3Day:恋バナは唐突に
「……あの、なんか場違いがすぎませんかね?」
「安心したまえ。このレストランは私の親の会社の系列だ。誰も文句は言えない」
「そういう問題じゃないと思いますけど……」
明らかに高級な雰囲気が漂うレストランに、悠斗は身を震わせる。
周りで食事をしている人たちも、どこか上品というか。なんだか只者ではない雰囲気を醸し出している。
まあ、簡単に言えばお金持ちが集まるようなレストランなのだろう。
メニューを見てみても、その値段は他とは比べものにならないほどお高く。
設定金額を目指して注文したくなるような、そんな感じのレストラン。
「まあ、君は安心して好きなものを頼め。大丈夫だ、金ならある」
「いや、別にお金は自分で支払いますよ」
気まずそうな顔をしながらも、当然のように悠斗は言ってきた。
「なんだ?君も私と同類か?」
「同類ではないですけど。まあ、やらしい話になりますけど、お金には余裕があるんですよ」
「お小遣いが多いのか?」
「多いと言えば、まあ、平均よりは高いかもしれませんけど。それ以上に物欲があまりないので、お金が貯まる一方なんですよ」
「そうなのか。でも、君は本が好きって言っただろ?本買うのにとか使わないのか?」
「まあ、本は好きですけど。ほら、ライトノベルはうちの学校図書館で読めるじゃないですか」
「そうだな。私が置いた」
「だから、買うのって漫画だけで、それに俺は集めてる漫画の種類も少ないですから」
「そうなのか。でも、今日は払わなくていい。なんせ、実質無料で食べれるからな」
「え、でも、良いんですか?」
「遠慮するな。社長令嬢をなめてもらっては困る」
「いや、別になめてないですけど」
「さあ、注文は決まったか?」
メニューを見ながら、瑞希は悠斗に聞く。
「決まりましたせど……先輩、メニューが反対ですよ?」
「ん?ああ、言われてみればそうだな」
まあ、この時の瑞希の心の中は言わずもがな。
どうしたんだろうと、困惑の表情を浮かべながらも、悠斗はメニューを閉じて元の位置に戻す。
これを見ると瑞希は手をあげ、店員を呼んだ。
さすが、社長令嬢と言うべきか、既に店員にも黒綾瑞希の存在はバレているようで、一瞬で店員が注文をとりにきた。
「私はこの、オマールエビとイカのパエリアを頼む」
パエリアなんて初めて聞いたと悠斗は驚いた。
いや、別にパエリアは庶民も食べるような気がするけど。
今度は、店員の視線が悠斗へと向けられる。
「じゃあ、俺はこの黒毛和牛のハンバーグをお願いします」
流石に、遠慮よりも欲が勝ってしまった悠斗。ストップと書かれた手形をドンとテーブルに出したくなるのを我慢して注文を終わらせた。
そして、このハンバーグが悠斗の今まで食べたもので美味しいランキングのトップ3に食い込んだとかなんだとか。
* * * * * *
一方その頃、平沢藍莉ペアはと言うと。
周りを見比べても、違った輝きを放つレストランの前でぼーっと突っ立っていた。
「なあ、あの二人。このレストランに入ったよな」
「そうね。入ったね」
「どうする?私たちも入る?」
「無理でしょ。現実的にも、服装的にも」
「ドレスコードとかあるのか」
「そりゃあるでしょ」
「でも、秀刀も生徒会長も普通の格好だったぜ?」
「あんた知らないの?黒綾財閥」
「知らん。なんだそれ」
「簡単に言えば、黒綾家はすごいお金持ちで、言っちゃえばこのレストランも黒綾家のものなの」
「やべーなそれ」
「軽いわね」
「いや、驚きすぎてあまり感情が乗らないパターンだ」
「そうは見えないけど」
「じゃあ、二人が出てくるまで待つか?」
「ま。そうなるわね」
二人は深いため息をつくと、近くにあったベンチに腰をかける。
「あんたさ、なんで悠斗のこと好きなの?」
急に始まった恋バナ。
流石女子高生だ。恋バナを始めるまでの隙がない。
「は?なんで教えなきゃいけないんだよ」
「気になっただけよ。あいつ、あんまり良いとこないよ?」
「そうか?」
「そうよ。なんかクール気取ってるし、笑顔苦手だし、私のことなんか避けてくるし……」
「それは藍莉のせいじゃん」
「でもさ、やっぱり好きなんだよね。こちとら、保育園の頃から片思いしてるって言うのに」
「逆になんでそこまで告白しないで入れたの」
「何回か言おうとしたことあるけどさ、なんかダメだったんだよね。それに、あいつ女の友達とかいなかったから、ちょっと油断してたのかも」
その表情は後悔だった。
あの時に告白できていれば、もしかしたら違った未来があったのかもしれない。
そんな、もしもの可能性をいつも夢に見る。
それは、言ってしまえば悪夢だ。
まるで違う自分が見せつけてくるように、悠斗との幸せを演じている。
いつまでも素直になれない自分を、嘲笑うかのように。
続きは明日




