第21話
体育祭当日になったわけだが、たとえ心で嫌われていてもわざわざ絡みに来るやつはいない。まあそんなことはどうでもよくて、僕の今日の種目はこのクラス対抗リレーと玉入れだけだ、そして今ちょうどリレーが行われている。
「はい、じゃあ30レーンの方並んでください!!」
なんでかわからないが僕は意外と周りに早い人が多い順番になっていた、まあこんな順番になったのはもともとうちのクラスで早い人が少なかったからだ。体力テストで手を抜いても早いほうに分類されてるからこればかりは仕方ないのだが。
「おい、千秋あとは任せた!!!」
昨日のこともあるし今日くらいは本気でやる責任あるしな。
「ああ」
大地をけり始めながらバトンを受け取る、そして徐々に加速していく、風を切る感覚、息遣い、すべて懐かしい感覚だ、この夏の匂いも応援の声もこの体の使い方も、だが最近体に負荷をかけ過ぎたからかまるで大岩がのっかっているようだ、まあひとりは抜けそうだな。
「来るな来るな来るな来るな!!なぜ今までその足を隠してきた!!!」
何も話さない、呼吸のペースを悪くするわけにはいかない。
「くそぉぉぉぉぉ!」
「あとは任せた、夕陽」
「ああ!かっこよかったぞお前の走り」
周りの歓声が盛り上がる、きっと夕陽な出番だからだ、これくらいすれば責任果たせたってもんかな。
「千秋君お疲れ様です」
「ああ、菅野下か」
「なんで、あんながんばったんですか?珍しい」
「まあな、昨日の、一件の、責任が、あるからな」
「ゆっくり息して休んでください!!」
「じゃ、休みに、いくから」
「はい、なにかあったら知らせてください!」
♢♢♢
おかしい、走った後から全然動悸が止まらない、あれから5分は経つのに、それにだんだん血の気の引く感覚が、これやばいな、救護室に行かないと…
きっと周りからは相当ふらついているように見えるだろう。だが頼れない、そんな環境を作ったのは自分だ。
徐々に視界が暗くなってく。
死ぬとき最初に失う五感が視界からって聞くけどほんとなんだな。
手も震えだし、全体的な感覚が薄れだす。
これほんとにやばいやつだ…あと少しで救護室なの…
「千秋君!千秋君!!」
♢♢♢
「う、」
「千秋君!!」
「なんでそんなに泣いてるんだよ」
少し弱まった声で言う。
どうやら僕は倒れたっぽいな、頭の奥がズキズキと痛むし
「なんでって、心配かけるからでしょ!、おバカさん」
「当たり前か、あはは、そういやなんで救護室じゃなくて保健室にいるんだ?」
「先生が状態的に救護室じゃなくてクーラーの利く室内がいいからって特別に開けてくれたの」
「そっか…」
「何か言うことあるんじゃない?」
「助けてくれてありがとな」
「違うでしょ!!」
「え?」
「もうこんな無茶はしないって約束して」
「え?」
「いいから!!ほんとに怖かったんだから」
「もうこんな無茶はしません…」
「よろしい」
涙を含んだその笑顔はとても輝いて見えた、ひまわりのように、太陽のように
「千秋君がさ、走った後なんか様子がおかしいと思って見てたらさ、いきなり倒れちゃって、私が見て なかったらほんとに危なかったと思うよ」
「それに関してはほんと助かった、菅野下」
「他の人はさ、千秋君も凄かったのにあんまり見てなかったからさ、君のことは」
「でもお前が見てくれてた」
「まあね…」
そっぽを向く、よっぽど照れ臭かったのだろう。
「そういえば今何時だ?」
「もう16時だね」
「そっか」
「じゃ、帰るか」
「うん」
それからはただ静かだった、でも妙に心地よかった。
♢♢♢
*カチャリ*
「天川さんいるか?」
「うん」
「もしかして怒ってます?」
「まあね」
「理由は二つ、一つ目は無理しすぎなこと、二つ目は心配なのに駆けつけられないこっちの身にもなってほしい、菅野下さんはいいのになんで私は…」
「もしかして嫉妬してます?」
彼女の顔が徐々に赤くなってく
「違うよ!!」
「ごめんな、その分休日遊びに行ったりしてるだろ?」
「それも一回だけだけど…」
「あ、あれ?ソウダッケ?」
「とぼけても無駄だよ」
「ごめんな」
それしか言えなかった、だって目立ちたくない理由なんて言える分けないのだから。
☆☆☆
「やっとお兄ちゃんに会える!!」




