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推しの愛しの幻想曲  作者: 雪斗
29/54

再会

少し短いです。

負傷者の数は多く、咲は毎日力を使い果たしていた。

それに、治しても治しても戦争によって増えていく負傷者の数に、精神的にも限界が来ていた。


夜の風が冷たい。

咲は疲れ切った体を叱咤し外に出てきていた。

心も体も重い。

もう、限界だと思うけど諦める訳にはいかないし、シアにそんな事言うなんて癪だ。


そんな事を考えていたが、突如として人々の声と金属がぶつかり合う音が聞こえてきた。


「敵襲だぞー!」


その声に咲は我に返った。

今まで、本拠地を攻められるなんて事無かったのに。

咲は逃げようとしたが、焦って転んでしまった。

その時に運悪く頭を地面に強くぶつけて、意識を失ってしまった。














「……う、ん」

「よう、目覚めたかい。お嬢ちゃん。」


咲は目覚めて目に入ってきた光景に目を見開いた。

そこには犬耳をつけた二人のおっさんがいた。

暫しフリーズした咲だったが、対戦国が獣人の国だと思い出し青褪めた。


私は敵国の兵士に捕まってしまったのか。

助けを呼ぼうとするが猿轡をされていて声が出せない。


敵国の二人の兵士は舐めるような気持ち悪い視線を咲に向ける。


「こりゃ、ものスゲー上玉だ」

「俺たちゃ運がいいなぁ。こんな男臭い戦場でこんないい女に出会えたんだからよう。」


恐怖と悍ましさのあまり、咲の目に涙が浮かぶ

嫌だ、やめて。


男たちが咲の服に手をかける。


アルト、助けて!

咲の目から涙が溢れ落ちた瞬間。


二人の男が突如ふっとばされた。

咲は未知の恐怖に体を竦ませていたが、その男たちを吹っ飛ばした人物を見て、目を見開く。


そこには焦がれ続けた愛しい人の姿が。

愛しくて愛しくて堪らない、私の全てが。


その青年は咲から猿轡を取ると、勢いよく咲を抱きしめた。

咲も強くその青年を抱きしめ返した。


「私っ……ずっとずっと待っていたのよ……アルト、会いたかった……」

「咲!咲!すみません。怖い思いをさせて。でも、もう私が貴方の傍から離れません。どんな危険からも貴方を守ります。」


アルトは咲の頬に手を添えると啄むようなキスを繰り返した。

咲は幸せを感じながらアルトに応えた。


その夜二人は共に寄り添いあうようにして眠りについた。



もう少しで、終わります。

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