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ー第7話香澄お母さんの部屋

それから1ヶ月が過ぎた。瀬川社長は時々やって来て、ライブを見て、帰って行く。

「どうですか?」

「すいません」

「そうですか」

のやり取りが繰り返された。


雪の夜。

ライブは中止になり、香澄お母さんと咲子で歌った。やけに、香澄お母さんが咲子に酒を勧めるので妙だった。

深夜1時に、咲子は酔い潰れた。

「上がりましょう」

と云う事になって、新乃助は咲子を担いで、3階の部屋のベッドに放り込んだ。

香澄お母さんの部屋は4階1部屋で、周囲はベランダになっている。

香澄お母さんは急な階段をスタスタと登って、一旦部屋に入ってから、新乃助を呼びに来た。


ドアを開けると、仏壇に灯りが灯り、蝋燭が付けられ、線香の先が赤くなっている。

「三上が来そうだから。ちゃんと頼んで?」

「マジですか?」

数珠を渡されて、手を合わせる。

何か気配を感じる。

恐る恐る眼を開く。

真っ白なスーツに、ボルサリーノを粋に被った紳士が、香澄お母さんのベッドに座っている。

「あら?今夜は決めてきたのね?」

「咲子に手を出したチンピラが謝罪に来るとか云うから。マフィアを気取ってみた」

「マフィアにしては怖くないわよ?」

「怖くて逃げ出されたら面倒臭い」

伝説の三上マネが居る。

「はじめまして。槇原新乃助と申します」

「ふん。礼儀は知ってるか。ここに来た時、道に迷ったな?」

「はい。迷いました」

「咲子を行かせたのは俺だ」

「………………」

「だから俺にも責任が有る。謝罪は受け入れる。謝れ」


「はい。申し訳ございませんでした。でも」

「でもって何だ?」

香澄お母さんが背中をバンと叩いた。

「娘さんを僕にください」


「駄目だ。貯金もない売れないシンガーソングライターに咲子はやれない」

「必ず幸せにします」

「どうやって?瀬川とツアーに出て、咲子を独りにするのか?」

「契約はしません。でも。YouTubeの収益も出るようになりました。それから、篠崎歯科を再開します。僕、歯医者なんです」

ふわ~と青い服を着た男が浮かび上がった。胸に「篠崎歯科」の刺繍が有る。

「あら?篠崎先生、お久しぶり」

香澄お母さんが言う。

「三上さん。彼の歯科医としての腕は確かです。商店街に歯医者が必要です。彼なら任せられます」


「篠崎先生の顔を立てて、認めたいが駄目だ」

突然、咲子が新乃助の隣に土下座した。

「お願いします。結婚させてくださいっ」

香澄お母さんも言う。

「三上マネ。許して上げて?」

「篠崎歯科からもお願いします」

そうすると、小汚ないジーンズの男が2人現れた。1人はドラムスティックを持ち、1人はフェンダーのエレキをストラップで掛けている。

「三上。俺達からもお願いする。許してやれ」

「お前らが?高くつきそうだ」

「ジャックダニエルズで手を打とう」

三上はしばらく、新乃助と咲子を見ていた。


「判った。お前のオゴリだからな」

三上はドラムスティックの男に言った。

そして、ベッドを降りると、床に正座した。

「新乃助さん。娘をよろしくお願いします」

三上は香澄お母さんに笑って、頭を下げた。

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