【84話】 色無き虹(ロストレインボー)
最近さぁー、ん?最近!?
さ、最近、最近最近……。
リクト「開口一番どうした?」
いやね、僕の所のキャラの暴走が凄まじい話したくてさ。
リクト「と、言いますと?」
いやぁ、前回とか75話辺りとか、あそこまで酷くなるつもりはなかったんだけどなぁ~って。
リクト「前回?あぁ」
Neoリッチー「ギャグ補正の無いワタクシが登場した回でしたね」
ユーカ「・・・・・」
作者以外の一同『『・・・・・』』
Neoリッチー「あれ?皆さん、どうなさいました?」
ユーカ「(やめて。これ以上喋られると私の中の化け物イメージが壊れるからやめて)」
あとー、4章以前だと、10話の回想シーンとか、魔改造後の27話の章ボス周りとか。
リクト「(魔改造?あぁ、作者の黒歴史……)あぁ、あぁ。確かに、妙に重い設定生えてたよね」
リクト君。あんたが設定とか言うなよ。
ライデン「公式やり過ぎた回ね。そこ、僕も『前書き後書き空間』から見てて絶句した所だ」
僕「絶句してたんだ……」
マキュリー「それで?あんたは何が言いたいのよ」
そう!君達の事じゃよ!!君達九星天使の事!!
マキュリー「!?」
マーズ「私、達?」
ヴィーナ「(登場機会の少ない俺達が何故話題に上がるんだ?)・・・俺達、全員?」←ホントごめんて。
ソーナンス!!
一同『『・・・・・』』
マキュリーちゃんとマーズちゃん達がここまで強くなるとはなぁって。
Neoリッチー・ファースト相手に善戦、というか相当圧倒してたから。たまげたなぁーって。
(※捕捉:元々バケモン設定だった。最強の魔王の配下。それも幹部だものねぇ。だけど、僕の当初の3倍くらいバケモンになっちった☆
結果的に初めてのS級ダンジョンボスがかなり霞んだ)
Neoリッチー「霞っ!?そ、そうでしたか、力不足でしたか……」←そんな事全然ねぇ
マキュリー「え、そうなの?」
マーズ「えぇ~(困惑)」
ヴィーナ「(俺、まだ56話の冒頭にちょびっと出ただけなんだが!?3倍強かったとか言われても困るんだが!?
いや、しかし。妹のマーズやマキュリーが作者直々に誉められているのは素直に嬉しい)・・・」
まだ登場してない九星天使一同『『えぇ……(困惑中)』』
もっと愚痴らせてもらうとぉ~。
作中のキャラ達は全員、全員ですよ!全員!!
一同『『?』』
僕が当初予定していたのよりも強くなりすぎてます!
もぅあったまオカシイ位に強い!!
一同『『はぁ?』』
これでも相当ナーフ(※弱体化)させたんですけどね。
これから遠い未来には爆裂強化イベントが控えているというのに!
読者『『(なにこれ。別の作品読みに行こうかな……)』』
一同『『ちょ、誰か作者の暴走を止めて!!』』
困りました(´・ω・)
一同『『おい!!!』』
読者『『(困ってるのは此方なんすけど……)』』
ホノカ「いや!いやいや!」
ユキナ「それ、ぶっちゃけちゃ駄目だよ!ましてやこんなおふざけ空間では尚更!!」
それね。
ホノカ&ユキナ「「それね!?」」
いやぁ、愚痴る場所がここ以外にねぇんですもん。
ヒビキ「うっわw酷い開き直りだな!!」
ルナ「問題発言多いけど、大丈夫なの?」
まー大丈夫じゃないすか?
知らんけど♨️
ピノ「ピェェ……(こ、言葉が出ないわ………)」
まぁ、前回とかもあれで良かったと僕は思ってるんで。
何だかんだ言って満足してるんで。
リクト「なんやねんソレ」
アテネ「結局の所、今回の前書きでのお前の目的は何だ?」
目的?ただ愚痴書いてスッキリしたかっただけ。
アポロン「・・・そう」
クロム「へぇ。ぼく達は極めて無駄な3分を過ごした、と」
すみませんでした。
読者『『やれやれー!もっと言ったれー!!』』
僕「ちょ、ちょちょちょ!!!」
ルミナス「(面白い事になっておるな。……!ふふ……)」
ディミオス「(おい。嘘だろ?……解ったよ。ハァ……)
待て。お前さんが驚くのは違うだろ?よくも俺様達をくだらん事に巻き込んでくれたな」
フレイザ「(ルミナスめ。妾まで乗る必要ないじゃろうに……)ハァ……。この一瞬で頗る機嫌が悪くなったわ。故に、妾達が直々に裁いてくれようぞ……!愚かなる貴様を!!」
ゼロード「一瞬でな」
ジーク「(あほくさ。が、皆楽しそうだな。よぅし、余も乗っかってやるか…!)さて、最初は余から行こう。最強の魔王の力、しかと味わうがいい……!!」
ちょ、待てって!
待て!!話せばわかーー
ノォー!!!NOー!!!!!!
ん?あれ、夢?
どうも皆さんこんにちは。先日(4/16)にこんな夢を見たシュウト!!です。※嘘偽りナシ。マジでこんな夢だった
リクト「夢かよ!!」
ライデン「僕達、作者の夢にも出るんだ……」
ホノカ「しかも、ちゃんと私達だし……」
ユキナ「あ、あはは……」
ヒビキ「ひでぇ。これは酷ぇ!歴代ワーストだろ。今回の前書きの茶番!!」
ルナ「フツーにあり得ないんですけど」
あり得ないのは此方じゃい!
夢とはいえ俺の生み出した子達に殺されかけたんだぞ!?
恐かったよ!!ちびるかよ思ったよ!!
迫力エグかったもん!!(※感想チビッ子かよ)
ただでさえショボい語彙力が消し飛んで銀河の果てに行くぐらいトンでもなかったんですぅ!!
ジーク「そうかそうか。だが、殺されかけたとはいえ、それは君の夢の中の話なのだろう?
