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The・Create  作者: シュウト!!
第3章 新米冒険者大奮闘
48/98

【42話】 騒々しい朝(スタートライン)

どうも。ブルーベリー学園(イッシュ地方)を侵略してきた作者のシュウト!!です。


ポケモンsvのDLC(ゼロの秘宝)後編こと藍の円盤、最ッ高に楽しかったです!!


後で図鑑埋めに再びイッシュ地方へ向かいます♨️

チコリータ、ベイリーフ、メガニウム。待っててね!!


あ、そうそう。今回のDLC、ポケモンBWをやった人なら是が非でも遊んで欲しい内容となってます!

何せ、BGMだけでお腹いっぱい!絶対飛びますぜ(白目)


↓では、本編行きまーす↓

「ほら、こっちだよ」

「(すげぇ・・・改めて見ても立派過ぎる。冒険者ギルド、凄すぎ…!)」


 クロムさんの後を追った俺は、冒険者ギルドの食堂に着いた。

時刻はam5:55分。クロムさん曰く、日夜様々なお客さんが利用するらしいこの-アマテラス-の食堂。

だが、流石に早朝には誰もいない。


目が疲れない程度に豪華な空間に映える白を基調とした長テーブルやカウンター、4~6人卓等々。

常設されたメニュー表やら調味料やらが乗ったテーブル、その全てが空席状態だった。


「・・・だよね。am6:00前だもん、完璧なタイミングだね」


クロムさんはうんうん、と頷いた。


「はぁあ~!!なんじゃあこりゃあ……!!これまた豪華な食堂だこと……!」

「そう言ってくれると嬉しいねぇ。デザイン凝った甲斐があったよ」


 嬉しそうなクロムさんはそのまま流れるように、厨房に向けて朝の挨拶をした。


「おはようゼニシア」

「おはよーさん!ってわーお、ギルマスやないかい!って!!?あんさん!!」

「!!?」


 ゼニシアさんは、俺を見るなり割烹着姿のまま、厨房から凄い勢いで駆け寄ってきた。


「おぉぉ!?あんさん、目ぇ覚ましたんやな!」


ゼニシアさんにも心配かけたんだな、俺……


「はい。それと、すみません!色々とお騒がせしました……!」


 俺はピシッと姿勢を整え、頭を下げた。

すると、ゼニシアさんは俺の両肩をガッシリ掴み、捲し立てるようにこう言った。


「ホンマやでホンマ!ウチはな、昨日の夕方からずーっと、あんさんの事、ものごっつ心配したんやで!?

ツレの子達(クリエイト)や"ダークストリーム"は職員達の回復魔法で次々目を覚ましはったけど、あんさんだけずーーーっと眠ったまま目ぇ覚まさへんねん!!

ウチら職員は皆な?ものごっつ!心臓が爆発するんちゃうか思う程!!心配したんやで!!?」


 ゼニシアさんは物凄い形相で睨み、凄い勢いでゆっさゆっさと俺を揺さぶる。


「す"、す"み"ま"せ"ん"て"し"た"ぁ"……!(酔う!ヤバイ、酔う!!)」

「ストップストップゼニシア!やり過ぎやり過ぎ!」

「・・・まだ言い足らへんわ」


クロムさんの制止のお陰で、ゼニシアさんは止まった。

その後、ゼニシアさんはフラフラな俺を見て頬をかきながら言った。


「なーんてな、失礼失礼。ウチってば大人気もなく、ヒートアップしてもうたわ。あんさん、顔上げな?」

「うぅ、はぇぇ?」


軽く脳震盪を起こしたのか、視界がフラッフラな俺はすごーく間抜けな声を出してしまう。


「ええか?よく聞きなよ、あんさん。心配したのはウチだけやないで。他のギルド職員の方々もそうやし、あんさんのツレ、"クリエイト"の子達も当然そうや。

それに"マジカウインガー"の三人に"ゴブレイダーズ"の二人。みんな相当心配してはったで?

