【48話】 追加クエスト-激熱?マーブルタイガー討伐ダービー-
本当は金曜日に出したかった……
金曜には間に合わなかったけど、大変珍しい週に2本目のお話ってことでなんとか!!
「あら?リクト君、何やってるの?」
アリスさんは首を傾げながら質問してきた。
何をしているのかだって?
それは…………
「リクト?おーい。・・・?」
「これをこうして、ちゃうちゃう……。そうじゃ、そうじゃない……」
「……何してるの?」
ルナは俺の真後ろから、覗き込むようにひょこっと顔を出した。
「よっと!出来た……!」
「わっ!何これ、地図?」
丁度俺の胸元辺りの空中に浮かび上がった表示を見て、ルナは聞いてきた。
地図というのは70%くらい正解かな。
え?じゃあ、残りの30%はって?
フッフッフ♪
「7割は正解。そうね、さっき解析した南の平原の地図だよ」
「7割?えー、じゃあ残りの3割は何?」
ルナは勿体振るなといわんばかりに足をじたばたさせている。
はい、というわけで正解の残りの三割!それは小型の衛星だ。
昔、小さい頃に作った戦闘ロボのプラモを模した形をしているので、ちっちゃい飛行機?みたいな見た目してるけど、誰が何と言おうとこれは衛星だ。衛星なんだ!
「「????????」」
小型の衛星と聞いて『はぁ?』と顔を歪めた人達、とりあえず話は最後まで聞いてくれ。
………俺はね、好奇心には勝てなかったんだ(懺悔)
「誰が何と言おうとプチ衛星なんです」
は?と首を傾げるアリスさんと頭にハテナを浮かべたルナ。
とりあえず、説明しますね?
「ええとね、さっきササミさんに地図を解析させてもらったじゃん。それで何か出来ないかなぁって考えてみた結果、良いのができたんだ」
うんうん、と目を輝かせるルナと、呆れてる割に興味津々そうなアリスさん。
「まず、自動解析を使って現在地から半径5m以内の情報を常に読み込む。それを共有で表示し続ける。すると、俺が動くか、向く方角を変える度にリアルタイムで位置情報が更新されていく。
そこに、さっき解析した地図を組み合わせる。地図上に地形情報から出された俺のカーソルを乗せてしまえば!こんな風に俺が動く度に、体の向きを変える度にカーソルが動く!
なんとビックリ、ミニマップの出来上がり~」
ルナが常におぉ~!!といい反応してくれるから、思ったよりノリノリに喋ってもうた。
「・・・成程ね?でも、解析能力を使うのならその衛星は不要なんじゃない?」
うーん、と首を傾げるアリスさん。
確かに、それはもっともな意見だ。
「それはまぁ、実際そうなんですけど。まだ上手く機能を最適化出来てないせいでON/OFFの切替が面倒なんです。
それに、例えばですけど、見知らぬモンスターと遭遇した時なんかに解析を使おうとして。
ミニマップが起動中で容量不足で解析出来ません。なんてなったら困るじゃないですか」
「・・・確かに。それは困るけども(けど、リクト君ならソコ心配する必要無さそうだけどなぁ)」
何か言いたげな様子のアリスさんだが、お構い無しに俺は続けた。
「そういう、いつでもケア出来るミスは極力潰しておきたいんです。このプチ衛星(仮)も自動解析がパンクしないように作ってみたんですから」
頬を膨らませる俺を見て、アリスさんは苦笑い。
まぁ、衛星といっても滅茶苦茶簡易的な機能しか備わってない。
それこそ、自分が今いる国や地域限定の、リアルタイムで位置情報を更新してくれるメイン機能しかついていない。
拡張性も糞もないGPSって感じかな。現状は。
ちなみに、何で簡易的なのかというと、単純に俺がそこら辺の専門的な知識に疎いからである♨️
※専門知識は高2の俺には難解過ぎた。許して…!
ま、まぁね!地図上に俺のカーソルを浮かばせて、リアタイで表示させる機能さえあればいいやと思って、よいよいよいしょのホイホイホイと雑に"創造の手"さんを起動したら・・・
Q.したら?黙ってないで教えなさい?
A.なんかイケた✌️
Q.コラー!!
