3Day:表情の裏には
本屋でけっこう深めはオタクトークで盛り上がった二人は、昼ごはんを食べようと外に出た。
どこに行くんですかと悠斗が聞くと、もう予約してあると瑞希は一言。
行く店を教えられず、悠斗は瑞希について歩いていた。
なんだか後ろから視線を感じると、悠斗は後ろをキョロキョロと振り返りながら前へと進む。
無論。後ろの視線というのは平沢と藍莉のことで、まだちゃんとついて来ていることが分かる。
まあ、色々と喧嘩しながらっぽいけど。
ただ、そんな二人の動向も悠斗にはまだ気付かれてない。
この調子のまま終わればいいのだが。
「秀刀悠斗よ。右手を出せ」
本屋から出て5分くらい歩いた頃、瑞希は車道側を歩く悠斗に言う。
「右手ですか?はい」
言って、悠斗は右手を前に出した。
「鈍感」
間髪入れずに、瑞希の突き刺すような言葉が聞こえてきて、悠斗は身を震わせる。
「鈍感ですか!?」
「仮にも、私たちは恋人同士だぞ。手を出せと言ったら横だろ」
呆れた、やれやれと言った感じで瑞希は言う。
それはつまりと、悠斗はこの後瑞希が取る行動を察する。
ただ、あくまで恋人のフリ。今回の目的は、周りに黒綾瑞希には恋人がいると思わせること。
そうなれば、手を繋ぐくらいしないと世間は恋人と認めてくれないわけで。
確かに、避けることができないことだった。
悠斗は一回深呼吸をすると、覚悟を決めたと言わんばかりにバッと右手を横に差し出す。
瞬間だった。瑞希の左手がそれをガッと掴み、そして指と指の間に、自分の指を絡ませてくる。
いわゆる、恋人繋ぎというやつだ。
「え、ちょ、先輩!?」
悠斗の心臓は一気にスピードを加速させます。
早い。それはまるで、達人のような太鼓ゲームの連打をしている時のような。
「なんだ?恥ずかしいのか?恋人なら普通だろ」
そう言って、瑞希はからかうような笑みを浮かべる。
まるで、手を繋ぐなんてへっちゃらみたいな表情をしているが、ここで黒綾瑞希さんの心の中を覗いてみましょう。
(や、やばい、めちゃくちゃ触れてる。あ、彼の手柔らかくて優しい。じゃなくて、やばい。なにこれ、なんで私手を繋いでるの!?いや、嬉しいけど。ずっと繋いでたいし、ていうか永遠に繋いでくださいだけど。じゃなくて、どうする私。これからどうするの?心臓バクバクなんだけど。これ、もしかして心音聞こえちゃってない?大丈夫?いや、大丈夫じゃない。私が大丈夫じゃない。なによこれ、初めてよ。手を繋ぐ処女卒業しちゃったよ?ってことは、初めての相手が彼……やば、興奮してきた。鼻血出そう。いやいや、そうじゃなくて。どうするこの状況。とりあえず、彼を私が予約したレストランへ案内して……からどうする。ご飯食べて、その後どうする。さよなならか?いや、早すぎる。というか、冷静じゃない。脳が働かないよ緊張しすぎて。もう好き。大好き。結婚して欲しい。というか、結婚してくださいおねがいします!)
なんともまあ、表情の裏にはこんなにもの感情があります。
ただ、悠斗にはそれを悟らせない瑞希の演技力というものは、一つの長所であると同時に、恋愛バトルにおいては、良いものなのか悪いものなのか。
それを決めるのは、瑞希の結果次第だ。