後で会ったら心配かけはったな、すまんかった~って謝っとき?」

「はい……、すみませんでした」


 申し訳なさに見回れて俯く俺。

そんな俺を見てか、ゼニシアさんは笑った。


「はははっ、青いなぁ」

「青い…?(俺、そんなに真っ青になってたのか?)」

「あんさんはウチらより青い。つまり若いねん!

若いっちゅう事はな?言い換えれば『死』という『人生のタイムリミット』までに、ドえらい時間がある!残っとるっちゅう事や!」


ニカッと笑うゼニシアさんは続ける。


「それにな、ここは冒険者ギルドや。あんさん達みたいなひよっこが成長する場でもあるんや。

だから、なんぼでも考えて、なんぼでも悩みな?

その悩みや憂い事は、人生っちゅう途方もない時間からしたら精々しょうもない程ちっぽけなんや。・・・・・」


ゼニシアさんは徐に、俺の頭に手を乗せた。


「………w」

「!!?」


そして、わしゃわしゃと撫でた。


「ちょ、なんですか!?」

「なっははは」


いや、なっはははじゃなくて!!


「・・・そうだあんさん。周知とは思うが、ここにおるギルマスはな、あんさんも知っての通り勇者(・・)なんや。

ゼロ対戦っちゅう、ウチらからしたらお伽噺にしか思えん程の大昔から、ずーっと生きとるらしいんや。

だけど、はは………。その実態はどえらい自由人で、ぶっちゃけ何を考えてるか分からへん!!!」


ハッ!と笑いながら肩をすくめるゼニシアさん。


「えぇ……酷くない?」


クロムさんは困惑した。

俺も困惑した。


「えぇ……」

「せやけどな、ウチらの知らんその裏で、ウチらでは到底計り知れないレベルで、ギルマスは悩んでもがいて苦しんで、『選択』して来て、()この瞬間に(・・・・・)辿り着いた(・・・・・)んや。

せやからな、あんさんにも参考になる所が必ずあるハズやで」

「ゼニシアさん……!」


力強く語ったゼニシアさん。

なんか、心強くて嬉しーーー


「知らんけど」


ずでっ!!


いや、そこまで言っておいて知らんのかい!

俺は、はははと力なく笑った。


「・・・ゼニシア。今のはリクトくんへのフォローとして受け取っておくよ」


頬をぽりぽりかくクロムさん。

そんなクロムさんを見てけらけら笑うゼニシアさん。


本当、俺は周囲に恵まれているなぁ……


「なはは~、おおきにおおきに。(はて。そういや、この二人はなしてこんな早朝に来はったんやろ。・・・・・あ!

いけないいけない!朝食や朝食!!って、それ以外に来る理由はないやろがい!)さぁて、お二人さん。ここに来た目的、すっかり忘れてはるやろ」


俺とクロムさんは顔を見合わせた。

その瞬間、ぐうううぅぅぅぅ~と、俺とクロムさんの腹の虫が鳴った。


「あ」

「……///」

「あはは。危うく朝食抜きになる所だったね」


赤くなる俺を見て、間抜けな音を鳴らした自身の腹を撫でながら、クロムさんは笑った。


「なっはっは!心配あらへんで、ちゃんと朝食の準備は出来とるさかい!!」


ゼニシアさんはそういうと、厨房の中の人達は全員、グッと親指を立てた。


「ほれあんさん。メニュー表や」


 ゼニシアさんは、メニュー表を俺に手渡した。


チェーン店やら色んな所でよく見るラミネート加工された紙のメニュー表だ。

何故、異世界である"この世界"でもそれを見れるのか、甚だ疑問ではあるが。


それは一旦置いといて。


その、メニュー表には沢山の種類の料理が書かれていた訳だが、目を疑った。


「ええぇぇぇ!!??カレーにピザに麻婆豆腐!うどんに蕎麦にラーメン、冷やし中華ぁ!?」


それだけではない。メニュー表にはお子様ランチにチャーハンセット、カレーライスにシチュー、ハンバーグ定食に唐揚げ定食、ラーメン各種(醤油、味噌、塩etc…)に餃子、中華料理や西洋料理、フランス料理等々。


