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別れ

 さくらが離れると正太朗は膝をついた。

 懐疑的な正太朗にもさくらが本物の宇宙人だと理解できた。人の脳に直接知識を埋め込み、それにプロテクトをかけて他人から引き出させないようにするなど人類にできるはずがない。

 いや、さくらの正体などどうでもいい。なぜ、自分にほどこされた処置が分かっているのかも些末なことだ。問題は植え付けられた『鍵』の方だ。

 これはまずい。この事実がもし本当なら大変なことになる。いや、仮定してもしかたがない。これはまぎれもない事実だ。正太朗は与えられた知識によりそれが事実だとってしまっている。

 この『鍵』は人類が……いや、誰も手にしていいものではない。こんなものが存在していていいはずがない。さくらが『創出の魔女』と呼ばれている理由がよく分かる。こんなものを生み出そうと考える存在は確かに魔女だ。

 ろくでもない知識を与えた怒りをぶつけようとさくらの方を向くと、彼女は笑っていた。それはさきほどの無邪気なものではなかった。魔女の名にふさわしい邪悪な笑みだった。


「くふふふふふふ。タクミ ショウタロウ。あなたは最高ですわ。おもしろそうなので脳をいじるついでに記憶をのぞかしていただきましたが、まさかすでに筐体も使い手も手に入れているとは………。くふ、くふふふふふ。あの忌々しいスターダストともつながりがあるなんてもはや笑うしかありませんわね。それにあの娘も人間ではないようですわね。戦闘種かしら? オーパーツ回収同盟なんてものにも関わっているようですし、とことん星覇の種族と縁がありますのね。なんにせよ実に愉快ですわ。わたくし、運命という言葉は信じておりませんでしたが、今から信じることにいたしますわ。この偶然の連鎖を運命と呼ばずしてなんと呼べばいいというのでしょう! くふふふふふふ。あはははははははははは」

「なんのこと? 俺は筐体のありかも使い手の居場所も知らない」

「いいえ。あなたはすでに二つとも知っていますわ。いえ、筐体のありかに関しては知っている人物を知っているだけですわね。ですが、使い手の方は、あなたもご存じのはずですわ」

「誰のこと?」


 さくらは悪魔のような笑みを浮かべてその人物の名を告げた。


「そんなはずはない! 彼女がそうであるはずがない! だって、ありえないじゃないか!」

「それはおかしいですわ。だって、あなたはもう識っているではありませんか。あの方々がどういう存在かを」

「ただ俺の記憶を見ただけだろう! それでどうして判断できるっていうんだ! それにあなたからもらったデータにあの子のことは書かれていなかった! あの子がそうだとどうして分かるんだ!」

「あなたに編纂の痕跡が残っていましたわ」

「そんなこと……」

「分からないとおっしゃりたいんですの? ですが、少し考えてみてくださいまし。わたくしはあの方々の能力調査で得たデータをもとにアレをつくりましたのよ。能力がおよぼす影響に関しましては誰よりも熟知しておりますわ。納得がいかないのであれば、能力が使われたという詳細なデータをあなたに送ってさしあげてもかまいませんくてよ。わたくしの与えた知識を使えば事実か否かはっきりいたしますわ」


 正太朗はなにも言い返せなかった。否定できればどれだけよかっただろう。だが、否定する根拠がなにひとつない。あの種族の力があれば可能だと植え付けられた知識で分かっている。さくらのいうことは事実に違いなかった。

 ならば正太朗のすべきことはひとつだ。


「ひとつ、お願いしてもいいですか?」

「なにかしら?」

「あの子の正体についての記憶は消去してもらえませんか?」

「てっきり、『鍵』を消去をお願いするものとばかり思っておりましたわ。あまり気に入っていただけたようにはありませんでしたもの」

「ありがたいプレゼントとはいえませんでしたね。でも、もらってしまったからには返すのは失礼ですよ。それにもらえたこと自体は素直にうれしいですし。返すのはもったいじゃないですか」


 このプレゼント自体はろくでもないものだ。それも最悪に近い。だが、さくらが嫌がらせで与えたものでないと分かっていた。純粋に好意に基づくものなのだ。ただ、贈りものを選ぶ感性に問題があっただけなのだ。それも極めて深刻なレベルの問題が。

 なにはともあれ、好意で渡されたものを返すなど正太朗にはできない。それはしてはいけないことだ。友情をぶち壊しにする最低の行為だ。なによりも女性からの贈りものなのだ。それを返すなどもったいなくてできるはずがない! たとえ、それが宇宙人だとしてもだ!


