【75話】 激熱!CチームVS.メガ・ゴーレムファイア
ワタシハ、帰ッテキタァ!!
(訳:ごめんなさいごめんなさい!本当にすみません!!)
苦節1.5ヶ月……ようやく纏め終わりましたぁ。
マジで辛かった……
お話考えるのが辛かったで賞2024の2位です。
※1位は45話♨️
今回は茶番無しで本編始めます。
本当にすみませんでしたっ!!
「そうだ!」
ユーカはポケットの中に手を入れると、水晶球を取り出した。
「(連絡をしなければ。危険が迫っている事を、仮面の道化師の襲来とダンジョンボスの誕生という緊急事態を、ギルマスに、皆さんに、伝えなきゃ!)っ、ミクセルさん!」
「・・・はい。ユーカさん、周囲への警戒は僕が。クロム殿ら皆さんへの連絡を、お願いします」
自身の等身程の大きさの鎌を構えるミクセルは、コクリと頷きながらそう言った。
「メガ・ゴーレムファイアとの戦闘は彼ら自身にさせろ。だから僕らは手出し厳禁だ。もし破れば・・・
『あくまでこれは冒険者達の戦いだから』、という先程の仮面の道化師の言葉を僕はそう捉えました」
「………」
ユーカは静かに頷いた。
「我が友ガロウズを魔に落とせる仮面の道化師の事です。きっとロクでもない事をやってくるはず・・・
ならば!この命に変えてでも、貴女をお守りします!」
そう言ったミクセルは、結界を展開できるならしておいてほしい。万が一の為に、と付け加えた。
「は、はい!虹無き防壁!(魔王アポロンの配下。その筆頭が護衛についてくれるなんて。なんて頼もしい!)」
ユーカはミクセルに返事を返すと、自身の周囲に結界を張った。
そして、各チームの記録者達の水晶球に通信を入れた。
「緊急連絡!緊急連絡!記録者の皆さん、至急応答を!」
『っ!もしもし、ユーカかい?此方Fチームのクロムだよ』
『はいはい、Aチームのアリスよ』
『お待たせしました、Bチームのメイですっ』
『ほいほい、此方Eチームのキョウじゃ』
『お待たせさん!Dチームのゼニシアや』
「っ、ギルマス!皆さん!」
ワンコールでの接続。連絡が繋がるのは案外早かった。
だが、水晶球から聞こえる皆の声は何処となく焦りが感じられた。それも全員が。
「此方Cチーム、緊急事態です!たった今、仮面の道化師レクがクロガネ山脈に出現しました!!加えてCチームによって討伐された特殊個体のゴーレムファイアが仮面の道化師の魔の手堕ち、ダンジョンボスに変貌!
Cチームは今、ダンジョンボス、メガ・ゴーレムファイアと交戦中です!」
ありのまま、起きた出来事を全て伝えた。
『・・・・・は?』
『・・・何じゃと?』
『仮面の道化師!?待ってユーカさん、あの仮面の道化師!?レクが、アイツが現れたっていうの!?』
『それに、ダンジョンボスですか!?本来、火の国にダンジョンボスなんて存在しないハズです!
それに、メガ・ゴーレムファイア?なんてダンジョンボス、過去一度も目撃報告から何から何まで情報がありません!!』
仮面の道化師とダンジョンボス。
この二つのワードを聞き入れ声色を変える各々。当然か。
予想通りのリアクションである。
『待て待て!なんやねん、その緊急事態オールスターは!!此方も此方で困ってるっちゅうんに……!』
『え、ゼニシアちゃんの方も?実はね、Aチームもかなり際どい状況なの……』
『アリスちゃんも!?私達Bチームも手が離せない状況でして……』
ゼニシアの声から向こうで彼女が頭に手を当て困っている様子が連想できる。
それに、アリスとメイも自分のチームも大変な状況にあると言う。
世界的な手配犯の襲来と100m超の怪物の誕生に並ぶ程かっ!!
そう叫びたい気持ちをぐっと抑え、ユーカは冷静に向こうの状況を聞いた。
「……そちらの状況説明をお願いします」
『まず、ウチらDチームだけど、特殊個体のフレイムタートルが出現した』
『っ!?待って嘘でしょ、そっちも特殊個体が?』
『え、そちらにも特殊個体のモンスターが現れたのですか!?』
ゼニシアの報告の途中で割り込むように驚いたアリスとメイ。
すると、キョウは唸り声を発した。
『むぅ、これまた随分珍しいのぅ。A、B、C、D、E、と五匹も特殊個体が出現したのか』
『待って師匠。そこにもう一匹追加で』
『ぬおっ、なんと……!』
驚くキョウの後で、各々の絶句した声が流れた。
なんと、特殊個体のモンスターと遭遇・戦闘をしたのはCチームだけではなかったようだ。
「(!?!?う、嘘でしょう!?特殊個体のモンスターが計6匹も現れたっていうの!?)………」
だが、後の話を聞いてみると、どのチームもさほど苦戦はしなかったという。
だが・・・
『しっかしなぁ、エンカウントした場所が悪くてなぁ。
ウチら今な、洞窟ん中いるんだけど、フレイムタートルがものごっつ暴れおって影響で洞窟の一部が崩壊してな。チームは分断されて洞窟の入り口が崩れ落ちた岩で塞がれてしもてん。
オマケに水晶球の転移機能も妨害されたときた』
ため息を吐いたゼニシア。
すると、アリスとキョウも似た境遇にいると言った。
『・・・さしずめ、スーパーミースーとでも呼ぶべきかしらね。
Aチームに追い詰められたヤツは死に際に自爆し、お陰様で洞窟は半壊。私はAチームのみんなとはぐれたわ。
そして、何とか洞窟の入り口に戻ってきたはいいものの・・・』
『見事に入り口を封鎖されたと。ふぅむ、ワレの置かれた状況とそっくりじゃの』
『本当ですか!?』
『うむ。辛うじて洞窟という枠組みを取り留めとる原因となったこの岩を壊してみろ!
ワレらがいる洞窟はあっという間に崩壊し、ワレ諸とも皆潰れてしまうだろうよ』
ふぉっふぉっふぉ!!とキョウの笑う声が聞こえた。
いや、ここ笑うところじゃないんだけど……
「纏めるとA、D、Eチームは入り口が塞がり洞窟から出られず、チームも分断されたと……。
・・・ええと。では次に、ギルマスとメイさん報告を。そちらは一体何が?」
ユーカはメイとクロムに話を振った。
『ええと、私達Bチームは遭遇した特殊個体のクロヤモリを無事討伐しました。ですがその直後、どこからともなく見えない壁が現れ四方八方を囲まれてしまいまして・・・』
「見えない壁!?何ですその昔のゲームにお誂え向きのギミックは!!
