菜乃葉の友達
次の日の朝、いつもは別々で学校へと行く二人も、今日は一緒に投稿する。
その光景は、義理の兄妹が故に兄妹らしくなく。
まるで、先輩彼氏と後輩彼女のような雰囲気を醸し出している。
だからこそ、誰もその領域に足を踏み入れることが出来ず。
悠斗や菜乃葉に噂のことについて聞いてくるものはいない。
「な。大丈夫だろ?」
「そ、そうですけど……。こうなると、普段の兄さんの学校生活が心配です」
「痛いところを突いてくるな……。俺は大丈夫だから安心しろ。楽しく青春の日々を送っているよ」
「本当ですか?」
菜乃葉から悠斗に向けられる、疑いの眼差し。
ただ、妹を心配させるわけにはいかないと、悠斗は笑顔を見せる。
「本当だ。楽しいよ。まあ、友達もいるしさ」
悠斗は頭の中で自分の友達を数えてみる。
平沢涼香。黒綾瑞希。愛倉悠輝。神里藍莉。まあ、一応と香椎美穂。
片手で足りてしまった。
「大丈夫だ。安心しろ、友達ってのは数じゃない。それぞれの熱い絆が大事なんだ……」
自分に言い聞かせるように、自分を慰めるように悠斗は呟く。
その声は、菜乃葉には届かない。
「それでは兄さん。私はこっちなので」
「そっか。じゃあ、また休み時間に」
言って悠斗は階段を上っていく。
そして、菜乃葉は一人になる。
という事は、菜乃葉を守るものが居なくなったということ。
案の定、菜乃葉が自分の机に座った途端。
一人の女子生徒が近づいてきた。
「兄さんは、案外お馬鹿さんなのかもしれませんね」
菜乃葉は呆れたように呟く。
「ねえねえ、今の秀刀先輩でしょ? 本当に兄妹なんだね」
その子は、普段から菜乃葉と仲良くしている女子生徒の外崎春歌。
菜乃葉の対面に立ち、机に両手を突いて前のめりに菜乃葉に話しかける。
「別に、そこであなたに嘘をつく必要はないでしょ」
信じてなかったんかいと少し不機嫌気味になりながらも、菜乃葉はカバンから荷物を出しながら答える。
流石に、同年代と喋るときは敬語ではないようだ。
「そうだけどさ。なんか、あんまり似てないような気がするし」
「まあ、血は繋がってないからね」
菜乃葉はその言葉を自然に口にした。
まるで流れるように、意識してなければ聞き逃してしまいそうなように。
「え、まじで?」
外崎は、驚きすぎて逆になんのリアクションも出来ないという感じの表情を浮かべる。
「え、言ってなかったっけ?」
「言ってねーわ!え、いや、そう言われればそうだと納得できるけど!」
「ちょ、うるさい春歌」
「ご、ごめん。でも、義理の兄妹か」
言って、外崎は菜乃葉に意味深な笑顔を向ける。
「な、なに?」
「通りで、兄妹じゃなくて恋人に見えたわけだ」
「こ……恋人!?」
一瞬で菜乃葉の頬は赤く染まる。
それどころか、カバンから取り出した筆箱をあたふたしながら机まで運んでいる。
運が悪かったと言うべきか、外崎はとても敏感な人だった。
「もしかして、菜乃葉の好きな人って」
続きを言おうとしたところで菜乃葉が外崎の口を塞ぐ。
「言ったら殺す」
「わ、わかったから、言わないから離して〜」
もごもごした声で外崎は訴える。
それを見て、菜乃葉は我に帰って慌てて塞いでた口から手を離す。
「ご、ごめん」
「いや、私の方こそごめん。勢いで言っちゃいそうだったよ」
「それと、その事は誰にも言わないでよ」
モジモジと頬を赤らめながら菜乃葉は言った。
それを見て、外崎は穏やかな笑みを見せる。
「オーケー。誰にも言わないよ。約束」
そして、二人は小指を重ねた。
同時に、菜乃葉には外崎春歌という味方ができた。
一方その頃、悠斗はというと。
今世紀最大の修羅場に遭遇していたのであった。