「変な人ですわね。もっとも、もらう前に逃げようとした人物の発言ではありませんわね」

「うっ」


 痛いところを突かれた。


「いや、あの、それは、その……、条件反射と申しましょうか、ろくでもないものの予感がしたといいましょうか、本気でいらないものだと確信したと申しましょうか……」

「……だんだん言い訳がひどくなってますわよ。まあ、いいですわ。わたくしの知識を受け取ったものは泣き叫び発狂するか、消すように懇願するか、悪の道にひた走るかだけでしたもの。あなたの反応は実に興味深いですわ」


 俺、発狂してたかも知れないのか! なんてものを埋め込みやがったんだ! と正太朗は内心でおののいた。


「話がそれましたわ。あの方の正体に関する記憶を消したいという話でしたわね。なぜですの?」

「俺の身に何かがあったとき、あの子を危険な目にあわせたくないんです。自分の口からなら根性でなんとかしてみせますが、さすがに記憶を読み取られたりするのはどうしようもありませんから」

「優しいんですのね。しょせんは他人ごとでしょうに」

「他人じゃありませんよ」

「そうでしたわね。世界はそのように変質しておりますものね。いいえ、あなたは世界の変質など関係なくそうしたいからそうするのでしょうね。いいですわ。あなたの望みかなえてさしあげますわ」

「ありがとうございます」

「どういたしまして。では……」


 額をつけようとしていたさくらが動きを止めた。


「……思ったよりも早かったですわね。少し愉しみすぎましたわ」


 さくらがつぶやいた直後、正太朗たちのまわりを黒ずくめの集団が取り囲んだ。その手には様々な形状の怪しげな物体が握られていた。おそらくオーパーツだ。

 集団の後方から男があらわれた。黒のスーツに身を包んだ細身の男だった。


「ずいぶん探しましたよ、『創出の魔女』」

「あらあら。それはそれは。お時間を取らせてしまい申し訳ありませんでしたわ」

「単刀直入にいいましょう。『星の暗号』を渡せ。従っていただければ今後あなたには一切関わらないことをお約束いたします」

「それはそうでしょうね。アレの鍵さえ手に入れてしまえばわたくしは用済みですもの。関わる必要などまったくなくて当然ではありませんの。わたくし、メリットのない交渉はしない主義ですの。もっとマシな代案を考えてくださいまし」