A.(白目)
「まぁ、実際使ってみれば印象変わるだろうし・・・せいっ!!」
「「ええええ!??」」
俺は徐に、プチ衛星を空高くぶん投げた。
あまりに突然の謎行動に、アリスさんとルナはビックリ仰天。
「ちょ!何してんのリクト!!」
「ってあれ?あれれ?体勢を立て直して……」
【プチ衛星は何してんの?回答編】
①まず、宙に浮きます。(※ガルブレィさんが浮遊する魔法 フライング を使ってたから、そこから借りた)
※"魔術師Ω"さんのお陰
②適切な体勢に落ち着いたら、ふわふわと俺の頭上の所まで高度を上げながら移動します。
③移動し終えたら、そこ(俺の頭上)で固定されます。
④固定されたら、そこから半径5m以内の情報が自動解析に送られます。
⑤先程表示した地図にその送られてきた情報がリンクします。
⑥完成☆
※この作品ではこんな感じでいきます。
多分滅茶苦茶すっ飛ばしてますが、そこは各々目を閉じることで問題を解決してください。申し訳。
「これによって受信される情報を、さっきの地図と組み合わせて……でっきた♪」
机上の空論だと思っていたのに。
いや、思ってた事そのまんまのモノが出来上がりました。
「えぇ、凄!」
「凄い。リクト君の動きに合わせてカーソルが荒ぶってる……。それに、マップも若干動いてる!」
上出来過ぎる!まるでオープンワールドゲームのミニマップ!!
便利なヤツが出来上がってしまった!!
「いやぁ、土地勘が弱い訳じゃないけど、知らん場所での迷子はめちゃめちゃ怖いし不安だからね。
これで当面の間は迷子にならなくて済む!……ハズ」
「えーいいないいな~」
ルナが羨ましそうに見つめてくる。
いいなーって、別に俺は独占するつもりは無い。(※お?)
なので・・・(※おお?)
「共有っ!どうだ……?」
「わぉ!出てきた。……へぇ」
「わぁ!スゴイ!うちが動いたらその分連動して動いてる!!!え、コレ。地図拡大出来るじゃん!」
え?拡大できるの?(※え、何故お前が驚く?)
ホンマや。拡大縮小も出来るんですけど。
へぇ。読み込んだ地図の大きさによって拡大の最大値が変わるシステムなんだ……
「そっか、今回読み込んだ地図は南の平原全体マップだったから。え、滅茶苦茶便利やん」
え。解析って凄い!!(n回目)
「薄々勘づいてたけど、便利なんて言葉一つで片付けていいモノじゃないわ……!一応、魔法都市にも似たようなものがあったけど、こっちの利点は両手を空けれる所にあるから、何かと両手が塞がりがちな冒険者に打ってつけじゃない!?」
「……!」
きゃっきゃっと大はしゃぎなルナとアリスさんを見て、俺は冷静になった。
これは、やっちまったかもしれん♨️
変なタイミングで冷静さを取り戻した俺の脳みそは、ギュイィィィィィと急激に回転しだした。
「(あー、やばいどうしよう。いや、待て!?
もしも悪意あるヤツに発見されたら?最悪兵器とかに悪用されかねんぞ!!?
いや、別に"この世界"は日本と比べて衰退してるかといわれたらそんなこともない!え、コレヤバい!?)」
いや、待て?"この世界"にはクロムさんやディミオスさん達勇魔六英雄がいる世界だし?
人災の前にモンスターが大きな脅威って共通認識のある世界だし?
元の世界と比べてもやべぇ悪い人達が現れにくい世界なのじゃ?希望的観測か?
・・・そうあってくれないなぁ。
「ガウガウ!!」
「ウーガウッ!!」
Wow!
冷や汗止まらんってのにマーブルタイガー襲来!
「ちょ、ルナ!アリスさん!マーブルタイガー来た!」
「もー、折角うちがはしゃいでたのに……二連会心弾!!」
頬を膨らませたルナは、2つのクリティカル弾にて即座にマーブルタイガーを速攻で処理した。
「はぁ……バーカ!!」
「(遊びの邪魔されて機嫌悪くなっとる!?)年頃の女の子が馬鹿なんて言うな」
「オカンか!リクトはオカンか何かか!」
はい、突っ込みありがとうございます。
「(絶対突っ込まれると思ってた)」
「まぁまぁ二人とも!兎に角ササミさんとマイさんの待つぶた丘に急ぎましょ!」
「「はい!」」
ということで俺達三人は現在地:空虚の沼地からぶた丘へ急ぎだした。
◇
一方その頃。此方はライデンとユキナが飛ばされたバオバブ林道。
「マップを共有で貰ってから転移暴発だったから良かったものの………」
この場所から目的地のぶた丘まで行くとなると、ツノ山を越えるか。
もしくはツノ山をさけて遠回りをするかの二択である。
「はぁ……めんどくさい場所に飛ばされたもんだ」
「……だね」
なんだろう。さっきからずっとユキナがこんな調子だ。
心ここにあらず、といった感じだ。
オマケに顔も少し赤いし。
「どしたの?」
「!?ううん、何でもない……」
ビクついたユキナは声をどんどん萎めていった。
はぁ。これは、結構、面倒臭そうだなぁ……
「らしくないじゃん。悩みあるなら聞くけど?」
「な、別に。悩み事とかじゃ、ないよ……」
「(やりにく!はぁ。一体どうしたんだ……?)」
悩み事じゃないとなると、何だ?
