大河ドラマで女主人公の人気が無い理由
このエッセイは女性を貶める意図は一切ございません。
「私の記憶では大河ドラマの女主人公で篤姫以外で高評価だった作品を知りません」
と、言い切ってこのエッセイを出発したかったのですが、ネットの大河ドラマの人気ランキングを見に行くと、意外なことに女主人公の大河ドラマは思ったより支持があり、いきなり持論が崩壊してしまいました。
イメージだけで話を進めてはいけないという典型例ですね。(;´д`)トホホ
しかし、私はいろんなところで女主人公の大河ドラマについての文句を聞きます。
どうしてなんでしょうか。
今回はそれについて考察していきたいと思います。
①歴史の改編や話の盛りすぎがひどい
これは女主人公に限った話ではありませんが、大河ドラマはあくまでも史実に基づいたフィクションです。分かりやすく言えば、歴史書である正史「三国志」と、京劇の台本である「三国志演義」との違いです。
一応史実に基づいてはいますが、エンターテインメントですから、過程は盛りに盛って面白おかしくします。赤壁の戦いでの諸葛孔明の活躍が有名でしょう。
男の主人公でもこの傾向が強いのに、女主人公となると歴史研究用の一次資料が極端に少ないので不明な点が多く、空白部分は空想と妄想で埋めなくてはなりません。
そして、作中の空想と妄想は「現代的価値観」に基づいて構成されるため、違和感が大きくなります。
これは、大河ドラマと言う構成上仕方ありません。
当時の価値観で空白部分を埋めてしまうと、現代人の共感は全く得られない人物になってしまいます。極端な例で言いますと「気に入らないから殺す」ぐらいの乗りで簡単に人を殺します。勿論反省はしません。むしろ正当な権利と主張するでしょう。
この感覚に関しては清水克行先生の「喧嘩両成敗の誕生」などお読みになると納得できるでしょう。あの中では笑われたから殺す、みたいな話がバンバン入っています。
男の価値観が中心ですが、男がこれだけ違えば女も当然、今の我々とは違うでしょう。
今度は共感を得るため現代的価値観で空白部分を埋めてしまうと、女主人公はタイムスリップした現代女性のようになってしまい、その作品の空気感から浮いてしまいます。
どちらにしても面白い作品にはならないでしょう。
②アクションが入れにくい
女性ですから数少ない例外を除いて、本人は合戦に出ることはありません。せいぜい籠城戦で立て籠もる側で登場するぐらいでしょう。
合戦シーンもチャンバラシーンもありません。
なんとか作品内にアクションを入れ込んでも、女主人公とは直接関係のないシーンになります。
これでは画面に動きが無いので地味になってしまい、淡々と物語が進んでいきます。これは面白くない。アクションの無い「マトリックス」を観ても楽しくも何ともありません。
「篤姫」が人気が出た理由の一つに、絢爛豪華な大奥の暮らしが描かれていたからと言われています。特に女性たちの目に鮮やかな衣装が圧巻だったのでしょう。
とにかく画面は派手にしないと観てはもらえない。女主人公はこれが難しいという事です。
③他人の功績を横取りする
実はこれが一番大きな理由ではないかと考えています。
大河ドラマでは大きな歴史の転換点が見どころになりますので、そのシーンで女主人公がどう関与したかが描かれます。
これが問題になります。
なぜなら、「A男さんが行った偉業は、実は裏ではB子さんの助けがあったからです」にしてしまうと、例えそれが歴史的事実であったとしてもA男さんの功績を一部奪ってしまうからです。
分かりやすく例えてみましょう。みんな大好きポイント計算。
A男さんの歴史功績が100ポイントだとします。
ところがB子さんがその中で20ポイントの功績に関わっていたとすると、A男さんの功績が80ポイントに下がって見えます。
実際には周辺の人も含めての功績になるはずなので、この指摘は的外れなのですが、作品の中ではB子さんが功績を横取りしているように見えてしまいます。
そして、我々視聴者は、凄い歴史上の人物だと思っていたA男さんの評価を下げられた上、功績20ポイントのB子さんの話を観る羽目になります。
面白いわけがありません。
だって、歴史功績が20ポイントの人物な訳ですから
これを避けるためには、B子さんはA男さんの歴史功績ポイントを120か、それ以上にすることが求められます。まさに、女主人公に求められるのは内助の功ということになります。
