【82話】 傷心に 塩刷り込みし ラムネード
すんません!先んじて謝っておきます。
今回、めちゃくちゃ話重たいです!!
本当に、お前どしたん!?ってくらいのゲロ重です。
そして、壊れに壊れまくったリクト君がみれます。
リクト「オイ」
なので、本当に心に余裕がある時に閲覧してください。
読み終えた後にメンタルリセットする為のものを近くに準備しておく事を推奨します。
それを踏まえて、本編STARTです。
覚悟はいいか?俺はできてない。
リクト「っふw」
はい。はじまるよー
どもーどうもどうもどうも、陸斗でございます。
私は今、火の国に遠征で来ております!
さて、俺は今、火の国のどこにいるでしょーか!
Q.リクトはどこにいーー
A.火の国最西端のラムネードビーチです。
(※答えさせる気ナシ)
Q.?????※各自脳内でXファイルのあのbgm流して♨️
A.ななななんでだろー(※怒られろ)
はい。というわけで(?)俺は今、ラムネードビーチという場所の砂浜に座って、体育座りで波を眺めていまーーぁす。
「あ"ーー・・・・・」
隣にいるユーカさんとアテネさんは、死んだ顔した俺を心配そうな顔で、見ていまぁーす。
ひそひそ何か話してるみたいですが、俺の耳にはどーゆー訳かナニモ入ッテキマセーン。
ドウシテダロウネーェ。
「(ミズキユウカ。アリス達への連絡は終わったか?)」
「(えぇ、アテネ様。感謝します)」
「(様は止せ。どうもむず痒くなる!………所で、君は彼と同郷なのだろう?元の世界から彼はこうだったか?)」
「(・・・うーん。元の世界でも失敗を引きずる癖はありましたけど、半日もあれば気持ちを切り替え普段の木ノ下君に戻れていました。
ですので、ここまで落ち込んだ様子は初めて見ました。とても心配です……)」
「(そうか。この海ならばあるいは、と思い連れてきたんだけど……)効果はいまひとつ、か……」
「ですね………」
「あ"ーーー・・・・・・」
何故二人が心配そうに俺を見てるのかって?
・・・わざわざ思い出させないでくれよ。
俺だって忘れたいんだから(涙)
(前回ラスト。またしてもオチ担当のデスパイダーにやられた主人公さんに合掌)
◇
あの後、昼休憩の為に四分割された『桃グループ』は集合したのだが、ぶちギレたキララさんとしょんぼりするピノ、スーノさん、ユーカさん。
そして、明らかに顔が死んでるしちょっと糸が残ってる俺を見た一同。
無論、みんな頭を抱えていた。
「こ、これは、また………」
「煌星々、普段のおいらよりも怒ってるじゃない?」
「そうですけど、何か?」
「開き直った!!?ほ、本当に、そっちで何があったんだい?」
「そうですよ煌星々ちゃん、一体何があったんですか?!」
テンメイさんやウィズさんの疑問に答えることなく、頬を膨らませてプイッとそっぽを向くキララさん。
合流した俺達は、スロープ途中の休憩所まで戻り、そこで昼休憩を取る事になったのだが、・・・。
一生ミスを引きずる俺が悪いんです。
はい。デスパイダーに手も足も出なかった俺がいけないんですぅ。(※キツ………)
お陰で場の空気は最悪。
爆発寸前のキララさんと、泣く一歩手前の俺というダブル爆弾を抱えたまま『桃グループ』は昼食休憩に。
なったけど・・・
「(う"。ごめん、みんな、本当にごめん。もぅ無理だ)」
俺は徐に立ち上がった。
すると、わぁ。キララさんに引き止められました。
「何処へ行くんですか?(八つ当たっても仕方ないのに……)」
「トイレに行ってきます。後、ちょっと、気分転換に。これ以上迷惑かける訳にもいかないので」
尿意なんて一切ないが、耐えられない。
一瞬昼食の蕎麦をすするテンメイさんと目が合った。
