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ライオンヘビ

作者: ワタハシ イキル

 小学校から帰ってきた娘がおかしなことを言った。

 「今日、帰ってくるときにライオンヘビを見たよ。」

 ライオンヘビ?なんだそれは、と思い

 「ライオンヘビ?」と聞き返した。

 「うん、なんかね、顔がライオンでね、体がヘビのやつが山の上にいたの。空を飛んでたよ。」


 顔がライオンで体がヘビ?それが空を飛んでた?何だそれは。なんのことを言っているのか全くわからないけど、見間違いか、もしくはただの子どもの子ども的発言だろう。とりあえず聞き流しておこう。

 「へー。それはすごいね。」

 「うん!」

 「でも、学校の帰りに山の近くを通ったらダメって言ったでしょ。」

 「通ってないよ、ちゃんと沙織ちゃんの家の前の道路を通って帰ってきたよ。」

 「ならいいんだけど。山には近づいちゃダメよ。」

 「わかってるよ。」


 近所にある小さな山には、木や草が生い茂っているだけでも危険なのに、さらに猪がいるときている、実際、道路に猪が降りてきているところを何度か見ている。だから、山に近づくなという注意をしてしすぎるということはない。


 「ちょっと外に出てライオンヘビを一緒に見ようよ。」

 「そのライオンヘビは、家の前からでも見えるの?」

 「うん、とっても大きいんだから」


 面倒だったが、そんなものはいない、と娘に言っても良かったのだが、とりあえず一緒に外に出ることにした。そんな奇妙な生き物はいないということを確認させて、真実を見せよう。


 2人で外に出て、山の方を見た。案の定、山の上にはというかこの世にはそんな生き物はおらず、

 「ライオンヘビいないね、家の中に戻ろうか。」と娘に言った。

 「あれ?さっきはいたのになあ、ライオンヘビ。」

 そう言いながら娘は、山の方を残念そうに見ていた。

 「お菓子でも食べよっか。今日スーパーでチョコレートを買ってきたの。」

 玄関のドアを開けながら、そう伝えた。喜ぶに違いないと思った。しかし、その時悪寒がした。身体中が鳥肌に占領されるのを感じた。


 そして、パッと娘を見ると、彼女は何故か喜んでおり

 「今の聞こえた?」と言ってきた。


 「今のって?」

 私は娘にそう返したが、娘は首をキョロキョロと動かしていた。

 そして、「いた!」と言った。顔は東の方角を向いていた。

 「ママ!あっちの方向を見て、ライオンヘビが飛んでるよ。」

 言われた方向を見たが、何もいない。住宅が数軒と空と雲。

 「どこ?何も見えないよ。」

 「あっちだよ、だんだん離れていってる。」そう言って、東の方を指さしてくれたが、何もいない。鳥も飛行機も見えない。

 娘には一体何が見えているんだ。それとも、見えているふりをしているのか。なんなんだライオンヘビって。少しイライラしてきた。


 「十分見れたでしょ。そろそろ家に入ろうか。」

 「こっちの方に来ないかなー、ライオンヘビ。このままだと見えなくなっちゃうよ。」

 もとから見えないんだけど、ライオンヘビ。そう思いながら、娘を家に入れようと思ったその時、背中のあたりに違和感を感じた。まただ。空気が凍ったような、世界が止まったような。不気味な気持ちを抱きながら、娘を見ると娘は目を輝かせていた。

 「大きな鳴き声だったね、ヴアオーって。」と娘が言った。

 「え?その、ライオンヘビが鳴いたの?」

 「うん、聞こえたでしょ、すっごい大きな声だったじゃない。」

 

 しばらくして、娘いわく「ライオンヘビは見えなくなった」とのことだったので家に入った。

 それにしても、不意に訪れたあの不安感はなんだったのだろうか。結局見ることの叶わなかったライオンヘビ、とやらの鳴き声によって引き起こされたようだけど。


 ソファーに座っている娘は、何事もなかったかのようにチョコレートを食べている。実際、娘は野良犬を見れたくらいに思っているのかもしれない。

 「チョコおいしー」


 次の日、朝のニュースを見ていると、あることが世間を騒がせていた。それは昨夜、急に体調が悪くなった人が続出した、というより子ども以外の大人が同時刻に同地域で、謎の鬱のようなものを感じたということだった。

 この現象は中部地方から関東地方に確認されており、またかなりの自殺者も出ていると見られており、警察も調査を進めている、とのことだった。何を調査するというのだろうか、警察官の中に子供がいればいいのだけれど。

 





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