「あ!あぁ………」
「!?」
あぁ、分かったかも。
アレだな?マーブルタイガーの大群と戦う直前にササミさんとマイさんの能力を共有された時の事。
デリカシー無いだの何だの言われかねないが、ユキナが元に戻るんなら仕方ない。荒療治かもだが、許せ。
「・・・ユキナ、もしかしてアレか?マイさんの透視共有の暴発、まだ根に持ってるのか?」
「っ!?」
大正解のようだ。
「な、ななな何よライデン!私が過去の事を根にもつなんて、そっ、そそそそんな!」
まるで、思った事を何でも顔に浮かべるリクトみたいだ。あのレベルで、絵に描いたように動揺している。
「ふっw慌てたホノカみたいになってら」※失礼
「んなっ!?」
「流石幼馴染みだよなぁ。僕もだけど」
「~~~~!!!」
ユキナはようやく照れ以外の感情を顔に出した。
むぅ~~!!と、頬を膨らませている。
「悪かった悪かった。それで、どうしてさっきまで黙りこくってたんだ?」
「・・・言えない」
「(言えない!?)」
うわぁ、面倒臭いなぁ……
「僕相手でもか?」
ユキナは首を縦に振った。
「マジかー。・・・悩みなんて、溜めてたら溜めた分だけ苦しくなるぞ?
ほら、いつもみたいにからかわないでやるからーーー」
その瞬間、3匹のマーブルタイガーが僕達を囲うように現れた。
僕は即座に背中の鞘から剣を抜き、いつでも迎撃できるよう構えた。
「「「ガガウガウガウ……!」」」
「何っ!?ユキナ、戦闘いけるkーー」
「ふぶきっ!!」
「「「きゃうぅん……」」」
「えっ!?」
ユキナはいきなり杖をふるって吹雪を発生させ、3匹のマーブルタイガーを一瞬でやっつけた。
見事と言う他無い、素晴らしい一撃だった。
ただ・・・・・
「(半身凍った……)」
あまりにも突然だった為、回避できなかった僕の体の半分が凍った。
いや、ほぼゼロ距離からの全体攻撃じゃあ避けようがない。
「・・・・・あの」
「ご、ごめんねライデン!今溶かすから!!」
ユキナは大慌てで僕に着いた氷を取っ払った。
「さてユキナ、僕を攻撃に巻き込んだんだ。さっきの件、聞かせて貰おうか……!」
ぶっちゃけ、言いたくないのなら無理に言う必要は無い。無理に言わせて苦しむなら、それはもぅ本末転倒だ。
でも、さっきのは流石に酷かったぞ?
とても、とても寒かったしさ……
なのですこし意地悪めに言ってみた。
すると・・・
「分かったよ、言う。言うよぉ言いますよぉ……」
「!?(早っ!!?う、嘘だろ……)」
もぅ折れるとは想定外だった。普段ならもう少し意地悪に言ってやってもごねて反発するのに。
「・・・ライデンの意地悪」
「っぐ。それは、悪かったよ。ごめん」
「はぁ………」
ユキナはこれまた大きなため息を吐くと、色々と自白してくれた。
やはりと言うか、何と言うか。ユキナ不調の切っ掛けはマイさんの能力暴発だったらしい。
現状ではマーブルタイガーの『ぎたい』能力を貫通するだけだが、共有された瞬間はあの場の全員の服までも貫通するというね。
一部の変態は喜びそうだが、はた迷惑な光景が広がっていた。
てっきり僕は、裸をみられた事にユキナは怒っているのだとばかり思っていた。
だが、真相は斜め上の角度へ行っていた。
「その、ね。みんなの裸が視界に入った時に、その、、リクト君のも、見ちゃって………」
ユキナは今まで見たことがないくらい顔を赤くしていた。
「そこから、気になり出しちゃって。抑えつけてた気持ちがね、その、、爆発しちゃった……///」
恥ずかしい気持ちは何となくだが判る。
だが、最後らへんは全く聞き取れなかった。
「気になったって、全裸のリクトがか?」
「ち、違う!!」
物凄い勢いで否定するユキナ。
その後、更に顔を赤く染める幼馴染みの姿が僕の目の前にあった。
「違うってことは、え!?ま、まさか。リクト本人!?」
ユキナは被っていた帽子を深く被って、顔を隠すように覆った。
「(えーらいこっちゃ。マジか。ユキナ、そうだったんだ……)てかリクト、いつの間にユキナを撃ち抜いたんだ?」
「あの時。操られたガロウズさんに殺されそうになった時。ホノカとライデンが助けにきてくれたじゃない」
「あ、あぁ。えっ!?」
条件反射で思わずえっ!?と言ってしまった。
「………うん///あの時、装備無しのほぼ丸腰のリクト君が、剣一本で私を助けてくれた、から……」
成程。あの時(※8話)か。
成程、マジか!?
