美少女に変身
少女漫画のタイトルが中々決まらないです。
良い案があったら教えて欲しいです!
腹部からの出血が止まらない。
私は、このまま死ぬのだろうか。
『アルト!駄目よ、死んでは駄目よ!』
愛しい人の声が聞こえて、私は視線を上に向けた。
そこには美しい碧の瞳を涙で濡らした主人の姿が。
嗚呼、どうか泣かないで。
貴方には笑顔が似合うよ。
そう言いたいけれど声が出ないから、代わりに震える手で彼女の涙を拭った。
命が生の隙間から砂のようにさらさらと零れ落ちて、死の足音が間近に聞こえる。
私に抱きつき泣きじゃくる彼女の頬に手を添えて、ゆっくりと目を閉じる。
掌に愛しい人の温もりが感じられる。
それだけで、私は幸せだと思った。
死が恐ろしいと思ったことはない。
だけど、だけれど……最後に愛していると伝えたかった。
決して振り向いては貰えなかったけれど、思いを伝えたかった。
そして、願わくばこんな私だけを愛してくれる人に出逢いたかった。
酷く悲しい夢に魘され咲は起きたのだが、目に飛び込んで来る眩しい陽の光に思わず両手で目を押さえた。
いつもの部屋の明るさとは比べ物にならない眩しさに咲は身悶え、混乱した。
「あれ……私、漫画本持ったまま自分の部屋で微睡んでいた筈なんだけど……どうして、こんなにも眩しいの?」
視界が白く焼き尽くされる様な感覚が収まると、咲は恐る恐る目を見開き、そして絶句した。
「………………此処どこ?」
咲の目の前に広がるのは瑞々しい若葉を付けた木々に色鮮やかな花々、そして陽の光を反射してキラキラと輝く澄んだ湖。
夢のように幻想的で美しいが、夢にしては匂いや感覚が現実的だ。
ーー別世界。
咲はそう感じた。
暫しの間その桃源郷の様な美しさに見惚れていたが、そんな場合ではないと頭を振った時、視界に銀の髪が目に入った。
「……へ?」
思わず間抜けな声が漏れた咲だったが、恐る恐る自分の髪の毛を摘んで見た。
……それはそれは見事な銀髪だった。
……絹糸にも勝るさらさらな銀髪。
……銀髪。
驚きすぎて声が出ない咲は口をぱくぱくさせていた。
だって銀。
元々、黒髪だった咲には縁が無さすぎて恐ろしさすら感じさせる。
どのくらいそうして間抜け面をしていたのだろう。
咲はなんとか我に返るとその場にへたり込んだ。
色々状況が飲み込めない。
場所の変化、自身の……もしかしたらまだ何か変わったところがあるかもしれない。
咲はふらふらと立ち上がると湖に向かって歩いていった。
こうなったら、湖に自分の今の姿を映してやる。
もう何だって来いだ!
咲は半ばやけくそであった。
そして意を決して湖に自分の姿を映したが、咲は目を剥いて固まってしまった、驚きすぎて。
「………………誰?この美少女。」
そこに映ったのは絶世の美少女であった。
エメラルドを嵌め込んだ様な美しい緑の瞳を持つ目は大きく、整った鼻梁に薔薇色の頬、そして血の様に濃い紅い唇。
更にそれらのパーツは小さい顔に完璧に配置されている。
類なき白皙の美少女がそこには居た。
先程の銀髪発見の時より衝撃が大きく、咲は放心状態であった。
湖を見ながら美少女は間抜けな表情をしていても美しいのだと、どうでもよいことが脳裏を過ぎる。
再び何とか我に返った咲は頬を抓った。
「……痛い。」
痛いし、湖に映る少女も頬を抓っている。
咲はため息を吐くと肩を落とした。
認めなければならない。
この美少女が私なのだと。
そして声を大にして言いたい。
「意味がわからなぁぁぁぁぁぁぁい」
咲の叫びは森の中を反響していった。
次も読んでくれると嬉しいです。