・・・うむ、不可抗力だ。諦めたまえ」
僕「()」
ゼロード「・・・ぷっw」
クロム「わぁ、これは凄い顔!」
アリス「やめなさいクロム。この作者、こんなでもリクト君同様のメンタルの弱さなんだから」
リクト「しれっとアリスさんにディスられてるんですけど俺」
僕「ど、どんまい……」
リクト「お前にだけは言われたかねぇ!!」
シュウ&ブブ「「草」」
リクト&僕「「笑うなぁ!!!」」
異常、本編の重さを中和したかった茶番でしたー。
では、本編startゾイ!(長文茶番すみませんでした)
「っっ、みずよせ!瞬間冷却!」
「紅蓮炎破!グラヴィティバインド!!」
細くて長い、半透明な触手を即座に凍らせたマキュリーと、それを瞬時に砕いて触手を破壊したマーズは、再度重力を操った。
倒されたはずの怪物は、またも地面にひれ伏させた。
だが、それでも激しくもがき、叫び続ける。
「ヴヴヴ!!?ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!」
「怪我はない!?」
マキュリーにお姫様抱っこされたままの私は、真っ白になった頭で頷いた。
「っ、ごめんね!対処が遅れちゃって・・・。
コイツ、存外しぶといみたいだね。ブリザードバレット!!!」
マキュリーは恐ろしい形相で怪物を睨みながら氷の弾丸を浴びせる。
「ヴヴヴヴヴヴ!!!」
「そうね。だから、今ここで、完全に仕留めきる!フォボス・バーニング!!!」
マキュリー同様に、マーズも強張りながら二丁の銃を構え、爆炎を放った。
「ヴヴ、ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!!」
「(よし。これで2~5分、コイツはここから動けない!
グラヴィティバインドと合わせて竜巻を完全に捩じ伏せるっ!!)フォボス・バーニング!!!」
「それそれそれそれ!!!!もっともっとブリザードバレットっ!!!」
二人の放つ激しい氷と炎の弾丸が怪物の弱点部に降り注ぐ。
重力に押し潰され、弱点に集中放火され、大きな呻き声をあげる怪物。
何故?どうして?
丁度今さっき倒されたハズなのに、どうして怪物はまだ動けるの?
致死量の炎と氷の雨を受けて、重力で押し潰されているのにも関わらず、どうしてなの?
「ヴヴヴ、ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ、ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ヒッ!?」
「ユーカちゃん……、大丈夫だからっ!私が、私達が絶対君の事を守るから!!」
「(マーズてば、いいこと言うじゃない!)」
耳が割れるような絶叫。
頭蓋骨と胸元を覆う肋骨以外の全てを重力に潰された怪物は叫ぶ。ただ叫び、叫び、叫び続ける。
すると、怪物の身体が徐々に光り始めた。
「ヴヴヴヴヴヴ!!!モット!!モット色ヲ!!!ワレニ、ワタクシ二、色ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!!!!
渇望の叫びヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ!!!」
最早奇声となった叫び声をあげる怪物。
だが、怪物はその身体から青白い光を放ちだした。
「っ!?うぇ、また触手が生えた!しかも、左右両方から?」
「肋骨の本数も増えて……、嘘でしょ?翼生やしたわよ!?」
「「「ヒッ!?」」」
怪物が新たに生やした左右対称の大きな翼。
その翼の関節のような部分で区切られた膜。
ソレが、一斉に開いた。
目が、無数のギョロっとした瞳が私達を見つめる。
「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!!ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
肋骨から半透明の太い触手が3本生えた!
それと同時に、半透明の細い触手がブシュッ、ブシュッという音を立てながら沢山生えてきた。
「ヴヴヴヴヴヴ!!!ヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!!!!!!!」
「・・・させねぇよ」
ふと、マーズと同じ軍服を着た金髪の青年が空から降ってきた。
「黄昏の一撃……!!」
「ヴ!?」
「「!!」」
「っ!」
青年は着地するや否や、怪物を真正面から一刀両断した。
「お前ら。一体全体何をしている」
まるで剣で空を切る素振りで50cm程の木の枝を振るった青年。
え、嘘でしょう?今の、その枝で!?
「お、お兄ちゃん!?」
「ヴィーナ、ナイスタイミングだね……!」
「(駄目……。混乱して何が何だか………)」
「マーズ、マキュリー、構えろ。形態変化したヤツはS級以上だーー(ッ!そうか)」
青年はマキュリーに抱えられる私を見ると、一瞬固まった。
「ーーマキュリー、マーズ。Neoリッチーは俺が引き受ける。お前らは彼女の側にいてやれ。ほんの少しでも、彼女が抱いた恐怖を和らげるんだ」
頼んだぞ、と呟いた青年に深く頷いた二人。
「解ったわ。後はよろしくね、お兄ちゃん」
「任せて。ユーカちゃん、しっかり捕まってね!」
「ーーっ、・・・」
先程、足を捕まれてから、思うように声が出ない。
コクッと頷いた時、気持ちが悪いものが私の頬を伝った。
「色食い光線」
「「「!?」」」
瞬間、真っ白い光線が周囲の建物を破壊した。
「なに?」
「色縛り……!」
怪物の首元の赤いスカーフ。
それについているギョロ目の"瞳のみ"がスロットのように回りだした。
ギュルルルル………と音を立ててーーー
瞳が止まった。
「ーーーRed。色縛り、色々色色ナンノ色。アカ!!」
瞬間、青年とマーズ、マキュリーの動きが止まった。
「(!!身体が動かなくなった。成程、これは、この世の理を破壊する、S級のダンジョンボス足り得る……)」
「(ちょっと、何よ、これ)」
「(かっ、辛うじて呼吸は出来るけど……。声、出せないんだけど!)」
「・・・・・お、いけた。ん"ん"っ、えーーー、魔王ジーク・カイザー配下、天空騎士団。
幹部、九星天使の皆さん、初めましてーー」
怪物が、喋った・・・!
「ワタクシ、Neoリッチー・セカンドと申します。以後、お見知りおき」
Neoリッチー・セカンド?