「思い返せば、一人だけリクトを君付けで呼んでたもんなー」
「っっ、最悪よ最悪。ずっと心に潜めて押し殺す気でいたのに。こんなこと、元の世界に戻る為に奮闘しているリクト君に言ったらきっと迷惑するから。それに、ホノカにも……」
う"っ、確かになぁ。
リクトの、彼の最終目標は仮面の道化師を倒す事ではない。元いた世界に帰ることだ。
「(ん。モヤ……?)・・・」
「ぅぅぅ………」
それなのに好意をぶつけたら、リクト次第ではあるが、もし気持ちがすれ違っていたら、お互い気まずくなる。
ちょっと、いや、相当失敗したなぁ。
ユキナには嫌な思いをさせてしまったな……
「そ、そうか。ホントにすまなかった。無理に話させてさ」
「~~~!!!ライデンの馬鹿ぁ!!!」
普段のユキナらしからぬ言動にちょっと笑いそうになった僕。
ただ。一つだけ分かるのは、僕の悩みも沢山増えた事。
これ、ぶた丘に着くまでに消化できるかなぁ……
兎に角、ため息が止まらないユキナをキャリーしながら僕達はぶた丘まで目指す事にした。
「とりあえず、ぶた丘に着くまで愚痴を受け付けるから、何とか気持ちを整理してくれ………」
「・・・ぅぅぅ!」
「はいはい。わかったよ」
駄目だ。ユキナより先に僕の方が潰れるかもしれない。
頼む。ぶた丘までもってくれ、僕の心よ……!!
◇
そして、更に視点は変わり、今度はヒビキ&ホノカ視点。南の平原の中央に聳える巨木、コノヲ=キナンノの大木に飛ばされた二人だが……
「おらおらぁ!道を開けろ雑魚ども!このまま突っ切るぞホノカ!」
「Okよ!フレイムランスっ!!」
めちゃめちゃマーブルタイガーを討伐していた♨️
※ダービーだんとつトップ
あれ。地平線の向こうに丘のような地形が見え始めてきたぞ?
「お、アレがぶた丘じゃないか?」
「ほ、本当だ!まだかなり距離はあるけど、このまままっすぐ進めば大丈夫そうね!」
いやぁ、ヒビキと一緒で良かったわね!
本当はユキナやルナ達とも一緒が良かったけど、多分大群で襲われたら女手だけじゃ厳しかったもの。
ライデンとだと、多分小言叩きっぱなし喧嘩しっぱなしの旅になだろうし。
ま、気楽で何だかんだ楽しいだろうけど。
リクトとだと、・・・っ///
マイさんの透視共有の暴発の後じゃろくに会話できなかったかも。恥ずかし過ぎて。
「はぁ、良かった……」
ヒビキは我牙流水斬-竜牙-で、私はフレイムランスで、マーブルタイガーの群れを蹴散らしまくった。
そのお陰でようやく一段落つけるようになったからか、心の内が一つ、ポロリと口から出ていたみたいだ。
「ん?何がだ?」
「ヒビキと組めて良かったかもって。マーブルタイガーの群れをぐわーって突っ切ってく所とか。頼もしかったよ」
「おぅ、そりゃどうも」
ニカッと笑ったヒビキ。
あぁ。やはり、ヒビキは相変わらずだ。
昔から、ソウルフォレストのすべての村の子どもの年長組の一人として、私をはじめとした色んな子達の兄みたいな感じで接してきてくれた。
そんな、頼れる兄貴分になら、私の心内を相談しても良いかな?
