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ひねくれ女子の落ち込み日記。

作者: 刀根のぞみ

休日。

朝方、ほんの一瞬だけ目が覚める。

嫌な夢を見た。

聴きっぱなしで寝てしまった音楽プレイヤーの停止ボタンを押し、私はぐちゃぐちゃになっている掛け布団を頭の上まで引っ張りあげる。

……二度寝。

もう一度寝たからって、見た夢の内容は変わらないし、実は続きがあって、それがすごく幸せな内容だったとしても。

もう今日はスッキリした気分で居られるわけがない。

そんな事はわかっている。


まだ5時だもの。


そう自分に言い聞かせて、もう一度眠りにつく。

次に目が覚めた時はもう昼ごろだろう。

昼の情報番組、今日のコーナーはなんだろう。


ああ、いったい今日は何曜日?


夢を見ることもなく、穏やかな二度寝をしたはずだったが、起き上がってみると身体中が痛い。

首にあわない枕のせいかしら。

枕を睨み付けても痛みは変わらない。


気を取り直し、支度を始めながら朝昼兼用ご飯を考える。

こんな日はヘルシーにさっぱりが良い。

ヨーグルトにグラノーラをかけて。

私が最近はまっているメニュー。


冷蔵庫をあける。

なんとなく嫌な予感はしていた。

ヨーグルトが、

ない。


買いに行く気力なんてないものだから、冷蔵庫の扉を閉め、その手で仕方なく冷凍庫を開ける。

かろうじてパンが凍っていたので、銀紙にくるんでトースターに入れる。

せめて柔らかいパンが食べたかったのに、こんな時に限ってハードパン。

……なんて思うのは、贅沢だろうか。


ペットボトルの水を片手にテレビをつければ、お洒落で美味しそうな朝カフェ特集?

ああ、これから素朴にパンを食べる私への嫌がらせかしら。


お店の名前をメモしたりしても、どうせ行かないのに……。

そう思いつつも、店名を丁寧に書き留めてしまう自分。

横目で今までメモしてきた紙の束を見たわ。

そしてそのタイミングで我に返る。


焦げ臭い気がして。


慌ててキッチンに戻り、トースターを開ける。

かわいそうに焦げかかったパン。

大丈夫、まだ食べられる。

ガリガリと良い音が鳴りそうなパン。

なんだか楽しくなってきたわ。


休日なのに、なんの予定もなく。

変な時間に起きて、変な時間にパンを食べる。

よく考えればかわいそう?

業務連絡程度しか反応しない携帯電話。

友達、いないわけじゃないんだけどなあ。


ぼんやりとしながら、

何も買わないのに、パソコンでネットショッピングをしてみたり。

読書をしてみたり。

テレビの前に居続けて数時間。

昔やっていたドラマの再放送なんかが始まり、

ああ、懐かしいな。

とそれに浸ってみたり。


無駄な1日を過ごすこと。

罪悪感もあるけれど、そんな日を作ることだって、大事でしょう。

なんて自分に言い聞かせてみたりもする。


そうやっているうちにまた眠くなって、

夜眠れなくなるの。

そして質の悪い睡眠のせいで、きっとまた悪い夢を見るわ。


ああ、なんでこんなに面倒なのかしら。


どこからか聞こえてくる、ピアノのお稽古の音。

近隣から聞こえてくる生活音。

車のクラクション。

近所でやってる工事の音。

猫のケンカの声。


面白味のない生活だけど、音のある生活。

休日なんて、そんなもの。


一歩外に出たって、私にはたいしたドラマはないわ。

ティッシュ配りのお兄さんに、

嘘だとしても、

「わっ、美人……」

と言われたり。

行き慣れて顔を覚えられたコンビニの店員さんに、仕事帰りに

「お疲れ様です」

と言われたり。

そんな細やかなことが、嬉しかったりするくらい。


いつからか、一人に慣れはじめた。

いや、もともとこれが根本だったかもしれないわ。


夕飯は冷凍庫にある物をかき集めて簡単にすませ、ゆっくりお風呂に入る事にする。

最近は長くなった髪を洗うのも一苦労で。

疲れすぎた日、洗っても全く泡立たないと思ったら、シャンプーとコンディショナーが間違っていた。

時間をかけてトリートメントやヘアパックをしようとすれば、首が痛くて苦しくなるの。


ああ、せっかく指通りが良くなった髪。

リラックス効果があるはずの香りに包まれていた髪。

ドライヤーに巻き込まれ、一瞬でなんだか焦げ臭い。

こんなことなら、やめておけばよかった。


誰かに言われた。

時間の無駄でしょ。

と。

私は人より少し、のんびりしすぎているらしい。

行動を否定された私は、人間として否定されている?

人間としてさえ、認められていないのかもしれない。


そんな風に思ってしまう私は。

どうもやっぱり、ひねくれ女子で。

落ち込むこともいっぱいあるけれど、逆にそんな自分が面白くなって笑ってしまったりする。


辛さに笑っちゃうなんて、そんなこともあるんだと。

私は艶めきを取り戻し、すっかりかわいた髪の毛を、最後に手櫛で整える。

どうもやっぱり焦げ臭くて、鼻につくにおい。


ああ、本日2度目だったわね。


そんな1日。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 共感しやすい内容で、文章も訥々としながらもすんなりと入ってくる表現だったと思います。 [気になる点] 小説における表現のスタイルは人其々ですので、そう考える人もいる、程度に読み飛ばしていた…
2014/10/03 20:24 退会済み
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