「「(喋った……!)」」
「(いや、テレパシーか?)」
「正解、これはテレパシーです」
怪物はゆらり、ゆらり、と浮遊したまま此方に接近し始めた。
「(こいつ、思考を読めるのか?)」
「そうですヴィーナさん。ワタクシは他人の思考が読めます。ある程度、ほんの少しですがね」
これを戦いに生かせればいいんですがねぇ~などと言う怪物。
「そうそう、ワタクシ。生まれつき顎が噛み合っておらず、ヴヴヴヴヴーっと、呻き声しか出せません。
しかし、セカンドに変身することで、こうやってテレパシーで会話をすることが可能になるのです」
痛っ。
動きが止まったマキュリーの腕から、私の身体は転げ落ちた。
「(ユーカ!!くそっ、動けぇわたしの身体っ、動けえぇぇぇぇ!!!)」
「(っっ、ユーカちゃん!?)」
「いやぁ、マキュリーさん、マーズさん、お見事です。ファーストのワタクシを相手に圧倒するだなんて、超速再生すら追い付かない圧倒的な火力!色食いさせない為に重力での拘束!!
ワタクシ、惚れ惚れしました」
両翼を大きく開き、無数の目をギョロつかせ、半透明の細い触手をうねらせながら言う怪物。もといNeoリッチー。
Neoリッチーは人間の右手と龍の左手でパチ、パチと拍手をすると、続けた。
「今、貴方がたの動きはワタクシの技『色縛り』にて止めさせて貰っています。
この技はね、半径1kmのみですが、ランダムに選ばれた色を持つ者の動きを止めれるのです。その気になれば呼吸すら止めて差し上げますがーー」
怪物は手をパチンと叩くと、色縛りの制約を緩めた。
「っ、はぁ!!(声が出た……!)貴様は何がしたいのだ」
「目的、そうですね。ワタクシはね、交渉がしたいのです。
ねぇ、九星天使筆頭のヴィーナさん?」
「交渉、だと?」
青年は表情を変える事なく、そう聞いた。
「えぇ。そこの女性を置いて天空城にお帰りいただきたい」
「っ!?」
わ、私を置いて……!?
「おぉ、とても素晴らしい表情……ッ!ワタクシはね、色を食べる、若しくは飲む事で生き長らえる存在。
故に、レインボーなるスキルを所有する彼女をいただきたいのです!」
「・・・彼女をいただきたい。食うつもりか?」
「!?」
「NoNoNo!」
ヴィーナの問いに対し、大袈裟に手を振って回答するNeoリッチー。
「まさか!ワタクシが空腹感を覚えた時にのみスキルの効果を使って頂くだけですよ。これでもワタクシ、手荒な真似はしたくありませんので」
ーーー怖い。怖い怖い怖い怖い。
「怖がる事はありませんよ?」
「ヒッ!?」
「ワタクシは貴女を大事にしますから。貴女が命の灯火を失うその時まで、ダイジに、ダイジにシテアゲマスヨォ?」
「ヒッ、きゃあああぁああああぁあぁああぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
思わず叫んでしまった。
あの、両翼の瞳。
全部、無数のギョロ目が全部、見透かしたかのように嗤っている……!?
「おや。主様に創って頂いた完璧な身体を見て絶叫するとは……。あり得ない………」
などと、嘆く怪物。
「ふんッ!!・・・どうやら、交渉は決裂のようだな」
声を荒らげ、色縛りを無理くり。されど完全に突破したヴィーナ。
木の枝をNeoリッチーに向け、威圧する。
「・・・そのようですね。色食い光線!!」
「はっ!!」
Neoリッチーは真っ白な光線をビュン、ビュン、ビュンと3発放った。
しかし、ヴィーナは木の枝でそれを撃ち落とした。
「・・・・・驚きました。色食い光線にはファースト時の左足と同じ、色を奪う効果があるのですが……」
「嘗めた事をいうな、貴様。光線を撃ち落とす事もできぬ軟弱者が天空騎士団にいると思うか」
ヴィーナは淡々と、されど静かに怒りを燃やしながら言った。
普通、光線って撃ち落とすものじゃないんですけど。
今の私に、そんな突っ込みを入れる余裕なんて微塵も無かった。
「おっと。今のは純粋に、貴方の技量を褒めたつもりだったのですが。そんな、貴方には似つかわしくもない粗末な木の枝で・・・
って、違ーう!!木の枝で戦う剣士なぞ、ワタクシ見たことがないです!」
「余計なお世話だ。・・・事実、この枝はもぅ使い物にならなくなった」
「(彼の持つ枝はもぅ真っ白。存在出来なくなってポロポロと崩れ落ちていきますね……)みたいですね。では、初撃。いきますよっ、色食い光線!!」
Neoリッチーは、ヴィーナが対処できないと踏み、再度同じ技を放った。
だがーー
「甘い!!」
何処かから2本目の枝を取り出すと、3発のビームを撃ち落とした。
「俺の武器に不備はないが」
「貴方、何処から枝を……」
「ポケットからだが?」
「そ、そうでしたか。では、問題なく、心置きなく攻撃を再開できますね。色食い爪!!」
Neoリッチーは引っ掻く動作をすると、爪の先から光の斬撃をヴィーナ目掛けて飛ばした。
「夜明けの連撃ッ!!」
「……ッッ、なんと!」
ヴィーナは五つの斬撃を全て落とした。
「まだまだいきますよ、色食い爪!!」
「ふんっ!」
ヴィーナは再度、五つの斬撃を全て落とす。
それを見て、Neoリッチーは再度爪の斬撃を飛ばした。
「そぅれ!色食い爪!!」
「はあっ!!!」
「っ!そこです、色食い光線!!」
ヴィーナが斬撃を落とす為に枝を振るったその瞬間、一瞬の隙を狙って怪物は光線を放った。
「(我が主よ。貴方様の力の一端、お借りします……!!
超力発電機関、解放!)フッ、自由なる電撃!!!」
「(嗤った?!)ヌゥ!!?」
一瞬。ほんの一瞬の隙を縫った光線。
それをヴィーナは見てから電撃で応戦し、そのまま超高電圧の電撃をNeoリッチーの胸元へ放った。
「凄いな貴様。今の反撃、防ぎきるのか」
「いやぁ、決まったと思ったんですがねぇ、、、」
Neoリッチーの下半身部分の触手の大半が、えぐりとられたように消えている。が・・・
「ヌン!!」
えぐりとられた下半身が10秒も経たずに全て再生した。
ゆらり、ゆらりと無数の細長い触手を揺らす怪物。
苦しそう。
に、見せかけている・・・?
