②カードゲーム・ルール解説
ゲーマー(仮名)が考えた特殊ルールカードゲーム、「考えうる限り最低最弱のクソデッキを作った奴が優勝」。これには四人のプレイヤーを必要とするのだが、不良、メガネ、中華の三人が快く引き受けてくれた。
では次に、今回の対戦で使用するトレーディングカードゲームについての解説である……が、その前にメガネがゲーマーに声をかけてきた。
「ゲーマーよ、知っているか?」
「はい? 何をです?」
「今回の企画では、登場させるカードゲーム及びボードゲームは完全オリジナルのものを使用しなければならない。お前が大好きな遊が付くアレや、ダイレクトメールと同じイニシャルのアレは使えないのだぞ」
「メメタァ」
「その点、どうなのだ? 対策は打ってあるのか?」
「ええもちろん、抜かりはありません。あるんですよ、完全オリジナルのカードゲームが」
そう言ってゲーマーが、カードの山札を一つ、皆の前に置く。
そのカードの裏面には「マモノカードバトル」と書いてあった。
マモノカードバトル。
それは、この世に突如として現れた、異能力を操る怪物……という設定の生き物、マモノを題材としたトレーディングカードゲームである。
■山札
・山札はシンプルに40枚。
・同じカードは、4枚まで入れても良しとする。
・試合中に山札がゼロになると、その次の自分のターンで強制的に敗北となる。山札がゼロになったのと同じターン内なら、まだ敗北にはならない。
■コスト
・カードをバトルフィールドに出すには、それぞれコストが必要。
コストを得るには、コストゾーンに自身のカードを送る必要がある。
各カードを送ることで得られるコストは基本的に1だが、例外も存在する。
一度にコストゾーンに送ることができるカードは、基本的に一ターンにつき一枚のみである。ただし、試合中に使用したカードの効果などによっては、その限りではない。
■ライフと攻撃力
・ライフ制、攻撃力制を導入しており、プレイヤーのライフは20点。
マモノのライフおよび攻撃力は、マモノごとに個々に設定されている。
■カードの種類
・マモノカードバトルには、三つの種類のカードがある。
一つ目は、シンプルにバトルフィールドに出して戦わせる「マモノカード」。
二つ目は、いわゆる進化モンスターにあたる「星の牙カード」。
三つめは、いわゆる呪文カードにあたる「異能カード」。
・マモノカード、および星の牙カードにはそれぞれ、マモノの種族や属性などが表記されており、特殊効果や後述する進化などに影響を及ぼしてくる。
・マモノカードおよび星の牙カードは、フィールドに最大6体まで同時に出すことができる。
■マモノカード
・マモノカードは、いわゆる雑魚モンスター。
星の牙カードと比べると、あまり強くはない。
強力な効果もほとんど持たず、ステータスも低い。
しかし低コストでフィールドに出せるため、対決の序盤で活躍する。
大人しい草食獣のマモノは、ステータスが非常に低い代わりに、コストゾーンに送ると得られるコストが2に設定されているなど、派手な効果こそ持たないが、マモノカードは戦略的に重要な位置を占めるカードである。
■星の牙カード
・星の牙カードは、いわゆるボスモンスター。
各々が恐るべき異能力を持つ、超常の怪物である。
ステータスも高く、特殊効果も強力で、非常に強い。
しかしそのぶん高コストで、フィールドに出すには工夫がいる。
弱めな星の牙でもコストは6ほど。下手をすると14とか18とかに達するものも。
■星の牙カードの活用方法
・星の牙カードをフィールドに出すには、二つの方法がある。
一つは、普通に手札からフィールドに出す。
もう一つは進化。
星の牙カードと対応する種族のマモノカードがフィールドにあるとき、そのマモノカードの上に重ねるように、星の牙カードを場に出すことができる。これが進化。進化で星の牙カードをフィールドに出す時、支払うコストは通常の半分となる。
■異能カード
・異能カードは、その場に出すと即座に効果を発揮し、そして失われる。効果はカードによってさまざまである。
■マモノは呼び出してすぐに攻撃できる?