「ん。・・・んん!?(なんだ?こいつ、急に乙女みたいな顔つきになってどうしたんだ?ま、まさか、ユキナだけでなく、ホノカもか!?)」
あれ。なんか、ヒビキが青ざめてる気がするけど。
き、きっと気のせいよね?
(※ゴリ押す気満々)
「あ、あのさヒビキ」
「ん、なんだ?(落ち着けー、多分大丈夫だ。ホノカの事だ、きっtーーー)」
「用件はね、れ、恋愛相談なんだけど………」
「ブフッ!?」
ヒビキは突然噎せ出した。
「えぇ!?ヒビキ!?」
なになに!?えっ、そんなに私、色ボケしてる!?
うっそぉ。い、一応まだ、まだギリギリ大丈夫だと思うけど……
「い、いや、悪い。………大丈夫だ、続けてくれ」
ヒビキの顔色がとてつもなく悪い気がするけど。
ま、まぁ。大丈夫って言うのなら・・・・・
「え、う、うん。実は私さ、ずーっと気になる人がいてさ」
「んぐっ!?」
「えっ!?」
「(クソ。駄目か。最悪だ………)悪い、ストップ。止まってくれ」
まるで即オチ2コマみたいなリアクションを見せたヒビキ。
え、本当に大丈夫なの?
「・・・悪い、ちょっと待て。整理させてくれ」
ヒビキは青ざめていた。
目頭抑えて、どうしたのかしら(白目)
「つまり、お前もリクトが好きなんだな?」
唸り声と共に捻り出された声。
私は、顔から蒸気が出る思いで頷いた。
はずだった。
「う、うん///ん?えっ?お前も?」
「あぁ」
聞き間違えかと思ったのに、間違いではなかった。
頷いたヒビキは足元にあった大きめな石に座るよう指差した。
辛そうに腰を下ろしたヒビキを見て、私も座ることにした。
「実はさぁ………」
5分程経ったかな。ええーっと、状況を整理するね?
私はヒビキに恋愛相談をしようとしたの。
だけど、どうして私がヒビキの相談に乗っているの?
それに、色々とビックリすることや、聞いていいのか解らない事も聞いてしまった……
「えと、つまり、マーブルタイガーとの戦闘中にユキナがそんなことを言っていたの?」
唖然とする私は、ヒビキに聞き返した。
すると、心底顔色の悪いヒビキはコクリと頷いた。
「んでもって、ホノカ。お前もお前でリクトについてどうこう言うもんだからさ、胃に穴が開きそうだ………!」
「あの。私まだ誰についてって言ってな……」
「顔に書いてる」
「えっ!?か、顔に!!?」
「バレバレなんだよ。隠すつもりなんて微塵もねぇだろお前ぃ!」
両手で頭を抑え、足をジタバタさせるヒビキ。
どうしよう。限界だった(かもしれない)ヒビキにトドメを刺してしまった・・・
「と、とりあえず水のむ?道中、王都の自販機で買ったやつだけど……」
そう言って私は鞄の中から未開封のペットボトルを取り出した。(※スポドリ)
「要らん要らん、大丈夫だ……。もぅ俺、どうすりゃ良いんだ……」
今にも泣き出しそうなヒビキの姿を見たのは生まれて初めてだった。
「ごめんね。タイミング悪かったかも」
「………いや、それに関しては大丈夫だ」
ヒビキはため息を吐くと、続けた。
「しっかし本当にあるんだなぁ、同じパーティのメンバーを好きになる話。師匠や先パイからも聞かされていたけど、まさかこの身をもって体験することになるとはなぁ……」
ヒビキは、それはもぅ大きな大きなため息を吐いた。
「・・・」
「目、潤ませるなよ。ホノカ、お前は本気でリクトを好いてんだろ?その感情に、嘘偽りはねぇんだよな?」
ヒビキは一瞬、睨みをきかせた。
その、鋭い眼光に刺された私は、一瞬怯んだ。
だけど、その恐怖を押し退けて口を開き、声を出した。
「っ、勿論よ!リクトは私達の故郷を救ってくれたヒーローだし、ずっと諦めきれなかった夢を掴ませてくれた大恩人なんだよ?」
「(まぁ確かに、ガロウズさんと仮面の道化師との件と、魔法を使えるようにさせてくれた件。だが、それだけが理由なら同じく冒険者になりたかったルナだって落ちてるだろ)………」
腕を組み、傾げるヒビキ。
「それにパパとのいざこざだって………」
危ない!ポロっと言う所だった。
慌てて両手で口を塞いだが、時既に遅しだった。
「ん?パパとのいざこざ?あの時、アイツ何かやったっけ?」
ッ!!バレてはいない。
だけども、あの時の事(※13話)はリクトと、居合わせたルミナスさんとディミオスさん、それとガロウズさんの4人しか知らないんだ!