気がしただけだ。
「…!(ふーむ、いたたまれないねぇ。おいらがこんな気分になったのは久々だ。何とかしてあげたいが、気の効いた言葉が思い付かない……)」
「(止せ天命、触れてやるな。時にはな、その優しさが猛毒になる………)」
「(ッ!そうかい、残念だねぇ……)ずぞぞぞぞ」
長い沈黙の末、キララさんは頭を縦に振った。
「………そうですか。解りました。なるべく、すぐに、戻ってきてくださいね?サボりは許しませんから。
(・・・違う。私はそんなこと、嫌味ったらしく言いたい訳ではないのに……)」
「はい、勿論。………空間転移」
「(スペースワープ、あの時の。私を助けてくれた時の……。き、気の迷いです!気の迷い!)」
『『(消えた!?)』』
俺が転移してから数秒後、煌星々は席から立ち上がった。
「すみません。私も少し席を外します。すぐに戻りますので」
「あ、煌星々ちゃん……」
彼の座っていた椅子をぼーっと眺めるホノカは、ポツリと呟いた。
「私、力に、なれなかった。リクト、あんなに苦しんでいたのに……」
「ねぇホノカ。私達、どうすればよかったのかな……?」
「あんた達……。(姉として、年上として、アタシが何か出来る事・・・)おいで、二人とも」
今にも泣きそうなホノカとユキナを目に、フユは徐に立ち上がると、二人の頭に手を乗せた。
「・・・フユ、さん?」
「お、お姉ちゃん?」
そうして、泣く子を宥めるように、諭すように、優しく頭を撫でながら言った。
「ユキナ、ホノカ。・・・あんた達の気持ち、十二分に判るわ。・・・・・だけどね、今だけは、今だけは追いかけちゃ駄目。彼を信じて待っているのよ。
大丈夫、きっとすぐに戻ってくるから、そっとさせてやりな」
「「・・・はい」」
俯きながら返事をしたユキナとホノカ。
そんな二人は目元に前髪がかかり、表情がよく見えない。
「・・・」
フユは、そんな二人を抱き寄せた。
だが、彼女も決壊寸前だった。
「(ねぇ、お母さん。教えて?こんな時、姉として、年上として、どうすればいいの?何をすれば正解なの?)」
そんな彼女達を見て、ライデン、ヒビキ、ルナ、アリス、ピノ。モミとスーノ、そしてユーカも。
気を効かせれなかった自分を呪った。
後に聞いた話だが、その時の事を、聖龍は地獄絵図だと語った。
「っと、数時間ぶりの地上だ。……ハァ」
俺はトイレ休憩に行くといい、空間転移で地上に帰還した。そうですね、逃げたって認識でokです。
嗤いたきゃ嗤えば?
え、なに?嗤えない?
じゃあ代わりに俺が嗤うよ。
ハハハハハハハハ!!!!!!!
…………ハァ。
クロガネ炭鉱の大穴の周囲には、炭鉱内のスロープ同様、転落防止の大きな柵が張り巡らされている。
それを背に、俺は縮こまって座っていた。
端からみれば完全に不審者である。
「あの魔物は悪くない。あの魔物は悪くない。あの魔物は悪くない。全部全部全部ヘマした俺が悪いんだ……
あの魔物は悪くない。あの魔物は悪くない。あの魔物は悪くない。全部全部全部ヘマした俺が悪いんだ……。ぅぅぅ……」
なんて、壊れた機械みたいに何度もボソボソ呟いていた。
何してるんだろうね、本当。
俺にもわからねぇよ……
俺 に も わ" か" ら" ね" ぇ" よ" ! ! !
はぁ。醜いなぁ……。八つ当たりなんて、人として終わってる。
も駄目だぁ……(※ホンマめんどくさっ)
「無理、今日はもぅ無理。無理、今日はもぅ、あ"ぁ"↑ーー、あ"↑ぁ"↓ぁ"ぁ"ぁ"・・・。
そうだよな。この世にクモが存在するからあんな事になるんだよな。
そうだよ、クモが存在しているという事象そのものがいけないんだよ……。このクソ害虫が。
え?なに?クソはホントは益虫だって?
