花嫁
絶対にそんなのあり得ないと思っても見過ごして頂けたら幸いです。
楽しんで貰えたら嬉しいです。
聞き間違いだ。
絶対聞き間違いだ!
そんな咲の心情を悟ったのか、シアはニンマリ笑うと再び言い放った。
「どうかしたのか?我が花嫁。」
……聞き間違いじゃなかった。
咲は内心動揺しながらもそれを押し隠した。
「私はあなたの花嫁じゃないわ!それにいい加減、この手を離して。」
シアは咲の顎から手を離したが、視線は合わせたままだ。
「お前は一年後、俺の妻……つまりこの国の王妃となる。」
その言葉に咲は驚き目を見開いたが、またすぐに鋭い視線を送った。
「そんなの、嘘よ!そんな事ありえない!」
その言葉をシアは鼻で笑った。
「俺が嘘をつくと思うか?」
「私は貴族でも何でもないわ!こんな私を王妃になんて他の人が認めるわけない!」
咲は食ってかかったが、内心焦っていた。
好きでもない人と結婚?冗談じゃないわ!
それでも、シアの余裕な態度は崩れない。
「貴族で無くとも天使である。その事実だけで充分だ。聖属性魔法が使える、女神に愛された人間。それだけで、この婚姻に反対するものなどいない。反対するという事は、女神を否定すると同意。そんな危険を犯してまで反対する馬鹿はいない。」
咲は絶句した。
一国の王の婚姻がそんなに軽くていいのか。
「でも……私はあなたを愛していない。愛していない者どうしで結婚しても……不幸せになるだけよ。」
咲は目を伏せた。
私が愛するのはあの人だけ。
……アルト、あなただけなの。
「……私はお前を愛している。」
その言葉に咲は驚いてシアを見つめた。
「そんな筈ない……そんな筈……もし、それが本当だとしても、私はあなたを愛していない!」
もし、本当に私を愛しているとしても、シアは愛し方が間違っている。
咲には分からなかった。
シアの心が。
……どうして、そんな切なげに見つめてくるのかも。
咲の目から涙が溢れる。
シアはそれを見ると目を伏せた。
「もういい……戻れ。」
咲は逃げ出すように部屋を後にした。
咲は自分の部屋に戻ると、ベットに突っ伏した。
涙が溢れて止まらない。
私のせいで変わってしまった、この国の歴史。
追われて、死ぬ羽目になった人々。
天使だという事。
私がシアと結婚するという事。
シアが私を好きなのだという事。
……アルトと離れ離れになってしまったという事。
全部の現実が辛い。
今すぐ、全部捨てて逃げ出してしまいたい。
でも、アルトが危険に晒されると思うと絶対にそんな事出来ない。
「何処で、何を間違えたのだろう。」
私がシアを救った事だろうか。
あの時、見殺しにしていれば良かったのか。
でも、そんな事絶対に出来ない。
……どうしていれば幸せになれたんだろう。
「……アルト、あなたに会いたい。」
届かぬ願いと知りながら、咲はアルトに想いを馳せた。
次回も読んでくれると嬉しいです。




