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発狂しそうである。

作者: 崎村シイ
掲載日:2026/03/01

発狂しそうである。


何もかも、全ての理不尽に。

こうして文章を打っている時ですら、文字を一つ打ち間違えてバックスペースキーを押しながら頭を掻き毟りたくなる瞬間がある。

ただしこれはタイピングが上手くないからだ。言い方を変えると、タイピングが下手だからである。

原因は明確で、何ら理不尽でもない。

ゲームのし過ぎで擦り切れ文字の判別がつかなくなったS、W、A、Dキーのあたりでよく押し間違えている。それでも腹が立つ。キーボードをいっそ新しくぢて……新しくして、しまえば変わるのだろか。タイプミスは減るのだろうか。そんなことを考えながら、でも自分で打ち間違える以外は何の問題もなく使用できるからいいのでは、などと思い。この発狂したくなる気持ちを抱えながら、結局のところ新しいキーボードは購入しないのである。


私という人間は愚かな生き物だ。

前述したとおり、何かと頭の中では発狂しそう。などと考えながら、それでも表面j工は……表面上はたった一つのタイプミスをバックスペースキーで消しつつ、カタカタと文字を打ち込んでいる。何の問題もない、穏やかな水面のような感情を装いながら。


仕事でもそうだ。日頃の定型業務を淡々とこなし、時折転がり込んでくる突発業務にも対応する。考え込むほど困難な仕事でもなく、あくびが出るほど暇な仕事でもない。それなりにやりがいはあるし、人から感謝の言葉を貰うこともある。給料は安い。これにはたまに発狂しそうな時もあるが、世間的に見て今の仕事環境、会社の福利厚生から考えれば甘んじて受け入れられる範囲内ではある。

残業もほどほど。よほどのことがない限り休日出勤はなく、なにより土日祝休みである。

人によっては喉から手が出るほど欲しい職場環境なのかも知れない。

たた、それでもやはり発狂しそうになる時はあるのだ。


挨拶を返さないヤツ。

仕事の報連相を怠るヤツ。

最後のコピー用紙を使い切って何も言わないヤツ。

流しの三角コーナーに固形物を平然と捨てるヤツ。

部屋の隅でいつもヒソヒソ話をしてるヤツ。

トイレ出た時に手を洗わない汚いヤツ。


発狂しそうである。


もちろんこれは私のエゴだ。

挨拶を返さないのも、報連相を怠るのも、コピー用紙を使い切って言わないのも、三角コーナーに固形物を捨てるのも、ヒソヒソ話をするのも、手を洗わないのも。非常識で迷惑で不潔だが、基本的にはそいつの自由である。もちろん仕事の報連相はそれだけで済まされない案件もあるが、それでもしないヤツはしない。というよりも報連相の重要性を理解していない、報連相をしないことにより起こる、会社や周りの人間への影響を想像できないただのアホである。

そんなやつにわざわざ重要な仕事を任せたりはしないのだから、結果として周りがなんか若干不便や迷惑を被ってイラつく程度の報連相を怠っているのだ。

結果として発狂しそうである。


職場は発狂の宝庫だ。

我慢と笑顔の反復横跳びで出来ている。

朝のすれ違いざまの挨拶を無視されることにより軽くジャブをくらい、朝イチにかかってきた電話で休みの同僚の報告漏れを知り、倉庫作業中にコピー用紙の枯渇を知る。最後に持ち出したヤツの上にだけ雨が降ればいい。

午後になり遅くなったお昼をとろうと食堂に行って手を洗えば、三角コーナーに山盛りの揚げ物の食べかけが捨てあり、汁物の流れを阻害している。お昼を終え、デスクに向かって仕事と眠気と戦っていると、いつもの角からもはや恒例と化した、うっすら聞こえるが内容までははっきり聞こえない程度の内緒話がツイッター(X)の囀りの如く聞こえてくる。ブロックしたい。

うんざりとしながら缶コーヒーを飲み、缶を捨てがてらトイレで用を足し、手を洗っていると、個室から出てきた上司が手を洗わず後ろを通りそのまま出ていった。その手で共有物品を触らないでほしい。


発狂しそうである。


それでも毎回発狂していては仕事にならないので、笑顔というコンクリートで顔面を覆い、穏やかな声色で、

「●●さん、お忙しいところすみません。今お時間いただいてもよろしいでしょうか?実は先日の──」

これである。相手に発狂しそうな時ほど愛想よく。丁寧に。

顔面のコンクリートにヒビが入って崩壊する前に、素早くかつ確実に要件を一撃で終わらせる。

「ありがとうございました、助かります」

一体何が助かったというのか。しかし会社とはこんなものである。

ちなみに言うと、世間もこんなものである。

恐らく、全員がうっすらと何かに対して叫び出したい、暴れ出したい気持ちを抑えながら、その辺の道では平常心を装いながらお互いすれ違い、暮らしているのだ。


なので、この文章を打っている間の無駄に多いタイプ身も……タイプミスも、たぶん私だけではないはずだ。他の人たちも数多くのタイプミスを繰り返しながら、一つの物語ウィ……物語を書き上げているはすなのだ。


そう思わばければ、発狂しそうである。

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