第6話
「なんでよ、私たち友達じゃないの?」
あの人たちは!?うちの学校でもクラスカーストが高い女子の内田さんと水原さんだ、どうしてこんなとこに。
3人の会話を見つけた途端反射的に僕の体は物陰に隠れていた。
「友達ですけどこればっかりは」
「友達なら隠し事はなしじゃない?」
「でも、こればっかりは、」
あの3人顔が皆んな赤いな、夏なのにずっと立って話してるのか、仕方ない。
「あ、ごめんちょっと電話…うん、うん、わかった今から行く、麻耶、もう戻らないと、みんな待たせてるし…」
「そうだね、もう行かないと、じゃあね瞳、また今度絶対教えてね!絶対だからね!!」
「絶対だからね!」
あの二人仲良いな、肝心なところでハモるなんて。
その時僕は見てしまった、天川さんの顔が色々な感情が混じり、本当に奇妙な表情、まるで感情の仮面が取れかかってしまったような、そんな表情だった。
♢♢♢
あれから1時間ほど経だだから僕は帰宅した、すぐ帰ったらもしかして聞いてた?みたいな感じになるのも嫌だと思ったからだ、決して心配性すぎるわけじゃないぞ!
「ただいま〜」
反応はない、ただ、姿なら目の前にあった、ソファーに横になり寝ていた、涙を少し流しているから、少し赤ちゃんみたいになるんだな、と思った。
♢♢♢
「あれ、少し寝ちゃってました?」
「うん、僕が帰ってきてから1時間くらいは」
「そうですかってご飯作らないと!!」
その会話を通して僕は分かった、前より言葉に感情がなっていない、だからだろうか僕はその言葉が咄嗟に出ていた。
「感情をどこかに吐き出さないとずっと何も変わらないままだぞ」
「え!?急にどうしたんですか」
「言葉の通りだ」
「私が、感情を溜め込んでるって言いたいんですか?」
「そうだ」
「あなたになにがわかるんですか」
「僕には何もわからないぞ、ただ周りから見たらそう見えるだけだ」
彼女の呼吸が荒くなる、声が震え、整えようとするが整う気配はない、まるで全速力で走った時と同じくらいまで徐々に荒くなっていく
「そうです、あなたにはわからない、私が今どんな気持ちで、どんなことを考えているかなんて!!」
彼女の怒鳴り声が響く、その声はとても怒っているようにも感じるが、同じくらい悲痛な叫びにも聞こえる、今にも早く助けてほしい、そんな悲痛な声が響く
「わかるわけないよ、そんなの、僕たちは違う人間だ、だから何も違う、たとえ全く同じようでも全然違う」
「じゃあそんな分かったような話し方しないでよ!!」
涙がポロリと落ちていく、それは怒りの涙か嘆きの涙かはわからない。
「そもそも私の事何にも知らないくせに、どんな生き方したか知らないくせに、簡単に言わないでよ、感情を吐き出すって!!」
「それだけは簡単に言えるよ、だってそんな君のこと何にもわからないような僕に感情をぶつければいいじゃないか、僕なら他人だ、気を使わずに吐き出せる」
「それは、そうだけど、」
「話してくれ、どんな生き方をして、どんなことを考えて、今どんな気持ちなのかを」
「わかった」
「私はさ、記憶がある最初の頃はさ、とても幸せだったの、お母さんもお父さんも、私に構ってくれて、みんな幸せだった、」
「でも、お母さんとお父さんが離婚してから全てが崩れた、お父さんはなかなか構ってくれなくなったしお母さんはどこかに行っちゃって、だから私思ったんだ!学校で1番になったらまたお父さんが構ってくれるかもって!!」
「だから学校で1番を目指し始めたっていうことか」
「うん、まず勉強や運動、その後動きな所作や周りへの接し方、全てを頑張った!」
だからお嬢様みたいだったのか!!
「でも結果は上手くは行かなかった、それに最近お父さん入院しちゃってさ、その時に近所の花さんから聞いたんだ、お父さんが私の為に頑張ってたこと、そしたらさ、色々な感情が出てきたんだよね、心配な気持ちとかお父さんを苦しめてたのは私だったんだとか、今まで頑張ったのは無意味だったんだっとか」
「そしたらさ、なんか全部がどうでも良くなってさ、気づいたらぶらぶらしてた、そしたら君と会ったの」
「なるほど、そんなこと思ってたんだ、それと一つ謝らなきゃならないことが僕にあるから言わせて」
「え、急に何?」
「実は君のこと少し調べたんだ、それで家庭のことをも花さんから聞いて知ってたんだ、それと君のお父さんにもあったんだ、そして何も言わずにこの映像を見てほしい」
「え、調べたってどうやってって聞きたいとこだけど、とりあえずわかった」
【瞳、何も言ってなくてごめんな、お前の気持ちにも気づいて無視しててごめんな、でもこれだけ言わせてくれ、お前のこと大好きだぞ】
そこにはニッコリと笑顔を作っていた天川さんのお父さんがいた、その映像を見ていきなり感情が涙として溢れ出していった、号泣していることから本当に溜め込んでたんだな。
実はこの映像は、あの女子たちが帰ってから1時間後の帰宅までに病院に行っていた、その時に、いま天川さんのお父さんがどう思ってるのか、伝えられるとしたら何を伝えたいかを聴いて撮った映像だ、この案を思いつかず帰ってたら上手く行かなかったかもしれないし、あの二人には感謝だな
♢♢♢
「いろいろありがとうね、何も言わずに調べられたのはちょっと酷いと思うし、訴えたっていいんだよぉ〜」
「それはご勘弁を!!」
「じゃあ二つ願いを叶えてほしい」
え、急にランプの魔人みたいなこと言うじゃんこの子。
「わかったなんでも叶えてあげます」
「じゃあ、一つめ、名前を聞かせて!」
「分かりました、赤崎健です」
騙すようで悪いが、こんなクラスの中心の人物に僕の存在は認知されてはいけない、僕の為に本当の名前を明かすわけにはいかない。
「じゃあ二つめね、また溜め込んじゃだたら、感情を出す私のゴミ箱になって!」
「ゴミ箱って、もっと他の表現あるだろ、」
「じゃあそれだけ」
「じゃあ花さんが迎えに来てるからもういきな」
「本当に手配がいいよね、」
「じゃあまたな」
「うん!」
最後の微笑みはとてもスッキリしているように見えたがどこか引っかかる、まあいいか、そういえば本音で話してから、めちゃくちゃタメ口で話してたな、次から気をつけないと