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The・Create  作者: シュウト!!
第4章 夏だ!遠征だ!!火の国だ!!!
97/98

【89話】 遠征4日目 シロガネヤマ山頂での一悶着

本来予定していた89話のラムネードビーチに行く前に、1話分話が入る事になりました。


その結果、3ヶ月程苦しむ事になりました♨️


リクト「えぇ……」

僕「色々あったんです。リアルの方でも色々あって……」



うぅぅぅぅぅ!!!(号泣)



一同『『(引……)』』

読者様『『(なにコイツ……)』』


はい。本当に申し訳ありません。すみませんでした。


ぶっちゃけ、全然本調子が返ってこないけど。しっかりガッツリどすこい(?)纏めあげたのでぇ、本編へGoだ!


 時刻はam0:10分を回っていた。もぅ完全に深夜だ。

そんな深夜のシロガネヤマ山頂。先程まで戦場だった草木にごろんと寝転がり、俺と柊は満点の星空を眺めていた。


「ーーーー!!」

「ーーーー!ーーーー!ーー!!!」

「「リーー!!ーュウ!!」」


激しい戦闘による疲労と謎の達成感から、周囲の冒険者達が発する言葉を勝手に俺達を称えているものだ。


と、思い込んでいた。


Q.ってことは、どういう事?違ったん?

A.えーっとぉ………(汗)


「もぅ二人とも!!なーにが『何だかとっても、いい感じー』よ!やり過ぎもやり過ぎだよっ!!」

「場を弁えずにはしゃぎ過ぎだぞ。全く。本当、心配したんだから………」


頬を膨らませてプンプン怒る日夏と、槍を握る右手からミシッと軋む音を立てる春華。


「「スミマセンでした………」」


いつの間にか正座に直された俺と柊には、最早、謝る事しか許されていなかった。


尚、それで二人、というか他みんなの不満が解消されるとは限らない訳で・・・


うわぁ。この場のほぼ全員が困惑or膨れっ面だ。


"グローリー"と"セクトール"、"ゴブレイダーズ"の3パーティだけかな?

あ、後は"クリエイト"と"メイプルソルジャー"っと。

怒っていない(・・・・・・・)パーティは(・・・・・)


「ねぇ。わたし達がどんな気持ちで結界(フィールド)外から見てたか分かってる?」

「う"っ、それは……」


いくらぷくーっと頬を膨らませいるとはいえ、怒る日夏の迫力は凄い。心なしか、頭の青いリボンも逆立ち、震えている。


「百歩譲って喧嘩するまではいい。だが、規模広げ過ぎ。ギルマスにアポロン様!アテネ様にキョウさんも巻き込んで……

いや、それだけじゃない。-アマテラス-のコロシアムでならいざ知らず、一般利用客がいる、このシロガネヤマで、ダンジョンボスを召喚するやつがあるか!」

「う"っ……」


胸元で左拳を握りしめ叫ぶ春華。

柊が声にならない声を出しているのもお構い無しに、続けて言う。


い"っ"!?槍向けられた!!こ、怖ぇ………


「いくら不利条件が重なったからって、自らの命を擲つような蛮行を作戦にするやつがあるか!」


それは、ごもっともです♨️


「う"ぅ"っ……」


まさか、水城先生やゼニシアさん達ギルド職員に説教される前に、春華と日夏が主体となってガミガミ言ってくるとは。


しかも。的確に、痛い所ばっかり!突いてくる!!

(※それは、そう)


「そうだな。戦闘中に打倒"メイプルソルジャー"の作戦を聞いた時は流石にギョッとしたな。胆が冷えたぜ」

「正直、遂に頭まで壊れたのかと思ったよ……」


オイ。


「私達からの反論はありません、というか出来ません。ちょっと、思うところが多すぎて………」

「と、いう事でシュウ。リクトと共にパーティリーダーとしての責任を全うしてくださいまし?」


苦笑するヒビキとルナに、恥ずかしそうに顔を背けるアケビと、肩をすくめるモミジ。


唐突に助け船を期待する線が消えてしまったんですけど。


「ちょ、ちょっと!?(何をーーー)」

「コラ!まだ治療がーー」

「ヌッ、グッ、、ま、待たんか小娘達よ!此度の件

シュウの召喚に応じた儂にも責任はある!!説教をするなら儂も叱ってくれ!何なら儂だけよい!儂だけ叱ってくれぬか!」

『『!!?』』

「お、おじき………///」

(  )(言葉にできなぁい)


おーい待て待て!