ですが、難なく特殊個体のモンスターを討伐するのは流石です」
水晶球から『ありがとうございます!!』と冒険者達の声が聞こえてきた。
この声は、ジンとハルカのものかな。
『皆さん!動かないでっ、ください!!
・・・続けますね?ええと、水晶球は辛うじて連絡機能のみ動作しています。ですが、転移は外部からの妨害を受けてここから出られません。
その上、スペースがギリギリなので動くことすらままならず。現状脱出は困難です。うぅぅ……』
「(ちょ、あの、メイさん!?)………」
メイの今にも泣きそうな声にユーカは毒気が抜かれた。
『およ、Fチームとおんなじかも。もしもし?
メイ、その見えない壁というのは半透明でアクリルのような手触りのかい?』
『はい、ソレです!煮ても焼いてもノーダメージで、解析も何もかも、持てる手段全てが通用しないんです……』
メイの大きなため息が聞こえた。
『そうか、困ったね。あの冗談みたいな大きさのゴーレムファイアを前にして手出し出来ないなんて。
それも、ぼくすら閉じ込めちゃうなんて、参ったな。
………っ、誰だ!?っ!!』
「ちょ、ギルマス!?」
この瞬間、クロムとの通信は途絶えた。
まるで第三者が介入したかのように、不自然に切られた。
『ちょ、クロー!?ーーー!!ーーーー!』
「あれ、アリスさん!?もしもし?」
『通信妨gーー』
『皆さnーー!』
「キョウさん!?メイさんも!」
『すまー、ユーカーーん』
「もしもし?っ、ちょっと、もしもし!?そんな、ゼニシアさんまで……?(嘘でしょう!?通信を妨害された!?何故このタイミングで!?)」
水晶球は応答しなくなった。
というより、無理やり連絡を途切れさせられたと言うべきか。
「結界解除。ハァ……」
ユーカは結界を解くと、表情を強張らせるミクセルと顔を見合った。
「……まさか、現状から悪化するだなんて」
ユーカは手に持つ水晶球をポケットにしまうと、ため息を吐いた。
「すみません、聞かせてもらいました。・・・どうやら、アレが倒れるまで、皆さんの自由はヤツの掌のようですね」
「みたいですね。私達が迂闊に動いたら皆の命の保証は無い、か。なんて嫌らしい……!」
「ウンウン♪君達が乱入さえしなければ、アタシは何もしないよ❤️」
「「!!?」」
アハッと笑うレク。
い、いつの間に背後を取られていた!?
ミクセルは鎌をレクに向け、ユーカは拳を構えた。
「な、身体強化っ!」
「貴様っ!フレイムパニッシャー!!」
ミクセルの灼熱の斬撃は見事にレクにヒットした。
したのだが、まるで霧を切ったかのように、レクの身体をすり抜けた。
「っ!!?なんだと?」
「すり、抜けた!?」
「はいはいストーップ!!!いいの?本当にイイの?君達が動いたら本当にみんなに実害が及ぶかもしれないんだよ?
アハッ♪アハハッ♪それでもアタシとヤるっていうの?」
「「っ!!」」
こいつの場合、本当に躊躇無く襲うだろうというある種の信頼のようなものがある。
そのせいで、ミクセルとユーカの足は止まってしまった。
「うふふっ、そんな怖い顔しないでよ~う!
本当に大丈夫だよぉ、君達が乱入さえしなければアタシは何もしないよ。……うん、これでいい。これでいいんだ」
上げた両手をくるくる回し無害アピールをするレクは、最後に何か呟いた。
が、それはユーカとミクセルには聞こえなかった。
「「?」」
「兎に角!君達二人はそこでCチームの頑張りを眺めてあげればいいのさ。それじゃっ、アタシは他に用があるのでこの辺で」
レクはくるくると身体を回転させると、再度姿を消した。
「彼女は何がしたいんだろう・・・。行動理念がまるでわからない」
ミクセルは鎌を下げ、ぼやいた。
そして、メガ・ゴーレムファイアと対峙するCチームの方を向いた。
「ただ、今はCチームの皆さんを応援する他ありません。
いや、皆さんならきっと大丈夫!」
「っ、ですね……!」
「フレーフレーCチーム!!ファイトファイトCチーム!!」
声を張り、エールを送るミクセル。
「(ルーラちゃんならまだしも、アレはB+級のダンジョンボス。そう、腐ってもバケモノ)
木ノ下君、皆さん。どうかご武運を……!」
ユーカはポケットから記録用のメモ帳とペンを取り出すと、胸の前でぎゅっと抱えた。
◇
『ゴゴゴゴゴ、、、グゴゴゴゴ、、、、、』
まるでオンボロのブリキ人形のように、油切れで壊れた機械のように、全身からギシギシと軋む音を立て、ゆっくりと此方に迫るメガ・ゴーレムファイア。
そのくすんだ朱色の巨体は、スラッとしていて綺麗な外見だったゴーレムファイアが元になっているとは到底思えない程にボロボロだ。
ただでさえ全身が穴だらけヒビだらけなのに、溶けている箇所まである。
本当に、『いやいや待て待て!何故あれでまだ動けるんだよおかしいだろ!!』、とツッコミを入れたくなるほどには大変なおぞましい外見になっている。
例えば、元からあった三本の煙突なんかは、ギリギリ辛うじて原型を留めているものの、欠けヒビ上等なにあの惨状!!
腹部の暖炉だって、手すり?みたいな箇所が折れてたり欠損していたり。
でもって、改めて対面した感想だが。
やべぇ!!兎に角圧が凄い( ;´・ω・`)
流石は100m越えのバケモノと言ったところか♨️
「(・・・勢いに任せて剣を出したけどさ。剣撃、というか物理攻撃、アレに効くんか?というか届くのか?
解析効かないからまだ解らないけど、元のゴーレムファイアみたく殴る度に硬くなられても嫌だしな)………削除」
俺は一旦、両手で握っていた剣を消した。
ちょっと?ひよったとか言うなよ!?
別にビビって回復役に徹しようとした訳じゃないし!?
