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①特殊ルール解説

 ここは日本の九州北部。

 海に面した、とある地方都市。


 その街の中にある一つの家に、四人の青年たちが集っていた。

 彼らの名は、それぞれ「ゲーマー」、「不良」、「メガネ」、「中華」とする。


「よし、みんな集まったなー? 今回集まってもらったのは、ほかでもない。トレーディングカードゲームで遊ぼうと思ってさ」


 そう語るのはゲーマー少年。

 三度の飯と同じくらいテレビゲーム好き。テレビ以外のゲームも好き。

 今回のカードゲーム遊びの発起人で、比較的普通な喋り方をする。

 

「ったく、カード遊びだぁ? くだらねぇ、オレには遊んでるヒマなんかねぇんだ、トレーニングに戻らせてもらうぜ」


 そう言っていきなり帰ろうとするのは、不良少年。

 とにかく自分を鍛えて高めることに余念がない武闘派。

 双子というわけではないが、先のゲーマー少年と瓜二つの顔をしている。

 四人の中では、粗暴な口調が特徴である。


「まぁ待て不良。適度な休養もまた、鍛錬には必要不可欠。それを無視してトレーニングを続行するのはかえって効率が悪い。よって今日は休め」


 そう言って不良を止めるのは、メガネ青年。

 他の三人がそろって高校生である中、彼だけは21歳の年長者。

 一見すると真面目そうだが、実は一番フリーダム。

 ちょっと威厳ありそうな、漢字を多用する喋り方をする。


「そ、そうだよ不良! いいじゃん、カードゲーム楽しそうじゃん! たまにはみんなで遊ぼうよ!」


 少し気弱ながらもハキハキとしゃべる、中華少年。

 その名の通り、お隣の中国からやって来た留学生である。

 臆病な性格で、17歳にして身長は150センチしかない。

 服を着て二足歩行をする豆である。


「いまなんかすごく失礼なこと言われた気がするんだけど!?」


「そういうテメェらだって、さっきからオレのこと不良、不良って、ただの悪口じゃねぇか。だいたいなんで仮名で呼ばせるんだよ。オレたちにはちゃんとした名前あるじゃねぇか」


「見ず知らずな登場人物たちの名前を冒頭から四つも羅列するより、このように記号的にした方が覚えやすいのではないか、という理由らしい」


「なんだそりゃ。効果あんのか?」


「知らん」


「あぁ、そう……」


「はーい、それよりさっそく、今回遊ぶカードゲームのルールを説明するぞー」


 ゲーマーが声をかけ、集まった三人の視線が集まる。

 それを確認したゲーマーは、さっそく説明を始めた。


「今回遊ぶカードゲームには、ちょっとした特殊ルールを加えさせていただきます」


「特殊ルールだぁ?」


「うん。題して『考えうる限り最低最弱のクソデッキを作った奴が優勝』」


「……もう下らねぇ予感しかしてこねぇ……。帰っていいか……?」


「そう言うと思ったから、今回の集合場所をここ、お前んにしたんだよ」


「クソが」


 悪態をつく不良をよそに、ゲーマーは説明を続ける。

 この特殊ルールの内容は、以下の通り。


①まずこの四人を、二人と二人の二グループに分ける。


②グループ内の二人のうち、一人はデッキの構築を担当する。この時、デッキ構築者は、デッキを作成する際に以下の条件を満たさなければならない。

・なるべくネタ的に面白いデッキにする。

・そして、どんな相手であっても、敗北するようなデッキにする。


③デッキが完成したら、もう一方のグループが作成したデッキと対決する。この時、対決に()()()ほうが勝者となる。


 ……しかし、このルールだと、誰も彼もが負けるためのプレイングをすることは目に見えている。どっちのデッキの方が純粋に弱いのか、正確に測ることができなくなってしまう。


 そこで、次のルールである。


④対戦をするのは、グループ内のもう一人。デッキを作らなかった方の人間である。そして彼らは従来のルールの通り、対決に勝った方が勝者となる。


⑤対戦担当者は、相方が作ったデッキの内容を確認することはできない。実際に対決しながら、相方がどんなデッキを構築したか見極めなければならない。


 つまりこの特殊ルールは、できるだけ弱くて面白いデッキを作る人間と、そのデッキをどうにか駆使して勝たなければならない人間、二人がペアとなって戦うルールなのである。デッキ作成者は、自分のデッキが負けたら勝ち。そして対戦者は、シンプルに対決に勝てたら勝ち。


「……つまり、ペアなんて言いながら、身内も普通に敵じゃねぇか」


 呆れた風に呟く不良。

 しかし実際その通りである。

 ペアの二人のうち、どちらかは勝者になり、どちらかは敗者になる。

 ペアという体裁こそ取っているものの、これはほとんど個人戦になるだろう。


「どうだろう? 今までとはひと味違ったカードゲームができると思うんだけど」


 ゲーマーが皆に尋ねる。

 不良以外の二人は、おおむね好意的に受け止めてくれる。


「ふむ。俺は良いと思う。面白そうだ。カードゲームもご無沙汰だからな。たまには童心に帰るのも悪くない」


「ぼ、ボクもやってみたい! ニホンのトレーディングカードゲームで遊ぶの、興味あったんだ!」


「……ったく仕方ねぇな、人数合わせくらいにはなってやるよ……」


 何だかんだ言いながら、不良もちゃんと参加してくれることに。

 彼は粗暴な性格ではあるが、決して悪い人物ではない。



 特殊ルールの説明を終え、次は今回の対戦で使用するトレーディングカードゲームについての解説である。

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― 新着の感想 ―
[良い点] すごい。かんぺきなルールじゃないですか! 面白そうですね。ふふふ。 [一言] いつもどおり、ちりばめられたネタが最高でした。
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