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超能力者に愛を求めて  作者: 広野 氏子
第1章 LoreleiとSchrödinger
4/13

Chord3: Schrödinger Tägliche Eins

一方



黒い背広の男レオンハルト=タンネンベルクはローレライによる能力から抜け出していた。地面に無造作に落ちていた金色のブレスレットを木っ端微塵に破壊したらしく、それが置かれていたところには15cm大の穴が空き、煙を上げていた。その周囲には亀裂が走り、その破壊力のすさまじさを物語っていた。


彼はまた黒い箱からタバコを取り出し火をつけた。溜息をつくように煙を口から吐く。


ピリリリと彼の携帯に着信がかかった。


「ようレオン、どうだ、宝玉は捕れたか?」


電話口からは陽気な声が聞こえた。


「いえ、取り逃がしてしまいました、すみません。」


壁にもたれながら対照的にドスのきいた低い声でレオンハルトは応える。


「うーん、まあ仕方ないんだけどさ、でも二回目だよね、逃がすの。なんかあったの?」

「途中で邪魔が入りまして……。」

「邪魔?あいつは単独で逃げてたでしょ?」

「はい。しかし……、偶然出くわした男とともに逃げました。」

「それ能力者なの?」

「そのような兆候や仕草は見られませんでした。」

「じゃあそれ言い訳にならないよね。」

「返す言葉もありません……。」


低い声ではありつつも、謝罪の念を込めたしおらしい声色でレオンハルトは電話の向こうの男に話しかける。


「まあいいや、オレもこっちに着いたし落ち合おうよ。」

「……わかりました。」

「じゃあ一回空港まで戻ってきなよ。あんたがどこにいるかわかんないし。」

「そうですね、ではそちらに向かいます。」


電話を切り、タバコの火を消して空港へと向かうべく、跳んだ。それはまるで限界まで力をかけられていたバネが勢いよく元の形に戻ろうとするかのようであった。

アスファルトの地面から跳び上がったにも関わらず、舞った砂埃は何故か血のように紅かった。



およそ30分経った頃、レオンハルトは空港の建物屋上に降り立った。そこから見下ろし、目的の上司を探した。


(……いた。)


レオンハルトは跳び下り、その人物の前に着地した。


「戻りました、シュレディンガー様。」

「うーん、遅かったねー。」


その男はグレーのスーツを着ており、身長は165cmくらいの比較的小柄で、レオンハルトと向かい合うと彼を見上げることになる。首には大量に鎖やチェーンのアクセサリーをぶら下げていてジャラジャラと音を立てている。両手の指には様々な種類の指環が輝いている。


「うーん、日本の空気は美味しいなあ。ルールの空気は汚いから余計にそう思うのかもしれないなあ。」


シュレディンガーと呼ばれた男はニコニコしながら深呼吸をする。


「うーん、それでどうすんのさ、逃したんでしょ?どこに逃げたのか分かってるの?」


シュレディンガーは爽やかな笑顔を崩さないまま透き通った陽気な声で言った。しかしその声にはどこかし冷徹かつ脅しの感情が内包されているようだった。


「それが……、結界を張っているのか完全に見失ってしまい、まだ遠くへは言っていないとは思うのですが……。」

「ふーん、まあいいや。それで、ローレライに自分の能力は見せたの?」

「いえ、ちゃんとした能力はまだ見せていな」

「ならまだあいつはこっちの能力を知らないわけだ。じゃあまだ勝機はこっちにあるね。早くあの女から宝玉を奪いに行くよ。」


シュレディンガーはまだ言い終わっていないレオンハルトを遮ってそう呟き、レオンハルトははいと言い一度頷いた。

シュレディンガーはレオンの耳元まで口を近づけ小声でこう言った。


「もしまたヘマするような事があったら……、今度は胃を潰しちゃうよ?」


レオンハルトは恐怖に動けず、ただ体中を汗で濡らし、息を呑んだ。


「……Jawohl」


レオンハルトはそう言って再び跳び上がり、ローレライの捜索に向かった。


「さてと、じゃあ観光でもすっかな。」


レオンハルトを見送った後、軽く伸びをしながらシュレディンガーはゆっくりと歩き出した。

今回は敵サイドのお話でした。ドイツ語をやったこともないのに、必死に勉強しながら書いてます。文法なんか知らないよ。

今回の題名を日本語訳すると、シュレディンガーの日常1です。

Jawohlは了解という言葉の敬語みたいな感じらしいです。


敵側の仄仄した感じも好きなんですよね。会話は物騒ですが。

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