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恋愛ロワイヤル~五人の恋する乙女は一人の男をかけて争う~  作者: 神村岳瑠
第一章・恋する乙女はゴールデンウィークで争う
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final:はじめての感情

 帰り道というのは何歳になっても、やっぱり寂しくなるもので。

 家に帰っても、ご飯を食べて風呂に入ってとか、いつもと変わらない日常が待っている。

 ただ、遊んでる時間は、変わらない日常なんてものはなくて、毎日毎日に何か変化があるもので。

 それが終わる。終わってしまうという、なんて表せばいいのだろうか。

 まるで、一つの物語が終わってしまうような寂しさがある。

 特にそれは、一人で帰ってる時に味わうものである。

 帰り道も、友達とならそれは一つの物語の一部へと変わっていく。

 まあ、俺は友達がいないんだけどね。

 いや、いないと言えば少し語弊があるが。

 ただ、友達がいないからこそ、俺の青春というものは気楽に過ごすことが出来ているのかもしれない。

 友達がいると、なんか変な気を使わなきゃ行けないらしいし。

 色々とトラブルに巻き込まれるし。

 ほんと、変に気を使わなきゃ行けない人も、トラブルに巻き込んでくる人も、そんな人を友達と思わなきゃ行けないなんて、俺には多分無理だな。

 なんて、言い訳みたいなことを心で囁きながら、俺は帰り道を歩く。

 その足取りは重く。進むほどに、気分はだんだんとローになっていく。

 そういえば、このゴールデンウィーク菜乃葉はどうすごしてたんだろう。

 一日くらいは、家族で過ごす時間も作った方が良かったかな。

 今度の土日は二人でどっかに出かけるか。

 

 なんて考えながら、俺は寂しい帰り道を歩いている。

 寂しさを紛らわすために。

 ただ、そんな簡単に寂しさなんてものは消えてくれない。

 ここから家までの道、そう近くはない。

 まあ、この寂しさも青春の一つなのかもしれない。

 でも、なんだろうか。まだ、今日の物語は終わってない気がする。

 そんな予感がする。否、実感がする。

 

 瞬間だった。

 後ろから急いでるような足跡が聞こえた後、俺の首の後ろに誰かにラリアットをされたような衝撃が走る。

 いや、ラリアットをされたのではなく、肩を組まれた。


「追いついた」


 疲れ切ったような、荒い息と男らしいカッコいい声でそう言ったのは。

 俺の親友――平沢涼香だった。


「ちょ、首痛いんだけど」


「んだよ。せっかく来てやったんだから、ちょっとは喜べ」


 いや、違う。

 俺の台詞は、ただの照れ隠しだ。

 内心は、心が躍るほどに喜んではいる。

 ただそれ以上に、俺と肩を組む平沢がとても綺麗に見えている。

 な、なんだ。平沢ってこんなに綺麗だったっけ。

 いや、美人だってのは知っていた。

 なのに。違う。ダメだ。

 絶対俺の顔赤くなってる。


「いや、う、嬉しいよ」


「だろ?」


 言って、平沢は子供のように純粋な笑みを浮かべた。

 それはまるで、綺麗な花が咲いたようで、俺の心は謎の感情に支配される。

 ただ、その感情の名前が分からない。

 でも、この感情は少なくとも、友達に対して抱くものではない。

 それだけが分かる。


 すると、平沢はポッケからスマホを取り出し、どこかへと電話をかけ始める。


「なんかよう?」


 スピーカーに切り替えると、聞こえてきたのは藍莉の声だった。


「私の勝ち」


 と、平沢は一言。

 何に勝ったんだろうか。

 というか、平沢と藍莉って友達だったんだ。

 

「は? ちょ、あんた今どこにいるのよ!」


 平沢がスマホを俺の口元に寄せてくる。

 何か喋れってことなのだろうか。

 嫌なんですけど。藍莉怒ってるし。

 ただ、この状況で断ることができるわけもなく。


「や、やあ、藍莉」


「え、悠斗!? ってことは……」


「残念だったね藍莉。今日は私の方が運が良かったってこと」


「そっか……。私じゃなかったんだ……」


 藍莉の声はどんどんと力を無くしていった。

 

「藍莉?」


 平沢も、電話越しに心配そうな声を上げる。

 そこには、さっきまでのバチバチとした空気は流れていない。


「いや、大丈夫だから。次は負けないから」


 藍莉の声は元に戻っている。

 気のせいだったのかなと思うほどに、藍莉の声は元気になっていた。

 そして、電話は切れる。


「勝ち負けって、なんか勝負でもしてたの?」


 俺はこの電話中に、気になっていたことを聞いてみた。


「ん? ああ、いや、まあ、いずれ分かるよ」


 なんだか答えを曖昧にされた。

 まあ、いずれ分かるなら焦る必要もないか。

 人生というものは長いからな。


「なあ、お前。一つお願いがあるんだけど」


 少し沈黙の時間が続いた後、それを切り裂くように平沢は言う。


「お願い?」


「私たち親友だろ?」


「まあ、そうだな」


 改めて確認されると、なんだか照れるな。

 俺の人生において、親友と呼べる人物は平沢しかいない。

 故に、こんな会話をするのも初めてなのである。


「そろそろ、下の名前で呼んでもいいと思うんだけど」


「涼香?」


「ひゃい!?」


 間髪入れずに下の名前で呼んだ俺に、涼香は驚いたのか、変な声を上げる。


「お前、そんな可愛い声出せたのな」


「いや、違うし、今のはお前がずるい。ってか、なんでそんな簡単に呼べるんだよ!」


「別に、親友なら下の名前で呼ぶくらいなんてことないだろ」

  

 むしろ、今まで呼ばないように気を付けてきたんだから。

 涼香の方が、俺を名字で呼ぶから、それに合わせた方がいいのかと思って。


「まあ、確かに、そう考えれば簡単だな」


「じゃあ、俺の名前も呼んでよ」


「え、あ、そうだった。じゃあ、行くぞ」


「いつでも」


「ゆ、ゆ、悠斗?」


 恥ずかしそうに、頬を赤らめながら震え声で涼香は言う。

 その時の涼香は、なんというか、出会って初めて可愛いと思った。

 

「お、おお、な、なんか、変な感じだな」


 またもや、俺の心はよく分からない感情で埋め尽くされる。


「よ、よし、とりあえず帰ろうぜ悠斗!」


「そ、そうだな」


 こんな感じで、俺のゴールデンウィークは幕を閉じる。

 色々あった。簡単に言えばそうなってしまうが、この3日間で、俺の周りの人間関係も大幅に変化してきた。

 例えば、黒綾先輩の恋人のフリをすることになったり、平沢を涼香と呼ぶことになったり。

 そして、俺の心に知らない感情が芽生えはじめたり。

 長いようで短いゴールデンウィーク。おそらく、人生の中で一番面白かったような気がする。

 ただ、最後にどこか心がモヤモヤしたものが残ったまま。

 でも、俺がこの感情を知るのは、まだ早い気がする。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

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