危ない危ない。意図せずリクトに抱きついたなんて知られたら、ドン引きされるに決まってる!
(※それは、そう)
ライデン達に吹き込まれるに決まってる!
(※いや、そこまで酷くない)
「うっ、、、」
「?」
私はこの事を何が何でも誤魔化すことにした。
できる事なら秘密のまま墓まで持っていこう。
「う、ううん。ナンデモナイ……」
「?……さて、と。そろそろ恋愛相談は切り上げだ。休憩も終わりだ」
ヒビキは徐に立ち上がると、私の頭をぽんぽんっと撫でた。
「ったく。うちのパーティには世話の焼ける娘が二人もいるらしいからな」
「うぐっ、面目ない……」
「・・・ホノカ、もし、そーゆー状況に陥ったらだ。
アイツに告白しなくてはいけないタイミングが来たら。
ま、もしもの話だと思ってな。失敗したからって俺にあたらないのならこの言葉を授けてやる」
此方に背中を向けるヒビキは、耳を赤くしながら、咳払いをした。
「そんな、当たるだなんて……」
「そうか」
背を向けるヒビキは、チラリと此方を見た。
ニカッと白い歯を見せながら笑うヒビキ。
「なら、一度しか言わねぇからな」
覚悟を決めた私は、思わず唾を飲み込んだ。
「う、うん」
「・・・煩わしく外堀から行こうとするな。お前はお前らしく、正面から当たってけ。一度駄目でも諦めず、何度も勝負しろ」
「!っ、う、うん!」
「ホノカ。お前はお前の、持ち味を生かすんだ」
ヒビキは照れくさそうに、口元を手で隠しながらそう言った。
ふふふっ、年上だからってキザったい事言っちゃって。
でも、なんか、勇気出たかも。
私の心に重くのし掛かってたものが、一つ取れた気がする。
「此方こそ。相談乗ってくれてありがと、ヒビキ!」
立ち上がった私は、ヒビキの脇腹にぶつかった。
決して照れ隠しなんかでは無いっ!
ないったらない!!
「ほいほい」
凄く雑にあしらわれた!?
「んで、ホノカお前。ユキナや当人にもソレ、言うのか?」
「へ?」
あまりにも気の抜けた声が出てしまった。
「俺としては、恋路に意識させ過ぎてリクトが仕事に集中できなくなるーーなんて事を避けたい。勿論ホノカ、お前達もだ」
ヒビキはそんな所まで考えていたんだ。
確かに、常に死と隣り合わせの冒険者という職種での仕事の最中で、恋路で悶々としているせいでモンスターに教われたらたまったものじゃない。
況してや、それで命を落としてーーなんて馬鹿みたいだし……
そんな事故は絶対避けたい。
「そうね。んー・・・ユキナには言っておこうかな?
ま、ユキナの事だし、多少は勘づかれてると思うけど・・・」
「そうか。それで?」
「リクトには、然るべき時が来たら。その時に言うわっ」
「!(いい顔じゃん。それを俺じゃなく、アイツに見せてやればなぁ)……ふーん」
ふーんて何よ!ふーんて!
「ま。形は違えど、色んな視点・角度から己が理想に近付けるよう切磋琢磨していけばいいさ。
俺は平等に、どちらも応援させて貰うとするよ」
ヒビキは上を向き、青空を眺めながらもっともらしい事を言った。
まぁ、ヒビキらしくていいかな。
「そんじゃ。よし、行くぞホノカ!」
「うんっ!レッツゴー!!」
そんなこんなで、私とヒビキは再びぶた丘目掛けて走り始めた。
リクトみたいに腕時計を付けてる訳じゃないので、正確な現在時刻はわからない。
なので私達は、少し、いや、かなり。
いや、とても焦りながら、走って、走って、走り続けた。
道中を立ち塞がるマーブルタイガーを漏れなく全員吹き飛ばし、なぎ倒し、走り続けた。
転移暴発前にリクトから共有されていたこのマップ。
終始お世話になりっぱなしだったな。
お陰で無駄な道に逸れる事なく
そして遂に、私とヒビキはぶた丘目前まで来た!!