凄く、俺の見慣れた、俺の知ってる料理達が、画像付き(・・・・)でメニュー表に掲載されていたのだ。


全部ソックリそのまんまの見た目なんですけど。

怖いんですけど………。


「おぉ!?あんさん、そないな大声出してどないしたん?」

「いやいやゼニシアさん!!俺が元いた世界の食べ物、料理がそっくりそのままメニュー表にあるんですよ!?」

「へぇ~そりゃたまげたな


そりゃたまげますわい!!だって異世界だよここ!?

なんで!知ってる料理が!沢山(・・)あるのよ!


それに、ちょっと待て!

ギルドおすすめが和食セットて。おかしいだろ!!


「すげぇ。頭おかしくなりそう……」

「って、最近何度目や!ええと?リクトはんの前はーーー、"メイプルソルジャー"と"ジェットソーダ"。後は"レッドブロッサム"のリーダーだったかな~

あ。そうそう、ギルド職員にもおったなぁ。一人……」


ひーふーみー、と指を折り畳み数えるゼニシアさん。


!!? 俺と似たリアクションしたヤツが、他にもいたの!?

ギルド職員にも!?


というか待て?

どれだけいるんだよ。推定日本からの転移/転生者。


顔馴染みとか知り合いとか。知ってる誰かだと嬉しいけど、手放しに喜べないのがなぁ。

(※殆どが向こうで死んでから"この世界"にinしてるからね)


「うーん、ぼくは酢豚にしようかな」

「SU☆BU☆TA !?」


 クロムさんは呑気に酢豚を注文した。

え、朝から!?凄いな……


「ほな、席に着いて待っててな。あんさんは決めたか?」

「あ、じゃあこの和食セットで」

「おおきに~」


 ゼニシアさんはオーダーを取ると、厨房へ戻っていった。


クロムさんは鼻歌を唄う程気分が良いのか、沢山配置された長テーブルから丁度真ん中の所へ行き、木製の椅子に座る。


「(まぁ、誰もいないんなら……)っしょっと」


とりあえず俺も、クロムさんの正面に座った。


「さて。待ってる間にさっきの話、"この世界"の通貨について軽く話そっか」

「あ。はい。お、お願いします(やば、ちょっと忘れてた)」


 クロムさんは徐にポケットをガサゴソと漁ると、そこからコイン?のようなものを一枚取り出した。


「"この世界"の通貨はね、どの国でも、どの地域でも共通でこの硬貨を使うんだ。

ちなみに単位はそのまんまc(コイン)で、今ぼくが持つこれは1c(コイン)硬貨だよ」

「コイン……(なんか、すんごい100円玉みたいだな)」

「ほら、実際触って確かめてみていいよ」


クロムさんの見せてくれた1c(コイン)硬貨は、大体日本円のあの100円玉と似た大きさだ。

というかモロ100円玉なんですけど。


触った感触や質量も、かなり100円硬貨近いものだった。


なんでだろーお何でだろー。ななな何でやねーん。

異世界なのぉに元の世界と一致するもの沢山あるのは何でだろーお。(※厳しくないか?)


共通言語も文字まで日本語使われてるのも何でだろーお。(※むりくりじゃねぇか)


なんでだろーお何でだろー。まじで怖すぎるー。


はい。すみませんでした。

(※はい。反省してください)


「すげぇ、質感とか重さも100円玉そっくりだ」

「お、気づいた?実はね、"この世界"の1c(コイン)硬貨はきみの持つそれをベースに作られたんだ」

「え!?そうなんですか?」


衝撃の事実。

"この世界"の硬貨は100円玉を元に作られたらしい。


「お二人さん、お待ちどうさま~」


 ゼニシアさんが料理を運んできてくれた。


 クロムさんのはメニュー表の画像よりも美味しそうな酢豚がモリッと爆盛りの白米と一緒に。


そして俺に運ばれたのは、ツヤッツヤでふっくらな白米と食欲そそる匂いを放つ焼き鮭。

和食セットの副菜は日替わりで変わるらしく、今日はカブの漬物でした。


そして、ゴロッと大きな人参とじゃがいもが沢山入った味噌汁の和食セット。



 それらが運ばれて来ましたっ!