ライリュウさんあんた、まだ治療中でボロボロの格好のだというのに。

クリスさんとアテネさんの所からバッと飛び出したかと思えば、なんちゅー爆弾発言してるんですか!!


「うぇっ!!?なっ、ななないきなり何を言って・・・!?(こっ、怖い……)」

「(こ、小娘!?私の鎧、190cmあるのに。え、正体見えてるの?!)っっ……///」


ライリュウおじいちゃん相手にただひたすらに困惑する日夏と春華。


ライリュウさん=おじき×(バツ)

        おじいちゃん(まる)

        孫を甘やかしまくるおじいちゃん(完全解)


あぁ、コレだ……


「あ、貴方が出てくると話がややこしくなるっす!ここは一つ、シュウの為だと思って、安静にしていて欲しいっす!」

「その通りだ。早く戻ってこい」

「ヌ………。そうか、アテネ嬢、獅子の少年よ。すまんかった………」

「えっ、おじき!?」

「(凄ぇ……。すっかり孫にでろんでろんのお爺ちゃんじゃん)」


ハンゾウとアテネさんに諭され、しょんぼり引き下がったライリュウおじいちゃん。

ていうか。ダンジョンボス相手に臆さず、凄いなハンゾウ。


案外素直に下がったライリュウさんを見て、ん"ん"っ、と咳払いをするハンゾウ。

そうして、ため息混じりにこう言った。


「正直、シュウがリクトの為を思って行動しているってのは、俺達でも一目で解ったっすよ。

だけど、これだけは言わせて欲しいっす。滅茶苦茶っすよ滅茶苦茶!!どんな荒療治っすか!」

「別に、落ち込んだ友達と戦って、真正面からぶつかり合って、鬱憤吐き出させようっていう事自体は良いと思うけど。何ならアタイは大賛成!ナイスアイディアだとは思うけど、一人相手にダンジョンボス召喚までしちゃうのは・・・・・ってのが正直な見解かな」


地団駄を踏みながら激しい突っ込みを入れるハンゾウと、鋭い視線を向けるツキカゲ。


「(ブブ殿の助太刀が間に合わねば、若しくは無ければ。シュウ殿はそこまで考えを巡らせていtーーー

ッ、いや。流石にこれは愚問か)むぅ、やり過ぎ感は否めんな……」


そんな二人に賛同するように深く頷くキリュウ。


「せめて1対1とかパーティ単位でなら分かるけど。ホノカちゃん達が参戦するまでは、それこそブブ君がアテネ様の結界を突破するまでは6対1だった訳だし。

シュウ君、わたし達は本当にヒヤヒヤしながら眺めていたんだよ?」

「度々回復を挟んではいましたけど、正直僕は、胸が締め付けられるような恐怖を感じましたよ……」


胸元で両手をぎゅっと握るクロウと、細かく震えるパーラを自身の側に寄せているウル。


"シノビ"と"マジカウインガー"の様子を見て、柊は目を強く瞑り、自身の制服の裾を強く握った。


「うっ、グ。・・・す、すみませんでした。

その、弱音なんておれ達に吐露してくれればいいのに、心の内に押し込んで勝手に苦しむ馬鹿を見ていたらモヤついちゃってーー」


だあぁぁ!!元凶は辛いよ………


「この度は俺のせいで。本当にすみませんでした・・・」

『『(いや、誰もそこまでしろとは……)・・・・・』』


隣で柊が正座で頭を下げる所を直視出来なくなった俺は、柊同様に深く頭を下げて謝罪を述べた。


ん?何だって?

逃げと捉えるならそう捉えれば?何とでも思え!!


真隣で親友が頭下げてるんだぞ!?俺のせいで!!

だのに、黙って指を咥えて見てるだけと!?


無理無理無理無理!!