握る物がなくなったからか、心の臓がさっきよりバクバクしだしとか、気のせいだし!?(※うるせぇ)
「(お、落ち着け餅つけぺったんぺったん♨️
こ、今回の俺はヒーラー役がメインなんだ!余計に行動したり、変なのに気を取られたりして味方を回復しそびれるなんてミス、しちゃいけないんだ!!)」
これでもかと御託を並べまくる脳内をリセットすべく、俺は軽く息を吸い、吐いた。
そして、頬を叩いて気合いを入れた。
「(・・・・・よし。やるぞ!)」
『グゴォ……』
『『!!』』
ふと、メガ・ゴーレムファイアは溶けた瞼から覗かせる澄んだ青色の瞳を、怪しく光る赤へと変えた。
まるで、攻撃開始を宣言するかのように。
「ヘ、ヘドドッ………!?(訳:く、くるっ……!?)」
「来るわ!!」
「っ!みんな構えろ!」
ヘドドンとピノ、ルーラさんが警告を入れ、皆が身構えたその瞬間。
メガ・ゴーレムファイアは先程とは比にならない声量の咆哮をあげた。
『グゴゴヲヲヲオオオォォォォォォ!!!!!』
「っっ、、、これ、、は?」
「なッ、何だ!?」
「耳が、割れる、、!!」
身体が溶けた影響か、新しく出来上がった口元がある。
そこから発せられる音は強大な威力で、まるで全身が衝撃波に包まれてるような感覚に陥った。
全身の細胞という細胞が揺さぶられ、、、頭が、、っ、、割れそうになる。
というか、心なしか視界がぐにゃぐにゃしてきた気がする。
あの発狂を浴びて、三半規管がやられたかもしれない。
ハハッ、冗談。笑えねぇよ!
「や、ヤバイ、、!」
「ちょっ、何よこれ、、やばっ」
「ピェっ、気分悪いわ、、、ピ!?
ちょ、ちょっとブブ、、!!あんたってば、いつの間に一人だけ結界発展のよ!」
翼で頭を抑えるピノは、一人結界を張るブブに突っ込みを入れた。
「グヌヌッ、後で文句言うんじゃねぇぞ!ホレ!!」
ブブはブラッディ・プロテクトを拡大させ、俺達全員を黒い結界で包んだ。
お陰で衝撃波による物理的なダメージはシャットアウトされた。
しかし……
「ンピャァ!?音、駄々漏れなんですけど!!」
「グッ、、文句を言うなと、、言った、だろうが!
我が、ブラッディ・プロテクトは"この世界"でも最高峰の結界だと自負しているが、、ッ!!
どうあがいても音技までは防げないんだよ、!!」
「か、肝心な所が意味無いじゃん!!」
開き直るブブに、アオバは思わず膝をつきながらツッコんだ。
「ヤバイ、、目眩してきた」
俺含め全員が、思わず耳に手を当てその場にしゃがんだ。
「これっ、、、しきの事で、、!」
モミジは片方だけ収納していた右翼をバッと広げると、両手に魔力を込めた。
「はあっ、サウンドシャッター!!」
『『っ!!!』』
『ーー!!ーーー!!!』
モミジの展開したサウンドシャッターにて、発狂音は遮断された。
だが、あくまでこれは結界を維持してる間だけの話。
「はぁ、、はぁ、、。す、すみません、発動に少々、手間をとりましたの」
「ふぅ………なぁに問題ない。そうだろう?」
ルーラさんはモミジのフォローをすると、俺に視線をやった。
「(今の、、、思ったより、、消耗が激しいな、、)は、はいっ!フル・ヒール!!」
今の一瞬で想定以上の大ダメージを食らってしまったので、ここは即時回復フル・ヒールのお出番!
ヒーリングエリアでは多分、というか絶対に回復が間に合わない!
「ヘドドン!お前は、これをっ」
「ヘドッ!(訳:助かる!)」
先程のゴーレムファイア戦の時にストックしておいた毒を"創造の手"で生成し直し、俺はそれをヘドドンに与えた。
すると、ヘドドンはぴょんぴょん跳びはねて喜んだ。
「いいぞリクト君、回復に時間のかかるヒーリングエリアでなく此方を選んだのは良い判断だ」
ルーラさんはぐっと親指を立てて感謝を述べた。
「!!あ、ありがとうございます」
良い判断だって!やったね、嬉しい♪
「(おぉ、凄く嬉しそうだね……)モミジちゃん、ブブ君。すまないが、もう少しだけ耐えてくれ」
「お任せをっ!」
「おぅ。任されたぜ」
『ーー!ーーー!!』
ルーラさんは結界から勢いよく飛び出すと、即座に二つの銃から魔弾を放った。
「ぐっ、その厄介な口は封じさせて貰う!魔弾ブリザード・ロック!!!」
バン!バン!と放たれた氷塊は、見事にメガ・ゴーレムファイアの口元を凍らせた。
かっ開いた空間に氷が詰まり、驚いたメガ・ゴーレムファイアは大きく仰け反った。
『グッ、ゴガッ!?』
「おぉ!見事なショットでござる」
「活路は開いた。みんな、反撃だっ!!」
ルーラさんの号令を受け、キリュウはコクりと頷くと、分身を3体生成した。
「うむ。心得た」
「我が連撃にてその巨体」
「押し倒してみせようぞ」
「我が全霊の一撃を、その身でしかと味わうがよいッ!!」
「「「「一陽来復!!」」」」
『グッ、グッゴゴ!』
メガ・ゴーレムファイアは咄嗟に両腕を胸の前で交差させた。
そうして、全身を捻るように回転しながら突撃する四人のキリュウを受け止めた。
『ヌッ、ヌググググ!』
「見事!流石はダンジョンボス、悪条件でもこれに反応するか」
「だが、手応えは有り!!」
「そのまま大人しく朽ち果てるがいい!」
『グググッ、グゴゴゴゴ!!!』
三人のキリュウにじわじわと押されるメガ・ゴーレムファイア。
あれ?三人!?
