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恋愛ロワイヤル~五人の恋する乙女は一人の男をかけて争う~  作者: 神村岳瑠
第一章・恋する乙女はゴールデンウィークで争う
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1Day:後悔

 恥ずかしさや嬉しさなどの、色々な感情が押し寄せてきてどうにかなってしまいそうな藍莉は、悠斗を連れてショッピングモールに来ていた。

 さすがゴールデンウィークと言うべきか、朝早くにも関わらず、まあまあの数の人が歩いている。


「それで、どこに行く?俺は特に行きたいところがないから、藍莉の行きたいところでいいよ」


「え!?行きたいところって言われても、そんな簡単に思いつかないんだけど」


 悠斗に話しかけられたことで、なんとか冷静さを取り戻した藍莉は答える。

 まあ、悠斗のことで頭がいっぱいだったのに、悠人に話しかけられて冷静になるのも、なんだかおかしな話ではあるけど。


「なんかないの?買いたいものとか」


「うーん。特に……ないかなぁ」


「じゃあ、観たい映画は?」


「今は何がやってるの」


「えーと。感動系のアニメとか、純愛系の実写とか、まあ色々だよ」


「なんだか、ピンとくるやつがないわね」


 今やってる映画を調べてるのか、頭を捻ってスマホを見つめる藍莉。


「じゃあ、少し子供っぽいけどゲーセンとかどう?」


「ゲームセンター?まあ、いいけど。行って何するの?」


「行けばなんか楽しくなるでしょ」


 言って悠斗は、子供のような純粋な笑みでゲームセンターへと歩き出した。

 それを、藍莉は懐かしいと思いながら後を追う。



 * * * * * *



  ゲームセンターは二階の一番端っこにあり、色々なゲームのジャンルの最新機種が揃っている。

 故に、子供から大人までに大人気で、県外からわざわざこのゲームセンター目当てにやってくる人もいるのだとか。

 ただ、今日は朝一ということで人は少なく、大抵のゲームが並ばずにプレイできる。


「すげーな。クレーンゲームだけで何台あるんだよ」


「まあ、遊べる台の種類が売りみたいなところがあるらしいからねー。このゲームセンター」


「奥はあれか、プリクラとかメダルゲームのコーナーか」


「メダルゲームって、すごいなつか……」 


 藍莉の声が止まった。それと同時に、足も止まる。

 見つけたのは、可愛いくまのぬいぐるみだった。

 ガラスの奥で、愛くるしい表情でこちらを眺めてくる、くま(ぬいぐるみ)。

 それはまるで、助けてーと頼んできているように藍莉には見えた。


「なんだ。これが欲しいのか?」


 横からふらっと現れると、藍莉の横に立ちガラスの奥のくまを眺める悠斗。

 

「べ、別に、欲しくないから。さっさと行こ」


 藍莉はそのぬいぐるみがある台から、何歩か距離を取って言う。

 それを見た悠斗は、呆れたようなため息をつく。

 それはまるで、またかよと言うような。何度もこの光景を見たことがあるかのようなため息


「いや、なんでここで意地になるんだよ。お前も一応女子なんだから、こういうぬいぐるみに興味が湧いたって不思議じゃない」


「だから、興味なんてないって言ってるでしょ?」


「ああもう!分かったよ。じゃあ、このぬいぐるみは俺が欲しいから取る」


 言って悠斗は、肩にかけていた鞄の中の財布を取り出して、くまのクレーンゲームに100円を入れる。

 途端に、陽気な音楽が流れて横に刺された矢印のボタンが光り出す。

 それを押して、グラグラゆっくりと、アームが動いていく。

 悠斗は慣れた手捌きで、きっちりとぬいぐるみの真正面にアームを設置するのに成功した。

 後は、ぬいぐるみの真上にアームを置けるか否か。

 落ち着けと一旦深呼吸をした後、今度は真っ直ぐに向かれた矢印のボタンを押す。

 さっきと同じように、グラグラゆっくりと動いていくアーム。

 ここだ!と言うかの如く勢いで、悠斗はボタンから手を離した。

 それは、さっきと同じように最高の場所。

 ぬいぐるみの真上にアームを置けることに成功した。

 後は、このアームの力を信じるだけ。

 見たところ、このくまのぬいぐるみは相当サイズがでかい。

 まあ、それに合わせてアームも大きくなっているんだけど、しっかりと掴めるかどうか。

 そんな、二人の心配も束の間。

 でかでかと開かれたアームはきっちりと、くまのぬいぐるみを掴んで運んでいた。

 ぐわんぐわんと運ばれたぬいぐるみは、しっかりと取り出し口につながる穴のところで落ちてくれた。

 それを、冷静な表情で取り出す悠斗。

 後ろでは、藍莉がとても嬉しそうな笑顔で見つめている。

 ばっと悠斗が後ろを向くと、藍莉は慌ててそっぽを向く。

 それを、呆れたような表情で見た後、悠斗はぬいぐるみを持って藍莉の方へ歩いていく。


「ほら、あげるよ」


「べ、べ、別にいらないわよ!」


 言ってることと、表情がまるで合っていない。

 それは、悠斗にも伝わってることで。


「だから、何でそう意地を張るんだお前は。昔からだけど。欲しいものは欲しいって言わないと後悔するぞ?」


「うるさい!もう分かったよ!貰えばいいんでしょ貰えば!取ってくれてありがとね!別に嬉しくないけど!」


 頬を赤らめながら、必死にぬいぐるみを欲しがっていることを否定するが、藍莉の瞳はぬいぐるみに対してキラキラに輝いている。

 それを確認した後、悠斗は少し安心したような表情を浮かべて歩き出す。

 瞬間だった。藍莉の表情は、一気にシュンとしたようなものに変わる。

 そして、歩く悠斗の背中に向けて一言呟いた。


「もう、私は後悔してる」


 その声は、悠斗には届かなかった。

 


 

 



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