少しでも誠意を伝えなくては。

己が原因なのだから、ケジメつけないと。


やれる事は全部ーーー


「(………どうやら、ここはアタシが一肌脱ぐ番みたいだね。本来ならフユちゃん辺りが適役だけど、"フローズン"3人揃って不在だし)全く、仕方ないなぁ」

「ん?ミツバ?今なにkーー」

「ねぇ。今回の一件、喧嘩両成敗ってことでサッと終わらせちゃ駄目?」

「「「!」」」


 ふと、ミツバさんがこんな事を言った。

想定外の提案を受け、真っ先に反応を見せたのは"セクトール"の三人。といっても、ピクッと動いただけだが。



それとは対照的に、感情を爆発させていた春華と日夏、クロウとハンゾウは同時に、大きく驚いた。


「「なっ!?」」

「ミツバちゃん。きゅ、急に何を言うの?」

「そうっすよ。ソレで事が済むなら、俺達はこんなに怒ってませんっす。況してや、ハルカさんやヒナツさんがここまで詰める事もないっすよ」


大きく狼狽えた春華と日夏。

クロウはより困惑し、ハンゾウは驚く程低い声でそう言った。


「(…………! よし、カブ君とホタ君、マッキーにはきちんと伝わったみたい♪この調子で皆にも……)うん。その気持ちはとっても判るけど、折角二人が友情をぶつけ合って爽やかに終わったのにさー、湿っぽくしなくてもいいんじゃないのかな~ってね。

そ・れ・に、みんなはさ、彼らが頭下げる所が見たかった訳じゃないでしょう?」

「それはさ、そうだけど……」

「ミツバさん!」

「クロウちゃん、ハンゾウ君。いい?シュウ君はね、真っ先に(・・・・)誰よりも早く(・・・・・・)リクト君の為を思って行動したの。そう、アタシ達の誰よりも早くね」


ねっ?と付け加えるミツバさん。


柊も柊で困惑仕切ってリアクションが取れていない。

いや、違うコレ。真っ赤になって悶えているわ。


「(言語化されるとクソ恥ずかしいな……ぁ、ぅ、駄目だ。滅茶苦茶恥ずい///)・・・・・」

「(頭振り始めた。ごめんな。マジでごめん!!)」

「「「「っっ……」」」」


反論しようとした4人は、狼狽え、言葉を詰まらせた。


『『『っっ……』』』


彼らだけではく、"レッドブロッサム"、"ジェットソーダ"、"シノビ"、"マジカウインガー"。

それに、"ダークストリーム"、"ゴブレイダーズ"の皆も声を詰まらせた。


 ミツバさんはふと、呼吸を整えた。そして、その直後だった。


「言葉、乱暴になっちゃうけどーーー」

「(えっ、ミツバさん何言うつもりだ!?)」


特大の爆弾がーーー


「部外者が口出し出来る範疇を越えちゃダーメ」


投下された。


「!?」

「えっ」

『『っ!?』』


その瞬間から、場の空気が一気に凍りついた。

鳥肌がゾワァー!!と立ち、背筋が凍てついたような、そんな悪寒を感じた。


「ーーー!?」

「「「部外者?」」」

「何すか?俺達は文句の一つも言っちゃいけないんすか?」


先程よりも低い声のトーンでそう発したハンゾウと、春華と日夏、クロウ。


「ち、力を貸せなかった者が部外者なのだとしたら、お、オレ達も、当然そうなる。

ミツバさん。そうなったら本当に、発言権の一つや二つすら、与えられないんですか?」


怒りか、はたまた恐怖か。もしくは、その両方か。

小刻みに震えるライムは、"ゴブレイダーズ"のみんなの前に立ち、声を振り絞るように言った。


それに対するミツバさんの返答(アンサー)はーー


「ううん。あくまでコレは便宜上の話。

・・・・・狡いかもしれないけど、ごめんね?」


ゆっくりと首を横に振ったミツバさん。

その表情を見て、激昂しかけた人達は皆、硬直した。


「なっ、何故!?」

「ど、どうしてですか?」

「ミツバちゃん、寂しい顔をしてるの?」

「ッ、まさか。同じ、なんすか?俺、達とーーー」

「・・・・・そりゃあねぇ。アタシだって、それはもぅ大層驚いたし、君達同様、力になりたかったよ。

カブ君がここまで気にかける後輩達の、力にね?」


静かに呟くように言ったミツバさん。


「つーまーりー、勝手に変なことをするな!行動起こすなら先ずは一言言えっ!!もっと周りを頼れっ!!!」


ぷんぷんと頬を膨らませるミツバさん。

すると、おっと何だ?凄い勢いで此方に向かってきてーーー


「そーれーと、君達は後先考え無さすぎだっ!!」

()ッ!?」

「あだっ!?」


皆の気持ちを代弁したミツバさんは、柊と俺のおデコに一発ずつデコピンを食らわせた。


えっ、なんで!?