「ん、あれ?もう一人どこ行った!?」
「ピェ!本当ね、消えた!?」
俺とピノは、消えたもう一人のキリュウを探そうと、目を動かそうとした。
その瞬間である。いつの間にかメガ・ゴーレムファイアの背後に回っていたキリュウは、ヤツの両膝の裏に強烈な二連撃を食らわせた。
「ハァッ、春風駘蕩!!」
『グゴアッ!?』
不意打ちを食らい、大きく体勢を崩したメガ・ゴーレムファイアはしゃがみこむように右膝をついた。
「ふっ、後ろががら空きだ」
『グググガッ!』
「よもや、拙者相手に卑怯とは言うまいな?」
『ヌッ、ググググッ』
得意気だが緊張を欠いていないキリュウの冷たい瞳。
それを見て悔しそうに唸るメガ・ゴーレムファイア。
だがそこに間髪入れずに次の攻撃が放たれた。
「よそ見は厳禁だぞーっと、ジェット!マジックアロー!!」
『ゴアアッ!?』
アオバの放った轟速の矢がメガ・ゴーレムファイアの胸部の暖炉に刺さり、痛みからか、ヤツは赤く光る目を点滅させた。
「へへっ、更にもう一発!ハイパーアローっ!!!」
『ゴアァ!?』
「暖炉に命中!!・・・よーし、乗ってきたぞ!!さぁてお次は、シャドウダイブっ!」
アオバはどや顔をしながら、自身の足元の影に飛び込み、消えた。
「ほぅ?影の利用、随分手慣れているではないか」
「消えた?」
『ゴッ!?』
メガ・ゴーレムファイアのくぐもった声が聞こえたと同時に、その足元の影からアオバが飛び出てきた。
「はあっ、スライサーズ・シャドウ!!」
弓から短剣に持ち変えたアオバは、黒いモヤを纏わせた短剣で足元を斬りつけた。
すると、斬りつけた箇所から黒いモヤが発生し、メガ・ゴーレムファイアの足元を覆い被さった。
『ゴアッ!?』
「影の束縛!これで君はそこから逃れられないよ!
まぁ、B+のダンジョンボス相手にどれ程通用するかは解らないけど」
『ググッ、グググッ!!』
苦笑しながら肩をすくめるアオバ。
だが、縛られた影から抜け出そうと必死にもがくヤツの姿を見るに、効果覿面っぽい。
「一見すると、アオバの影縛りは効いてますわ。
ですが、相手はダンジョンボス。念には念をですの!トパーズ・スパーキン!!」
モミジはスッと取り出した黄色い宝石二つを投擲し、両方とも暖炉の奥に命中させた。
宝石が着弾するや否や、それは眩い閃光と共に電撃が弾け、メガ・ゴーレムファイアの身体を駆け巡った。
『グギガカッ!?』
あれ、麻痺が効いた!?
確か、ダンジョンボスってダンジョンボス補正とかいうふざけた状態異常などへの耐性を持っていたハズだが。
※"時空間支配"が効かなかったU.F.O.戦がわかりやすい例だね
『ギギギギギッ、ゴグッ!?グッ、ゴガガガガガ!!!?!?』
「おや?妙ですわね。影縛りに麻痺、まさか二つとも有効的だなんて」
「だが、チャンスな事に変わりはねぇ。今のうちに削りきるんだ!ピノ、ヘドドン。貴様らも我に続け!!」
「OK、任せて頂戴!」
「へッ……ヘド!ドッドヘドド!!(訳:ぐっ、、、解った!やってやる!!)」
ハネを力強く動かすピノと、吹っ切れたようにその場で跳び跳ねるヘドドン。
「我が魔力、その身を以て味わえ!でもって、我をビビらせた事!後悔させてやるッ!!グランドシャイン!!!」
うわぁ酷い。とんでもない言いがかりを見た。
「吹っ飛べっ、炎熱の槍!!」
「ヘド、ドへ……!ヘドドドッ!!(訳:どうか、お許しを……!死息!!)」
ブブ渾身の光の魔力が、ピノの灼熱の槍が、ヘドドンのアカン臭いの息が、状態異常に苦しむメガ・ゴーレムファイアにフルヒット!!
「畳み掛けるよリクト君!わたしに続いて!」
「了解ですっ!」
チラリと後ろを振り向きながら、此方にアイコンタクトを寄越すルーラさん。
俺は合図を送り返すと、両手に魔力を集めた。
ルーラさんは小さく頷くと、二つの銃口から氷塊を放った。
「絶対零度の氷の魔力は灼熱すらも奪い取る。道化の呪いごと朽ち果てるがいい!魔弾ヒート・ブレイク!!」
「食らえっ、グランドウォーター!!!」
『ググッ、グヲヲヲヲヲヲオオォォォォォ!!!!』
熱を奪う氷塊と激流の砲撃、その全てを同時に受けたメガ・ゴーレムファイアは、まるで断末魔のような叫びをあげた。
断末魔のようなってことは、まさか?
はいそうです。ヤツは耐えやがりました。
「うぇ、硬った……!」
何度言ったかわからないが、俺は"守護者Ω"の自動回復が作動してる限り魔力切れが起きない。
だがそれでも、全力全開でグランド魔法を放つとかなり疲れる。
「はぁ、、、はぁ、、今の、フルパワーだったんだけど」
俺は手の甲で汗を拭うと、ゆっくりと立ち上がるメガ・ゴーレムファイアを眺め、ぼやいた。
「ぐっ、気味が悪い!確かな手応えはあるというのに、倒しきるにはまだ足りないというのか!?」
体勢を直したメガ・ゴーレムファイアに再度銃口を向けたルーラさん。
その表情からは焦りが見られた。
「・・・チッ」
『ググッ、グググッ、グゴオオオォォォォ!!』
ふと、メガ・ゴーレムファイアは力一杯叫んだ。
それと同時に、腹部の暖炉の小さな黒い火を激しく燃焼させた。
すると、頭頂と両肩の三本の煙突から焦げ臭い煙を放出し、口元を覆っていた氷を噛み砕いた。
『グシャッ!グオオオオ、グオオオオオ!!!』
「っ!」
「これは、………リクト君、一旦下がるよ!」
「は、はい!」
一度ヤツと距離を取って体制を立て直そう!
俺とルーラさんは、バックステップでヤツから距離を取ろうと動いた。
その刹那、メガ・ゴーレムファイアは両目をギラリと光らせ地面を力強く踏み鳴らした。
『ゴゴッゴッガオオォォォォォ!!!』
「なっ何!?」
酷い地響きと共に舞い上がる砂利や砂埃は、ゲリラ豪雨のような凄まじい勢いで俺達に降り注いだ。
「っ!!?マズイヤバイヤバいマズイ!空間転移っ!!」
俺は咄嗟に空間転移を連発し、Cチーム全員とヘドドン全員を回収し、メガ・ゴーレムファイアからかなりの距離を取った。
砂利からも逃れたし、ひとまず安心だ!(※フラグ)
そう思っていた時期が俺にもありました。(※フラグ回収)
『ゴアッ、ゴゴゴアッ!!!』
「ちょっ、え、嘘嘘嘘嘘嘘嘘!!!!!」
「ンピャアァァァ!!!追い付かれる!?!?」
そうです。敵は全長100m越えのバケモンなのです。
Q.ということは?
A.はい!一瞬で追い付かれちゃった☆
Q.どアホー!!
