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超能力者に愛を求めて  作者: 広野 氏子
第1章 LoreleiとSchrödinger
6/13

Chord5: 神と名のつく能力

「……理不尽だ。」


手形に赤く腫れ上がった頬を撫でながら拓真はベッドに寝転んでいた。


「結局、あの子は何なんだ……。」


見知った天井を眺めながら物思いに耽った。




―――――数十分前


「悪かったって言ってるじゃないか!!それに不可抗力じゃないか!!」

「うるさい!!うるさいったらうるさい!!」


顔を林檎のように真っ赤に染めてローレライは壁際に吹っ飛ばした拓真に叫んでいた。


「……服も体もビチョビチョじゃないの。お風呂借りるわね?」

「あっ、おいちょっと……。」

「何よ、こんな可愛いアタシのことずぶ濡れにしておいて放っておくの?」

「自分で言うんだ……。」

「兎に角、借りるわね。」


そう言ってローレライは風呂場を探し、脱衣所のドアがバタンと閉じる音がした。





「……はあ。お風呂から上がったらもう一度詳しく聞かなきゃ。」


その時、脱衣所の方から声がした。


「ちょっとタクマー!バスタオル持ってきなさいよ!!」


図々しいにも程がある命令が聞こえ、仕方ないなとベッドから腰を上げた。


階段を降り、脱衣所のドアを開ける。

ドアを開けると、脱衣所の床には彼女が着ていた黒地のワンピース(麦茶でビショビショ)、大量の金色の装飾品が散乱していた。


「……はあ。なんで、こうもガサツなんだよ。」


そう言って拓真は洗濯機に黒地のワンピースを放り込んだ。


「……ん?」


黒地のワンピースがあったその下にピンク色の布地を発見した。


「ハンカチか?」


手にとって洗濯機に放り込もうとして、拾って広げると、それはハンカチと言うには形がおかしかった。

その時、左側からガチャリとドアの開く音が聞こえた。


「はあ、気持ちよかったあ…………なっ……。」


拓真はドキッとしてゆっくりと、錆びついてなかなか動かないロボットのようにギリギリと音を立てているかのように首を左に傾けた。

そこには木目細やかなハリ、ツヤのある透き通るような美しい肌、瓢箪とまではいかないが、しっかりとくびれのある腰、大きくない、いやむしろ控えめな二つの膨らみ(?)、サラッとして一切の乱れのない薄紫色の髪、紅潮して口を開けて目を涙で潤わせた顔


「タクマ……あんたそれ、アタシの……パ、パン……」

「いや違う!!誤解だこれは!!」

「かえせええええええええ!!」

「がっ……!」


もう片方の頬も犠牲となった。




拓真は着替えがないローレライにとりあえず服を着せるために黒いパーカーを彼女に手渡した。


「大きすぎるわね。もっと小さいのないの?」

「無理言うな、オレは男で君は女の子なんだ。」


明らかに不満げな顔をしていたローレライだったが、すぐに諦めたように深い溜め息をついて、部屋に戻りまたベッドに腰掛けた。


「……で、さっきの話の続きなんだけど、オレが能力者ってなんなの?」


地面に正座をして両頬を赤く腫らせた拓真は涙目になりながら目の前の少女に問いかける。


「ああ、そのことも話さなきゃならないのね。」


面倒臭そうなのが見なくてもわかるくらいけだるげな声でそう言った。


「アタシの持ってるこの宝玉、実は願いを叶える効果だけじゃなくて魔力値や能力適正値が高い時にその能力の属性やランクによって色を変えて輝くの。いわゆる能力者探知機みたいな効果を発揮するのよ。」


拓真は黙ってその話を聞いていた。いや、意図的に黙っていたというよりは絶句していたのほうが正しい表現と言えた。


(オレの能力適正値が高い……?)


外でのあの出来事を実際に見てしまってからでは、超能力が存在することはもはや肯定するしかないのだが、それでも今までの17年間何もなく平々凡々な生活を送ってきた奥山拓真にとって、自分がその非現実の渦中にいたという事実をたった今会ったばかりの女の子に宣告されても到底信じられるものではない。

まして耳に響いたのは自分の能力適正値が高いということだった。


だが、彼女は加えて否定するように衝撃の言葉を発した。


「……まさか、こんなところで出会えるとは思ってもいなかったわよ。今までタクマのセクハラで言えてなかったけど、あんたは相当、かなり、とんでもなく強い魔力値と能力適正値があるの。さっきも言ったように、強さのランクを色と輝きで教えてくれるんだけど、アタシが今まで見たことない強さで光ったわ。しかもこの輝きは、これもアタシの見たことのない、透き通るような、他の不純なものが一切ない空色だったわ。」


輝きの強さ、色は拓真自身もしっかり確認した。


「それで、それはどういう意味なんだよ。」

「空色は、アタシの家の言い伝えによると、世界に二人しかいないらしいのよ。」


世界に二人しかいない。


「世界でたった二人だけ、“神”という属性を持つ、神と名のつく能力を持っているの。」


神。神……。


「でも、タクマは能力の覚醒をしていないから、今のままじゃただの無能力者の人間よ。」

「神…。それってそんなにすごいことなのか?」

「すごいなんてもんじゃないわよ。だって神の能力は最強なんだから。」


外はいつの間にか夕暮れの橙色に染まっていた。





「そろそろ行くわね。」


ローレライは一通りの説明を終えると、ベッドから立ち上がり、部屋を出ようとする。


「これからどうするつもりなんだよ。」

「もう一度ドイツに戻って、この宝玉を壊す。」

「そんなこと言ったって、オマエ方向音痴なんだろ?空港までどうやって行くんだよ。」

「いいのよ、適当に走ってたら着くわよ。」

「けど……」

「いいの!!これ以上関係ない人を巻き込みたくないもの!!」


ローレライはそう言って走って家を出ていってしまった。


「大丈夫かよ……。」


ため息を付いて拓真は家へと戻っていった。


「能力、か……。」


拓真は宝玉が光り輝いたときのことを思い出した。




「タクマ、……あなた能力者よ。」




ずっと頭の中で反復して聞こえてくる。


「あいつ、本当に大丈夫だろうか……。」


そう思いつつも、結局能力を使えない平凡な人間だから、この先も変なことに巻き込まれないだろうと頭の中で考え、今日あったことは忘れようとした。

主人公拓真の能力者最強宣告の回でした。


読んでくださった方には無上の感謝を、楽しんでくださった方には至上の喜びを。

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