父の帰宅と息子の隠し事
ハァッハアッ・・・!
俺は今走っている。何故走っているかと言うとさっき見えた光の方向には自宅があることに気付いたからだ。この時間帯なら娘は塾に行っているがおそらく息子は家にいるはずだ。
「くっ、何が起こっているかわからんが、明日も仕事が増えそうな気がする!」
★☆
走り続けてやっと家についた。ここまで頑張って走ったのは中学の徒競走以来だ。
俺は荒れた息を整えつつ家を見る。特に異状はなし。家か壊れていたり、お隣さんの家が壊れていたりはしていない。
「ふう・・・、よかった・・・、俺の思い違いのようだ」
確かに光は俺の家の方に落ちたと思ったが・・・、まあそんなことは明日調べればいいだろう。
「ただいまー」
俺はそのまま家のドアを開け中に入る。おそらく息子が飯を作ってくれているはずだ。
家に入ると、飯のいい香りがしてくる・・・、と思ったら違う匂いが紛れ込んでいる。
「くんくん・・・、この匂いは・・・」
飯のにおいや娘や息子のシャンプーのにおいとは違う別のにおい・・・。
香水のような匂いな気がするが、友達でも呼んでいるのだろうか、それにしては声が聞こえるわけでもない・・・。まさか、女か!こんな時間に女連れ込むなんて!修二、女に襲われるぞ!
そんな分析をしているとダダダッと階段を駆け下りる音がした。
「お、親父!帰ったのか!は、早かったな!!」
二階から降りてきたのは息子の修二だ。
急いで降りてきたのか息が乱れている。
「うん?別に早くないと思うよ?」
「そ、そうか!飯はできてるぞ!レンジで温めてくれ!」
・・・、怪しい。何か焦っているような・・・。いや、まるで何か隠そうとしているようだ。カマかけてみるか。
「なんだか、香水みたいなにおいするね。誰か来てたの?」
「な、なわけないじゃん!あ、姉上のお友達じゃないでしょうか!!お、俺は勉強してくるから!絶対!絶対部屋はいるなよ!」
そういいながら、息子は二階へと駆け上がって行った。
露骨すぎだろ息子よ。これは部屋に何か隠してるな。
・・・、うすい本を読んでいた、PCでちょっとアレなサイトを見ていた、彼女を連れ込んでいた(これはないと思うけど、てか俺が許さん)・・・、いろいろ考えられるな。
「とりあえず、着替えようかな」
俺が靴を脱いで家に上がろうとすると、床できらりと光るものが目に入った。
「何だこれ?」
つまんでみると、それは細い毛のようなものだった。銀色だ。
「髪の毛か?」
かなり長く、金色、息子のものでも、娘のものでもない金色の髪の毛(仮)。動物でも部屋にかくまっているのではないかと考えたが、こんなに長い毛の動物はいないはず。(妖怪とかでもない限り)それに香水のようなにおいもしているのだ。
「うーむ・・・、さっきの光も気になる。こりゃ、やっぱり調べないとな」
息子や娘にに危害が加わるようなものなら尚更な。
ちなみに、今日の飯はロールキャベツ、キャベツサラダ、キャベツ春巻・・・extとキャベツ料理のオンパレードだった。
★☆息子★☆
「修二!塾行ってくるから。お父さんのご飯頼むよ!」
「はーい!」
俺が漫画を読んでいると一階から姉の声が聞こえた。姉は塾に行くみたいだ。何時ものように俺が飯を作る。たまには変わってほしい。
漫画を読み終え、飯を作るために一階へ降りる。
今日は、何を作ろうかなと思いつつ冷蔵庫を開ける。
「うげっ!」
思わず変な声を出してしまった。何故かって?冷蔵庫の中にキャベツが大量に入っていたからですよ。
「あー、忘れてた・・・。キャベツ特売だったから買いまくったんだった。」
仕方ないよな、特売なんだから。うん、仕方ない・・・。
「今月はキャベツ料理で我慢してもらおう」
幸いうちの家族は好き嫌いが無いし。好き嫌いがないと本当に助かる。飯を作る方も嬉しいし。
エプロンをして冷蔵庫からキャベツを何玉か取り出す。作る料理は簡単なものでいいだろう。キャベツ料理初日だし。使い慣れた包丁でキャベツを切る。
「このしゃきしゃきした音好きだな」
★☆
「完成っと」
机の上に大量のキャベツ料理が並ぶ。作りすぎたかと思ったが、作りすぎた分はご近所さんににおすそ分けすればいいか。
俺はおすそ分けのためキャベツ料理をいくつか布でくるむ。
「家の鍵は、いいか。どうせお隣さんだし」
エプロンを脱ぎ、玄関に行って靴をはく。全部は持てないから一つづつ持っていくことにした。