いや、駄目だ。怖くて何もかもわからない。
無力な自分を呪いたい………。
「・・・超速再生か」
「えぇ。加えて、不可思議身体の効果にて弱点以外でダメージを食らわない」
「コアを守る為なら、いくら身体が欠損しようと構わないと。躊躇わない、と」
「えぇ。ワタクシだから成せる芸当です。かなりグロテスクな絵面になってしまいますが、それはご愛敬と……」
「「・・・」」
弱点以外でダメージを食らわない。
私を匿うマキュリーとマーズの額に浮かんだ汗がこぼれた。
「さて、そろそろワタクシも本気で貴方がたを突破せねばなりません」
「というと?」
「ワタクシ、お腹が、空きました」
はぁ?と声をあげるヴィーナとマーズ、マキュリー。
「ですから。ワタクシは今、空腹なのです。沢山遊んでお腹がペコペコなのです。
ですから、是が非でも色の源泉たる貴女を貰い受けたい!!!色溶解液!」
Neoリッチーは頭蓋骨の両端から生える蛸のような触手をブルルンと振るわせると、沢山の触手に液体を浮かばせた。
「あれは、私の炎すら色を奪ったヤツ……!気をつけてお兄ちゃん!!」
そうして、その液体をヴィーナ目掛けて放った。
「わっ!マズイ、瞬間れiーー」
「止せマキュリー、任せろ。信じろ……!(我が主。貴方様の力の一端を、もう一度、お借りします……!!)高貴なる華炎ッ!!」
「ヌウッ!?」
ヴィーナは、ハメツ的と言える程の火炎を放ち、溶解液を蒸発させた。
そして、その勢いのままNeoリッチーの頭蓋骨の触手と、両翼、下半身の太い触手すら焼き払った。
「(威力:絶大+の火炎放射。にしては破滅的な威力……。ワタクシの身体、持ってくださいよっ)解りました。貴方がたを突破するには、足掻くしかないみたいですね!
ヴィーナさん!貴方にワタクシの本気をぶつけます、だからーー」
「サンダーウイング展開、マッハフライト。黄昏の一撃!!」
一瞬だった。瞬きした瞬間に、木の枝を構えたヴィーナはNeoリッチーの胸元を貫いた。
「カハッ!?」
「喋り過ぎだ」
「っっっ~~~~~、ワタクシ、怒りましたよ!!!
不可思議的拘束!!」
「「「!!!」」」
怒りで身体を振るわせるNeoリッチーは、細くて長い触手をこれでもかと伸ばし、ヴィーナとマーズ、マキュリーの身体にソレを巻き付けた。
「今すぐにでも思考を放棄したくなる、不可思議な拘束です…!
貴方がたを、縛りあげ、放さない!!ここで生涯を終えるのです!!」
ご丁寧に技の説明をする怪物。
すると、怪物の首元のスカーフが再びスロットの如く回転した。
と、思いきや………
「色々色色ナンノ色?全部のイロッ!!ぜーんぶ!!
全ての色を、色という概念をその空間に固定し尽くす………!!色全縛り!!」
瞬間、私の身体は完全に動けなくなった。
指先や爪先、髪の毛一本すら動くことがなく、靡くこともない。
呼吸すら、ままならない。
というかあれ?心臓、止まってる?
血液が、流れている感じがしない。
自分でも何を思っているかわからない。
けど、・・・あれ?視界が何も見えなくなった。
音も何も聞こえなくなった。
恐怖という感情すら、消えたーーー
「さて。これでゆっくり色を飲める……。しかし、貴女には死んで貰っては困る。せめて、呼吸だけは許しましょう」
「ッッ!!?ぷはぁ!ぜぇ、、、はぁ、、、ぜぇ、、、はぁ、、、」
あれ?息ができる。
呼吸が、できる。音が聞こえる。
どくん、どくん、どくん、どくんーーー
あ、私の心臓の鼓動だ……。
それに、目が見える。当たり前の事のハズだけど、視界が効くことがただひたすらにうれしーーーヒイッ!!?
目と鼻の先には、Neoリッチーが。
「っっ、ーーーー」
「おやおや、声が出てませんよ?嫌だなぁ、そんなに怯えないでく・だ・さ・い・よぉ」
テレパシーで話しているとは到底思えない、ネットリとした口調。
私は思わず口元に手を当てた。
手が動ける事に気付けていない程には、今の私に余裕はない。
マズイ、また吐き気が催してきた。
加えて今度は、全身隅々に悪寒が走り、高熱を出した時特有の嫌な汗と、神経痛まで感じ始めた。
「さぁ、貴女の色を、カガヤキをヲヲヲ、ワタクシニィィ、・・・!?」
「っだぁ!!!」
「ッッ、何!?」
色という色をその場に固定され、完全に生命活動を停止していた。
その状態で怪物に捕らえられたハズのヴィーナ。
何故、彼が私の目の前に?
それと同時に、私の頭を優しく撫でられる感触を覚えた。
「よーしよしよし、心配させてごめんね?」
「もぅ、大丈夫よ!これで貴女は怖くないわ!」
「ーーー!!」
マキュリーとマーズが、いつの間にか私の目の前に!!
息絶え絶えの彼女達を見た私は、身体の奥底から熱いモノが込み上げてきて、前がよく見えなくなった。
「な、何故……何故貴方がたがワタクシの目の前に?!
い、色全縛りで生命活動すら止めたのに・・・」
「はぁ、はぁ、あ"?何故かって、俺達は九星天使だぞ?最強の魔王たるジーク・カイザー様の配下。その幹部だ。
ぜぇ、ぜぇ、、、い、言っておくが、勇魔六英雄の幹部クラスは全員こうだ。
ぜぇ、はぁ、、ははっ。格が違うんだよ……!」
「・・・天晴れです。天晴れです!!
