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嘘と本当

 それは、朝の屋上。

 そこで、神里藍莉と黒綾瑞希は相対していた。

 爽やかな朝だとは到底思えない、殺伐とした空気。

 ただでさえ怖い藍莉の目つきは、より一層殺気を立てて瑞希を睨む。

 瑞希は相変わらずの余裕と笑みで藍莉を見つめる。


「それで、何のようかな」


 最初に口を開いたのは瑞希だった。

 その一瞬。瑞希の目つきが変わる。

 敵を見るような、藍莉に劣らないほどの殺気だった目つき。

 ただ、藍莉は怯まない。


「本当は分かってるんでしょ? どうですか。偽の恋人体験は」


「何が言いたい」


「じゃあ、単刀直入に言いますが。悠斗を騙すのはやめてもらえませんか?」


「騙す? 私がいつ彼を騙したって言うんだ」


「あまり()()をなめない方が良いですよ? 先輩ってもう家の後継ぐの決まってるじゃないですか」


 瑞希はその笑みを崩す事はなかった。

 ただ、その奥には動揺が見える。ただ、それには誰も気づかない。

 それだけの演技力。


「それに、そもそもお見合いも組まれてすらありませんでしたし」


 その言葉に、瑞希がその重い口を開こうとしたときだった。

 入り口の方から、呑気な声と共に一人の少年が入ってくる。


 それは、本当に偶然だった。

 別に、誰かがこの場所に呼んだわけでもない。

 これこそ、運命の悪戯とでも言うのだろうか。


「なんで俺は男の友達がいないんだろうなー」


 なんて言いながら、その屋上に姿を現したのは秀刀悠斗だった。

 彼としては、本当に気まぐれ。授業をサボろうかと思って、屋上にまで上ってきた。


「って、何してるんですか二人は」


 言って悠斗は、真前で相対する二人を見て驚きの表情を浮かべる。


「なに、ちょっと君のことについて情報をもらってただけだ」


 ごまかしてるようには見えない、完璧な演技で瑞希はその場を乗り切ろうとする。

 ただ、藍莉はそれには乗らない。


「ねえ悠斗。あんた騙されてるよ」


「騙されてる? 何にだよ」


 悠斗の表情は真剣なものに変わる。

 これが、大事な話だと言うことを察したからだ。


「この女」


 言って、藍莉は瑞希を指差した。


「先輩が? 俺を騙してる?」


 一応、聞き返してはいるが悠斗には動揺が感じられない。

 いたって冷静に。まるで、全部知っていたと言わんばかりの顔を浮かべる。


「そうだよ。悠斗は騙されてこの女の偽の恋人をやらされてるんだよ!」


「そうなんですか?」


 悠斗は瑞希の方に顔を向けながら言う。

 ただ、瑞希はそれに答えることが出来ない。

 前を見ることすらできず、顔を上げることすらできず、ただ俯いている。

 それが、藍莉の言っていることが本当だってことを、悠斗に伝えることになる。


「どうするのよ悠斗は。騙されてるって分かっても、まだこの女の偽の恋人であり続けるの?」


「それは、俺が決めることじゃない」


「は?どういうこと?」


 正直、藍莉は勝ちを確信していた。

 ここで、黒綾瑞希の嘘を暴けば悠斗からの瑞希に対する信頼が無くなる。

 そう思っていた。

 でも、違った。


「別に、先輩がどんな嘘をついてたのか知らないけど。俺は先輩の恋人のフリをする事を一回了承した。だから、俺には責任がある。そんな嘘一つくらいで、投げ出すような無責任な事はしない。いや、したくない」


 その言葉は、瑞希の心を一気に蘇らせた。

 嘘をついた事は悪い事。

 それは、悠斗にも分かっている。でも、悠斗は信じていた。

 先輩が、嘘をついていた事には理由がある。

 恐らく、言いづらい事情をごまかすための建前だったんだろうと。

 

「そうね。あんたは、そういう人だったね」


 藍莉は呆れたような、見直したような口調で呟く。

 

「それで、あんたはどうするの?」


 藍莉の言葉は、瑞希に向けられたもの。

 ただ、何も言わずにただ俯いている瑞希に。


「ごめん」


 そう呟いた。俯いたまま。

 そして、その顔を上げて瑞希は言った。


「私はもう、変な手は使わない。これからは、正々堂々と戦ってやる」


 言って、瑞希は悠斗の方にゆっくりと歩き出す。


「戦う? なにを言ってるんですか先輩」


 瞬間だった。

 悠斗は、瑞希に腕をガッと掴まれると、そのまま引き寄せられる。

 そして、そのまま瑞希の唇が悠斗の頬に触れた。


「なっ!?!?」


 藍莉の驚いた声が聞こえたのと同時に、瑞希は心に秘めるありったけの思いを口にした。


「私は……秀刀悠斗のことが好きだ! 大好きだ!」


 瞬間流れる沈黙。

 悠斗は唖然としてその場から動けずにいる。

 そして、30秒くらい間が空いたところで。


「「えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!?」」


 二人の声は屋上の空へと響き渡る。

 

 

  

 

 



 

黒綾瑞希キャラ崩壊の予感

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