A.チクショー!!!(※某cell風)
『ゴアッ、ゴゴゴゴゴアッ!!!』
メガ・ゴーレムファイアは走る勢いのまま、右腕を思い切り振りかぶる。
そして、ヤツ全力の10トンブローが炸裂する!
『ゴゴゴヲヲヲヲォォォォォッ、グオオオオオ!!!』
「ライトウォール!!」
「ロイヤルベール!!」
「ブラッディ・プロテクト!!」
俺とモミジ、ブブは反射的に防御結界を展開した。
『グッゴゴゴガガガォォォォォ!!!!』
「っ、防いだ!?」
とんでもなく重たい一撃だったが、三枚の壁のお陰で防ぎきった。
しかし、向こうの攻撃はまだ終わらない。
「落ち着け、まだ来る!」
「拳を下げた?っ!なっ、これは!?」
勢いよく拳を引っ込めたメガ・ゴーレムファイアの身体から、溶けた身体の一部と瓦礫が雨のように降り注いだ。
『ヲヲヲォォォ、グゴオォォォォォ!!!!!』
咆哮するメガ・ゴーレムファイアから朱色の雨が降り注ぐ。
「なんだ!?最初のよりは、耳に響かないけど……」
「ヘドドッ……(訳:ゴーレムファイアさんっ……)」
「ピ!?アイツ、泣いてる……」
ヘドドンの言葉を翻訳したのか、ピノは耳を疑う事を言った。
『『は?』』
「ピノ殿?それは一体?」
顔をしかめたキリュウはピノに聞き返した。
『ヲヲヲヲヲヲ!!!グガゴヲヲヲヲォォォォォ!!』
ピノは瓦礫を撒き散らすメガ・ゴーレムファイアに一度視線を向けると、目を閉じ静かに語った。
「見てわかると思うけど、この赤い雨はアイツの一部だったもの。アイツ、事故崩壊を止められないみたい」
「自己崩壊を、止められない?それってどうiーー」
『ヌググッ、ガッ、グガガオオォォォォ!!!』
聞き返そうとしたら、発狂を被せてきやがった。
図星を付かれて逆上したのか、メガ・ゴーレムファイアは吠えながら左腕を振りかぶると、燃え盛る拳で思い切り結界をぶん殴った。
『ボボボヲヲヲヲォォォォォッ、グオオオオオ!!!』
『『!!??』』
燃える拳は、なんとビックリ三枚の障壁をぶち抜いた。
「わ、我のブラッディ・プロテクトを、砕きやがった!?」
「なんちゅう馬鹿力だよ!!」
「そんなっ、嘘っ、あり得ませんの!」
そして拳はそのままの勢いで俺達に直撃。
Cチームは散り散りになり、砂利の海に叩きつけた。
「ぐっ、重たい、、一撃だ」
「ぜぇ、ぜぇ、やむを得ん。分身、、解除ッ」
「痛っ、、当たりどころが悪かった、、かも、、」
「ピイィ、、」
マズイピンチだ。
バラバラに飛ばされた挙げ句、メガ・ゴーレムファイアは空気を沢山吸い込んでいる。
あれは次の攻撃を繰り出すサイン……
ぶっちゃけ、またあの咆哮が飛んでくるかもしれないと考えただけで気が滅入りそうだ・・・
だが、幸いにも今回は自動回復が止まっていない!
ならば、俺は俺の使命を、Cチームの回復役を遂行しきるまで!!
俺はフンッ!と声を荒らげ無理矢理身体を起こした。
そうして、皆にフル・ヒールをかけ、ヘドドンにはストックの毒を与え傷を癒した。
「(い、急げ!敵は待ってはくれないんだ、、!)ぬおっ!!おららっ!!てい、やぁ!」
『『!!』』
「ヘドぉ……?・・・ヘッヘド(訳:いいの……?・・・ありがとう)」
『ッッ!』
「へっへ、俺がいる(※自動回復が止まらない)限りパーティ全滅なんてさせるかよ!仕返しだっ、アクアバースト!!」
俺は瞬時に指先に水の魔力を集めると、今の尚空気を吸い込むメガ・ゴーレムファイアの口目掛けて放った。(※悪魔)
『ガガッ!?ブッ、グッ、ゴゴガァッ!?』
どうやら水の弾丸はヤツの器官にまで入ったらしい。
うわ、自分でやっといてアレだけど、めちゃめちゃ苦しそうに噎せてるなー。(※ゲス)
「っ、よくやった!魔弾ヒートクラッシュ!!」
「追撃っ、ジェット!マジックアロー!!」
『ヌググッ、グッ、ブゴッ、ウガアァァ!!!』
どうやら今の一撃で戦況を大きく変えたらしい。
前からはルーラさんの熱を奪う氷の弾丸、後ろからはアオバの高威力の貫通矢を。
それらを食らったメガ・ゴーレムファイアは大きく後退し、膝をついた。
「ヘドド……(訳:あぁ……)」
「うっ。良心が痛みますが、ヘドドン!恨むなら仮面の道化師を恨んでくださいまし!トパーズ・スパーキン!!」
モミジは頭を軽く振ると、黄色い宝石を二つ、ヤツの暖炉へ投げ入れた。
『ゴガッ、ウグガッ、ウッガガガァァァ!!!』
ビリビリバリバリと迸る電撃を浴び、悲鳴のような、されど野太い声をあげる。
それを遠目で眺める事しかできないヘドドンは次第に項垂れていく。
「ドへッ、ヘドッ……(訳:駄目だ、辛い……)」
「ピェ、辛いってあんた。き、気持ちはわかるけど……」
「ヘドド、ドッドヘ、ドへドへド(訳:もうこれ以上、ゴーレムファイアさんの苦しむ姿は、見たくない)」
「っ……」
ピノと違って人間魔物にモンスターの言葉はわからない。
けれど、ヘドドンがこれ以上メガ・ゴーレムファイアと戦いたくない、もぅ戦えないよ、という意思は伝わってきた。
「(難しい話だよなぁ。ゴーレムファイアを何とかしたいって気持ちは痛いほど解るけど、かといってもあのまま放置って訳にもいかないし。ダンジョンボス補正が邪魔で時空間支配も期待できないし。
あぁでも、今がヤツを倒しきる絶好のチャンス!!)・・・ッ、それっ、それそれっ!!」
俺は悩みつつも皆をフル・ヒールを連打し、皆が消耗しないよう立ち回る。(※もち、ヘドドンには毒を)
