謎の朝
あー、きっつ。
最近、酒を飲むと次の日が本当にきつい。……いや、そこじゃない。
新宿西口公園のベンチに、横たわっている。
昨日の夜を思い出す。
太陽企画の山田さんと打ち合わせをして、金曜だから、という理由でそのまま歌舞伎町へ。
居酒屋で一杯やって、いい感じに酔いが回ったところで、山田さんが言い出した。
「キャバクラ行こうよ!キャバクラ」
と言い出したので
まあ、会社の金だしな。そんな軽い気持ちで、1時間ほど。
そのあと「もう一件」という流れになり、西口の思い出横丁へ。
……そこから先が、あやふやだ。
確か、山田さんをタクシーに乗せて見送った記憶はなんとなくある。でも、なぜ自分は新宿西口公園にいる?
酔っぱらいが歩くには、ちょっと距離がある。
いや、待てよ。
学生の頃、新宿西口でバイトをしていた。終わりに飲みに行き、金がなくて終電を逃すと、ここに来てベンチで寝たことが何度かあった。
……とはいえ、いい歳した酔っぱらいが「懐かしいから行ってみよう」なんて思うだろうか。
金曜の夜でタクシーが捕まらず、なんとなくここまで歩いてきた、そのあたりが現実的か。
もう貧乏でもないんだから、満喫でもビジホでも泊まればいいのに。
――酔っぱらいに、そんな判断は無理だ。
謎だ。まあ、謎は謎だから、謎ってことで。
公園入口近くの自販機で、缶コーヒーを買う。
気温はちょうどいい。暑くもなく、寒くもない。二日酔いさえなければ、最高なのだが。
飲みすぎた。
山田さんは年も近く、趣味も似ている。クライアントではあるが、友達に近い距離感で付き合えている。
だから、たまに繰り出すと、つい、しっかり飲んでしまう。
さて、帰るか。
ここからだと……西新宿五丁目か、都庁前か。
気候もいいし、西新宿五丁目駅まで歩くことにする。
バイトしていた頃は、まだ大江戸線がなかった。選択肢としては新宿か代々木か。
便利になったものだ。
駅に向かって、ダラダラ歩いていると、熊野神社が見えてきた。
一晩お世話になったようなものだし、ご挨拶でもしていくか。
正面ではなく、脇の門から入る。
右手に小さな池があり、そこに橋がかかり、小さな赤い祠があった。
前は、気にも留めなかった。でも、今は、なぜか気になる。
――なんだろう、あれ。
スマホで調べる。
「十二社弁財天」らしい。
じゃあ、こっちも。
小さな祠の前には、鉄製の賽銭箱。弁天様は、水と芸術の神様だ。
「賽銭を入れるとき、いい音がするといい」そんな話を聞いたことがある。本当かどうかは、これも謎。
鉄なら、いい音がするだろうか。そんなことを考えながら、賽銭を入れる。
……いい音というより、ドラム缶を叩いたような鈍い音だった。w
本殿にも挨拶をして、鳥居をくぐる。
なんだか、気分が少し良くなった。
せっかくだし、参宮橋あたりまで、歩いてみようか。