これは、男性の視聴者は楽しいかもしれませんが、女性の視聴者にはつまらないと感じるかもしれません。やはり人気は出ないかもしれません。
最後の手段はB子さん一人で100ポイント稼いでもらわなければなりません。
しかし残念ながら、お一人で織田信長や豊臣秀吉、坂本龍馬、伊達政宗のような濃いキャラと戦える人は心当たりがありません。
探せばいるかも知れませんが、逆に言うと探さないと出てきません。
大河ドラマは通説と言う共通認識に基づいて構成されていますので、それの無い埋もれた人物は、そもそもスタートラインに立てないという事です。
無理くり、そう言った人物を登場させようとすると、「凄い女優さん」「派手な画面」「面白い脚本」「時流に乗る」といった。大きな壁を全て突破しなければなりません。無理ゲーにもほどがあります。
やはり、大河ドラマでの女主人公は難しいと言わざるを得ません。
④誰ならいけるか
そうは言っても、毎回毎回、男の主人公ばかりでは面白くもありません。
ここからはどんな人なら主役を張れるか考察しましょう。
北政所 ねね。
言わずと知れた豊臣秀吉の正室。おねとも呼ばれる人ですね。
日本一のあげまん。内助の功とはこの方のためにある言葉でしょう。亭主を天下人にしてしまったわけですから。
周りの登場人物も文句なしの有名人たちばかり。
人柄も大変すばらしいく、この人を悪く言う話を聞いたことがありません。
まさにスーパーヒロイン。完璧すぎる。
安土城まで赴いて信長相手に秀吉の浮気癖についてさんざん愚痴を言うという、面白すぎるエピソードもお持ちです。この時、信長がどんな顔でこの話を聞いていたかと考えると楽しいですね。
この後、信長はねねに慰めの手紙を出し、その書状には公文書の証である天下布武の御朱印が押してあったとかなんとか。
これですよ。これ。
このエピソード何がいいかって「なんか信長。可愛い」ってなるところですよ。
ねね様は信長に愚痴を言うことで、私の中の信長の評価を上げている事なんですよね。そして、信長の功績を一切横取りしていません。
ねねを中心とした戦国オールスターの群像劇で作れば、ワンチャンあるような気がします。
藤原定子
一条天皇の皇后。
この人は平安時代の人です。個人的には一押しのお方です。
伝承では優れた両親の血を素直に受け継いだ、才色兼備のスーパーお嬢様。
しかも、旦那の一条帝とは幼馴染で仲良しとか、微笑ましいにもほどがあるじゃろ。
この人を主人公にすると何がいいかと言うと、才覚と名声では日本トップクラスながらも鼻持ちならない性格で悪目立ち、絶対メインヒロインになれない女。元祖炎上系エッセイスト、清少納言を無理なく出すことが出来るからです。(いや、やってみたら案外面白いかもしれませんけど、男女問わず嫌われそうな性格ですし・・・一周回ってありかも)
清少納言は定子の女房を務めていました。
いわば、定子と清少納言の二枚看板で作品が作れます。
定子は清少納言と対等に話せるほどの知性とセンスの持ち主で、その上で性格も朗らかで優しい。
更に、これまた日本史史上トップクラスにイメージの悪い藤原道長を敵役として登場させることが出来ます。主に道長が定子をいじめる、みたいな展開です。
道長てめぇ。
問題があるとすると、定子は享年24歳なんですよね。
あまりに早すぎる最後。この人で一年引っ張るのはなかなか難しいですね。
ただ、メインの脚本を日本でも屈指の文学作品「枕草子」で構成できるという、チート過ぎる作品になるでしょう。
オープニングタイトルで主演、監督、音響と続いて脚本の欄に清少納言と書いてあれば、大爆笑間違いなし。
「あんたの脚本かよ」とTVに向かって突っ込むでしょう。清少納言も天国で鼻高々でしょう。
華やかな宮廷絵巻として衣装や装飾を盛りに盛りまくれば、ワンチャンあるのではないでしょうか。
ああ、もう少し長生きして下されば、紫式部との関わりも描けて、最強のヒロインになったでしょうに。美人薄命。惜しい。惜しすぎます。
いかがで、ございましょうか。
大河ドラマでの女主人公は中々ハードルが高いですが、作り方によっては面白くできるはずです。是非とも楽しい大河ドラマを作って下せえまし。
終わり
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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