ウッヒョー!!オイシソーーウ!!


あかん、テンションがおかしくなっちまう……!!


「うん、凄く美味しそうだ」

「凄、まさか本当に日本食が出てくるなんて……」


満足げに頷くクロムさんと、口の中に自然と溜まった唾液をゴクリと飲み込んだ俺。


そんな俺達を見て、ゼニシアさんは満面の笑みを浮かべた。


「どや?腕によりをかけて作ったんや♪たんとお食べ~」

「いただきまーす!」


 胸の前に両手をあわせて、そう言ったクロムさん。

少し遅れて俺も手を合わせ、いただきますを言う。


「っ、いただきます!(ソウルフォレストにもあったけど、この国(ジャンヌ・ヴァルク)にもいただきますの文化あるんか)」


 俺は、クロムさんと朝食を取りながら、先程の話の続きをした。


パクパクモグモグしながら、非常に行儀が悪い。

本当にすみません・・・。


話の続きが気になり過ぎて。

好奇心には、勝てなかったんです………


「クロムさんクロムさん。どうして日本のお金がこっちの世界の通貨の元になったんですか?」

「おっけー!少しややこしい話だから、順を追って説明するね。

元々は"この世界"にもc(コイン)とは違う通貨が使われていたんだ。『ダラー』とか『ユゥロ』、『ゲン』、『クロォネ』だったかな?

あ、そうそう!『ジャパーエン』なんてのもあったなぁ」


目を細め、過去を懐かしむクロムさん。

何でだろ。凄い聞いたことあるヤツしかないんですけど。


「じゃぱー……えぇ?(ソレ、絶対ジャパニーズエーン!だろ。えぇ?昔の"この世界"、日本円あったの!?)」

「でもね、それらは全て『ゼロ対戦』によって使い物にならなくなったんだ」


ゼロ対戦で使えなくなった?何故?

ゼロ対戦って確か、アレよね?


災禍の化身だか何だかが滅茶苦茶に暴れて"この世界"を滅亡寸前にまで追い込んだヤバいヤツ、カース・ゼロ。

それと、クロムさん達勇魔六英雄(ゆうまろくえいゆう)が死闘を繰り広げたやつ。


確か丁度500年前なんだっけ?


使い物にならなくーーってことは、全部消失してしまったとかか?


「使えなくなった?全部消失したとかですか?」


クロムさんは神妙な表情を浮かべた。


「んー、50点かな。・・・・・正解はね、同時存在していた国々が全部滅んだからなんだ」


クロムさんはかなり長い間を取り、目を閉じながら言った。


「え・・・?」


 同時存在していた国が、全部滅んだ・・・?

まさかの答えに、俺は言葉を失った。


「ゼロ対戦を引き起こした諸悪の根元『カース・ゼロ』の力はとてつもなくてね。

それまであった国々は奴の産み出したモンスター達によって壊滅。当時の大国や帝国なんかも瞬く間に滅亡。

最終的に勇魔六英雄(ぼく達)が災厄を打ち倒した時なんて、"この世界"の大陸そのものの形が歪に変わっていた。それぐらいには酷いものだったんだ。ゼロ対戦って」

「ーーー」


 前(3話)に、ライデンからゼロ対戦の話を聞いた時はそんな事があったのか程度に受け止めていたが。

まさか当事者、しかも災厄を打ち倒した張本人から話を聞く事になろうとは。


大陸そのものが歪に変わるて、嘘でしょう!?


