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ー1話高崎駅前
槇原新乃助は、高崎駅前でナビを見ながら途方に暮れていた。
スマホの中で、位置表示が高崎駅の線路上から動かない。
熱い。3月だと云うのに。喉が渇いたが自販機も店もない。
「あの~どうされました?」
新乃助は驚いて右前を見た。
ショートボブの小柄な女の子が、ソフトケースのギターを背負って不思議そうな顔をしている。断ろうと思ったが可愛い過ぎた。
「いや、ちょっと、道に迷って」
「と思いました。同じ場所グルグル回ってらっしゃいます。今で4回目です」
「いや、ずっと見てた?」
「ずっと見てました」
「ありがとう…」
ギター女子は花弁が零れるように笑った。
「そこは、ありがとうじゃないと思います」
「まぁでも。心配して見ててくれてうれしかつたので」
ギター女子は顔を赤くしてうつむいた。
しばらく、見つめ合う。
「あの!どちらに行かれるんですか!」
叫ぶようにギター女子が言う。
「かみおう町ですかね?デンタルミュージックって判ります?」
ギター女子の顔が驚いた顔に変わった。
「それ、カミヨコ町。デンタルミュージックは、私の家です」