第16話 検査 Side:太和 勲(1)
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Side:太和 勲
俺の名前は、太和 勲
対魔物対策庁対魔物戦術課教導隊《たいまものちょうたいまものせんじゅつかきょうどうたい》東海支局に所属する教導官だ。
仕事内容は、魔物に有効な武装・戦術・能力の研究開発、実働部隊である機動戦略隊・地域防衛隊・自衛隊との共同部隊である対魔物戦術隊の指導・訓練だ。
ある日の午後、俺は課長に呼び出された。
ここの課長は、東海支局長も兼任しているから滅多な事が無い限り呼出を受けることはない。
だからだろう、同僚から「お前 何をやったんだ?」「ご愁傷さま!」とか声を掛けられた。
そりゃあ、課長の呼出って「懲罰」か「厄介事」だからな~。
時間通りに課長室の前に着いた。
ノックをして、「太和 勲 3尉 参上しました」
少しして、「入れ」と返答が返ってきた。
「失礼します」と声を上げて、入室すると、
机に座っている課長と机と対面して立っている部隊長が居た。
部隊長の横に移動し、課長の方に向き直った。
「よく来てくれた。
硬い話では無いから楽にしたまえ」
どうやら、緊張しているのがバレていたみたいだ。
「隣の研究課《思金》から支援の要請が来た。
依頼内容は、現在入院している能力の発露者の指導と能力の見極めだ」
俺は、釈然としないでいた。
自画自賛になるが、これでもBランクで機動戦略隊では部隊長として最前線にも立っていた過去がある。
「まあ、怪訝に思うのも仕方ない。
通常なら、太和3尉程の人物を派遣する事は無いからな」
課長は、苦笑いをしながらそう言ったが、次の瞬間顔を引き締めた。
「今回の被験者だが、世界で8人目の性転換者で15歳3ヶ月で能力が発露した最年長能力発露者。
過去の性転換者は、発露後魔力を失っているがこの者は思金の三上主任が診断した時点でCランク以上の魔力を有している事が確認されている。
しかも、短時間で急速に成長している事も確認された。
能力は、身体能力系と放出系の最低2系統が確認されている」
それを聞いて、俺は驚愕した。
能力の発露者は、7~12歳の子供で1000人に一人の割合だ。
13歳を超えてから能力の発露は10億人に1人。
14歳以降なんて、これまで事例なしだった。
発露後は、魔力量・能力値もFランクが相場だ。
Eランク判定なんか、発露者の中でも1000人に一人だ。
Dランク判定なんか出ようものなら、マスコミが騒ぎ出すレベルだぞ。
それが、最低Cランクの魔力量とか。
最低でも2系統の能力持ちとか・・・
発露直後の能力は、大体1系統 しかも、身体強化なら1部位とかが普通だ。
その後の訓練で複数の能力を習得する事は出来るが、発露直後で複数の能力は希少だ。
どうしても、先天的に発露した能力と後天的に発露した能力では前者の方が強くなりやすいからな。
「そこで、隊長の伊坂2佐と相談の上、太和3尉が適任であろうと決定した。
太和3尉 貴君を研究課《思金》への応援派遣を任ずる。
期間は、明日1日だ」
「太和3尉
研究課で、被験者の指導・能力検定任務拝命しました」
「よろしい。
詳細な資料は、伊坂2佐より受け取るように。
補助人員等が必要な場合は、伊坂2佐と相談するように
以上だ」
「はい、失礼します。」
その言葉を以て、課長室を退室した。
隊長は、まだ課長と話があるようで室内に残っていた。
自分の席に戻ると、同僚達から何事か聞かれたので、明日、思金で発露者の能力指導と見極めのための派遣の話だと答えると、一同怪訝な顔をした。
そこで、対象者が最低Cランク相当の魔力量と2系統の能力の持ち主である事を伝えると一斉に驚いた。
ここの教導隊には、Aランクの隊員はおらず、Bランクが俺を含め3名いる。
「魔力視認」の能力を持ち、身体強化と放出系を持つのは俺だけだった。
だから選ばれたのだろう。
隊長が、被験者の資料を送ってきたので目を通した。
資料では、男性の頃の身体データと顔写真、15歳3ヶ月で発露、性転換後、眼皮膚白皮症を発症としか記載されていなかった。
気になったのでネットで調べてみると、どうやらアルビノの事らしい。
紫外線が苦手と記載されていたので、検査会場を室内で十分な広さとCランク以上が暴れても良い場所として、第一体育館を選択した。
あそこなら、床面が100m☓200mもあるし天井までの高さも30mと十分高い。
しかも、Aランクがかなり本気で暴れないと壊れない頑丈さもある。
放出系は、第一屋内射撃訓練場で良いだろう。
午前中は、基礎運動能力調査だから俺一人でもいいが、午後の検査は向こうのスタッフを借りたって一人では無理だ。相応の能力を持つものを3名位必要だ。隊長に掛け合い、午後の検査中人を出してもらう事を了承してもらった。
この日は、明日の準備だけで終わってしまった。。
当日朝、研究課の三上の所に顔を出し、今日の予定と前日の検査データを確認して、第一体育館で被験者が来るのを待っていた。
研究課の三上主任とは入庁同期だから、お互い呼び捨てで呼び合っている。
被験者は、定刻通りにやって来た。
外見は、10歳前後の色白というか真っ白で、紅い目が特徴的な少女だった。
今朝の資料で、現在の身体データと顔写真と生理的検知データを確認したが、実際に見るとかなり小さく見える。
手持ちのタブレットでデータを確認したら、身長126.5cm 体重20.2kgと表示されているが、データよりも一回り小さく感じるな。
しかし、昨日の資料より保有魔力量が多い。
俺の魔力量を超えているな。
午前中は基礎運動能力データの収集に当たるのだが、あまりにも手足が細すぎる。このまま簡単な準備運動では怪我の元に繋がると思い入念な事前運動を行うことにした。
基礎運動能力データは、小中学校でやっている体力測定と大差ないから特に特筆した能力も無く終わった。
早速、三上の所にデータを渡したら、所見を求められたから
「基礎身体能力は、10歳女子の平均値相当だった」
と答えておいた。