※ヒント:元凶


「「()ッッッ!!!」」 

「……えと、痛かった?」

「何するんですか!」

「無茶苦茶、痛かったです……」


プンスコと猛抗議する柊と、ヒリヒリするデコを両手で押さえる俺。

そんな俺達を見て、ここまで張りつめた表情だったミツバさんは、遂にニッコリ笑った。


「なら良し!今のはここのみーんなの分よ。みんなの不満のがアタシの両指に詰まりに詰まったミツバ特性、愛のデコピンだぞっ」


確かに。本当に痛かった。

みんなからの愛、伝わりました(?)。


「そっか♪」

「さて、そろそろ足痺れる頃ですよね。ほら、立ってください?」


にこりと微笑みながら此方に手を差し伸べたホタル。

そう言われ、柊はホタルの手を借り、スッと立ち上がった。


「・・・どもっす」

「・・・。・・・・・」

「(なんか、変顔してるヤツいるんだが……)どしたの?」


不思議そうに此方を覗くマッキー。

え、何?どうしたのかって?


「すんません。足、痺れて…………」


た、立てねぇんです……

足が、両足が、ビリビリ痺れて、立てない♨️


『『ずこー!!』』

「お前なぁ………」


 数分後。足の痺れが引いた俺にカブさんはスッと右手を差しだした。

俺はその大きな手を借り、ようやく立ち上がった。


そして、カブさんは俺と柊の頭をポン、ポン、と撫でながら言った。


「一人で悩み、考える事は良いことだ。だが、助けの手を借りれる時に遠慮したり、我慢して黙ってる。

況してや一人で抱え込めない量を溜めて潰れるなんて本末転倒だ。いいか。悩んだり困った時、周囲に人がいるのならすぐ相談するんだ」

「うふふ♪ミツバ先輩達、ここにいるみんなとの約束だぞ?」

『『!!』』

「「はいっ。善処しまsーー!?!?!?」」


 瞬間、冒険者達が俺と柊に飛びかかってきた。



今度こそ、今度こそ"クリエイト"と"メイプルソルジャー"のアツく激しい戦いを称える為に。


ついでに、沢山からかわれもした。

日夏と春華もセットで♨️

※完全に飛び火


「本当、君達は凄いよ。ヒナツがあそこまで怒った姿、初めてみたもん」

「そうだな。レアケース過ぎて、明日の天気は荒れるかもな」

「ぷっw確かに」


つい数秒前まで不安爆発という感じだったのに、けらけら笑うアオバと、笑いを堪えてないぷるぷる震えるキリサメ。


「ちょっ、アオバ!?キリサメ!?縁起でも無いことを言わないでよ!」


そんな二人にプンスコ猛抗議の日夏。


そんな日夏達(ジェットソーダ)を見て、ようやく陰鬱とした空気から解放されて心底嬉しそうなヤマブキ。


「オレも同じくだ。表情こそ兜のせいで見えないけど、あんなに心の内をぶちまけたハルカも、珍しかったよなぁ」

「ヤマブキ!?」


ニターっと悪戯に笑うヤマブキを見て驚く春華。


「おぅ!リーダーの新たな一面が見れたな」

「ま、まぁ。あの時はそんな余裕、ありませんでしたけどね」

「ポポン、フキノまで……///」


ポポンとフキノにも囲まれ、心底恥ずかしそうな様子の春華。


 再び、シロガネヤマ山頂に冒険者(俺達)を包み込まんとする、穏やかな風が吹き初めてきた。


「あの。最後に、私から一ついいですか?」


 更に数分後。"クリエイト"と"メイプルソルジャー"、そしてブブ。

戦闘でボロボロになった者の治療が完全に終わった頃、水城先生は手を挙げて言った。


「柊君。貴方は戦闘中に『おれは、おれ達は今宵、私に認めて貰うんだ』と仰いましたよね?」

「っ、はい」

「・・・かつて私は、『いくら適性があるとはいえ、サモナーだけは止めておけ』と言いましたね。

これは、かつてサモナーとして活躍していた者が例外なく自分の召喚したモンスターに不意を突かれて命を落としているデータと、・・・その、私のモンスターに対する偏見からの発言でした」