『ギッ、グギギギ、、、!ガガガガガ、、!』
まだ、ヤツは麻痺で自由に動けない。
ぶっちゃけ、俺としては倒せるならもぅ早く倒しちゃいたい。だってデカ過ぎて怖いんだもん♨️
だが、先程ダンジョンボスへと化ける前のゴーレムファイアとの戦闘時にも、ヘドドンはあいつを慕う素振りを見せていた。
最初っからそうだったよな。静寂を破るものに鉄槌を与えるゴーレムファイアの生態を知ってか知らずか喧嘩する馬鹿たれを止めてほしいと俺達に相談しに来て。
攻撃する時だって何度も何度も躊躇う素振りを見せてきたもんなぁ。
フル・ヒールで皆を回復させればさせる程、戦局を此方有利に進めさせる程、ヘドドンに対する後ろめたさで心が痛む。
だが、ここは戦場。ルーラさんの魔弾やキリュウの斬撃、アオバの魔法の矢などが飛び交う命のやり取りをする場だ。ここでの迷いは命取り。
『ヲヲヲヲヲヲ!!!グガゴヲヲヲヲォォォォォ!!!!グッ、ヲヲヲヲォォォォ!!!』
麻痺を断ちきったのか、メガ・ゴーレムファイアはその身体をぐわんぐわんと激しく動かす。
またも朱色の瓦礫が降り注いだ。
「(まぁ、かくいう俺は悩みっぱなしの迷いまくりで人の事言えないんだけど♨️)させるかっ、ハイドロストーム!!」
俺は巨大な渦巻きを放ち、ヤツの身体から落ちてくる瓦礫を拾い上げ、その瓦礫ごと渦巻きをヤツにぶつけた。
『ヌッゴアッ!!?』
「ヘドッ、ドッドヘヘドぉ……(訳:一体、一体どうすればいいんだろう……)」
「・・・ッチ、仕方ねぇ」
それでも尚、決断出来ず躓いているヘドドン。
見かねたブブは、ヘドドンに喝を入れるべく接近した。
「おい。・・・貴様の気持ちを理解したつもりで敢えて我はこう言う。腹を括れヘドドン!!男なら、必ずしも決断せねばいけない時がある!」
「ヘエッ!?(訳:んなっ!?)」
「ヘドドンよ、断言しよう。貴様にとっての決断すべき時は、今だッ!!」
「ッ!」
ブブは小さな手を黒く大きな刃に変化させると、ヘドドンの前に出て、自分の何百倍もの大きさを持つ怪物と対峙した。
「もう一度、我がブラッディ・サーベルを味わわせてやる!!(グッ、しかしだな。判ってはいたが、全長123mは余りにもデカ過ぎる……!!)」
「ほぅ。良いことをいうではないかブブ殿」
「(引くに引けなくなった……)ッ、当然だ!キリュウよ、今の我は以前の我とは違うのだよ」
「ほぅ?では、あの頃の暴君ではないと」
鋭利な睨みを利かせるキリュウに対し、ブブは胸を張ってこう言った。
「当然であろう!」
「当然、か。成程成程。・・・ブブ殿、拙者は感服致したぞ!」
「んなっ!?感服!?」
キリュウはブブの横に立つと、双剣を構えた。
対するブブは、おっと?何だかとっても照れ臭そうだ!
「うむ!そうと決まればブブ殿、かの者相手に共に参ろうではないか!
フフフ。ブブ殿が何と言おうと拙者はそなたと連携を決めに行く故な、お覚悟を」
「ッ///………好きにしろ」
あらぁ、照れちゃって。
「ヘドド……(訳:かっこいい……)」
「大丈夫よヘドドン、わたしもついてるわ。大切なヒトを解放させてあげましょ!」
モンスター同士気が会うのだろうか。
ピノはヘドドンの背中を後押しした。
「ヘドッ……ヘドドッ!(訳:大切なヒトを……よしっ!)」
『ゴガッ、グググガッ、グググッ、、、』
ヘドドンはメガ・ゴーレムファイアの正面に立った。
「・・・主役は揃ったね。よし、足止めは任せろ!
生命の伊吹よ、我が呼び掛けに答えよ。かの根を伸ばし地を突き破り、我が敵に絡みつけ!ルートアローっ!!」
やる気になったヘドドンを見てニヤリと笑みを見せたルーラさんは、地面から巨大な根を二本生やし、巨体をまるまる捕らえた。
『グッ、グゴゴッ、、』
「大人しくしろっ、魔弾ヒート・クラッシュ!!」
全身に絡まる根を必死に振り解こうとするメガ・ゴーレムファイアに熱を奪う魔弾をぶち込んだルーラさん。
それでもまだ暴れるヤツの暖炉目掛けて、アオバは限界まで弓を引き、貫通矢を放った。
「私も援護をっ!ジェット!マジックアロー!!」
『ゴアァッ!?』
「いいぞっアオバちゃん!さぁ行けみんな!各々の全力をぶつけろっ!!」
ルーラさんは全員に突撃の号令をかけた。
「ワタクシ達を追い詰めてくれた貴女には、とびきりのを一撃を贈りましょう。はあっ!!」
モミジの放った一つの水色の宝石がヤツに着弾すると、着弾地点から一瞬にして冷気が広がり、あっという間に氷山が完成した。
そしてそこに、二つ目の投擲と、アオバの轟速の矢が、ブブとキリュウの斬撃が放たれた。
「チェックメイトですの。数多の生物の希望を、未来を、その全てを無慈悲に奪う究極の冷気を!
貴女にくれてやりますわ。タンザナイト・クリスタルブレイク!!」
「己が限界を超えて飛翔し、はるか彼方まで穿てっ!
・・・チクっとするから、我慢して、よねっ!ハイパーアロー!!!」
「食らいやがれっ!一刀両断、ブラッディ・サーベル!!」
「今度こそ安らかなる死をそなたに与えようぞ、永々無久!!」
『ゴウッ、グッ、、ガカハァッ!!?』
氷山は大きな音を立てて砕け散った。
同時に、メガ・ゴーレムファイアの右腕が切断され、その腕はどしーん!!と砂利の海に落ちた。
「そおい削除、削除っ!!」
舞い上がった砂利や砂埃は残さず"創造の手"で削除し皆への影響は皆無!