誇張表現じゃないの!?

とてもじゃないけどあり得ないし、想像がつかない。


厨房から此方を覗くゼニシアさん達ギルド職員の表情から察するに、クロムさんは自分の体験を語っている事がわかる。


お伽噺として語り継がれる程の出来事。


それの、実際(リアル)・・・


「そのお陰で、"この世界"そのものを建て直すのに相当時間がかかってね。

ゼロ対戦後は勇魔六英雄(ぼく達)が先陣を切って今後どうするかを決める事になってね。

まぁ、当時の権力者だった奴らから厄介事を全部押し付けられただけなんだけどねー」


全く、国が滅んでる以上王でも貴族でもない癖に。

お前らは恐怖で何も出来なかった癖に。


ーーーなどと、小声で愚痴を溢したクロムさん。


「・・・(この表情、初めて見た……)」

「・・・・・あーん。もぐ、もぐ、………」


不満げな表情のクロムさんは、酢豚の最後の一つをひょいっと箸でつまみ、口のなかに放り込む。


「んーっ、この酸味が堪らない……!!」


そうして、食べ終わると、胸元で手を合わせてご馳走さまを言った。


「ごちそうさまでした…!」

「……」

「それでね」


 気分が落ち着いたのか、いつもの調子で話を続けるクロムさん。

俺は箸の速度と噛む速度を倍にしながら、話を聞いた。


「ぼく達はね、元々国のリーダーだった者達、または新たなリーダー達を集めて今現在の国や地域、場所の基礎となるものを作ったんだ。

中央王都とソウルフォレスト。リバイヴ・バレーに火の国(アポロヌス・マイト)魔法都市(ウインドサクレッド)冒険者の都(ジャンヌ・ヴァルク)

他にも、アイスコロッサスに海妖族(マーメイド)のリゾート、竜王国(ドラグディミオス)輝きの帝国インペリアル・シャイン、そしてメイジビートの森。南の平原(サウスプレイン)や、北西原野(ノーストサバンナ)

今現在その名で呼ばれるそれぞれの国や、地域の基盤をね」


正直、国の名前を言われてもあまりパッと来ない。


だが、クロムさん達は、当時からそれだけ必死に、頑張ってきたのだろう。


ということは確かに伝わった。


c(コイン)という通貨はその基盤が完成した時と同時に決めたんだ。

何故か偶然、きみの持つ100円玉?と同じものが戦争の跡地から発見されてね。そこから、『大陸中なら共通で使える通貨を作ろうよ』、その方が便利だしー。とね、計画が発足されたんだ」

「・・・」


成程、ok、理解した。とりあえず"この世界"の通貨c(コイン)と100円玉が似てる理由はわかった。


でも、謎多くね?


何故、戦争跡地から100円が出てきたのかとか。

そもそも、大陸をぐちゃぐちゃにするカース・ゼロは何なんだとか。

何故ゼロ対戦は起きてしまったのかとか。

考えれば考える程、疑問は出てくる。


おかげで俺は、折角の和食セットをゆっくり味わう間もなく食べ終えてしまった。

(※食ったんかい!はい、食べ申したで)


「ご、ご馳走さまでした」


 厨房から此方に着たゼニシアさんは、かなりの量のご飯をあっという間に食べ終えた俺達を見て、軽く引いた。


「……お二人さん、食べるの早すぎひん?」

「ゼニシアさん、ご馳走さまでした」

「おぉ。まいど」


唖然としながらも、笑顔で返してくれたゼニシアさん。


「やっぱり酸味のあるものはいいね。今度酸っぱさ1000倍に挑戦しようかな」


酸っぱさ1000倍!?

