3Day:待ち合わせ
ねむってしまえば、次の日なんてあっという間に来てしまって。
悠斗はソワソワしながら、駅前で瑞希を待っていた。
悠斗にとっては、デートらしいデートは初めてで、どうすれば良いかとスマホでその手の記事を読んでいる。
そこに書いてあるのは、とてもロマンチックなものばかりで、とても悠斗にはそんなことを実行する勇気がなく。
あくまでも恋人のフリなわけなので、キスとかはしないし。
やるとしても、手を繋ぐが精一杯だろう。
それと、悠斗はもう一つ心配していることがあった。
それは、誰か同じ学校の人に見られるという可能性だった。
それもそうだ、悠斗は友達こそいないが、ある程度の女子には人気があるほどに容姿は優れている。
それに、そのデートの相手があの美人な生徒会長だということ。
一瞬で噂が広まるに違いない。
そうなって仕舞えば、まあ、瑞希的には噂が広まった方がいいんだろうけど。
悠斗は、より一層学校で注目される存在になるかもしれない。
ただでさえ、他の人からはクールで近寄りがたい存在という印象が一人歩きしている状態。
まあ、悠斗は同性の友達を作るのを、諦めてる部分はあるんだけど。
そんなことを考えていると、悠斗の視界の奥に人一倍輝きを放つ一人の少女が歩いてくる。
悠斗は、一瞬で黒綾瑞希だと分かった。オーラが違う。
ふくそうは、お嬢様らしからぬ庶民的な格好ながら、やはり元が良すぎる故、そんな庶民的な服でさえも、どこかの高級ブランドの服に見えてしまう。
姿勢を正し、余裕の笑みを浮かべながら悠斗に向けて歩くその姿は、本当にお嬢様のようで。
今すぐ目の前に行って、ひざまづいてしまいそうになるほど。
というか、ひざまづいていた。
地に膝をつけて、悠斗は瑞希が来るのを待っていた。
その姿は、本当にお嬢様とその執事のようで。ここに来て、悠斗の絶妙なイケメンさがいい味を出している。
「……君は、何をしているんだ」
そんな悠斗を見て、瑞希は珍しく困惑の表情を浮かべて言う。
「あ。いや、違うんです。なんか、そんな雰囲気だったんで」
瑞希に言われて、我に返った悠斗。
まあ、瑞希が困惑するのも無理はない、待ち合わせ場所に行ったら、相手がひざまづいて待っていたんだ。本物のお嬢様でも困惑するだろう。
いや、どうなんだろう。本物のお嬢様を知らないから詳しくは言えないけど。
「まあ、何はともあれ。待たせてすまなかった」
長い黒髪をサラッとなびかせると、いつもの余裕の表情に瑞希は戻る。
「いや、先輩が謝ることないですよ。まだ待ち合わせ時間にもなってないですし。俺が早く来すぎただけです」
それを聞くと、瑞希は少し不満そうな態度をとる。
「恋人ならそこは、今来たところって言うべきなんじゃないのか?」
「え、いや、確かに。あはは、嘘をつくのは良くないと思いまして」
愛想笑いをしながら、誤魔化すように悠斗は言う。
「まあ、私はラブコメで読んだ知識しかないがな」
「先輩って、ラブコメ読むんですね」
「時間の無駄だ。その辺の話は、移動しながら行うとしよう」
気がつくと、周りの視線は悠斗と瑞希に集まっていた。
それも仕方がない。これだけの、美男美女のカップルだ。男子も女子も見惚れてしまうだろう。
それを気にして、瑞希は移動しながら話すことにしたのかもしれない。
ただ単に、言葉通りの時間の無駄を嫌う性格なだけって可能性もあるけれど。
そんな感じで、悠斗と瑞希のデートは始まった。
その後ろに、後をつけている者がいるとも知らずに。