ですが、困りましたねぇ。これでワタクシも打つ手が無し」
怪物はニタァと不敵な笑みを浮かべた。
「には、ならないんですよねぇ」
「・・・知ってる。貴様には超速再生があるもんな」
ヴィーナの言葉を受け、一瞬だが、怪物の動きが固まった。
「(駄目だ。今のこの一瞬で理解った。ワタクシは彼には敵わない。心が強く、勇敢な彼には到底……。
・・・成程成程。そうですか、そうですか!!)えぇ。しかし、いくら半永久的に回復できたとしても、貴方がたを相手どるのは骨折り損のくたびれもうけです。と、いうことでワタクシーー」
瞬間、Neoリッチーは翼をバサッと、下半身の触手をニュルッと音を立てて広げた。
「この星の色を、その全てを奪いさりたいと思います」
「は、はぁ?」
「あんた、何を言ってーー」
怪訝な顔のマーズを見て、怪物は言った。
「ワタクシの手にかかれば、惑星一つから色という概念そのものを奪う事くらい造作もない!!
貴方がたは素晴らしい!!!我らモンスターに並ぶ程、人魔は素敵だ!!!時間が許すなら、ずっとこうして戦っていたい。
・・・ですが、ワタクシの身体がそれを許してはくれない。故に、最後の手段というワケです」
怪物は一度、全ての目を閉じた。
そして、頭蓋骨は深く頭を下げて頷くと、キッと目を開いた。
「ヴィーナさん。マーズさん。マキュリーさん。
ワタクシは貴方がたと戦って、ワタクシの製作者たる主からは教わらなかった事、大切な事を沢山学びました。故にワタクシは、"この世界"が好き。
人魔のいる、無数の色で輝きに満ちていている"この世界"が大好き。
もし。もしも生まれを選べたのなら、貴方がたの隣に、側にいたかったーー」
怪物の言葉は恐ろしい。
何故恐ろしいのかって?
一言一句、その全てが怪物の本心だからだ。
恐怖しか感じる事が出来ない私ですら、同情できる程の、理解できてしまう程の、純粋なものだったのだ。
「さぁ!!ヴィーナさん!マーズさん!マキュリーさん!貴方がたの全力を以てーーワタクシの最終奥義を、必殺技を、阻止してください!否、阻止するのです!!!!!」
声高らかに宣言するNeoリッチー。
それを見て、両手の銃を構えるマーズと、魔法を撃つ2秒前のマキュリー。
「(俺が普段剣を使わない、使えないのはこの国を破壊しかねないから。だが、アレにだけは、あいつだけには、全力でぶつからねばならん。……腹をくくるぞ、俺!)
ーーー貴殿の覚悟に敬意を払い、この俺、九星天使筆頭のヴィーナ。全力を以て応じさせてもらう……!」
ヴィーナは何処からか鞘を取り出すと、剣を抜いた。
「み、皆しゃん……」※噛んだ
「ユーカちゃん……。っ、よし!ユーカちゃん、私達の頑張りを、特等席でその目に焼き付けて頂戴?」
「わたし達のカッコいいトコ、ご覧あれっ!」
「・・・サンダー・ウイング、再展開。超力発電機関、全・解・放!!」
ヴィーナは純白の翼に電気を蓄積させた。
同時に、マキュリーとマーズも各々の翼に氷と炎を纏わせた。
「アイス・ウイング展開っ!加えて、ヒートドレイン、無限、吸熱……!!」
「ブレイズ・ウイング、温度管理、MAX・・・!」
「おぉ!それが貴方がたの全力の姿……!!発光るお目目と纏うオーラが素敵……!!」
Neoリッチーは嬉しそうに笑うと、三人に最敬礼をした。
「では、いきます。皆さんには、この程度で止まらないで欲しい。耐えてくださいね?」
怪物は三人が頷くのを確認すると、技を放った。
「色々色色何ノ色?ゼーンブ!!!!!!」
その瞬間、Neoリッチーの全身が光輝き、その光は束となった。
そして、そのビームに少しでも触れたものは、瞬く間に色を失い、不自然な白色になった。
土であろうが道であろうが、木々であろうが。空であろうが、雲であろうが関係ない。
当たったもの全てが不自然な白色になった。
「プライマルブリザードっ!!!!!」
「プライマルブレイズ!!!!!」
「プライマルサンダー!!!!!」
Neoリッチーに応じる三人が放った魔法。
怪物が浮遊している場所。その空間に向けて、先ずは特大の雷が落ちた。
続けて、熱という熱を奪い去る極限の冷気が、光線を放つ怪物の身体を覆い、凍らせた。
そして、全てを焼き尽くす火の海がソレを飲み込み、怪物の部位を破壊しつくした。
怪物は先程言った。ミステリーボディの効果で弱点以外ダメージを食らわないと。
だが、怪物を襲う雷、炎、氷は、いずれもヤツの胸元の竜巻部分を狙って放たれておりーー
「ぐあっ!!(この、全方位光線には色食いの効果が乗っているのいうのに、それぞれの色を取り込めない!?)
負ける、負ける訳には、、!貴方がたのプライドと意地の為に、何より、ワタクシは、負けたくない、、、!!素敵で無敵で最高の貴方がたに、、、ッ勝ちたい!!」
叫ぶNeoリッチーだが、その身体は殆ど崩壊している。
「ぬおおおぉぉぉぉぉぉおぉおぉああぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「「はああぁあぁぁあぁあぁぁああ!!!!」」
突如として、ヴィーナは飛び上がった。
「マッハフライト!!マッハ10の速度を以て、貴殿の光線、ソレを全て、全て貴殿の元へ送り返すッ!!