知るか!!俺に害が出てる時点で奴らは皆害虫なんだよが い ちゅ う ! ! !
飴ぽいやつ?それはハ○チューだボケぇ!!」
かいけつゾ○リで義務教育終えてるからね、俺。(?)
こーゆー、なんてーの?親父ギャグ?って言うんだっけ?
好きなんだよねぇ……。ハハハハハ。
ハァ…。
(※苛々……)
「あーあ、ピンポイントでクモが存在しない世界にいければよかったのに。ポ○モンはあるけど、デ○エマはあるけど、カー○ィはあるけど。
俺の好きなものは全部あるけど、クモだけピンポで存在しない、ステキでムテキな都合のいい世界にいけたらよかったのに……。
あーあ、最低最悪のくそ虫なんて俺の!ために!!絶滅してくれないかなぁ!!!バーカ禿げろ!ドブが。○ね。
俺、なにしてんだろ。泣けてきた……」
情緒はもぅぐちゃぐちゃ。
雑にミキサーに投入された豆腐も既にグシャグシャのドロドロ。
病みそう。病み病み病み病み病みぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ。病み病み病み病み病みぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ。
嗚呼。これ以上誰かに迷惑をかけるくらいなら、いっそのこと死んだ方がマシかも………(※え?)
「おや。そこにベンチがあるのにも関わらず、君は何をしているんだい?」
ふと、パシャりというカメラのシャッター音と、聞き馴染みのある声が聞こえた。
聞き馴染みのある、といってもトータルでもほんの数十分しか聞いたことが無いけども。
俺は、顔を埋めたまま視線を上に向けると、遠征1日目で会った魔物が目の前にいた。
紅葉のネックレスを首元にぶらさげた、綺麗な黄緑色のポニーテールの少女が。
大人びた雰囲気の少女が、魔道カメラなる"この世界"版の一眼レフカメラの試作品を構えて、俺の事を不思議そうに見ている。
「アテネ、さん?」
「ふぅん、覚えてたんだ。あたしの事」
そりゃあ、神社で神主さんと面白やり取りしていたからね。(70話参照)
「質問してもいいか?」
「……」
「(おっと、初手は無視かい)君は一体何を落ち込んでいるんだい?」
「・・・」
「愚痴ぐらいなら、聞いてやらん事もないが」
「・・・・・」
「(応答無し……か。なら……)何が奢ってやろう。食べたいものはあるか?何でもいい、好きなだけ奢ってやろう」
「・・・・・・・」
「(う、嘘だろ…?)愚痴も吐かない、食欲もない。なら、あたしが快楽で、君の苦痛を忘れさせてあげようか?(……決まった!)」
「・・・・・・・・・・」
「(な、なんだと!?彼の年頃の男は性欲に溢れたケダモノ。のハズだが、色仕掛けすら効果ナシ……!?普通に傷ついたぞ……。ふふ。そっちがその気なら、非礼には非礼を、だ!!)」
えと、さっきからこの魔物は何してるんだ?
(※あんたの為に奮闘してるんだよ!!)
「パシャり」
「・・・は?」
「ふっ、見てみろ。お前、酷い有り様じゃないか。今の醜い姿の君の写真、"クリエイト"の仲間に見せたらどう思われるか。ふふ、見物だと思わないかい?」
「止めてください。言いますら言いますから!ちょ、コラ!ヤメテください!!!・・・ハッ!?」
しまった。まんまと乗せられた。
大人びた雰囲気のアテネさんには似つかわしくない、このにんまりとした笑顔。
「罠に嵌められてばっかりだな、今日の俺・・・」
罠?何の事だい?と言いたいげなアテネさん。
だが、彼女が口にした言葉は意外なものだった。
「そうやっていつまでも腹に爆弾を抱えてると気分が悪くなるだろう?先の非礼は詫びるからさ。
・・・言いたくないのならそれでいい。でも、君が本心を吐露したくなったら、その時は迷わず吐き出せ。
生憎あたしは暇を持て余していてな。側にいてやるから、その時は、あたしに聞かせてごらん?」
マジかよ。
座っちゃったよアテネさん。俺の真隣に。
・・・してやられた。
「っ、え、ええと、お相手は何一つ悪くありません。いつまでも引きずる俺がいけないんです」
「それはもういい。君の言いたい事は、十分理解したよ」
「(うっ……勝てない。ハハハ、この魔物には全く勝てそうにないや……)っ、かくかくしかじかーーーーー」
数分後。そこにはツーっと涙を流した男と、頭を抱えた少女がいたそうな。
「成程。成程成程!!(想定外だ!30分間延々とデスパイダーの愚痴!!ストレス溜め込み過ぎだろ!
