少女漫画の中の世界
拙いですが、楽しんで頂けたら幸いです。
これは俗にいう異世界転生なのではないか。
咲は座り込んで考えていた。
因みに胡座スタイルである。
転生ということは死んだのだろうかと思うが、咲は首を捻る。
死んだ記憶なんてものは欠片もないのだが。
だが、そんな曖昧な事とは違い一つだけ決定的な事があった。
それは、この世界が元の世界とは別世界であるということだ。
何故なら、元の世界では見たこともない様な配色の花や大きな虫が存在しているからである。
ーー殺虫剤欲しい、切に。
そうして、考え込んだ先に出た結論が『異世界転生』なのであった。
はっきり言って結論も意味不明だが、仕方が無い。
咲は立ち上がると服に着いた砂を払った。
因みに服装は高級そうな純白のドレスだ。
首には紫の宝石がついたチョーカーが付いている。
今の咲を見知らぬ人間が見れば、天使だと錯覚してしまうかもしれない、いやするだろう。
そんな事は露知らず、咲がこの服に気づいた時に最初に抱いた感想は『動きにくい』であった。
「森の中で汚れやすい真っ白なドレスってどうかと思う。しかも動きにくい。」
誰へともなくそう呟くと咲は何となくで歩き始めた。
突然の事で未だ理解は追いついていないが、生きるためには人がいる所に行かなくては。
その為には歩かなくてはいけない。
咲は先の見えない不安から重い足取りで森の中でを進んで行った。
どれ程歩いただろうか
日が暮れそうな中、ようやく何処かの都の喧騒が聞こえてきた。
咲はほっと肩を撫で下ろすと歩く速度を速めた。
そうして、咲は何とか都?らしき所に到着したのだった。
今現在、咲は非常に居心地が悪かった。
何故って?
人々の不躾な視線が突き刺さるからだ。
まぁ、変な輩に絡まれないだけマシかもしれないが。
だがお陰でこの都のことを聞こうと声をかけに行くと、避けられる始末だ。
「それも、これも元はと言えばこの顔と服のせいだ!」
咲は最初はぶつぶつ文句を言いながら歩いていたが、色々と周りを見て歩くうちに既視感に襲われ始めた。
……この都見た事がある。
そして咲がだんだんと近づいてくる城をはっきりと認識した時、頭の中のもやが霧散して自然と足が止まった。
「………ここは」
此処はレイスティア王国の首都アルティオ。
この世界はあの少女漫画の中の世界だ。
「……どうして?」
そう気づいた時、もう限界だった。
張り詰めていた糸がぷつんと音を立てて切れてしまった。
変わってしまった容姿、変わってしまった世界。
この世界で私に何をしろと言うのだ。
いくら憧れた世界でも、知り合いも家も……何も持たない世界で生きたいとは思わない。
不意に強い孤独を感じ、咲の涙から一筋の涙が溢れた。
そうして涙が止めどなく溢れそうになった時、後ろから大きな怒声と鞭で何かを叩く音が聞こえ、咲は驚き涙を拭いて振り返った。
そこには蹲る薄汚い一人の黒髪の少年と鞭を持った傲慢そうな大男がいた。
次回も読んでくれると嬉しいです。