「あなたが交渉できる立場だと思っているのですか?」

「そんななめた口きいていいんですの? 今朝のようにまたあなたの大切なオモチャを壊してしまいましてよ」

「それは困ります。これ以上、我々の保有する超技術が破壊されるのは好ましくありません」


 男が手を上げると正太朗たちを囲んでいた集団の持つオーパーツが青く発光を始めた。


「やれ」


 男の命令で黒ずくめの集団は一斉に攻撃を……してこなかった。男たちの持つオーパーツからは青い光りが消え失せ、完全に沈黙していた。


「なにをしている。はやくやれ」

「や、やっています! ちゃんと手順通りにやっています! ですが、まったく作動しません!」

「なにをした?」


 男がさくらを睨みつけた。さくらは常人なら震え上がるほどの激しい視線を受け流し、うっすらと笑みさえ添えてみせた。


「少しばかりエネルギーを吸い取らせていただきましたわ。あの偵察艇を落とすのにエネルギーを使いすぎておりましたから助かりましたわ」

「やってくれたな。『創出の魔女』!」

「あらあら恐い恐い。素が出ていますわよ、劣等種。もっと取り繕ろいませんと。それにその呼び方はやめていただけません? わたくし今はサクラと名乗っておりますの」

「桜?」

「はい。そうですわ。素敵な名前でしょう。こちらのタクミ ショウタロウが名付けてくださいましたのよ」


 男の視線がはじめて正太朗の方に向いた。あまりにも無感情な視線に正太朗は思わず震え上がった。


「お前はいったいなんだ?」

「いいましたでしょう、彼はタクミ ショウタロウですわ」

「そんなことは聞いていない。何者だと聞いている」

「だからこそタクミ ショウタロウなんですのに。この解答に驚きを覚えませんとはとことんつまらない男ですわ」


 男はまったくなにをいっているのか分からないという表情をしていた。


「『創出の魔女』。お前とこの男の関係はいったいなんだ?」


 さくらは小さく舌打ちすると「だからサクラだともうしているでしょうに……」とぼそりと吐き捨てた。


「わたくしとタクミ ショウタロウの関係ですか。そうですわね……。いったいなんなんでしょう?」

「ふざけているのか?」

「別にふざけておりませんわ。わたくしにはよく分かりませんの。そうですわ。本人に聞いてみるのがいいですわ。さあ、お答えになってタクミ ショウタロウ」


 男の底冷えするような視線に再びさらされ、正太朗は思わずうつむいた。顔をそむけたところで男の視線がなくなる訳でもない。肌に刺さる圧力に胃がキリキリと音を立てた。なんで俺にふってくるんだろうとさくらを恨む。


「俺はさくらの……友達です」


 一瞬、時間が止まったのを正太朗は確かに感じた。皆惚けた顔をしていた。黒ずくめの集団もさくらも、そしてリーダーと思われる男でさえも。皆が等しく放心し、その場に弛緩した空気が一瞬だけだが流れた。誰もが反応できず弛緩したアホの顔をさらしていたため、時間が止まったように感じたのだ。

 最初に動きを取り戻したのはさくらだった。心から愉快だといわんばかりに笑い声を上げる。続いて男が放心を解き、理解しがたいといいたげに眉根を寄せた。黒ずくめの集団は弛緩した空気をただしたものの、なんともいえない微妙な雰囲気を漂わせたままだ。

 俺はそんなにおかしいことをいっただろうかと正太朗は考えた。お互いに会話をし、贈りものまでしあった仲を友達と表現するのはそんなに間違っているとは思えなかった。


「あなたは本当に最高ですわ。いつもわたくしの予想のはるかななめ上をいきますもの。そういうことらしいですわよ」

「お前はこいつの正体を分かっているのか?」

「さくらは……さくらでしかないと思います」

「そうか」


 男は無造作に懐から銃を取り出すと、引き金を引いた。銃声が上がる。

 正太朗は頬に痛みを感じた。手で擦ると血がついた。そこでようやく銃弾がかすったのだと分かった。自分の命が尽きようとしていたという現実が襲いかかり正太朗はパニックに陥り悲鳴を上げた。


「動かなかったな。その男。死んでもよかったのか?」

「さあ、どうなのでしょうか? 正直、他人の生き死にそこまで興味はありませんの」

「そうか。では殺してもかまわないのだな」

「ええ、かまいませんわよ」


 男が正太朗に銃口を向けた。今度は自分を確実に捉えていると正太朗は確信した。


「本当に殺してしまいますの?」

「目撃者は消す」


 男はゆっくりと引き金を絞っていく。別にじらしているわけではなかった。確実に仕留めるために丁寧にトリガーを引いているに過ぎない。


「あら、残念。彼、アレの鍵を持っていますのに」


 引ききる直前の発言。男は寸前で照準をずらした。正太朗を大きく外れた弾丸は周りを囲む黒ずくめのひとりにあたった。苦悶の声を上げてそのひとりはうずくまったが、周りの誰もがそれに反応しなかった。


「手当しろ」


 男にいわれてようやく周りのものたちは倒れた仲間にかけより治療を始めた。正太朗は背筋に寒いものを感じながらそのやりとりを見ていた。人の命など気にしない集団だとこの時にはもう理解していた。そして、このままいけば自分はこいつらに捕まり……今まで感じたこともない苦痛を味あわされることになるだろうということも。