というか、キノシタリクトはどれ程までにクモの事を嫌うんだ)
・・・災難だったな。君にとっての最悪の不幸が一気に降り注いだと。誰にでも、失敗が続く日はある。それがたまたま今日だっただけさ」
撫でられてます。この男、撫でられております。
多分年上なんだけども、この少女に、撫で撫でされております。
余りにもなっさけな過ぎて涙が止まんねぇです。
「もぅ俺、みんなに合わせる顔がねぇです。無理です無理。ハッハハッハー。
もぅ死ぬしかねぇです。ハ↑ハ↑ハ↑ハ↑ハ↑ー」
瞬間、アテネさんの目の色が変わった。
「ッ!?奢った考えだぞ戯け者ッ!早まるんじゃない!!」
痛っ。冗談で言ったのに、本気のチョップを食らった。
滅茶苦茶、滅ッ茶苦ッ茶痛いんですけど。
「ってぇ!!な、何するんですかアテネさーー、っ!?」
あまりの痛さに文句を言おうとした。(※どの口で!)
だが。何か、悔しそうに顔を歪める彼女を見て、俺は言葉を失った。
「命を、粗末に扱うんじゃない!いくら自分が良くたって、冗談でもそんなことを言ってはいけない……!!」
「あ、アテネさん?」
先程の子守りのような優しい表情から一変、アテネさんは本気で怒っている。
「生きてさえいれば、命さえあれば……。もしかしたら救われていたかもしれない民草を、今まであたしは、この目で沢山見てきた……。見されられてきた……!!
だから、軽々しく、命を粗末に扱おうなんて考えるんじゃない……!!」
考えなくても、何もしなくても解る。
今のが失言だったということに。
軽々しく、そんなことを言ってはいけない。
本当に誰にも顔を見せられなくなってしまう。
"クリエイト"のみんなにも、冒険者仲間達にも。
元の世界の家族にも、天国の兄貴にも。
「・・・(失言だったな、今の……)」
あまりのアテネさんの迫真っぷりに、俺は自然と、正座に座り直していた。
そして、誠心誠意頭を下げ、謝罪した。
「あの、すみませんでした。冗談でもあんな事言って、本当、すみませんでした」
「ッ!!(や、やり過ぎた……)い、いや。あたしも少し、大人気なかったな。すまなかった………」
「いえ、そんな………」
「・・・」
「・・・」
沈黙………。いや、辛いんですけど、黙られても。
ヤバい。気分転換どころか吐きそうなんですけど……
「・・・そうだ、目的を見失う所だった。気分転換だったな?
キノシタリクト、あたしに良い考えがある」
「?」
アテネさんはスッと立ち上がると、パーカーのポケットから水晶球を取り出した。
「ぴ、ぽ、ぱ、っと。もしもし、アポロンか?お前の配下とクロムにこれを伝えてくれないか?
『遠征途中だが、"クリエイト"のキノシタリクトを暫く借りる』と。用件は以上だ。またな、アポロン。・・・よし…!!」
いや、よし…!!じゃないんですけど。
水晶球から困惑した様子のアポロンさんの声が聞こえてきたんですけど!?ガッツリ漏れ出てましたけど!?
もしかしてスピーカーにしてたの気付いてないの?
