが、未だ殺気はない。
「それにそれにね~傷だらけなんでしょ~? はいベルナースゥゥ~!」
片手をかざされて、オレたちを暖かい光で覆う。
すると見る見る傷が癒えて体力まで全快しちまったぞ。戦う前と変わらない状態だぞ。
こんな一瞬に回復できるなんて、オレもヤマミもまだできねぇぞ!
「実はね~今の不死鳥さん造ったのボクだよ~ん! かっかかかか!」
「なんだとッ!!」
放送で聞こえるセロスの憤慨する声。
そう、巨神像の中にいる勇者たちもこの場面を見ているからだ。
「いえいえ、実はね~遅かれ早かれ同じ結末になってたんですよね~!」
「なにッ!?」
「ジワジワ難易度が上がるのはご存知でしょうぅぅ~~?? アレ実はね~、魔境をクリアするたびに更に加速していくんですよ~~?」
「なんだとッ!!?」
トビーは肩を竦め、両手をおっぴろげて不気味な笑みを止めない。
「九分九厘無理ゲーになってたと思いますんで、こっから弄って一気に危機感を煽れば、この結末になると思いましてぇ~~、スミマセンねぇ~~! ひぇっひぇっひぇ!」
「ふざけるなッ! ピエロ野郎ッ!! 星を人類をなんだと思っているんだッ!!」
セロスとトビーの会話に、オレとヤマミは呆気に取られている。
「あ~~勇者君、あんまりカッカすると顔にシワできちゃいますよ~~?」
「てめぇッ!! この場でッ……」ガッ!
……あれ? 途絶えた??
「トビーとか言ったな? 何が目的なのだ?」
あ、ラルゴってヤツの声だ。
たぶん激情に駆られたセロスを抑えたのかな?
「魔女と同じ役目を担う“魔人”としての役目をしてるだけでしてね~~!
ちょいちょいちょっかいかけてバランス取ってるんですよね~~! みなさんには随分嫌われましたけど、それもまたカイカンでして~~!」
要するに師匠や塔の魔女のように裏から暗躍する魔女の男性バージョンかぞ?
どうりで四首領ヘインを皆殺しした割にオレたちヒーロー側に襲いかかったりしないし、今回でも不死鳥を援護して襲いかかったりしないワケだ……。
そして嫌われる事すら気持ちいいーって変態って事か。
踊らされてるのは気に食わんけど、一応味方なのかな……??
「道化は失せよ!」
ズシリと来る怒気を孕む別の声。
するとズドッと轟音が響くと、トビーの心臓部辺りの胸に風穴が空いていた……。
「え?」
トビーは不気味な笑いのまま硬直、目を見開く。
途端に「ギハッ!!」と吐血し、虚ろな目のまま足元の黒い沼へズブズブ沈んでいったぞ。呆気ない退場。
そして!! 振り向く!! 凄まじいまでの気配の方向へ!!
金髪ロングの全裸美青年で両目が真紅の瞳。闘衣を纏って威風堂々と仁王立ち!
「この体では初めてとなろう……。この余こそが平和神マリシャスであるぞ!」
不敵に笑んでいるだけで尋常じゃない威圧が滲み、巨神像が震え上がっていく!
オレもヤマミも萎縮するほどの圧倒的な威圧!
「邪魔者は消した。そして……次は目障りとなる妖精王どもだ。我が正義と平和を仇なす悪しき存在を余は許せられんのでな!」
「お、お前がッ! マリシャスかッ!!」
「あなたね! 全ての元凶である大災厄の円環王ッ!!」
「平和神マリシャスだ! 訂正せよ! これ以上の侮蔑は無礼であるぞ!」
ヤツが片手を垂直に下ろしてきたら、ズシリと超重力がかかって屈んでしまう!
まるで跪くよう強制されてるみてぇだッ!!
ビリビリと圧力を受けながらもオレとヤマミは必死に踏ん張ろうとする!
しかし巨神像は呻くように軋んでいる! このままだと潰れ……ッ!!
と思ったら重力が消えた? フッ!
「二度は言わぬぞ! 余の前で頭を下げて跪くが良い! この罪深い世界を永久の地獄へ作り直す前に、余を讚えよ、崇めよ!」
「なんで、そんな偉そうなんだよッ!!」
「そんなヤツに従うと思ってるワケッ!?」
「やれやれ、余の慈悲深い言葉が届いてないらしい……。嘆かわしい事だ。
まぁいい説明しよう。まず汝は上位種である妖精王。そしてポジティブ世界の住人。このままでは永久の地獄では存在できず、消滅せざるを得ん!」
戦慄したまま息を呑む。つまり……。
「貴様らが自分の許されざる罪を認め、余に乞えば、我が力で只の人間に戻せるようになり、地獄で生きれられるぞ! そして永劫の苦痛でもって己の罪を償えるのだ! ふははははははッ!!」
紛うなき悪だ! 聞くに耐えない傲岸不遜な言動!