「小僧。それは本当か?」

「し、知らない……。なんのことですか?」


 正太朗はとぼける。この連中にだけは鍵の内容を話すわけにはいかない。そのためには知らないと言い張るしかない。利用価値がないと分かって殺されることになったとしてもだ。死ぬのは恐い。だが、この知識で世界が変えられるのはもっと恐ろしかった。


「あらあら。嘘はいけませんわよ、タクミ ショウタロウ。わたくしはあなたにちゃんとアレの鍵を渡しましたわよ」


 正太朗はぎょっとしてさくらの顔を見た。さくらの意図が分からなかったのだ。


「ごめんなさいね、タクミ ショウタロウ。わたくし好奇心が抑えられませんの。あなたがどのような決断を下し、どのように行動するのか。それが知りたくて知りたくてしょうがないんですの」


 さくらの顔にはどこまでも自分の興味を追及する無邪気な笑みが浮かんでいた。無邪気ゆえにたちが悪く、反対に邪悪とさえ呼べる類いのほほ笑みだった。


「そういうわけなのでヤタガラスの使い。タクミ ショウタロウはあなたにお預けいたしますわ。どうぞ、ご自由にお扱いくださいまし」


 さくらはうなだれる正太朗を立たせた。正太朗の耳に唇を近づけると囁いた。


「安心してくださいまし。約束は果たしますわ」


 正太朗の額にさくらは自分の額をつけた。脳に違和感が奔る。それに異物が混入したように感じられた。それになにか大きな力も。


「餞別も渡しておきましたわ。これから先、あなたが進む道において必ず役に立つでしょう。あと、プロテクトをあなた好みに改良しておきましたの。よろこんでいただければよいのですけれど」


 額を少しだけ離しただけのため、目の前にはさくらの顔がある。その瞳にあるのは純粋な慈しみだった。さくらが正太朗を本当に大切に思っているのが伝わってくる。そして、その慈しみゆえにさくらはあの悪魔に正太朗を引き渡すのだ。矛盾しているようだが、それがさくらという存在なのだ。

 正太朗は記憶を探った。さくらとの会話を思い出そうとすると何カ所かが靄がかかったように思い出せなかった。どうやら消去したわけではなく記憶の封印を施したようだった。それがなぜなのかは分からない。消去ができなかったのか。それともあえて残したのか。

 なんとなく後者のような気がした。消去はされていないことに不安は感じない。さくらのことを信じていたからだ。取り出せるような処置をさくらは絶対にしない。そんな確信があった。餞別とやらも調べようと思ったが、ロックがかかっているらしくなにひとつ情報は引き出せなかった。

 プロテクトの強化も確認する。技術の仕様にアクセスして正太朗は驚いた。これは無力な正太朗にとって、なによりの贈り物だった。


「ありがとう。特にこのプロテクトは最高だ。これで俺は……負けることなく戦える」


 自然と口から感謝がもれていた。約束を守ってくれたこと、餞別に対する礼、そして最強の盾をくれたことに対する素直な気持ちだった。


「どうしたしまして。よろこんでいただけてわたくしもうれしいですわ。それにしてもまさか感謝の言葉を聞けるとは……あなたは本当におもしろいですわ、タクミ ショウタロウ」

「『創出の魔女』! 今、そいつになにをした」

「うるさいですわ。お別れをしているんですのよ。少し黙りなさい」


 男が喉を押さえて苦しみはじめた。取り巻きの黒ずくめが慌てて銃を構えた。


「ほかの方々も動きませんように。同じ目に遭わせますわよ?」


 それだけで動きを黒ずくめは動きを止めた。


「なにをしたんですか?」

「しゃべれないように空気をなくしただけですわ」


 正太朗は苦笑した。もはや笑うしかないめちゃくちゃさだった。

 さくらは正太朗の腕に自分の腕をからめると歩きはじめた。正太朗を地獄へと誘うために。逃げようとは思わなかった。そんな無粋なことをしてこの友人との最期の時を穢したくなかったからだ。


