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超能力者に愛を求めて  作者: 広野 氏子
第1章 LoreleiとSchrödinger
9/13

Chord8: 私も手伝いますわ!!

「……知らない、天井。」


拓真が体を起こすとそこは普段毎日見ている部屋のそれではなく、薄桃色のなんとも女の子らしい部屋だった。


「あら、目が覚めましたわね。」

「中河……?」


拓真は自分がベッドに寝かされていた事に気づき、その場にいる中河を見てその部屋の主を察し、即座にベッドから慌てて飛び降りた。


「わわ、悪い。」

「……別に、構いませんわよ。」


気まずい空気にお互いそわそわする。拓真は中河の部屋を見渡した。


「……あああまり、見ないでください。恥ずかしいですわ……。」


中河が顔を赤らめてあたふたする。


「いや、昔とぜんぜん違うなーと思って……。」

「まままだそんなこと覚えていましたの!?死んでください!!頭を打って記憶を消失して死んでください!!」

「記憶消したなら命まで消すなよ。」


なんとなく空気が和み、互いに笑顔を取り戻した。そして、真面目な顔をして、拓真は考え込んだ。


「……見てしまったわけなんですから、誤魔化すつもりは毛頭ありませんわ。」


中河も拓真の向かいに正座して座る。豊満な胸がゆらりと揺れる。


「あれは、能力ってやつなのか?」


拓真がそう尋ねると、中河は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。


「え、ええ……。そうですわ……。私は能力者と呼ばれているものですけれど、奥山君がどうしてそれを……?」

「実は……。」


拓真は先日会ったローレライのことや、起こった出来事について包み隠さず話した。


「そんなことが……。」


深刻な話を聞いた中河は顔に手を当て、悲しそうな顔をした。


「その、ローレライさんはどこへ行きましたの?」

「あいつはドイツに帰って宝玉を壊すって言っていたんだ。ただ、方向音痴で空港に着いているとは思えないんだ。」


拓真は心配そうな顔をした。中河は少しムッとした表情になった。


「でも、彼女も能力者なんだったら大丈夫だとは思いますけれど」

「いや、でも……。」


不安がどんどん大きくなっていく。見て見ぬふりをしていた心の中のもやもやが重く黒くなっていく。

確かにローレライは能力者だ。だが、見た感じで言えばまだまだ子供だ。あの時会えたのは偶然に過ぎない。もう一度会えるとも思えない。だが、このままではローレライが危ない。


拓真はそう思い、いてもたってもいられなくなり、部屋を飛び出そうとした。


「お待ちなさい!!」


中河がそれを静止する。


「気持ちはわかりますが、行ってどうなるというのですか。また死にに行くおつもりですか?会えるとも限らないのですよ?うまくドイツに帰ることができたのかもしれないのですよ?偶然通りかかって危険な目に遭ったあなたがどうしてこんな事件に首を突っ込むのですか!!本当に死にたいのですか!?」


中河は必死に説得して拓真を止めようとするが、拓真は聞く耳を持たなかった。


「それでも!!オレはあいつのことが、ローレライのことが心配なんだ!!」

「バカ!!!」

「!?」


振り返るとボロボロと涙を流す中河の顔が見えた。


「こんなに……、心配しているのですよ……。奥山君、あなたのことがとても心配なのですわ。仮にその娘に会えたとして、そこにあの黒い方たちがいらっしゃらないとは限らないのですよ?あなたは何の能力も使えない、ただの人間なのですよ……?」

「でも……。」

「でもではありませんわ!!あなたには何もできないとはっきり言わないとわかっていただけないのですか!?」


拓真の腕を掴む中河の手の力がどんどん強くなる。胸が密着しているが、切迫している拓真にはそれを毛ほども感じていなかった。


「だけど……!それでも……!オレはあいつを……、助けたいんだ!!」

「……。」


中河は俯いたまま動かない。腕を掴む手は震えていた。


「……わかりましたわ。」


中河は遂に掴む手の力を抜き、離した。


「悪い、じゃあオレ」

「私も手伝いますわ。」


そのまま行こうとする拓真に中河は言った。


「……は?」

「ですから、その娘を探すのを私も手伝って差し上げると言っているのですわ。」


泣き腫らした目をこすり、隠すように目をつぶりながら偉そうに拓真に進言する。


「いやいやいや……、巻き込む訳にはいかないよ」

「あの男と戦った時点で、……いいえ。奥山君がこの件に巻き込まれてしまった時点ですでに私も巻き込まれていたのですわ。」


暴論を説く中河は自分の思いを曲げようとはしなかった。


「いいですか?私達は幼馴染なのですよ?子供の頃からずっと一緒に遊んで来た仲ではありませんか。」


笑顔で中河は続ける。


「それに、私は能力者ですわよ?きっとお役に立てますわよ。」

「……本当に、いいのか?」

「ええ、もちろんですわよ!!」


再び中河はまるで自分の究極にして至高の二大ドームを見せびらかすかのように胸を張った。


「中河……、ありがとう。」


拓真は笑顔で中河に感謝を述べ、部屋に戻る。


「そうと決まれば、もっと詳しく私のことについて教えなければなりませんね。」


中河は真面目な顔をしてそう言った。


「そうだな。お前の能力について教えてくれないか。」


拓真も賛同し、中河と向き合った。


「私の能力は少し特殊でして、私が直接何かをすることはできませんの。できると言ったら能力者なら誰もができる人払いくらいですわね。」


少し申し訳無さそうな顔をしながら中河は言った。


「見たとは思いますが、私はハデスという冥界の王を呼び出すことができますわ。」


ハデス。黒いボロ布を纏い、顔に髑髏の面をつけた身長は3mはあるだろうこの世ならざる存在。


「彼の持っている冥鎌は、体に傷一つつけずに魂を持っていくことができますわ。」


冥鎌。中河の身長の二倍はあると思われる巨大な鎌。とても普通の人間では持てそうにない。


「さらに、彼はペットを飼っているのですが、このペットがとても優秀なのですわ。」

「犬か?」

「のんのん、ですわ。」


人差し指を立て、チッチと横に振る。


「彼のペットは、骨ですわ。」


いかにも死後の世界らしい。


「冥狼と呼ばれる骨の狼ですわ。非常に鼻が利くらしいですわ。」


骨の鼻が利くとは一体何なのか。


「単純に匂いが嗅ぎ取れるわけじゃなくて、持っていく魂の匂いを覚えるの。」

投稿が遅くてすみません……。


読んでくださった方には無上の感謝を。楽しんでくださった方には至上の喜びを。

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