1Day:先輩と後輩は親友と出会う
黒綾瑞希と、愛倉悠輝に悠斗が連れてこられたのはショッピングモールの中にある、ファミレスのような飲食店だった。
三人とも、走った疲れからかヘトヘト。15分ほど会話もなくぐでーとソファーに座っていた。
悠斗の隣に愛倉が座り、その対面に瑞希が座っている。
「それで、俺は今から何をされるんだ」
「なんですかその言い方。まるで私たちが誘拐犯みたいじゃないですか」
「いや、実際似たようなことしてるじゃん」
「この場合は。誘拐ではなく拉致と言った方が正しいな」
ドリンクバーのコーヒーを飲みながら瑞希が訂正する。
この人、いつもコーヒー飲んでんなという表情を愛倉は瑞希に向ける。
「似たようなもんでしょ」
「まあ、なんでも良いじゃないですか先輩。ささ、一緒に昼ごはんを食べましょ」
「いや、俺は他に食べると約束した人がいて……」
「さっき、私の携帯にこんなメールが届いていたのだが」
そう言って、瑞希は悠斗に自分のスマホの画面を見せる。
そこには、「急用が出来ちゃったから、先に帰るね!ごめん!」という、宛名が藍莉のメール。
無論。こんなもの嘘である。今日だけ、休戦。共闘することを約束した愛倉と瑞希が作り出したもの。
ただ、文面などを似せるにあたっては、話したことがない故、けっこう言い争ったのだとか。
「え、本当ですかこれ」
「本当もなにも。こんな嘘をついて何になるというのだ」
流石、クールな黒綾瑞希先輩。嘘をついてる感が全くない、その表情。
いつもの、何を考えているか分からない余裕の感じられる笑みから、悠斗は嘘を疑うことが出来なかった。
「は、はあ。そういうことなら、まあ良いですよ」
「わーい!じゃあ、早速店員呼んじゃいますね!」
両手を広げて喜びをあらわにすると、愛倉は店員を呼ぶボタンをポチッと押す。
「頼むもの選んでないんだけど。まあ、こういうところ来たら大体同じのしか頼まないからいいか」
なんて言いながら、店員を待っていた時だった。
ウエイトレス姿で、悠斗達のテーブルに注文を聞きに来た一人の少女。
それは紛れもなく、悠斗の知り合いであり、親友だった。
そうこのファミレスは、平沢涼香のアルバイト先であったのだ。
「はい、お待たせしやしたー……って、秀刀悠斗!?」
「なぜにフルネーム。いや、そうだけど、秀刀悠斗だけど」
瞬間だった。瑞希と、愛倉は敵対意識丸出しの威圧感がこもった瞳で平沢を見つめる。
この瞬間。瑞希と愛倉の中に、平沢涼香という敵が加わった。
「え、なんで秀刀がここに」
「そんなことより。あなたは先輩とはどういう関係なんですか?」
それは、悠斗に見せるようなあざとい笑顔。しかし、その奥には色々な悪の感情が混ざっていた。
平沢は、それを察する。ただ、ここで怯むわけには行かない。
この人が敵ならば、先制攻撃を仕掛けるべきだと動き出す。
「私と、秀刀の関係?そうだなー。私と秀刀は、親友って感じの関係だぜ?」
悠斗の近くに行くと、仲良さそうに肩を組んで親友アピールをする平沢。
それは、愛倉と瑞希を刺激するには、充分だった。
「いや、親友だけどさ。そうやって、いきなり肩組むのはやめてくれない?ほ、ほら、一応男子と女子なんだから……」
言って、平沢の肩を引き離す悠斗。その頬は、若干赤い。
「君は店員だろ。早く私たちの注文を取ってくれないかな?」
なんだろうか。この言葉に載せられた威圧感。
これを、否定するなんて誰にも出来ないだろう。
そう思わせるほどに、瑞希の言葉には圧が掛かっていた。
「は、はい。そうでした。じゃあ、注文を承ります」
こんな感じで、悠斗らの三人はファミレスで昼ごはんを食べた。
未だ、藍莉は悠斗を見つけられずにいる。
ここから始まるのは、先輩&後輩VS幼馴染の悠斗争奪戦。
残り時間は、外が暗くなることを考えて三時間弱。
暑い季節が来る前に、それ以上に熱い戦いが始まろうとしている。
いや、もう始まっている。
意外と長くなったので一日目の終わりは次です。明日投稿予定です。