「お別れですわね」

「うん」

「私のことが憎いですわよね」

「全然。悪いのはアイツらの方だ」

「そうですの。……不思議ですわ。それを聞いて安心している自分がいるんですのよ。今までこんなことをありませんでしたのに。ほんとうに不思議ですわ」

「それは僕たちがもう友達だからだよ」

「ああ……。そういうことですのね……。わたくしはただ友人に嫌われたくなかったんですのね……」


 さくらは合点がいったという清々しさと、知らなければよかったという後悔とそのほかの多くの感情が渦巻いた泣きそうな顔でほほ笑んだ。


「それを知っていればあるいは……。いいえ、それはありえませんわね。どこまでいってもわたくしはわたくしでしかありませんもの。わたくしはわたくしの興味を追求し続けるだけですわ。たとえ、それが誰かを傷つける結果となってしても」

「それでいいんだよ。さくらはさくらでいればいいんだ」

「タクミ ショウタロウ……」


 そうさくらはさくらでいるべきだ。そして、匠 正太朗もまた最後まで匠 正太朗でありつづけなければならない。たとえ、これから起こることへの恐怖で足がすくみ、絶望に心を蝕まれ叫び出したいとしても。それでも……!


「俺も最後の最期まで俺でありつづけなくちゃだめなんだ」


 これはこの先に起こることに対する決意表明。そして、偶然であってしまったこの変わりものの宇宙人との別れを最後まで自分らしく演じるための鼓舞だった。

 そんな正太朗の内面を読み取ったのだろう。さくらが柔らかな笑みを浮かべた。


「安心してくださいまし、タクミ ショウタロウ。あなたは死にませんわ」


 そんな預言じみたことをさくらはいった。


「守護者がいますもの」


 さくらはなぜか空を見上げた。つられるように正太朗も空を見た。木々の隙間から覗く空には雲一つなく、ただ澄み渡る青が広がっていた。


「さて、わたくしそろそろ行きますわ。色々と仕込みがありますの」


 さくらはなにかを企んでいる笑みを浮かべた。その視線はやはり空に向いていた。


「では、また会いましょう。タクミ ショウタロウ」

「うん、またね。さくら」


 さくらはくすりとひとつ笑いを残して消えてしまった。認識迷彩を起動したか、それともなにか他のものを使ったのかは分からないがオーパーツを使用したのは間違いない。きれいにその場から消え去ったさくらに黒ずくめの連中が慌てたように捜索を開始しようとした。


「無駄だ。もう見つからん」


 それを男が制した。荒い息をつきながら激しく咳き込む。空気をなくされたのは相当にきつかったようだ。


「場所を移動するぞ。仕込みがあるといっていた。まだなにか仕掛けてくるかも知れない。探知妨害用のオーパーツを全部起動しておけ。油断するな。あれに常識なんてものは通用しない」


 男の指示で黒ずくめたちが動き始めた。あるものは銃を構えて周囲を警戒し、あるものはオーパーツに指を走らせている。男はそのようすを見ることなく、さくらによって連れてこられた正太朗に顔を向けた。


「では、ついて来てもらおうか。タクミ ショウタロウ。さきにいっておく。私はお前を生かしておくつもりはない。楽に死ねるよう『星の暗号』についてできるだけ早くいうことだ」


 正太朗をものとしか見ていない男の瞳はどこまでも冷酷だった。



 手荒に連行される正太朗をさくらは見ていた。胸の奥でざわめく感情があったが無視した。タクミ ショウタロウは自分は自分のままでいいといった。そして、自身もそれを貫いて見せた。ならばさくらもまたさくららしく己の道をまっとうすべきだった。


「さんざん追い回してくださりましたアレに協力するなど屈辱的としかいいようがありませんわね。ですが、タクミ ショウタロウのためですもの。それもいたしかたありませんわね」


 さくらは空間制御装置を起動し、亜空間に収納しておいたコンテンパラリオーパーツを取り出した。球状のオーパーツだ。さくらはそれを起動させる。オーパーツは宙に浮かび、姿を消した。


「さて。仕込みはすみましたわ。あとはあなた次第ですわ、スターダスト・タイプ・ゼロ。あなたがはたしてどこまでやるのか……。本当に楽しみですわ」

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