そうして、少し遅れて第2陣の攻撃が放たれた。
「呪いも何もかも、全て燃やし尽くして貴女を解放させてみせるっ!超縮爆炎波!!!」
「へドへドッ!ヘッドドドドッ!!(訳:届けこの想いっ天災の吐息!!)」
「届け、ヘドドンの想い!!!」
ピノの爆炎とヘドドンの混沌の息、俺の激流がメガゴーレムファイアに届ーーー
『ッグガァ!?ギギギギギガアァァァ!!!!』
「ヘドッ!?」
「なっ!?」
「ピャエッ!?」
届く直前、メガ・ゴーレムファイアは最後の抵抗を行った。
瞳を極限まで赤く染め上げ残った左腕でピノの爆炎とヘドドンの息をかき消すと、そのまま俺達を叩き潰さんと振り下ろしたのだ。
「んなっ、!?」
まさかまさかの抵抗に、俺は反応できなかった。
俺の身体は勝手に死を覚悟したらしく、俺の意思に反して微動だにしない。
微動だにしないということは、移動も結界による防御も、空間転移も時間停止も、その全てが発動できなかった。
「っっ、、!?ぐっ、ウソっ、、だろっ!?」
『グオオオオオオオァァァァァ!!!!!』
「(駄目だ、動けねぇ!?クソ、くそったれぇぇ!!!)」
駄目だ終わったと絶望し、メガ・ゴーレムファイアのパンチが炸裂する瞬間。
ヘドドンは攻撃を切り上げ俺に体当たりした。
「ヘドトドッ!!(訳:それだけはさせないっ!!)」
「だっ!?うおぁ!?」
その体当たりのお陰で、俺は潰されずに済んだ。
だけど………
「ヘドッ!た、のむ!オマえが、あのっ、カタ、、を、、、」
カタコトでそう喋りながら、ヘドドンは巨大な掌の下へと潰された。
『グオアッ!!!』
「!!!!!」
「何っ!?」
「なんて事だ」
「潰、され、ましたの?」
「ヘドドン!!!」
「・・・貴様ッ、嘘、だろ?」
「そんな、ヘドドン……」
その瞬間、ヘドドンと過ごした十数分の記憶が断片的にフラッシュバックした。
「っ!!?ヘドドン!?ヘドドン!!ヘドドーーン!!!」
モンスターといえども何処か愛嬌があり、俺達冒険者に倒されるかもしれないリスクを背負ってでも大切なゴーレムファイアを守るべく行動したヘドドン。
そんなヘドドンが、ただ大切な存在を守りたかっただけのヤツが、必死に奮闘したあいつが、守りたかった存在に圧し殺されたのだ。
駄目だ。こんな不条理、俺は堪えられない!!
つぅーっと頬を伝った熱いものを、俺は静かに手の甲で拭った。
『ゴアッ?グッ、グゴゴゴゴガガアアァァァァ!!!』
メガ・ゴーレムファイアはヘドドンを潰した拳を上げ、再度左拳を振りかぶる。
グオオと叫ぶアイツには、最早ヘドドンを想う気持ちなど残っていないのかもしれない。
「お前。お前っ、お前ぇぇぇぇ!!!」
目から溢れるもののせいで視界が効かない。
そうだ、クロムさんやキョウさんとの修行の一環で遠征中は"攻撃者Ω"の視認性向上をOFFにしてたんだ。
・・・よし。これで思う存分戦える。
「・・・!!」
「おい、リクト貴様ッ!」
「駄目だリクト君、早まるな!!」
最早外部の音は何一つ聞こえてこない。
かつてない怒りのエネルギーが何処かから込み上げてきた。
『グオオオオオオオァァァァァ』
「お、ま、えぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
先程撃とうとしたグランドウォーターを途中で取り止め、"創造の手"で剣を生成した。
そうして、左腕を振りかぶり、俺を殴ろうとするメガ・ゴーレムファイア目掛けて飛びかかった。
恐怖心?そんなものはもぅ無い。
何故なら、全ての原動力が怒りに置き換わっているからだ。
絶許。
「無茶ですの!リクト、引いてください!!」
「駄目っ、戻って!!リクト戻って!!」
「ぴぇ、リクトあんた!!」
「拙者が止めに」
・・・止めに?
「ッ!!?(睨みだけで拙者を怯ませた!?グッ、リクト殿ッ)」
みんなの渾身の一撃をも食らっているのに、どうしてアイツは動けるのだろうか。
いや。そんなこと、もぅどうでもいいか。
『ヘドッ!た、のむ!オマえが、あのっ、カタ、、を、、、』・・・。
俺が、あいつの、ヘドドンから託された想いを繋ぐんだ。
『ボボボヲヲヲヲォォォォォッ、グオオオオオ!!!』
「身体強化。イグニッション…!ハイドローー」
ヤツの限界まで振りかぶる拳が先に出るか、俺が剣を振り下ろすのが先か。そんなもの、聞くまでもない。
身体強化に"時空間支配"の倍速を使った俺の方が、早いに決まってんだろ!!
「スラッシュ!!!!!」
俺は声にならない声をあげ、剣を振り下ろした。
「ッ!?」
『ッグガァ!?』
剣がヤツの拳に当たった瞬間、剣身の半分から上がべっきり折れた。
しかし、放った直後でまだ勢いの乗っていない拳だった為か、はたまたとんでもない勢いで斬りつけたからか、残った刃がヤツの拳にめり込むように入った。
「まだ、、少しだけ、、刃が、残ってる、だろうがぁぁぁぁぁぁぁうおおおぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁ!!」
拳に少しだけ入った刃を無理やり押し付け、俺はヤツの巨体ごとスパッと一刀両断にしてやった。
『ッグゴオオッ、ッ、ゴオヲヲヲヲヲオォォォォォォォ!!!!!!!』
メガ・ゴーレムファイアは大きな大きな断末魔を上げると、真っ二つになった胴体は地面に打ち付けられた。
ズウゥゥゥンという重低音と共にクロガネ山脈の砂利の海に沈んだ巨体は、砂利と砂埃がこれでもかと舞い上げた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ッ!!!!」
俺は身体強化とタイム・アクセルを停止させると、膝から崩れ落ちた。
その後、両手で強く握る折れた剣を地面に突き刺すと、無茶した反動を食らった。
「はぁ、はぁ、グウッ!?うわああああぁぁっ」
ボロボロの身体にこれでもかと砂利が降り注ぐ。
めちゃくちゃ痛いが、大切な存在に殺されたアイツと比べたら、こんなもの。
「ぐっ、、うっ、ぅぅぅ、、ヘドドン、、、」
「リクト君!!っ、失礼しますよ、とうっ」
突然大声で呼んで、誰だ!?と思ったら、ミクセルさんだった。
ミクセルさんは砂利と砂埃の雨に打たれる俺を無理やり抱えると、目にも止まらぬ速さでCチームの皆のいる安全な場所まで連れ戻してくれた。
Cチームのみんなはというと、ユーカさんの介抱を受けていた。
「連れてきましたよ」
「感謝します、ミクセルさん…!」
「(!ここ、砂利が降ってないのは、、あぁ。水城Tの結界の、お陰か、、、)」
「立てますか?」
ミクセルさんは優しく俺を下ろすと、手を差し出した。
『グ・・・』
その瞬間。あり得ない声が、辺り一帯に響いた。
『グ・・・』
メガ・ゴーレムファイアの声だ。
「なっ、何だと!?」
「まさか、まだ生きていると言うのか!?あり得ん!!」
ユーカさんの介抱を受け、全快状態のルーラさんとキリュウは身構えた。
『モぅ、つカレた・・・』
「……は?」
俺は痛む身体を無理やり動かし振り向くと、二つの身体を膨張させて輝かせるメガ・ゴーレムファイアの姿を目撃した。
それに、ヤツの頭と両肩の煙突からはモクモクと白い煙が上がっていた。
アレは間違いなく自爆するつもりだろう。
「させ、るかよ、、、。タイム・ストップ」
俺は右手をパチンと鳴らし、時間停止の宣言をすると、全ての色が灰色になった世界で一人、力尽きて倒れた。
次回、EX06 聖なる騎士とソウルバレーの守護神
え?タイム・ストップ使ったのに力尽きちゃったの!?
