妹の怒り
「大丈夫か菜乃葉!?」
菜乃葉から届いたSOSに急いで駆け付けた悠斗。
電話をかけてもつながらず、学校中を走り回りようやく菜乃葉を見つけることができた。
「兄さん? どうしたんですかそんな慌てて」
「え?」
菜乃葉がいたのは食堂の隅で、この混雑した人ごみに紛れて悠斗は見つけるのに時間がかかった。
ただ、見つけたのはいいものの、当の本人は状況が全く理解できていないよう。
「おお、これは外見だけじゃなくて中身もイケメンだな」
そんなつぶやくような声が悠斗の耳に届く。
「どういうことだ?」
全く状況を理解できない秀刀兄妹。
「ちょっと試させてもらいました」
「試すって、俺を? 」
「そうです。私の親友のお兄さんがしっかりした人かを」
腕を組み、どこか偉そうに外崎が言う。
「なんだよそれ」
焦って損したと、悠斗はガックリと膝に手をつく。
「まあ、私が想像してたより何倍も良いお兄さんっぽくて安心しましたよ」
「それなら良いんだけど」
「ちょっと春歌。 こっち来て」
と、呼ばれて振り向いた外崎は菜乃葉から出る怒りのオーラに冷や汗が止まらなくなる。
「な、菜乃葉さん、お、怒ってるの?」
震えた声で、恐る恐る聞いてみる。
「いいから、こっちに来て」
その笑顔はとても怖く、いつもの菜乃葉からは想像もつかない。
菜乃葉に引っ張られるように外崎は階段を降っていく。
それを見送ることしかできない悠斗は、ただただ外崎が無事でいることを祈ることしかできなかった。
* * * *
外崎が菜乃葉に連れ去られてから五分が経った頃だろうか。
心なしか、どこかやつれているように見える外崎と菜乃葉が帰ってきた。
「こ、怖かった」
絶望に満ちた声と表情で外崎が呟く。
「い、一体何をしたんだい菜乃葉は」
悠斗は菜乃葉に聞く。
「兄さんには、関係がないことです」
ニコニコの笑顔で答えるが目は笑っていない。
「そ、そうですか」
菜乃葉から感じる圧に思わず敬語になってしまう悠斗。
「それじゃあ、私たちは教室に戻ります。 兄さん、付き合ってくれてありがとうございました」
外崎の手首をガッシリ掴みながら、菜乃葉は言う。
「いや、別に俺は良いんだけど」
それよりも外崎の方が心配な悠斗。
そう、悠斗は知っている。本気で怒った時の菜乃葉の恐ろしさを。
故に悠斗の額には冷や汗が流れている。
「じゃあ、さようなら兄さん」
体を震わせながら菜乃葉と共に去っていく外崎を、どうか無事でと見送ることしかできない悠斗。
二人の姿が見えなくなったその時、ピンポンパンポンと校内放送が流れる。
「二年、秀刀悠斗さん。至急生徒会室までお越し下さい」
その声の持ち主は、黒綾瑞樹だった。
お久しぶりです。