ここまででも相当数のマーブルタイガーを倒しながら来たので、討伐ダービーでも大分有利な位置にいると思うけど。
「ん?あれは……」
ヒビキは何かを見つけたらしい。
「お、ヒビキ!ホノカ!」
「何だ、お前達も今来たのか」
おっす~と手をあげるライデンとヒビキ。
「やっほホノカ!」
「ユッキナーー!」
「「いえ~い」」
再開して早々、ハイタッチして抱き合う私とユキナ。
私&ヒビキチームと、ライデン&ユキナチームはほぼ同着でゴール。着いた後でマイさん達から集計結果を言い渡される感じかしら。
私はそう予想立てた。
しかし、結果は違った。何故なら……
「おっ、みんな!」
「あらあら、これはみんな同着かな?」
此方に手を振るリクトと、私達を見て微笑むアリスさん。
「ホーノカ!ユキナ!」
「「ルナ!!」」
「おぉ、リクト!」
「お疲れさーー」
『『ん?』』
待って?リクトの頭上に何かない?
流石同郷育ち。
私とみんながリクトの頭上の何かに気づいたのは同時だった。
「あぁ、これは後で説明するよ。これ、遠出の際にめちゃ便利だぞ!凄い良い使用感だった」
との事。
歳相応と言えばいいのか、子どもっぽいと言えばいいのか。無邪気に、楽しそうに、あどけない笑みを浮かべる彼。
「ふふっ♪」
そんなパーティリーダーを眺めていると、私の口角が自然と上がっていた。
◇
結局、最後の最後で仲良く揃ってゴールした"クリエイト"。
俺達は何かと揃って物事を行うことが多い。
まぁ、その方が俺達らしくていいなと俺は思うけど。
「おーっすおめぇら、お疲れさん♪」
「ふふっ♪いいものを見せて貰ったわ、ありがとう」
「???」
なんか、ササミさんとマイさんは俺を見るや否や肩を叩いてサムズアップしてきたのだが。
なんなんだ?
「しっかし、道中色々あったのに同着とは。おめぇらホント仲いいな。本当にお疲れさん!
・・・よし、ちっと待ってろよな」
ササミさんはそう言うと、両耳に手を当て目を閉じた。
「(・・・・・!!!!?冗談。あり得ねぇ……)ま、マジか。こりゃ驚いたな……、おめぇらの活躍で、南の平原に生息していたマーブルタイガーが全滅したらしいそ!!!」
「え、本当!?」
嬉々とした表情を浮かべるササミさんにマイさんが即座に食いついた。
「あぁ!本当だとも!まぁ、いつ奴らが盛り返すかは定かではないがな。
一先ずアレだ、おめぇら"クリエイト"には感謝してもしきれねぇ!」
「奴らに踏み荒らされた場所は追々こっちで何とかしていくつもりだ。本当に、マーブルタイガーの脅威を退けてくださってありがとうございましたっ!」
すこぶる嬉しそうなササミさんとマイさんを見ていると、なんか此方まで嬉しい気持ちになってきた。
「んで?マイが勝手に始めたマーブルタイガー討伐ダービーだが、ホノカ&ヒビキチームが優勝!次点でライデン&ユキナチームの準優勝だ!」
「やたっ!」
「おっしゃ!」
ササミさんの表彰を受け、ホノカは飛び跳ね、ヒビキは勢いよくガッツポーズをした。
「マジか。僕達、ツノ山を登らなかったのが敗因か?」
「いや、ツノ山は小さく見えて意外と標高があるわ。ホラ、マップを押したら標高600mって表示されているし。
登る方を選択してたらタイムロスが激しかったハズよ。
でも、周り道を選んだはいいけど、以外とマーブルタイガーが残ってなかったのよね」
腕を組み唸るライデンと、仕方ないと割りきったユキナ。
あれ、ユキナ元に戻ってる!?
顔赤かったから熱出たんかな?と心配だったけど、今の様子を見るに大丈夫だったらしい。
なんだ良かった、安心した。
「で、最下位になっちまったアリスさん達だが。おい、リクト、ルナ。一つ聞いていいか?
マーブルタイガーはきちんと討伐していて偉いぞ?だが、何故ポウポークを優先してハントしてたんだ?」
あぁ、やはりバレてたか。
これにはね、ちゃんと理由があるんですよ。ちゃんとした、理由が!