え?ていうかなに?待って?借りられるの?俺。
それってぇ、つまり、どういう事ですかね?
「いいかキノシタリクト。火の国にはな、気分転換にうってつけの場所があるんだ。
うーん、ゴクラクの街もいいが、ここは、うん、そうだな。ラムネードビーチに行くぞ」
「え?」
らむねーど、びーち? えっ、海!?
ちょっと待て!?何も用意してねぇぞーーって、あ!!
"創造の手"で解決できるやん。
まさかこの魔物、それを見越して海に?
いや、泳ぐ気力なんて無いんだが。1ミリも……
「そうと決まれば善は急げだ!ほら、立て!!」
「ちょ、拒否権無い感じですか!?」
アテネさんは少し硬直すると、ニコっと笑って
「無い♪」
と、言い放った。
「Nooooooooo!!!」
「テレポーテーション発dーー。ッ!あんた、いつからそこに……。そうか、そうかそうか。ミズキユウカ、お前も来い!」
「ふぇ?」
「(え?聞き間違い?)えええ!?」
え?待て?何故この人が、ユーカさんがここに?
「み、水城センセ!?!?!?」
「すみません木ノ下君!べ、弁解は後で!!」
「行くぞ二人共!テレポーテーションッ!!」
斯くして、俺は、俺達は、ラムネードビーチに拉致されたのであった。
◇
ラムネードビーチの砂浜はとてもきめ細やかで柔らかい。きっと、ここでみんなとビーチバレーをしたり、スイカ割りやらフラッグ取り競争なんかをやったら楽しいんだろうな。
なんて現実逃避をしながら、俺はあ"あ"あ"ーと壊れたマシンのような声を出し続ける。
が、とうとう限界がきた。というのも、喉、乾いた♨️
「"創造の手"、水出して水……。っし」
俺の(イメージの)注文通り、水が満タンのペットボトルが出てきた。(500ml)
「・・・ぷはぁ。……あ」
「「・・・・・」」
アテネさんとユーカさんが凄い顔でこっち見てる。
完全に二人の事を忘れてた。やっべぇ。
「あ、す、すみませんでした(?)」
「いや、別にいい。・・・そうだな、あたしも喉が乾いた。ソレと同じもの、貰えないだろうか?」
「それじゃあ木ノ下君、私もお願いします」
あーい!オーダー入りました"創造の手"さん!!
「っと」
「「速!!」」
「どうぞ」
「「・・・どうも」」
僅か数秒で出てきた水入りペットボトル×2に唖然としながら、ソレを受け取る二人。
「アポロンから話は聞いていたが、実際この目で見てみると凄いな」
「私も、まだ慣れません……」
「どれ、いただきます」
「私も」
キャップを捻り飲み口を開け、二人は水を飲んだ。
「……普通に美味いんだが。天然水みたいだ」
「はあぁ……、美味しぃ……」
あら、意外と好評みたい。
そういえば、前にもアリスさんから高評価貰ってたっけな。(※43話参照)
「少しは落ち着いたみたいだな。あたしもな、嫌な事があった時、こうやってラムネードビーチに来るんだ。
ここ程気温も波の温度も砂浜の感触も完璧なビーチは他にない!シェイクビーチにだって比毛を取らない!
それでいて何故か人がほっとんど来ない!!」
※シェイクビーチ:中央王都&冒険者の都に隣接している巨大ビーチ。いつもいつでも大盛況。
※アポロンの住居の近く
アテネさんは勢いよく立ち上がると、徐に俺の腕を掴み、引っ張った。
「ほら、こっちまで来い!!ユウカ、君もだ!!」
「っ、どわぁ!?」
「へ?は、はい!!・・・ッ!?!?」
やっべ。昨日、クロガネ山脈の砂利にやられたの忘れてた。ヘドドンからダークセイバーを貰って以降気絶してたからなんですけどぉ。
お陰で両足、砂まみれなんですけど……。
「(ああぁぁああぁぁあwww砂まみれだ)」
「っと。ほら、靴脱げ!靴下も脱げ!!」
アテネさんに催促されるがまま、俺とユーカさんは靴と靴下を脱いだ。
「っぉ、本当だ。ひんやりしてて気持ちいい……」
「ですが、冷た過ぎることもありませんね……!」
「だろう?すうぅぅぅぅ………」
アテネさんは息を吸い込み始めた。
そしてーー
「あぁぁーーーーーーー!!!!!!!」
とんでもない大声を出した。
どういう理屈か判らないが、全身痺れた。
そして、正面を向いてごらん?