冒険者ギルドの一同は、水城先生(ユーカさん)が、モンスター嫌いなのを知っている。

過去のデータと偏見。それを聞いたアイコは激しく嘶き、ゴードンは叫んだ。


「ブルルッ、ブルルッヒヒィィィン!!」

「フヨヨ!ヨヨフヨヨー!!(訳:そんな事!ぼく達がするわけない!!)」


二匹共、柊と水城先生の間に割って入る。

そして、召喚主(ごしゅじん)を守ろうと身構えた。


「ちょっ、お前たち!」

「・・・(満更でもなさそう)」


先程。ほんわかとした普段の空気に戻ったと思われたこの場所に、再び緊張が走るーーー


「(・・・それにしても、私の圧に動じない凛々しい瞳。

それと、震えながらも柊君への想いを私に伝えるその勇気……。むぅ、納得いきません。納得したくありません!ですが………)」

「! アイコ、ゴードン。安心せよ、落ち着くがよい」

「……ブルルッ」

「ヨヨヨ。フヨヨ、フフヨーヨ……(訳:わかった。おじきが言うなら、我慢する)」


ライリュウさんに諭された二匹は、意外にもすんなり警戒を解いた。

ライリュウさんは、不安に震えるモミジとアケビに向けて微笑む。


「(!………狡い。そんなの、認めざるを得ないじゃないですか)」


そうして、ジッと様子を伺う水城先生に向けて言った。


「話を遮ってすまかったのぅ」

「いえ……」

「・・・して、本題じゃ。儂の孫達は、どうじゃ?」


モンスター。それもダンジョンボスのライリュウからの問い。


「・・・」


それを受け、沈黙する水城先生。


皆、固唾を飲んで注目している、が・・・?

そこにいた水城先生は、眼鏡をギラリと光らせ威圧する、ユーカさんモードではなかった。


困り眉の水城先生からは、嬉しいとも、諦めともとれる、そんな複雑な笑みを浮かべていた。


「・・・・・熱量、本気度、質。全てにおいて、私の見積り以上でした。正直な所、天地がひっくり返された気分です」

「フフフッ♪」


水城先生の言葉を受けてライリュウさん。

だよなぁ~と言いたそうな誇らしげな表情である。


「柊君。そして"メイプルソルジャー"の皆さん。先の私の発言を撤回させてください。そして、不用意に傷つけてしまい、すみませんでした」


そう言って深々と頭を下げた水城先生。


この瞬間、水城先生(ユーカさん)が、モンスター3体を"メイプルソルジャー"の仲間であると、冒険者(サモナー)柏木柊の実力を真に認めたのだ。


「っっ!!シュウ!!」

「っっ、やりましたね!遂に……!」


うおおお!!と盛り上がる俺達と、柊に駆け寄り大はしゃぎのモミジとアケビ。


「ブルルッ、ブルルヒヒィィン♪」

「ヨヨヨー!フヨヨヨッ!(訳:やった!やったねご主人!)」


アイコも柊にすり寄り、ゴードンもばんざーい!とその場で跳び跳ねている。


「と、いうことは、まさか!グラ太郎も……」

「はい。といっても、苦渋の決断ザマス」

『『『えっ?』』』


えっ……?