まさに大災厄の円環王マリシャスッ!
今になって肉体でやってきた理由は分からんけど、答えは一つッ……!
「一切断る!! この場で元凶たるお前を倒すだけだッ!!」
「ええ! これで大災厄は終わらせてもらうッ!!」
オレはヤマミと手を繋ぎ、床に魔法陣を描いて究極完全体地球の星獣を召喚して『偶像化』を怪訝化して、威力値1億3008万を誇る最強形態へ一瞬に変貌!!
巨大で強烈なフォースを噴き上げて宇宙をも震撼するほどの威圧を放つ!
更に『太陽の剣 S・S』も兼備っ!!
ラスボス出てくんなら『光闇の妖精聖騎士』で臨むっ!!
「ほう……?」
先手必勝ッ!! オレたちは巨体で一気に飛びかかる!!
「驕りが過ぎるぞ……! そして頭が高い!!」
マリシャスはゆっくり両手を踊らせて、途端におぞましいほどの莫大すぎる赤黒いフォースがズオッと爆発するように溢れた!
宇宙さえ軋むほどに激しい震撼に覆われ、勇者たちは竦み上がった!
なおも嵐のように吹き荒れるマリシャスの威圧は底知れない深淵を窺わせた!!
ズォアアアオオオオオオオオオオオッ!!
激怒と憎悪入り混じりで奈落が如しのドス黒くて深いフォースの荒ぶりは留まる事を知らない!
「そんな不逞な輩は、余が直々に罰してやろうッ!!」
マリシャスが両腕を左右へ伸ばして、十字の体勢による不動の構えを取る!
更に背中から光の輪が具現化して後光の輝きを散らす!
それでもオレたちの進撃は止まらないッ!! 全身全霊のフォースを込めて、最高の技を繰り出すしかないッ!!
「おおおおおおッ!!! 流星進撃──、幾千万連星ッ!!!!」
衛星も手伝って、瞬時に数千万もの必殺の一太刀を同時に等しく繰り出す!!
するとマリシャスはカッと両目を見開いて、瞬間にフォースを爆発させてきた!!
「咎人、裁きを受けよッ!」
構えていた右と左の手をそれぞれ逆に動いて輪を描く!!
オレもその反撃は百も承知!! 格闘ゲームでいうキャンセルのように、流星進撃中で太陽の剣を銀河の剣に切り変えてッ!!
「おおおおッ!! ギャラクシィ・シャイン・スパァ────クッ!!!」
なんと大技と奥義を同時に繰り出したかのような大判振る舞いで繰り出す!!
炸裂すれば、超新星爆発の数千倍以上もの破壊が吹き荒れる!
しかし!!!
『聖絶奥義! コズミック・ディバインパニッシュメントッ!!』
マリシャスが繰り出した技により、次元さえも破断する凄まじい衝撃波が四方八方へ解き放たれ、周囲の星々を粉々に粉砕し、銀河系すら木っ端微塵!!
それどころか天文学的な数多ある銀河が網目状に連なっている宇宙規模さえも、爆心地から波紋状に砕け散っていく!
それほどの史上最高の破壊力は次元に影響を及ぼし、物質ならば分子レベルに崩壊させ、宇宙中全てを破壊し尽くすほどの規模へ達した!!
「矮小ども控えよ! 余の威力値は66兆6000億なるぞ……!」
オレもヤマミも全身から血飛沫を噴き、ガハッと大量に吐血────!
繰り出した技も星獣も偶像化も銀河の剣も完膚なきまでに破られ、致命傷を負わせられた!!
極限に圧縮された時間の暇で、自らの命が消えていくのを察する!
「く……、こんな……死んでたまっ…………!!」
これから異世界を冒険するんだ!
世界各国を巡って、色んな人と会って、未だ見ぬ世界をッ……!
思い描く未来の夢を塗り潰すように、意識は黒に沈む────────……!
あとがき雑談w
サラカート「」(絶句)
エムネ「」(絶句)
クッキー「あちゃー! まさかのラスボス出てきちゃったかー!」
アリエル「どうなっても知らないわぁ……(呆れ)」
次話『城路 死す……!』