その時、ドンっと玄関で音が聞こえた。
「ノック?な訳ないか」
ドアを開け、外に出る・・・と、おかしなものが落ちていた。
それは銀髪の女の子だった。もう一度言うぞ、女の子だ。オレと同い年くらいの女の子が俺の家の玄関に落ちています。
「えっと、・・・、その・・・、不法投棄・・・、ですか?」
混乱した俺の口から出たのは、そんな、訳の分からない言葉だった。
すると、女の子は顔をこっちに向け、上目使い気味で震える声で答える。
「行き、だおれた・・・。何か・・・、食べ物よこしなさいよ・・・」
その言葉に作りすぎた俺はキャベツ料理を思い出す。
「キャ、キャベツでいいなら・・・」
★☆
ハーイどーも、現場の木坂修二です。今現在、俺の部屋には美少女が来ています。羨ましい?羨ましいですか?それなら、リスのように頬を膨らませた女の子は女の子に見えるのでしょうか~?見えませんよねー。
「もが、もが・・・、なんでキャベツしかないわけ!むしゃむしゃ!」
女の子は、手でぱくぱくとキャベツ料理を食べながらキャベツ料理に文句を言う。
ちなみに箸を渡したら『こんな短い棒きれで食べられる訳ないじゃん!手で食べるよ!』と言われた。どこの原始人だ。スプーンやフォークを使えよ。
「あ――――!!もぐもおいしいけど!おいしいけど!なんでキャベツばっかりなのよ!うぐ・・・、のど、つまっ・・・た」
そういってドンドンとふっくらした胸元をたたく。彼女が胸を叩くことによって胸元の大きな・・・、大きな・・・、メロンが揺れる。
思わず顔をそむける。
「んぐ!んぐー!」
彼女は俺に指さし何かジェスチャーする。や、やめろ!暴れるとメロンさんも暴れる!
「んぐ・・・ん・・・・・・」
彼女はジェスチャーをやめうずくまって喉元に手を添えた。
「おい、どうした・・・、って水か!!」
急いで一階の冷蔵庫からお茶の入ったペットボトルを取ってくる。
俺の部屋についたときには女の子は真っ青な顔になっていた。
「大丈夫かぁァぁぁ!」
女の子の口にペットボトルを突っ込む。ごくごくと水を飲んでいるようだが顔の青さは変わらない。むしろ悪化している。
(くっ、何故治らない!仕方ない、二本目のペットボトルを!)
「ぐぼ!!ぐぼっ!!!んんーーー!ぷはっぁ!!」
女の子はじたばたと暴れてペットボトルから口を離す。
「大丈夫か!」
「げほ!!がはっ!!大丈夫な訳ないでしょ!放置プレイに水責めとか殺す気か、このドSがァ!!」
女の子は咳き込みながら俺をにらむ。
「え?なんでSなの?」
「自覚なしかよこのやろォッ!!天然ドSか!たち悪いわ!」
そんなことを言われても・・・。俺は親切にも飯を与えて、喉の詰まったやつにお茶をわざわざ持ってきてやったんだが。
「そんなこと言われてもね・・・。つーか、そんなことより、なんで、人様の家に不法投棄されてたの?君はさ」
俺は話を変える。本題はこっちだ。ドSについてはどうでもいい。
「えっと、それh「ただいまー」
「げ!親父帰ってきた!」
まさかの親父帰宅。
女の子なんか部屋に入れていたらなんて言われるかわからない。親父はなぜか俺の部屋に女の子を入れさせてくれない。幼馴染でも許さない。家に入れるのも嫌っているようだが・・・。
「えーっと・・・、君はここで待ってて!絶対!降りてきちゃだめだから!」
俺は階段を駆け下りる。
「お、親父!帰ったのか!は、早かったな!!」
急いで降りてきたため、かなり息が乱れ不自然だったかもしれない。いや、親父だ。気づくわけがない。
「うん?別に早くないと思うよ?」
案の定、親父は何も気づかなかったようだ。これなら誤魔化せそう。
「そ、そうか!飯はできてるぞ!レンジで温めてくれ!」
いける!天然な親父だ!このまま押し通せる!ちょろい!ちょろいぜ!親父!
と、思っていると親父は突然、鼻をクンクンと何かを匂うような動作を始めた。飯を探ってんのか?
「なんだか、香水みたいなにおいするね。誰か来てたの?」
うおぉぉ!!なんでそんなもん分かるんだよ!怖えよ!
と、とにかく!ご、誤魔化さないと!
「な、なわけないじゃん!あ、姉上のお友達じゃないでしょうか!!お、俺は勉強してくるから!絶対!絶対部屋はいるなよ!」
俺は、後ろを振り返らず。二階へ行く。
不自然だったが何とか誤魔化せた。よかった、よかった。