「あ、いや~。マーブルタイガーを倒すよりポウポークを狩った方が経験値が美味しいって気づいちゃったんですよね………」
「でも、マーブルタイガーは残さず倒したよ?」
目を泳がせまくる俺と、身振り手振りがはげしいルナ。
そうなんです。あの後俺達はマーブルタイガーよりもポウポークを優先して討伐していました。
でもってあのマーブルタイガーの大群よりも効率よく経験値を稼いでました♨️
【だいたいこんなイメージ】
マーブルタイガー lv.15(約100exp)
ポウポーク lv.17(約765exp)
結果、俺はLv.19(後半)からLv.21(前半)に、ルナはLv.17(半ば)からLv.19(後半)になりました☆
※少しだけ強くなって、帰って来たぜ✌️
「お前らなぁ……何してんだよ」
呆れて物も言えないといった顔のヒビキ。
「だって、ヒビキに冒険者レベル越されたの悔しかったんだもん」
「駄々っ子か!頬を膨らませるな!」
ヒビキの突っ込みが炸裂し、笑いの渦が起きた一同。
ズシン…………………………
ズシン……………………
ササミさんやマイさんの話だと、もうすぐキバオウさん達がお昼の弁当を持ってくるとの事だ。
それを食べて、ササミさん達とは解散。俺達はギルドへ帰宅。晴れて初クエストは終了!
午後の大まかな流れはこのようになるらしい。
何だかんだ変なことばかりあった初めてのクエストだったが、終わりよければすべてよし!
ズシン……………………
ズシン……………
と、なるハズだったんだ。
「ブモオォォォォォォォ!!!!!!」
『『!??』』
突如聞こえた謎の咆哮に俺達は全員耳をふさいだ。
そして、ササミさんとマイさんは血相を変えた。
「な、なんだ、嘘だろ!?」
「この鳴き声、まさか!?」
「み、みんな!見て!丘の梺に!!」
アリスさんは丘の下の草原を指差した。
するとそこには、めちゃめちゃ大きな豚がいた。
"歩く大嵐"と呼ばれたテンペストカイザー(400cm)と同等な程、そこには、でっかい、怒り狂った顔面の豚さんがいたんです。
「(でも、なんでーーハッ!)っ!!そうか、ぐっ。みんな、ごめんなさい。私がうかつだったわ……!
勇魔六英雄、各国の管理者、それにうちの冒険者達から報告を受けていたというのに。
……ごめんなさい、これは私の失態だわ」
アリスさんは皆が言葉を失って喋れないのを確認すると、続けた。
「"クリエイト"!君達は初めて聞くかもだけど、"この世界"の現状はね、かなり緊迫した状況でもあるの。
どういうわけか各地の討伐済みのダンジョンボスが復活していてね。あの豚も例に漏れず・・・復活したダンジョンボスなのよ」
だ、ダンジョンボス!?
な、なんでダンジョンボスがここにいるんよ!?
「ヤツの名はG・G・P、ダンジョンボスとしてはまだ弱い部類のC-級。
今の貴方たちの実力なら、滅多な事が起きなきゃ大丈夫だと思うわ。
だけど油断しないで!奴の二つ名は初心者殺しの大ブタ、れっきとした化け物よ!」
ダンジョンボス、襲来!!!
次回、49話 襲来!G・G・P
話書いてて思ったんですけど、ヒビキがおいたわしや枠になってきたなぁと。
リクトに変わって(まだ二人の恋に気づいてないから)作者の僕から謝罪させて貰います。
なんかごめん。
そして、ここに来て、遂に!G・G・Pさん登場です!
え、誰やねんそれ。って方の為に解説!
実はこの豚さん、元々みきり発車で始めた最初期のThe・Create(2022 6/13スタート)に登場させたヤツなんです。
何もかも、設定が煮詰まりきってなかった頃。
濡れ雑巾を絞って出てきた残りカスみたいな、今となってはちょっと、人様の前にはお出しできねぇヤツがあったんです(恥)
※例えが最悪。
※ちなみに、今読様が読んでるこれは2022 11/14開始
そいつを遂にね!ようやく!此方にて!どーんと出せる日が来たんです!
まぁ、だから何だって話ですがね。
5/14追記
すんません!!
G・G・Pさんの危険度D+級じゃなかったです!
一個上のC-級でした!
【わかりやすい例】
・テンペストカイザーさん(初登場13話)はD+級のダンジョンボス
・シャドウバイトさん(22話初登場)もD+級のダンジョンボス
(※影龍さんがD-級、影人さんはD+級)
シャドウバイトの形態変化、影蝶さん(26話)はC-級
でもってG・G・Pさん(今回登場)はC-級となります。
Q.えっ、C-級ってあの影蝶と同じランクなの!?
A.・・・・・(汗)
---To be continued---
Q.おおぉぉぉぉいいいい!!!
A.まぁまぁ、落ち着いて