すげぇ。海が、海が真っ二つに割れてるんですけど……(引)
本当に、どうして鼓膜が破れてないんだろ……
「こうやって、大声を出して発散するんだっ!」
大人びた雰囲気のアテネさん。その外見からは想像もつかないはしゃぎっぷりである。
「ほら、キノシタリクト!君も叫べ!叫んで鬱憤を吐き出しちまえ!」
ニッと白い歯を見せながら笑うアテネさん。
ユーカさんもうんうん!と頷いている。
「そ、それじゃあ。すうぅぅぅーーー」
さて、なんて叫ぼうかしら。
なんて考えながら、肺に酸素を送りまくる。
やべ、後先考えずに空気を吸ったせいでもぅ限界が来た。
「ば か や ろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!!!!!」
「!!?」
「おぉ、いい叫びっぷりだ!」
咄嗟に俺の口から出てきたのは、シンプルな暴言でした。
ごめんちゃい☆
「こんのぉクソッタレェ!!!デスパイダー!!てめぇが、クモが、存在するせいで、俺を苦しめやかって!!!!
くそーーーーー!!!くそがーーーー!!!くそったれー!!!ばーかばーか!!お前らなんか絶滅しちまえ!!
こんのお た ん こ な すぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーー!!!!!」
ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ、、、
ま、まるで、小さい子が喧嘩してる時に使う中身のない言葉。
それが、いーっぱい出てきた☆
でも、なんか、不思議と気分が晴れ晴れしてる!!
うっふふ、すっきりーん♪(※キモ)
「・・・木ノ下君。昨日、貴方は何故私が"この世界"に来たのか知りたいと。モンスターが嫌いになった理由を教えてくれないか?と言ってくれましたね」
「は、はい。……え?」
「はい。この際、私も発散しようかな、と」
ユーカさんは、アテネさんによろしいですか?と問う。
それに対し、アテネさんは静かに頷いた。
え?急に空気変わったんだけど。
えーっと、アテネさんはご存知なの?
ユーカさんが"この世界"に来てからの事を。
「あぁ知ってるさ。何せあたしはアポロンの義姉、だからな」
「はい?」
つまり、どういう事?
「そうか、そういえば、ちゃんとした挨拶がまだだったもんな。だが、それは後でだ。まずは彼女の話が先だ。な?」
「は、はい……。・・・木ノ下君」
眼鏡のレンズをキラッと光らせたユーカさん。
レンズ越しのその瞳は、どこか寂しい目をしていた。
「一昨日、私は貴方と"この世界"で再会したよね。貴方はその時春華ちゃん、日夏ちゃん、そして柊君と話をしていましたね」
「はい(な、なんだ?何故柊達が?)」
「彼らが"この世界"に来た時の、前の世界でどうだったか。ご存知ですか?」
なんか、気分悪くなってきた。
ここまで100%当たる嫌な予感って、あるもんなんだな…
「・・・は、はい」
「それなら話は早いですね。・・・・・私も彼ら同様、向こうで命を落としたーー」
ユーカさんは空を見上げると、丁度真上にあった雲を眺めながら、続けた。
「木ノ下君、私ね?向こうで通り魔にあったの」
と、通り魔?
