7
今回意識したい
・急展開
後で別作品を確認したい
・引きの導入、視点切り替え
6のあらすじ
指南役に実践訓練を勧められる→森へ行く
→警告の看板を無視して突き進む
7
上機嫌で突き進んでいくと、何やら洞窟があったので、さらにその中を進むことにした。
この時フィリスは、冒険気分で何の気なしに行動した。ここでフィリスの運命はまた180度変わることになる。
★
洞窟はそんなに広くなく、すぐに行き止まりになった。そこには祠があった。
それだけと言えばそれだけなのだが、何やら良くない雰囲気を感じる…
「気のせいかな」
私は少し怖くなったので、今日はもう帰ろうと思った。
森に入ってから魔物に一度も会っていないのも気になる。
指南役に事情を説明しないと。
――ふむ、上質な香りだ。
「えっ?」
――そなたのことだ。
「何?だれなの」
――誰でもよかろう。それにどうせ、そなたのような者に私は見えまい。
「何のこと?」
――そんなことより、そなた、時間を巻き戻したな?
『時間を巻き戻したな』『時間を巻き戻したな』『時間を巻き戻したな』『時間を巻き戻したな』『時間を巻き戻したな』
瞬間、私の中で言葉が繰り返し再生される。壊れたレコーダーのように繰り返し。
私の秘密。男装令嬢という表面の秘密ではなく、昔のあの痛くて辛い気持ちを抉り返す、絶対に触れられたくない秘密。
なぜ?
呑気に独り言を言う余裕は私にはない。なぜ声の人は私のことを知っているの?
――その返答は、私が魔術師だからだよ。
心を読まれた? 今は声に出していないのに。
――ふむ、先ほどと雰囲気が変わったな、がぜん良い香りになりおったわ。はっはっは。
――表面上では、明るく呑気に振舞って忘れようとしているのか? 何かおぞましい過去を?
――お前はただ見捨てられたのだよ。国にも親にも。
――誰も助けてはくれない。この世は壊れているんだ。
――人も何も腐っていて、自分が生き残るためならすぐ他者を売りに出す。
――親しかろうが関係ない。全ては虚像。嘘。滑稽だな。がはっははっ!!!!! はっはは「やめて!!!!」
「もうやめて」
――ハッ、見えるぞ。気持ちが強くさらに良くなってきたな。
――串刺しになって横たわっている。これは誰だろうな。
――苦しいだろう。辛いだろう。過去とは、身に刻み付けられた入れ墨のようなもの。
――決して消えることはない。
「…」
――だが、清算することはできるのだよ。
「どうするの? どうやって?」
気付けば私は聞いていた。
――その過去を起こした全ての者に、復讐するのだよ。
★
あれからしばらくして私は家に帰った。
別にあの魔術師を名乗る声の言いなりになったわけじゃない。ただ一考の価値があると思った。
そもそもあの魔術師は何だったのか。
ゆっくり1つずつ教えてくれた。
曰く、「魔術師の国」の宰相だった。
曰く、あの頃は平和で、人々皆が生き生きと暮らしていた。
曰く、宰相には妻がいた。
曰く、気立てが良く、子供も2人いた。
曰く、猫を飼っていて、週末の休みで家にいると、子供とじゃれて遊ぶのを見て幸せを感じていた。
曰く、コーヒーは苦手だ。
話しているうちに、私はその魔術師に情が湧いていった。
少なくとも、最初に聞いた声と違って、確かにその声には優しさが宿っていた。
ただ、話はそれで終わりではなかった。
曰く、そんな平穏な日常は、壊されてしまった。
曰く、とある革命家によって魔術師の国は滅んだのだと。
曰く、そしてその革命家が武王を名乗り、武の国になったのだと。
そこからはひどく冷淡で、鋭利なナイフのような声を、私に浴びせかけたのだ。
私は知ってしまった。
私自身が一度死んでしまったことだけじゃなかった。この国自体がおかしいかもしれないのだ。
確かに、あの魔術師の声は、私の心の隙を付くようにわざとらしい誘導していた。
もちろん、復讐なんてしたくない。
最初はそう思った。
なぜなら、強くなれば、剣技大会でも、それに失敗しても、悪いことにはならなそうだと感じていたから。
だけど、あの魔術師の言葉が事実なら、私は今世でも死ぬ。
死ぬエンドが前提のルートなのだと、知ってしまった。
――私は、この武の国で「3人の柱」の1柱であるというのだ。
どういうことか魔術師は語る。
曰く、武の国の王―武王―は武神との契約の下、即位時に「3人の柱」を生贄に捧げることで、強力なスキル【武の神髄】を得るのだそうだ。
そして、「3人の柱」というのは、スキル【剣の神髄】、スキル【槍の神髄】、スキル【格闘の神髄】を持つ3人を指すという話だ。
この神髄スキルは、世界に1人しか所持できないらしく、ただし過去の傾向から、誰に発現しそうかというのは大体わかるらしい。
前世の私は「スキル:剣の神髄」を発現させていなかったから、死んでしまった後で他の者が生贄に捧げられたのだろう。
ただ今世では、「スキル:剣の神髄」を発現している。
良いことだと思ったのに、実は生贄にされるマーキングでしたなんて、冗談にもならない。
侯爵家の「誰が」「どこまで」詳細な話を知って、私の経過観察をしているかはわからない。
ただ、「スキル:剣の神髄」を所持していることだけは、何者かにもうバレていると考えた方が良いだろう。残念ながら。
あぁ、瞬剣コンボで遊んでいた少し前の私を恨みたい。
なので今後は、
・魔術師の話がそもそも本当なのか
・侯爵家の「誰が」「どこまで」詳細な話を知っていて、私を監視しているのか
・情報を集めて、具体的な回避プランをどうするか
といった情報収集を影ながらしていこうと思う。もし魔術師の話が真相なら、敵に私が知っていると悟られないようにしなければ。
ワールドアナウンス:パッシブスキル【魔術の素質】を習得しました。
† ヒロインスキルの現在
パッシブスキル【剣の神髄】:
剣に関わるあらゆるスキルの習得が容易になる。また、これによって習得したスキルの熟練度も大幅に上昇しやすくなる。
パッシブスキル【正眼の構え】:
正眼の構えが崩されにくくなる。
パッシブスキル【コンティニュアススキル】:
スキル硬直及びそれ以外のいかなる要因も含め、スキル使用の連続性を高める。全アクティブスキル対象。
《NEW!》
パッシブスキル【魔術の素質】:
高位の魔術を受けると稀に発現する。魔術親和性が高まり、魔術を覚えやすくなる。
アクティブスキル【振り下ろし21/∞】:
振り下ろす速度上昇、威力上昇。振り下ろし後の硬直時間を短縮。
アクティブスキル【瞬剣 55/∞】:
四方へ瞬間的に移動する。移動後は硬直を挟まず、アクティブスキルを使用できる。(修正前「他のアクティブスキル」を修正後「アクティブスキル」に置き換え)
アクティブスキル【回転切り 30/∞】:
剣を振り回すだけでそれっぽく見える。
※1/∞は、1が現在の熟練度、∞が潜在的に到達可能な熟練度の最大値を表しています。