夜明けの連撃!!!」
「なッ!?させませっーー!?」
「その翼の出番、あげないからっ!」
「Neoリッチー!あんた、そこでお兄ちゃんの活躍を!無数の目に、焼き付けなさい!!!」
マキュリーとマーズの二人の原始の魔力を浴び、Neoリッチーはヴィーナの反撃を阻止できなかった。
「グッ、ぐうううぅぅぅ!!!(そうです、それで良いのです!嗚呼、クソあるじの元を離れて中央王都へ来て良かった。
クソあるじの創った、最強のキメラとして。ワタクシは自身の生き様を常々呪い続けて来ましたが、このような散り様であれば、本望ーーー)」
宣言したヴィーナは、その宣言通り、目には見えない速度で縦横無尽に飛び回り、Neoリッチーの光線、その全てを撃ち落とした。
しかも、光線を撃ち落とした先は、宣言通りの技を放った本人の元へ、だ。
「ヌウゥ、ぐっ、グオオッ、ぐっがあああぁぁぁ……!!!!」
斯くして、西暦498年に起きた中央王都のモンスターテロは幕を下ろsーー
「ナッ、ウソ、、ダロ?ワダ、、、ワダグジハ、、負ケタノダゾ?第、3形態、、!!?ワダグジハ、ソンナモノ、知ラーー」
ヴィーナ、マーズ、マキュリーの三人の全身全霊、全力の攻撃を食らい、消滅したハズのNeoリッチー・セカンド。
禍々しくも神々しい。そんな言葉がピッタリ似合うモンスターであったが、最早今のNeoリッチーは禍々しくも神々しくもない。
100近くある全ての瞳から涙を流す醜悪な姿で宙に浮かぶソレは、私達に向けて『逃ゲテーー』
と、確かにそう言ったのだ。
「皆サッーー、逃ゲtーー」
「ッッ、マキュリー!マーズ!二人は彼女を連れて逃げろ!!」
「っ、解った!」
「お兄ちゃん、………。お願い!!」
「駄、、目ダ、貴方モーー逃ーー」
その時、天から一枚の羽が降ってきた。
真綿のようにふわふわな、純白で、綺麗な羽がーー
「ヴィーナ、マーズ、マキュリー。よくやった。後は、余に任せるがいい」
「ーーへ?」
マキュリーちゃんの着る黒い軍服と、ヴィーナさん、マーズちゃんの着用する赤い軍服を中に着た金髪の大男と呼べるような背の高い人。
そんな天使が、突如として目の前に現れた。
「Neoリッチー・サード、と呼ぶべきか。そなたの事はテンクウノヒトミにてよーく見させて貰った。
『今度は人魔に転生できればいいな』、か。
もし、貴殿の望みが叶うなら、その際にはうちの配下達と仲良くしてくれよな?」
約束だぞ?と悪戯に笑う大きな天使。
そんな無垢な笑顔を見て、怪物は地面にへたり込んだ。
「嗚呼、ア"ァ"ァ"ァ"ァ"!!」
「天獄の神に代わり、余、自らが貴殿を裁いてくれよう」
「魔王、ジーク・カ"イ"サ"ァ"ー!!貴方ハ、、!貴方ガタハ、、!」
その、偉大なる天使は、自ら生み出した炎を剣の形にすると、怪物Neoリッチーを一撃で葬り去った。
「モンスター二モ、、アタタカイ、、、!トテモ、、トテモ、アタタカイ、、、」
「天獄の神罰-炎剣-……!」
◇
ユーカさん、いや。水城先生は、ゆっくりと過去の体験を、"この世界"に来た時の事語ってくれた。
「その後私はマキュリーちゃん達の案内通り、ジーク様のお城へと招かれました。そこでは、3ヶ月程病養しながら、"この世界"について学びました」
話の途中で波打ち際から砂浜に戻った俺達は、日が傾き始めた海を眺めながら水城先生の話を聞いていた。
俺が向こうで行方不明になっていた事。
その翌日に先生が通り魔に合い、死んだ(?)と同時に"この世界"に来た事。
そして、来た直後にモンスターに襲われ、酷いトラウマを居った事。
「そこで、"この世界"は元の世界とは根本的に違う世界であると知りました。人間の他に、魔物、もしくは魔人と呼ばれるヒトがいる事。魔法や属性が人魔と密接な関係にある事。
500年前に起きたゼロ対戦や、それの爪痕たるモンスターの事」
水城先生は深呼吸をすると、困り顔で続けた。
「初めて対面したモンスターが光堕ちダンジョンボスだったからかもだけど、モンスターについて知れば知る程あのトラウマとはかけ離れた存在だと認識させられる。
あのトラウマよりも可愛く、愛らしい見た目であっても、漏れなく奴らは人魔にとっては忌むべき害悪……!」
その力強い声に、俺はただ、心を痛める事しかできなかった。
「そのギャップに蝕まれ続け、いつしか私はこう思うようになったの。
モンスターを根絶やしにしなければ。モンスターがこの世から消えれば、私は悩まなくて済む。苦しまなくて済むってね」
「(だからピノを見た時や、ヘドドンにあんな事を………)っっーー」
「その考えに行き着いた時には既に、私のスキルは"色無き虹"だったわ。
怪物が言ってた素敵な色なんて、もぅ、存在しない」
駄目だ。言葉が詰まって、出てこない。
「私は世話になったジーク様の元を離れて、冒険者の都へ向かった。
そこで、勇者クロム。そうね、ギルマスに沢山教えを頂いた。そうして、色々あって今に至る、と。・・・あれ?木ノ下君?」
「なっ、泣いてる……」
水城先生とアテネさんは驚いた表情で此方を見ている。
あれ?俺、泣いてる?
「あれ?・・・ぜっ、、ぜっげほっ、ごほっ、、。
絶対、泣いちゃ駄目だっ゛で、堪え゛て゛た゛の゛に゛・・・」
「キノシタリクト……」
涙と、嗚咽が止まらない。
止めようとすると、堪えようとすると、それは更に強さを増す……。
「ありがとうね。私なんかの為に涙を流して……」
「なんかなんて……」
「ううん、いいの」
水城先生はそう言うと、俺の事を抱きしめた。
「!?」
「!!!」
「ごめんなさい。1分!あと1分だけ、こうさせて……」
何!?な、何起き!?ちょ、ちょ待って!?
水城センセ!?水城先生!??
混乱していたら、一分が経過しました。
「・・・ありがとね。少し、落ち着いたかも」
「(ユウカ。あたしの事、忘れてないか?)」
なんて。あどけない笑顔で水城先生は言った。
「・・・水城センセ」
「なに?」
「すみませんでした」
「「!」」
水城先生とアテネさんは驚きの余り硬直した。
「一昨日のピノの時も、昨日のヘドドンの時も。水城センセの事を考えずに無茶苦茶な事を言って。
先生の過去を知らなかったからって、先生の事を傷つけて、すみませんでしたっ!!」
「「・・・」」
誠心誠意頭を下げる俺。を、心配そうに見つめる水城先生とアテネさん。
「(………)」
「(そう、だな)」
「顔を上げてください、木ノ下君」
水城先生はそう言いながら俺の頬に手を当てた。
ゆっくり目を閉じる水城先生は、どんどん顔を近づけていく。
「(ユウカ?え、ユウカ!?)」
「えっ?み、水城セnーー」
ーーえ?
