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毒を涙で流したら

お前は王太子妃になるのだよ


言われ続けて育った私


筆頭公爵、(いち)の姫

第二王子の婚約相手

世間に知られる肩書は、そんなところで自認も同じ


第一王子は病弱で

この先長く、なさそうで

第二王子が次の王


未来の伴侶がこの私


幼い頃からお妃教育

長く続いた淑女の教え


今更他の何にもなれはしない

選択肢(みち)がないもの私には


殿下に(うなず)き、()と言い、(ささ)

尽くすことだけ正解で

その()はすべて不正解


喜怒哀楽を押し殺し

過ごした私はいまはもう

何をどう感じれば

良いのかさえもわからない


だってすべて手放して

だってすべて諦めた


私に残るは重いドレスと無駄(ムダ)宝石(いし)

作り物の笑顔だけ


時間も感情(ココロ)(ささ)げた、なのに


殿下が恋人連れて来た


あけすけに、笑う彼女が新鮮で

思うままに言葉を述べる

そんな素直さ(いと)おしい?


あなたは何を言っているの


それは妃に許される、要素じゃないわ 出直して


認めるわけにはいかないの

だって私の人生、全否定


殿下が道を(はず)すなら

是正するのが私の役目

邪魔は排除しなくては


正しく動いた私に対し


憎しみの目を私に()けるの?

恨みの言葉を私に(はな)つの?


どうあがいてもソレ(・・)はもう

動かないし、助からない


私を見下し嘲笑(わら)った女

正妃を夢見た下位令嬢


血だまりの中、消えゆく命

あえぐ呼吸も(はかな)くて

すぐに無へと(かえ)るでしょう


婚約破棄を告げられた

そうねわかった、受け入れる


早く言えば、良かったものを


それなら私はソレ(・・)(のぞ)かず

ソレ(・・)は生きていられたわ


口をつぐんでだんまりですか

ならば代わりに言いましょう


あなたの未練がそうさせた

地位にこだわり玉座(ぎょくざ)を望む

あなたの固執がそうさせた


王になりたいあなただもの

私を手放し公爵の、怒りを買いたくなかっただけ


(はかり)にかけていたんでしょう?

先の栄誉と権力と


私のことは結婚後、病死で処理して、はいおしまい

あなたは望みを手に入れる

そんな計画(えが)いてた?


うふふ

くすくす

あははは


楽しいわ

これが愉快という感情?


あなたからの解放で

私は感情(ココロ)を取り戻す


修道院に生涯幽閉?


構わないけれど、その権限

果たしてあなたにあるかしら?


国が認めた縁談を、壊した男爵家の令嬢

身の程知らずな小娘に、制裁しただけ (わたくし)

()()()()()()()()()()()()()()()()()第二王子(あなた)


どちらの罪が重いのか

並ぶ皆さまに問いましょう?


あらまあ、お顔が()(さお)


どうして知っているかって?


あなたの愚行を探るため

私が放った部下たちが

持ち帰ったの、あなたの秘密


毒を買い続けるあなた

毒を向けてる、相手の名前


だから私はその毒を

ほんの少し借りただけ


あなたが(かこ)った泥棒猫が

(こと)切れるのは、あなたの毒


あなたの大事な令嬢が

血を吐いたのは、あなたの毒


事がなったら私にも

盛る予定(はず)だった、あなたの毒


薄めず使えば即座に効く毒


滑稽(こっけい)だこと

腕の中

冷たくなってくその令嬢

彼女の耳にも届いたでしょう


おまえを死に追いやったのは

おまえを抱いてる男の毒と


うふふ

くすくす

あははは


さあ(さば)かれましょう、お互いに!


……

 ……


私を(つな)ぐ地下牢に

響いてきたわ、外の(かね)


届かないはずの断末魔

聞こえないはずの斬首音


今日だったわね

あなたの処刑


幸いなこと

私には

まだ"悲しみ"の感情が

戻ってないの

涙ひと粒、流れやしない


空虚な瞳で鉄格子

見てると足音やってきた

回復したのね第一王子


私は汚れたドレスの裾あげて

敬意を表す礼をとる


牢あけ彼は手を差し出す


お気になさらず結構ですわ

解毒の薬は嫌がらせ

私を捨てた男への、意趣返しで使いましたの


つんと澄ました私に彼は

(ほそ)めた眼差(まなざ)し穏やかに、優しい声で(ささや)いた


どうして? そんな()で見るの?


()くしたはずの感情たちが

一挙に私に押し寄せた


ハラハラハラと(ほほ)(つた)

涙が記憶を呼び覚ます


いま(こぼ)れ出たのは薬の残滓(ざんし)


どうやら私は"忘却"の

"薬"を飲まされ十年間

感情(ココロ)を失くしていたらしい


さざめかないで私の心

幼い頃に隠された

彼への初恋 慕う気持ち


私が焦がれた第一王子

どうして忘れることが出来てたの?


駄目よ、私は罪深い

(そば)に上がる、資格がない


こんなに長く忘れていたの

こんなに長くかかったの


そのうえ他の男のことを

よりにもよって敵なる相手を

夫にするため動いてた


許されるとは思えない


激しい慟哭(どうこく)

(むせ)ぶ後悔


首振る私を慰める

根気強い彼の声


おそるおそる触れた手から

流れ込んでくる温もりで


私の心は軽率に

(もろ)い花弁そのままに

(ほころ)()いた、無防備に


牢から一歩、歩み出た



私に選択肢(みち)が選べるなら


自分の足で思うまま

思うところに進んでいこう


今日が私の人生の、始まりとなる


今度こそ



 お読みいただき有難うございます!

 最近お話書いてないなぁと、とりとめなく文字打ってたら1700文字越えのテンプレ物語詩に。なぜ…?

 高笑いで終わろうと思っていたのに、気がついたら続いてこんななりました(;´∀`)

 ヒロインの初恋は子どもの時で、そこから10年のイメージです。

 子どもということは王子たちも子どもなので、当時彼女に忘却の薬を用いたのは、他界した第二王子の母。王妃は自分似の次男を気に入っていて、祖父(先王)似の長男より、次男を推していた模様。

 第二王子は毒使いの母を見て、毒を使うことを覚えたのかな、と思ったりしてます。


 ヒロインは王太子妃になるよう育てられて、兄王子とも仲良し。

 修道院も免れましたが、彼女は妃より別の道を探しそうな気がします。父公爵のしがらみからも逃れ、一周まわって選んだ未来は…? どうなるんだろう?

挿絵(By みてみん)

-----

2025.08.31.追記 あさぎかな先生(ユーザID:1420610)からコラージュFAをいただきました!

文字までかっこよくて、細やかに毒の瓶まであるの! わああ、有難うございます♪

挿絵(By みてみん)

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拝読させていただきました。 一人称視点での分かりやすい表現になっていますね。 朗読劇によい素材かも、
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