秀刀菜乃葉
私、秀刀菜乃葉は今、恋をしています。
でも、その恋は、本来してはいけない恋なのです。
義理とはいえ。私は家族である、兄に恋をしてしまいました。
私と兄が出会ったのは去年の冬。
再婚したと母親に言われ、連れて行かれた家に兄は居ました。
正直言って、一目惚れです。
カッコいい人だと、私は思いました。
ただ、そんな簡単に仲良くなれる訳もなく。
「あ、あの、これからよろしくお願いします」
お互いが初対面の玄関。
私は緊張を押し殺して挨拶をしました。
「よろしく」
その声に、私は驚いてしまいました。
感情が全くこもっていない、ロボットのような声。
まるで、マニュアル通りに接客するバイトの人みたいでした。
そして、兄さんは自分の部屋に戻って行ってしまいました。
私たちに笑顔を見せることもなく。
「す、すいませんね」
階段を上っていく後ろ姿を見ながら、新しいお父さんは申し訳なさそうに言いました。
これが、私と兄さんの出会いです。
そして、私の初恋の瞬間です。
確かに、その時の兄さんはとても怖かったですが、なんでしょうか。
その奥にある、本来の優しさというものを、兄さんは隠し切れていませんでした。
そこに、私は心惹かれた。
でも、私と兄さんの間には、家族という見えない壁がある。
その壁が、私の感情を兄さんから隠して、私の本心を塞ぐ。
最初は、兄さんの隣にいるだけで満足できている自分がいた。
別に、付き合うとか、結婚とかなくたって、私と兄さんは家族という絆で永遠に結ばれる。
それでいいと思ってた。思えてた。
でも、やっぱりダメと気付いてしまったんです。
家族という絆では、兄さんの隣に永遠にいる事は出来ないと。
いずれ、兄さんは私以外の家族をつくります。
その時、私が耐えられるかと考えると……。
最近、何やら兄さんを狙う魔女がいるという噂を聞きました。
渡しません。兄さんは、私の大切な人。
私だけの大切な人。
だから、この勝負に負ける事は許されない。