「え?」
「///・・・・・。・・・アテネ様。そろそろ、クロガネの街へ戻りませんか?」
「あ、あぁ。・・・いいのか?」
「はい♪あ、その前に……」
「Ok。解った解った」
水城先生とアテネさんの会話。
一切耳に入ってこねぇです。
え、夢、ではないよな……。現実だわ。
え、え?俺、キスされたんだが。
元の世界の担任に。
「木ノ下君。え、ええと、私からも謝罪させてください。昨日の事。
貴方がヘドドンに好意を持っていたというのに、あんな大人気ないことを。貴方の神経を逆撫でするような真似をしてすみませんでした」
えっと、水城センセが昨日の事謝ってるっぽいんですが。
先生の声がねぇ、右耳から入って、左耳から抜けてるんですけど。
俺の唇に、柔らかい感触が。甘い味が、残ってる・・・
「あ、はい……」
「私のせいで木ノ下君が放心状態に!!!?あーん、アテネ様ー、どうすれば……」
「(・・・ハアァァァァ)てい」
「痛!!?」
痛った!!アテネさんにチョップされた!!
「ちょ、何するんですか!!!」
「初キス奪われて放心したくなる気持ちもよく解る。
よーく解るが、ユウカから大切な話があるってさ。何でも、昨日の件についてだと」
ジトーっと、呆れ顔でそう言ったアテネさん。
「昨日の件に、ついて?」
「木ノ下君」
「っ、はい!?」
水城先生の低い声のトーン。
思わず声が上擦ってしまった。
「昨日の閉会式後の話です」
先生はいつの間にか正座になっていた。
真剣な表情を見て、俺も正座に座り直した。
「昨日はすみませんでした!貴方の神経を逆撫でするような真似をして、とても大人気なかったです」
「・・・」
返す言葉が思い付かない。
確かに昨日(77話後半参照)俺はユーカさんにヘドドンを貫かれてブチ切れた。
だが、それは水城先生にあんな過去があったからだと知らなかったから。
「木ノ下君?」
「水城先生、アテネさんも。あの、こういう時、どう返せばいいんですか?」
「っっ」
水城先生は言葉を詰まらせた。
そんな俺達を見て、口を開いたのはーー
「そうだな。喜べばいいんじゃないか?だって昨日、ユウカはヘドドンを殺さなかったんだから」
「は?」
アテネさんはそう言うと、フフッと笑った。
「ヘド!ヘドドッード!(訳:やぁ!湿気た顔してるじゃん!)」
「は?!」
アテネさんの後ろから、ヘドドンがヒョコッと顔を出した。
昨日、俺達と共にメガ・ゴーレムファイアと戦ってくれた、あのヘドドンが!
「な、何で?胸、貫かれてたじゃん………!」
「ヘドド、ヘッドドド?(訳:当たり所が良かったの、その人に感謝しろよな?)」
アテネさんはヘドドンの言葉を翻訳してくれた。
その瞬間、涙がボロボロと、止まらなくなった。
「ヘド!?ヘッ、ヘドード(訳:ちょい!?困ったな、まさかここまで喜んでくれるなんて)」
「木ノ下君。あの時は、ギルド職員という立場上ああするしかなかったんです。
だって、ギルドの皆さんにはモンスター大嫌いの『鋼鉄の女帝(笑)』で通してますからねぇ……」
水城先生は、正座のまま踞ってヘドドンと向かい合う俺の背中を優しくさすった。
「昨日、君達が遠征の内容を終わらせて街に帰った頃かな。あたしがクロガネ山脈で見つけたのさ。
元々、アポロンから話を聞いていてな」
「い゛つ゛?聞い゛た゛ん゛て゛す゛か゛?」
うわ。めちゃくちゃがらがら声。
アテネさんは、そんな俺の声を聞くと、優しく微笑みながら答えをくれた。
「メガ・ゴーレムファイアが討伐された後だな。
ヤツが現れた時、ゴクラクとクロガネの街は大騒ぎだったんだ。隣国リバイヴバレーにも余波が行く程にはな」
「う、うえぇ!?」
アレ、そこまで被害あったんだ……
だからか。隣国の聖騎士団長のミロルさんが遠征に途中参加したのは。
(※だいたい正解。参戦したのはあんたとダークセイバーのせい)
「いや、そんなに悲観する事はないぞ?アポロンと飛び回って民草の混乱を鎮めていたのだからな。騒動が落ち着いた後にアポロンから聞いたんだ」
アテネさんはその後、確かその時君は気絶していたな。なんて言ってくれやがった。
「っ……力不足ですみませんでした!」
「っはは!!大丈夫、君達はよく頑張ったさ!君達が頑張ってくれたから、あたし達は早く街の混乱を鎮めれたんだ」
アテネさんはグッと親指を立てた。
「・・・」
「ヘドードド(訳:上手く言いくるめられてて草)」
ヘドドンは蔑んだ目で俺を見てる。
(※ヘドドン:cvアテネさん。←ここ、普段はピノ)
チクショー!馬鹿にしたきゃ笑えっ!!
「ヘド。ドードド、ドヘドッッへヘド(訳:なんて。言うかよ、大切なヒトを救ってくれた大恩人に向かってさ)」
「ヘドドン……」
それから10分程経過した。
俺はポケットから時計を取り出すと、時刻はpm3:55を指していた。
「っ!いつの間にこんな時間に……」
「ですね。もぅすぐ16:00……」
「さ。戻るか、-クロガネ-に」
「ヘドッ」
「そうだな。ユウカ、リクト。一度こいつを精霊魔城に送ってから戻るぞ」
精霊魔城?