・マモノカードおよび星の牙カードは、フィールドに出た最初のターンは攻撃ができない。ただし例外は存在する。
■マモノの特殊ステータス
・マモノカードおよび星の牙カードには、敵の攻撃から他のマモノやプレイヤーを守ることができる「守者」や、フィールドに出た最初のターンから相手のマモノやプレイヤーに攻撃ができる「猛獣」、自分から攻撃するまで敵に攻撃されない「潜伏」など、特殊なステータスを持つカードも存在する。
マモノカードの進化で星の牙カードをフィールドに出すと、支払うコストが半分になる。この特徴を利用することで、中盤の差し掛かりから自陣敵陣ともに強力な星の牙カードが入り乱れるようになる。
コスト+2のノーマルマモノなどの存在もあり、マモノを呼び出すためのコストが増えやすいのも特徴。マモノの進化と、高コストマモノの殴り合いに重きを置いたカードゲームなのである。
「……ルールは、まぁこんなところです。最近発売されて、いま注目を集めている期待のカードゲームなんですよ。(こっちの世界線では)」
ゲーマーがそう語る一方で、他の三人はそれぞれ思い思いにマモノカードゲームのカードを眺めたり、手に取ってみたりしている。
「ふむ……確かにこれなら大丈夫そうだ。では早速、グループ分けを行なうとしよう」
「二人と二人で別れるんだったよね。じゃあ、グーとパーで分かれましょ!」
中華の掛け声を合図に、四人はそれぞれグーかパーを出す。
結果、ゲーマーがグーを出し、残り三人がパーを出した。
「んじゃ、ゲーマー一人対オレたち三人だな。せいぜい頑張れよ」
「待てや」
仕切り直しである。
再びグーかパーを出す四人。
結果、ゲーマーがパーを出し、残り三人がグーを出した。
「よっしゃ決まりだな」
「決めんな。俺がぼっちのままじゃないか」
その後もグーかパーを出し続ける四人だが、決まってゲーマーがぼっちになる。まるで何かの呪いでも受けているかのように、ゲーマーが常に一人になってしまう。
「このままでは話が進まん。一度ゲーマーを除外し、残り三人で分かれるぞ。二人と一人で分かれ、一人になった方がゲーマーと組む」
「そ、そうだね、そうしよっか……」
メガネの提案に中華も頷く。
「……でも、俺はずっと一人で違うもの出し続けているのに、三人は同じもの出し続けて、その三人だけになったら延々とグーかパーが三つ揃うようになるんじゃ」
結果、中華一人がグーを出し、残り二人がパーを出した。
「……皆さん俺になんか恨みでもあります?」
「ふむ……分からないな」
「そこはきっぱり『無い』と否定してほしかったです」
とりあえず、これでグループは決まった。
ゲーマー&中華VS不良&メガネのペアである。
まずは中華とメガネがデッキ作成を担当することに。
この二人が作ったデッキを使って、それぞれゲーマーと不良が戦ってもらう。
「デッキなんて作るの初めてだからなぁ。しかも初めてのデッキがネタデッキ。うまく作れると良いんだけど……」
「うまく作る必要はないんだよ中華。中華は自分のデッキが負けたら勝ちなんだから」
「あ、そっか。よーし、それなら好きなように作ってみるよ!」
ゲーマーからの言葉を受けて、デッキ作成に励む中華。
一方の不良は、淡々とデッキを作成するメガネを見て、苦い表情をしていた。
「コイツが作るネタデッキとか、何持たせられるか分かったモンじゃねぇ……。せめて、まともな勝負ができるデッキになることを祈るぜ……」
「安心しろ。頑張って作る」
「『頑張ってネタデッキを作る』って聞かされて安心できると思うか?」
その後、二人は無事にデッキを完成させた。
次回、いよいよ試合開始である。