リクト「2ヶ月以上停滞してたヤツにだけは言われたくない!!」
・・・ごめんなさい。
ピノ「それよりあんた、メガ・ゴーレムファイアのモンスター図鑑!やらなくていいワケ?」
僕「あ!!!」
一同『『(忘れてたな?)じいぃー!!』』
いやいや、そんなまさか(汗)
【はい!ざっくりモンスター図鑑のコーナーだヨォ!】
ゴーレムファイアではございません。
メガ・ゴーレムファイアです!
※心痛くなるわ。つれぇです。
Name:【メガ・ゴーレムファイア】
種族:魔石族 属性:火/闇
生息場所:火の国アポロヌス・マイト-クロガネ山脈-
危険度:<ダンジョンボス>B+級
【所有スキル】
"崩滅巨石"
☆自己崩壊 ☆輝く呪い
・パンチ威力補正 ※硬化(常にボロボロなので発動できない)
【概要】
・大きさ:123m、重さ:10t
・ゴーレムファイアが何らかの粗悪な燃料を取り込み、倒された結果生まれた異形の存在。存在そのものがイレギュラー故、他ダンジョンボス同様に世界に一匹しか存在しない。
・復活した身体はどこもかしこも限界を迎え、ボロボロのガタガタ。理性という理性はとうに無くなり、残ったのは、崩れゆく身体を憂い、泣き叫ぶ気持ちのみ。
・オリジナル同様、胸元から腹部にかけてかっ開いた穴から暖炉の中身が見える。だが、そこで燃える命の灯火は、汚染され真っ黒に染まっている。
が、別に放射能等の危険物が出てたりしている訳ではない。
リクト「大きさ123m……。改めて見てもデカ過ぎるだろ」
僕「だね。あ!ちなみに、コイツが現状の作中キャラ・モンスターで一番デカイのよ」
リクト「そうなの!?」
はい!というわけで公式の高さ比べよ!(唐突)
身長(頭頂から足先にかけて、縦にまっすぐ測定したものとする)
※角とか羽とか付属パーツ(?)で身長が盛られてる場合、その部分はノーカウントとします
ディミオス(190cm)
ゴーレムファイア(199cm)
ジーク・カイザー(222cm)
リッキー(250cm)
U.F.O.(355cm)
シャイニング・デアデビル(375cm)
リュウセイ※竜形態(400cm)※あくまで頭から足まで
G・G・P(450cm)
ディミオス※竜形態(500cm)※あくまで頭から足(ry
メガ・ゴーレムファイア(123m)←一人だけ単位から違ぇ!
リクト「デッケェ!!ん?シャイニング・デアデビル?誰?こいつ、俺知らないんだけど」
ライデン「デアデビル……?初めて聞いた名前だね」
ヒビキ「俺も知らんぞ。ってか、現状既に登場したキャラなんだよな?『前書き後書き空間(仮)』にいなくねぇか?」
ホノカ「・・・本編で出てきた人達はほとんどここにいるはずよ!いるはず、いる、ハズ……。???」
ルナ「・・・見つからないね」
ユキナ「というか、誰の関係者なのかすら想像つかないよ」
あら。あの人そんなに影薄かったっけ?
※なんとビックリEX02に出て以来登場無し!
※まだその時じゃないから大丈夫だす。
リクト「えぇ……?」
僕「やっべ。何とかしてあげないと・・・・・
はい!!という訳でぇ、次回のThe・CreateはEXを進めますです!」
一同『『えぇぇ!?!?』』
僕「なるべく今月中に出しますのでお楽しみに!」
ユキナ「番宣!?番宣だったの!?」
ホノカ「嘘でしょ!?いくら何でも強引過ぎるわよ!!」
復活後(※暫定)だから多めに見てよ。(厚かまし!!)
ルナ「うわぁ!この作者、開き直った!!」
ライデン「最悪だね」
ヒビキ「だな……」
リクト「(ボコボコに言われてて草)」
【上の茶番を消化し終えて、最後に一言】
やっと、やっと。やっと!纏め終えれたっ!!やったよ!
やっと纏まったー!!!
うおおおおおお!!!!やったあぁぁぁぁぁ!!!
優勝だああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
褒めて!!!今だけは僕を褒めて!!
二周年迎える前に復活(の兆しが)できて良かった……
※本日11/13は二周年前日♨️
※本当にごめんなさい!!
※ちなみに昨日12はヒビキの誕生日。おめでとうおめでとう
ヒビキ「おぅ……。え?すっげぇ雑に話題出して、すっげぇ適当にあしらわれたんだが」
ユキナ「作者ならちゃんと昨日、祝ってあげればよかったのに」
※ほんまごめん。
リクト「とりあえず、今夜は美味いモノ沢山食べようぜ!」
ヒビキ「だな!本編のお前の頑張りも祝して、みんなでご馳走食うぞー!!作者の奢りで、食うぞー!!」
僕「えっ!?」
ライデン&ホノカ「「おー!!」」
ユキナ「おーっ!」
ルナ「賛成!!」
ちゃんちゃん。
11/14now
ええと、見直しとか色々チェックしてたら寝落ちしてまして。
日付跨いじゃいました☆
そのせいで、この話が二周年記念になってしまいました(涙)
えー、てへぺろ!
Q.56すぞー!
A.許してください!何でもしま(ry
その後、彼の姿を見たものはいなかったそうな♨️
※このクソみたいな茶番とか、完全復活してて草
---To be continued---
 




