再会
少し短いです。
負傷者の数は多く、咲は毎日力を使い果たしていた。
それに、治しても治しても戦争によって増えていく負傷者の数に、精神的にも限界が来ていた。
夜の風が冷たい。
咲は疲れ切った体を叱咤し外に出てきていた。
心も体も重い。
もう、限界だと思うけど諦める訳にはいかないし、シアにそんな事言うなんて癪だ。
そんな事を考えていたが、突如として人々の声と金属がぶつかり合う音が聞こえてきた。
「敵襲だぞー!」
その声に咲は我に返った。
今まで、本拠地を攻められるなんて事無かったのに。
咲は逃げようとしたが、焦って転んでしまった。
その時に運悪く頭を地面に強くぶつけて、意識を失ってしまった。
「……う、ん」
「よう、目覚めたかい。お嬢ちゃん。」
咲は目覚めて目に入ってきた光景に目を見開いた。
そこには犬耳をつけた二人のおっさんがいた。
暫しフリーズした咲だったが、対戦国が獣人の国だと思い出し青褪めた。
私は敵国の兵士に捕まってしまったのか。
助けを呼ぼうとするが猿轡をされていて声が出せない。
敵国の二人の兵士は舐めるような気持ち悪い視線を咲に向ける。
「こりゃ、ものスゲー上玉だ」
「俺たちゃ運がいいなぁ。こんな男臭い戦場でこんないい女に出会えたんだからよう。」
恐怖と悍ましさのあまり、咲の目に涙が浮かぶ
嫌だ、やめて。
男たちが咲の服に手をかける。
アルト、助けて!
咲の目から涙が溢れ落ちた瞬間。
二人の男が突如ふっとばされた。
咲は未知の恐怖に体を竦ませていたが、その男たちを吹っ飛ばした人物を見て、目を見開く。
そこには焦がれ続けた愛しい人の姿が。
愛しくて愛しくて堪らない、私の全てが。
その青年は咲から猿轡を取ると、勢いよく咲を抱きしめた。
咲も強くその青年を抱きしめ返した。
「私っ……ずっとずっと待っていたのよ……アルト、会いたかった……」
「咲!咲!すみません。怖い思いをさせて。でも、もう私が貴方の傍から離れません。どんな危険からも貴方を守ります。」
アルトは咲の頬に手を添えると啄むようなキスを繰り返した。
咲は幸せを感じながらアルトに応えた。
その夜二人は共に寄り添いあうようにして眠りについた。
もう少しで、終わります。




