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噂は高校生の大好物

 恋人のように腕を組み、悠斗が連れてこられたのは生徒会室だった。

 生徒会室の中に入ると、瑞希は組んでる腕を離し、生徒会長と札が立たれた豪華な机の椅子に腰をかける。


「それで、ここに俺を連れてきた理由は何ですか」


「いやまあ、一応大丈夫かと聞いておこうと思ってだな」


「大丈夫? 何がですか?」


「いや、色々と噂になっているだろ」


「噂?」


「もしかして、知らないのか?」


 キョトンとする悠斗を見て、瑞希は嘘だろと目をまん丸にする。

 しょうがない。悠斗には友達がいないんだ。

 故に、噂を聞こうにも聞くことができない。


「いや、最近周りから変な視線を向けられるなとは思ってましたけど」


「まあいい。噂というのはだな、私と君が恋人同士だという噂だ」


「はぁ。やっぱりそうですか」


「やっぱりって分かってたのか?」


 あまりに冷静に対応する悠斗を見て、逆に瑞希が少し慌ててしまう。


「いや、正直分かり切っていましたし、こんな噂が経つのは。それも承知で俺は恋人のフリをやったんですから」


「そうか。何だか、頼もしいな」


「そうですか? まあ、そうあろうと努力はしてますよ。フリとはいえ、一応恋人な訳ですし」


 その時悠斗が見せた、照れ隠しのような笑顔に、瑞希のハートは見事に撃ち抜かれてしまう。

 その見た目や立ち振る舞いとは裏腹に、あまりにちょろすぎる瑞希。

 もはや、ヒロインではなくチョロインと言っても差し支えないかもしれない。

 まあ、今回は本人の威厳を保つために、心の中は覗かないでおこう。


「好き」


 思わず呟いてしまった。

 思わず口に出してしまった。


「なんか言いました? 先輩」


 やっぱり。悠斗には聞こえていなかった。

 いやまあ、今のはしょうがないと言っておこう。

 悠斗は照れ隠しで頭がいっぱいだったし、瑞希との距離もある。

 それに、普通の人が普通の状況でも、今のは聞こえたかどうか怪しい。

 そのくらいの、声の大きさだった。


 聞かれてなかったと安心する瑞希は、気を取り直すように一度咳をしてから言う。


「いや別に、何も言っていないぞ」


「そうですか。ならいいんですけど」


「そ、それじゃあ、きみは自分の教室へ戻ると良い。そろそろ授業も始まるし、こんな所に二人きりでいるのが知られたら、それこそ噂が大好物の高校生の思う壺だ」


 言って瑞希は、悠斗の背中を押しながら生徒会室から出ていくように促す。

 

「え、ちょ、分かりましたから、押さないでくださいよ」


「黒綾家では、押すなと言われれば押すと言うのが教訓なんだよ」


「何ですかそれ。黒綾家の先祖ってダチョウなんですか!?」


 その言葉を残し、悠斗は瑞希に押されて生徒会室の外へと放り出される。

 そして、一人残った瑞希は、生徒会室のドアへと寄りかかり、高鳴る胸を押さえながらスルスルと座り込む。


 そして、ちゃんと扉が閉まってることを確認したあと。


「か、カッコ良すぎるううううううう!」


 そう叫んだ。

生徒会室は防音です。と言うことにしておきましょう。

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