「で・す・が、ピノちゃん同様、パーティリーダーに恵まれたのが幸運でしたね。

私の、モンスターに対する憎悪ですら、打ち負かすんですから」

「(ま、まぁ。悪い気はしないわね……)フピピ♪」


困り顔の水城先生は、いつの間にかピノを捕まえて、撫で撫でしていた。

ここまで変化があると、本当に一昨日の朝(※65話)ギルドのエントランスでヒステリックを起こした人と同一人物なのか疑いたくなるな・・・


「(ピノ………。ま、いっか)やったな、柊!」

「・・・おぅ!」


 こうして、俺のナヨナヨから始まってしまった一連の相当は幕を閉じーーー


「なっ!?これは、一体何が?」


ませんでした。



「・・・終わっ、たの?い、いつの間に………」


 やはり、先程まで感じていた違和感は間違えではなかった。

アリスさんとキョウさんに連れられて来たかのように、奥の茂みから出てきたフユさん。


その更に後ろにはモミさんとスーノさんが。二人とも、疲れきった表情をしている。


それこそ、ぜぇぜぇ、はぁはぁ、と、全力で走ってきた後みたいに息が切れている。


「ふぉっふぉっふぉ。待たせたのぅ」

「いえ。ありがとうございました」

「・・・ところでミツバちゃん?これ、大丈夫そう?」

「・・・・・」

「(ぬおっ!?外方向いた!)む、そうか……」

「(黙るってことは・・・)そっか、はぁ……」


外方を向いたミツバさんを見て、二人は色々察した。


「お姉ちゃん!今まで何処へーー」

「ユキナ。何、戦いは終わったの?」

「お姉ちゃーー」

「どうなのよ!(シュウ)陸斗(リクト)の喧嘩は終わったの!?どうなのよ!!」


姉を迎えたユキナだったが、どうもその姉(フユさん)の様子がおかしい。

目の焦点が定まっておらず、相当興奮しているようだ。


「ーーーーっ!!」

「っっ、痛……」

「(ハッ……!アタシってば、何を・・・)」


ユキナの肩をがっちり掴んで揺さぶるフユさん。

すると、モミさんとスーノさんが慌てて止めに入った。


「ちょ、やめなさいよ!あんた、自分の妹に当たって、、何になるのよ!!」

「そうだよ、フユ!いぃぃぃっっんー!!一旦!落ち着いて!!」

「………」

「「(あれ?案外すんなり言うこと聞いた……?)」」


フユさんを引き剥がすことに成功したモミさんとスーノさんだが、あまりにもすぐ引き剥がせたからか、二人とも顔を見合わせている。


 一先ず俺とルナは、訳もわからず混乱しているユキナの元へ駆け寄った。


「ユキナ、大丈夫か?」

「う、うん。ありがとう………」

「(あ。うちが側にいないと駄目そう……)」


とりあえず、ユキナは頷いてくれたが……


柏木 柊(カシワギシュウ)

「っ、はい!………???」

「ここに来なさい」

「へ?なんdーー」

「いいから!早く来なさい!」

『『!!』』


 今度は柊を呼び出したフユさん。全力で叫んだせいか、ぜぇ、はぁ、と息を切らしている。


うわぁ、滅茶苦茶怒ってるんですけど!!


え、まさか。また俺のせいですか!?

やーーーだぁぁぁぁぁ!!!嘘やーーーん!!!