「フードを被った黒いマスクの男に真正面から、グサッとね」
「ユウカ……」
「っ………」
俺は言葉を失った。
「あの日は丁度、木ノ下君が行方不明になった翌日。2022年の、6/15・・・・・」
「俺が、行方不明になった翌日………?」
ユーカさんは静かに頷く。
「少し、歩きながら話そっか」
「は、はい」
「・・・(何度か聞いた話だが、辛いな……)」
俺とアテネさんは、ユーカさんの後を追う。
まるで子どもに戻ったかのように、ルンルンと両手を振りながら波打ち際を歩くユーカさん。
俺にはその後ろ姿が酷くせつないものに見えた。
「そうして私は、どういう事か二年前の"この世界"にやってきた。西暦498年の"この世界"に」
「・・・」
「本当、"この世界"って意味が解らないよね。誰もが当たり前のように日本語を使っている。会話でも、文面でも。
なのに、元の世界には無かった魔法が実在し、魔物と呼ばれる人間以外の知的生命体も存在する。そして、人魔を脅かすモンスターも」
ユーカさんはピタリと足を止めた。
「木ノ下君はソウルフォレストで目を覚ましたのよね?」
「はい。だから、みんなと出会えたんです……」
「そっか。私はね、中央王都で目を覚ましたの。王都の中央付近で……」
確か、中央王都の真ん中って、魔王ジークカイザーが住んでいる天空城-ジャスティス・オブ・ロード-がある所だよな。
(正解)
「そして、目を覚ましてすぐ、モンスターの大群に襲われたの」
ユーカさんは肩を震わせている。
それが怒りからなのか、恐怖からなのか。
はたまたその両方なのか。
俺には解らなかった。
「何が何だか理解が追い付かずに立ち尽くしていたら、私はあっという間に血生臭い化け物達に取り囲まれた。
すると、化け物の群れの奥から歪なイキモノが現れた」
肩を細かく震わすユーカさんは、とうとうその場にしゃがみ込んだ。
心なしか声も涙声になっているような……
「そいつは片方の目をギラッと光らせ、頭骸骨から角と無数の触手を生やし、人と機械のような、極めて生命に対する侮辱を感じる足を生やしたイキモノ。
右側にしかない翼や首元を隠すスカーフ、そして両手両脚。至る所についたギョロっとした目が此方を凝視している………」
ユーカさんはうっと嗚咽すると、口を閉じた。
そんなユーカさんを見て、アテネさんは静かに言った。
「つまりだ。ユウカは転生直後の二年前、中央王都に起きたテロ事件に巻き込まれたんだ」
「水城先生……」
「その、忌むべき存在の名はNeoリッチー。
様々な種族の生命をツギハギに合成された禁忌の存在にして、S級のダンジョンボス」
「え、えええS級!?」
アテネさんはコクリと首を立てに振った。
S級のダンジョンボス!?
そもそもS級のモンスターってのを初めて聞いたんですけど、え?ダンジョンボスぅ!?
だって昨日俺達Cチームが倒したメガ・ゴーレムファイアはB級のダンジョンボスだったぞ!?
だからつまり、B+、A-、A、A+、S・・・
え、えぇ!?(思考放棄)
次回、83話 色無き虹の誕生
一応言っておきます。
被害者が水城先生だったからとはいえ、大の大人がトラウマになるレベルなんです。Neoリッチーさん。
ユーカ「失礼ザマス!!」
アテネ「そうだね。とても失礼だ」
リクト「・・・・・」
僕「申し訳!!」
いつかどこかでこんな見た目なんだよーとイラスト(手書き)を公開するかもです。(※かも、なんでしないに寄ってる)
でも、作者的にはクモの方が脅威ですわ。
やっぱね、クモは絶滅すべきなんです。
奴らはくそ。くそったれです。
リクト「悔しい。共感できるのがめっちゃ悔しい……!」
もっとちなみに。
ユーカさんにとってのモンスターは僕やリクト君におけるクモみたいな感じです。
『モンスター存在しているという事象』事態、それそのものが許せない。ユルセナイ!!
次回はその理由の真髄(?)に迫ってみましょう。
読者の皆様が恐怖で震えてくれたら嬉しいです(サイコパス)
ユーカ「人のトラウマ抉るのは楽しいか!!ちくしょぉ……」
すまんかった。
---To be continued ---




