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推しの愛しの幻想曲  作者: 雪斗
32/54

悲壮な決意

拙い作品ですがご容赦を。

牢の中は酷く冷たかった。


心も体も何もかも冷たくなってしまった咲は涙が止まらない。

ただ、アルトと共に生きたいだけなのに。

どうして、みんな邪魔をするの。


咲の啜り泣く声が暗い牢の中に響いた。
















セキは茶を飲むと、苛立たしげに将軍を見やった。


「将軍、あの者をすぐに牢から出すのじゃ。」

「なりません……我らが女王。」


その言葉にセキは不愉快げに眉を寄せた。


「妾の……この女王の言葉を無視するのか?」

「臣下たちの総意でございます、女王。私共の意見をお聞き入れ下さい……あの者はその力を使い……」

「黙らぬか!」


セキが机をバンと叩き立ち上がった。

女王の怒気によって、将軍の額に冷や汗が流れる。

トゥレスの女王はこの国最強の武人。

彼女を本気で怒らせれば、止めれる者など存在しない。

だが、それでも将軍は引かない。


「我らが女王よ……私はこの国を思うておるのです。今回、貴方は人間共に情を移し過ぎた……ですから、戦犯共の裁判は女王の弟君がなされます。」

「勝手に何を申しておるのじゃ!妾はこの国の……」


次の瞬間、そう言葉を発しようとするセキの体がぐらりと傾いだ。

将軍は強力な薬によって意識を失ったセキの体を支えるとゆっくりと椅子に下ろした。


「申し訳ありません、女王。全ては我が国の為なのです……死は覚悟の上……貴方の怒りは後で存分に受けますので。」


そういうと将軍は部屋を後にした。

そして、部屋の外にいた部下に指令を出す。


「急ぎ戦犯の裁判を始める。はじめにあの娘を審議の間へ連れてこい。」


そう言って、将軍は廊下を歩いていった。
















咲は牢から出されると乱暴に兵士に掴まれ、大勢の人々が集まる広い場所に連行されると、強引に床に膝をつかされた。

肩を掴む兵士の手の力が強くて痛い。


そこには大勢の獣人が集まっており皆、咲に不躾な視線を送っていた。

そして中央の一段高い場所に一際偉そうな獣人が座ると咲を蔑む様に見た。

そして、その獣人が高らかに宣言した。


「これより戦犯の裁判を開始する。」


裁判?ハッ何を言っている。

咲は悔しげに唇を噛んだ。


こんなもの裁判なんて言わない。

これは唯の人間の見せ物だ。

堕ちてゆく様を見たいだけの下郎共が。

私は堕ちない、絶対に。


そして、咲はある決意を固めた。

悲しい決意を。


「……アルト……ごめんね。」


私、貴方と一緒に生きられそうにないわ。

……今までありがとう。


咲は凛とした表情で真っ直ぐ前を見つめた。



もはや、これは裁判ではありません。

本当に見せ物です。

だから、裁判じゃないという突っ込みはご勘弁を。

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