「この国の女王、魔王アポロンの住まう城だ」
「ということは、えっ!?アポロンさんがヘドドンを?」
「そういう事。大丈夫だ、やたらめったらにこいつを追い出そうと画策する輩はいない」
アテネさんは俺の事を見透かしたように笑った。
「なら、良かった……」
「ヘッドー!ヘドド!(訳:サヨナラは言わない!また会おうぜ!)」
「~~ッッ、おぅ!!」
俺はしゃがんでヘドドンと目線を揃えると、ヘドドンとグータッチした。
「じゃ、転移するぞっ」
「よろしくお願いしますっ!」
「お願いします!」
「ヘドーッ!(訳:しまーすっ!)」
斯くして俺達は、アテネさんの転移の世話になった。
一度、精霊魔城-メテヲバーン-へ向かってヘドドンを送った後、クロガネの街に戻ってきた。
「さて、ここだな?」
「っと。あ゛後で靴直さないと……」
「靴、ですか?」
水城先生は首を傾げた。
「昨日、クロガネ山脈で砂利踏んだ時に穴が空いたっぽくて」
「あちゃー」
あらら~と口に手を当てる水城先生と、頬をポリポリかくアテネさん。
「まぁ、陸上やってた時から靴はすぐ駄目にしてたてたんで、何とかしますよ」
「(確かに。沢山走ってる所を見てましたから)直すのは"創造の手"で、ですか?」
「いえ、自分の手でできます」
水城先生とアテネさんは目を丸くした。
「流石に材料足りないんで"創造の手"使いますけどね」
「そうですか」
「ンピピ!リクトじゃない!!」
ピノだ。ん?ピノ!?
あ゛!あ゛ぁ゛!!
あー!!!!!!忘れてたぁぁぁぁぁ!!!
炭鉱の事、わ っ す れ て た ぁ ☆
「(良かった。いつものリクトに戻ってるじゃんか)よーうサボり魔め、今日の作業は終わったぜ?」
「ごめんて。此方も此方で色々あったんだよ」
「その色々。聞かせてくれるーーか、え?」
首に腕を回してダル絡みするヒビキと、説教に来たホォリィさんだったが……
「あ、貴女は・・・!」
ホォリィさんだけでなく、炭鉱ギルドの人達はフリーズした。
何故固まったって?
「嘘だろい!?」
「え!?えっ、本物!?アテネ様御本人!?」
「???」
「あっ、貴方!この方が何方かご存じないのですか!?」
驚き過ぎて目をかっ開くキララさん。
「名前は知ってますよ!けど、正体を教えてくれ無いんですyーー」
「アテネ。アテネ・イクリプス。クロガネの北東部に聳える浄化の大樹木。そこに住まう精霊女王、兼、魔王アポロンの義姉」
えーっと、なになに?
この街の北東部にある浄化の大樹木って所の精霊女王?
魔王アポロンの、アポロンさんのお姉ちゃん!?
「キノシタリクトと"クリエイト"。並びに、君達も。改めてよろしくな」
その後、俺がどんなリアクションを取ったか。
ごめんなさい。全く覚えてないですごめんなさい。
次回 85話 遠征3日目-夜- クロガネキャンプ場大騒動
前書きで『キャラが暴走してる話』、本当に暴走しているのは僕の方かもしれない。
逆だったかもしれねぇ………!!
リクト「草」
たった一つ、確かなことがあるとするのならば。
僕は満足Daーー!
※鬚DAN好きの方に怒られろ。マジで
4/19(土)追記枠 作者<日付越えてもうた……
久々のおぉ、ざっくりモンスター図鑑ー!!
Neoリッチー編!
Neoリッチー・ファースト「おや、ワタクシですか」
僕「あ゛い゛!」
リクト「(毎度毎度、解析するのは俺なんだけどなぁ……)」
僕「今回のNeoリッチーさんは本作では珍しい、お話スタート時点では既に死んどる、召されてるキャラとなります。えぇと、27話の極楽の夢見蝶のフーラさん以来かしら?」
ルミナス「・・・そう、じゃな」
あ。すみませんでした。
僕「というこっとでぇーん。startゾイ」(真顔)
一同『『急にスンッとなるな!!』』
Neoリッチー・ファースト「(ワタクシ、こんな作者の元でやっていけるのだろうか………)」
Name:【Neoリッチー】
種族:複合海洋族 属性:水/闇
生息場所:中央王都-天空城-付近
危険度:<ダンジョンボス>S級
【所有スキル】
"混沌捕色者"
・色飲み ・過剰着色
・超速再生 ・魔法影響半減
【概要】
・大きさ:350cm、重さ:300kg
セカンド時 大きさ:350cm、重さ:111kg
・西暦498年、今から2年前の中央王都で起きたモンスターテロ事件の犯人とされているモンスター。『真犯人について仄めかした』と九星天使の方々数名の証言が有るようだが、真偽は不明。
・剥き出しの頭蓋骨からは右側には角が。左側にはタコのような触手が生えており、首元を隠す真っ赤なスカーフや、右側にのみ生える歪な翼、左右の手や右生足、左機械足等々、至る所に目玉が付いている。その目はすべて、アナタノコトヲ見張ッテルヨォ!ドコニイテモネェ。イイネェ?
・主食は色。様々な場所に左足を、注射針の様に突き刺しては色を吸い、生物から無機物まで、破壊の限りをつくす。
ちなみに。当人曰く透明も色扱いなので、その気になれば空気に左足を突き刺して、"この世界"から全ての透明を食らい尽くすこともできる。そうなると、大気が意味を成さなくなり、"この世界"の生物全てがお亡くなりに。
・ファースト時は兎に角色を食らい尽くす事しか考えていない。体力がゼロになってからのNeoリッチー・セカンドでは、人間や魔物のような柔軟な思考を獲得できる。
しかし、身体の構造上、顎が噛み合っていないので、流暢に喋ることは不可能。しかし、テレパシーは使えるので、一応の会話は可能。
・光堕ち系ダンジョンボス。作者のお気に入りになりました。おめでとう!
いつか再登場させれたら嬉しいけど、どうすればいいのやら………
(※既にアイディア蟻!今後に期待だ!!)
Neoリッチー「はぁ。ギャグ補正の無いワタクシは辛いですね。こうやって喋ることすらままならないんですもの」
リクト「・・・・・・(光堕ち系ダンジョンボス……w)」
ユーカ「(無理……。本当に怖い……)」
おわりー!!!
4/20追記
ほんの少し修正しました。
---To be continued---