「う"ぅ"っ……」

「(また発作が起きてる!?)だ、大丈夫だリクト」

「そうよ!まだ、リクトが原因だと決まった訳じゃーー」


ライデンとホノカがフォローを入れてくれた瞬間だった。


「な、何ですかフユさーー」


辺り一面にパァン!!と乾いた音が鳴り響いた。


「ッーー!?」

『『!!!』』


鬼のような形相をしたフユさんは、柊にビンタしていた。


「アケビ。貴女はシュウの側へ。フユ、貴女ーー」

「お任せをーーーって、お姉様!?」


と思いきや、今度は、それに対して激昂したモミジがフユさんにビンタを仕返していた。


『『!!?』』

「っっーーー」


先程のよりは優しい(?)、ペチッとした音。


「・・・」


打たれた後頬を抑える事なく俯いたままのフユさんを見て、戦々恐々としながらモミジは再度口を開いた。


「(返ってこない……)・・・少しは、冷静さを取り戻せましたか?手荒な真似、どうかお許しくださいまし」


だが、前髪で隠れてフユさんの表情が見えない。


「……ごめん」

「(謝罪!?声小さっ!?てっきり、不毛なビンタ合戦が始まるかと。想定外ですの……)此方こそ、すみません。…………?」


まるで、脱け殻になったかのような。

虚無さを感じさせる表情を浮かべるフユさんは、ポツリとそう呟くと、モミジをするりと交わし、ゆっくり、ゆっくりと歩みだした。


そうして、柊の前に立つアケビの目の前で足を止めた。


「(何故?フユから覇気を一切感じない。普段の凛とした貴女は何処へ?)っっ……」

「・・・ごめん。一分。いや、少しだけ、時間を頂戴」

「っっ(お姉様……)」

「・・・ごめん。今度はぶたない。安心して……」


フユさんらしくないボソボソした喋り声を聞き、アケビは苦虫を噛み潰したような表情で後ろを振り向く。


「・・・シュウ、よろしいですか?」


アケビは小声で柊に確認を取ると、柊はコクリと頷いた。


「………どうぞ、此方へーー!?」

「(あっ。力が、、入ら、、、)」

『『!?』』

「ちょっ、大丈夫すか!?」


柊の目の前まで一気に距離を詰めたフユさんは、突然ガクッと膝から崩れ落ちた。

そして、柊の胸元を弱く掴みながら、何かを発した。


「ーーーして」

「え?ごめん、もう一回」


フユさんの言葉を受け、驚きの余り仰け反った柊。

しかし、声があまりにも小さすぎて、此方には何も聞こえない。


「ぅ、ぐ、………どうして。あんた……、昔、言ってたじゃない。やっと友達になれたんだって、、。

当時、、始業式終わってすぐ、アタシの家に自慢しに来てたじゃない、、、!それから何度も、、楽しい事がある度に、報告しに来てくれてたじゃない!

それなのに、、どうしてっ!あんな殺し会うような真似をするのよ、、、!!」


いつの間にか、その目から大粒の涙を溢すフユさん。

フユさんは必死に声を抑えている。


「あんたは、あんた達には、、あんた達だけは、あんな熾烈な争いとは無縁でいて欲しかったのに、、、!!

"この世界(・・・・)"でも(・・)向こう(・・・)みたく(・・・)馬鹿みたいに遊んで、騒いで、笑い合ってれば、、それでよかったのに、、、、、

お願いだから、、これ以上、アタシを不安にさせないで、、、」

「「フユ!」」

「っ、お姉ちゃん!」


 瞬間、糸が切れたかのようにフユさんは倒れーー


「「「!」」」

「よっと、間に合ったぁ」


間一髪で間に合ったアポロンさんが、倒れる寸前でフユさんを抱えた。


クロムさんはアポロンさんに向けてサムズアップすると、収集がつかなくなった冒険者達を集めて言った。


「みんな、今日はもぅゴクラクの旅館に戻ろう。何やらまた一悶着起きちゃったみたいだけど、そろそろ1時になるし。しっかり寝て、身体を休めよう」


確かに。今の時間はam0:48分。ド深夜だ。


「(けど、これを持ち越すのか……)」


結局の所、身から出た錆だし。

何とか頑張るしかない……


「リクトくん、シュウくん。それにみんなも。また明日よろしくっ!」


きっと、全部見透かされていたのだろう。

クロムさんは元気をくれるような笑顔で言った。


『『はい……』』

「「っ、はい……」」


 こうして、長い長い遠征3日目は幕を閉じたのだった。



次回、90話 Welcome to a new beginning

なんとビックリ。1話に納まりませんでした。

チクショオォォォォォ!!!!(小梅)



次の話が終わったら、待ちに待った(?)海回になるかな?


【余談】

いやぁ、折角はしゃげる機会が来るってのに、腹の内に爆弾抱えたままとか嫌じゃないすか。


なので、モヤモヤを取っ払ってから、心の底から楽しんでもらおう!


と、思って路線変更したのですが、まさかの3ヶ月……

苦節3ヶ月でございます(?)


とりあえず言える事は、僕は元気です。



投稿直後追記

 まぁ、87話88話辺りを読み返してミスを発見したからこの流れになったんですけどね。

ミスを『これは!ミスじゃねぇ!』と是正せず意地張った結果がコレです。


本当にすみませんでした。


まぁ、アレです。結果的に満足できる方向に行けたのでおkです。


以上でsーー


リクト「おい。ざっくりキャラ図鑑は?」(小声)

僕「んー、次回!次回、"フローズン"編でお会いしましょう」

フユ&モミ&スーノ「「「えっ?」」」


はい。お疲れ様でスター☆


-To be continued-

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