3Day:後ろの二人
「それで、さっきの話の続きだが。私はラブコメを読むぞ」
瑞希に合わせるように隣を歩く悠斗。
目的地を聞かされないまま、ただ迷うそぶりもなく進んでいく瑞希を見て、どこに連れてかれるんだろうという、ドキドキ感に胸を震えさせている悠斗に瑞希が会話を始める。
「へー。それは、なんというか、意外ですね」
「そうか?私は結構、オタク趣味を持っているタイプだからな。君はどうなんだ?」
「はは。俺は友達がいないんでね。自然と、休み時間の過ごし方が読書になるんですよ」
がっくりといった感じで項垂れる悠斗。
自虐的な発言だが、これは瑞希にとってはとても大きいことだった。
趣味が同じ。これは、話が合うに違いない。
今回のデートは、楽しくなりそうだと。余裕の笑みを浮かべながら瑞希は思う。
「うちの高校の図書館は、ライトノベルも取り揃えているからな」
「それ、先輩が図書館に置いたんでしょ?生徒会長って権限を使って」
「権限ってのは使える時に使わないと損だぞ?」
「まあ、そうかもしれませんけど。あんまり変なことしないでくださいよ?」
悠斗が不安に思うのも仕方がない。普段から、何を考えているか想像がつかない瑞希。
故に、何をしでかすかも分からないということ。リナリア高校は、生徒会の意見を尊重する傾向がある。言って仕舞えば、瑞希が提案したことは、100%と言っても良いほど、確実に採用される。
なんだろうか。嫌な予感しかしない。
「私は生徒会長として、全生徒が有意義な青春を送れるように努力するだけさ」
言って瑞希は、後ろを気にする悠斗に気づかれないように、不穏な表情を浮かべた。
生徒会長という地位を持っている瑞希。今後が楽しみだ。
* * * * * *
一方、そんな悠斗と瑞希の後ろを、こそこそと追っている者がいた。
「ちょ、二人くっつきすぎ!何よあれ、なんでうちの生徒会長と悠斗が」
「知らねーし。勝手に巻き込むなし、一人でやってろし」
「とか言って、ちゃっかり付いてきてるのはあんたじゃん」
「藍莉が誘ったんでしょ。というか、あの二人の後をつけてどうすんだよ」
「どうするっていうか、気になるから付いてるだけよ」
そこにいたのは、神里藍莉と平沢涼香だった。
どこからか、悠斗と瑞希がデートをするという情報を掴んだ藍莉が、平沢を誘って後を付けに来た。
藍莉の格好は、まるで部屋着のような灰色のパーカーに、本人は変装のつもりなのかもしれないが、顔には伊達メガネをつけている。
平沢は変装とかなんもしてないが、オシャレというものに全く興味がない故、真っ黒のパーカーに、頭にはそれっぽい帽子をかぶっている。
「あんた。もうちょっと女子高生っていう自覚を持ったらどう?」
「それ、藍莉に一番言われたくない。なんだよその格好。パジャマじゃん」
「私はね、これも含めて変装なの」
「変装ねぇ。多分、秀刀に見られたら一発でバレると思うぜ?」
「それはそれで、なんだか嬉しいからアリ」
真顔でグッと親指を上げながら藍莉は言う。
それを見て、友達には、素直になれるのかと平沢は思う。
「本当。めんどくさい性格してんな」
「あんたもね」
二人は見つめ合った。互いに、その表情は穏やかな笑みで。
周りの人からしたら、友達同士にしか見えない。
実際、二人は友達だった。
「って!悠斗がいない!?ちょっとあんた、さっさと追いかけるよ!」
慌てて叫んで、藍莉は平沢の手を掴んで走り出す。
それはまるで、子供の頃にした探偵ごっこのようで。
「分かったから、引っ張んなって!」
この二人が、一人の男を取り合う敵同士だって、誰が思うだろうか。
少なくとも、今の感じは友達という関係を超越した、親友のように見える。
どうやら昨日と一昨日で、二人の関係性に変化があったらしい。
その時の出来事を語るのは、今ではないだろう。




