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プロローグ
果てまで続く空に彼女はいた。
月が眠り、太陽が目覚め世界を照らす。その一番近き場所で、初めて見る光景に目を奪われる。
「綺麗……」
言葉を漏らす。その言葉に反応するかのように、彼女の足元がどくんと、心臓の鼓動のように鳴り響いた。
言葉に答えるかのように伝わる鼓動は、彼女の顔に笑みを作る。
「これが、あなたの見たかった世界なのね」
風が吹き荒れ、言葉はかき消される。けれども、聞こえないはずのその言葉は彼にはしっかりと伝わっていた。
『そうか。これが空か』
雄々しくも優雅で、心に染み渡る声。彼が発した言葉は少なく、けれどもその一言に全ての思いが込められているのが感じられる。
青。その色を際立てるように白い雲がちりばめられ、柔らかな光で世界を染めていくその光景。
この光景はさして珍しくはない。けど、彼にとってこの光景は今日、うまれて初めて見る光景。
だから、彼女は言った。涙を浮かべ、彼を撫でながら。
「これから宜しくね、私の王様従者」