聞いただけで舌がイカれそうなんですけど。


「1000!?ぎ、ギルマス、それは流石にかんにんしてや。幾ら何でも限度っちゅうモノがあるやろ……」

「ハハハ、冗談だよ冗談!」


呆れ顔のゼニシアさんと笑うクロムさん。

そんな二人を見ていたら、ふと俺は、夢で見た事を思い出した。


「そういえばクロムさん」

「ん、改まってどうしたんだい?」

「俺、寝てる間に変な夢を見たんです」

「変な夢って、なんや夢なんておかしくて当たり前やろ」


 ゼニシアさんは肩をすくめたが、一方で、クロムさんは興味津々に聞いてきた。


「まぁまぁ。リクトくん、どんな夢を見たんだい?」

「あの仮面の道化師、レクが現れたんです。言いたい事があるんだと言った矢先、"ダークストリーム"に勝つなんて凄いね、おめでとうって拍手してきたんです」

「は?」

「待て待て待て!」


クロムさんとゼニシアさんは、同時に俺の話を止めた。


「なんやそれ、ホンマか!?てか、仮面の道化師!?そいつ、ギルマスが言っとった要注意人物やんけ!」

「リクトくんの夢に現れた?リクトくん!何かされなかった!?」

「いえ、特に何もされて無い、ハズです」


素顔を見たものの、一応、ただ会話しただけだったよな。会話しただけ、うん。そーだね。


でも相手が相手なので、何かしらの悪影響を受けたとかかあっても不思議ではない。


だが、今の俺は何ともない。


自動解析(オートアナライズ)さんも大丈夫だ、問題無いって。

俺自身の解析結果には、異常(いじょう)の"いの字"も無かった。


なので、胸張って大丈夫っ!!

だと、思いたいなぁ。(切実に)


「何かされた訳では無いんですけど、引っ掛かる所がありまして」

「引っ掛かる所?気になるなぁ、言うてみぃ」


ゼニシアさんは首を傾げた。


「あいつ、南の村にテンペストカイザーが来た時あったじゃないですか。レクのヤツが、南の村の丘の上に」

「うん」

「(テンペストカイザー。あぁ、前にギルマスから聞いた『歩く大嵐ウォーカー・タイフーン』の件か。

……そないな事もって、いうて数日前なんよな)そんで?」


うんうん、と頷くクロムさんと、腕を組みながら話を聞くゼニシアさん。


「その時にレクは、ホノカの両親に意味深な事を言ってましたよね」

「意味深な事……?そこ、ウチは聞かされてない内容やな」


首を傾げるゼニシアさん。

クロムさんは、説明ヨロシク!と言わんばかりの視線を此方に送る。


「(クロムさん………)あいつ、ホノカの両親に向かって『ダメダメ!キミ達はアタシなんかに構うよりもあの子に構ってあげなきゃ』、だったかな?」

「・・・・・はあっ?」


マジ?って顔で俺とクロムさんを交互に見て、その後、即絶句したゼニシアさん。

うん。そりゃそうよね。


だって、テロ起こして現在進行形で指名手配されてるヤツが言うような台詞じゃないもん。


「両親、というか父親に認めて貰うためにテンペストカイザーと戦うホノカをよく見てあげて、と。レクはホノカの両親に語りかけたんです。

現状、『"この世界"の敵』にいるヤツが言う台詞にしてはあまりにも不自然過ぎて……」


コクリと頷いたクロムさん。

顔をしかめるゼニシアさん。


「(なんやそれ、気味悪っ……)・・・そんで?」

「はい。その事を思い出した俺は、レクに向かって『お前は本当に俺達の敵なのか?』なんて、何故そんな事聞いたのか分からない質問を投げました」

「・・・確かに。気持ちは解らなくもないけど。それは、なんで質問したの?」

「それね。ヤツは"この世界"中で指名手配されるような輩やで?そないなヤツに『あんたはウチらの敵なんか?』ちゅうても、なぁ?」


神妙な表情を浮かべるクロムさんとゼニシアさん。

二人揃っておんなじリアクションである。


「でもレクは、その直後に仮面を外して、こう言いました。

『リクト君。いや、"クリエイト"。君達がアタシと互角に渡り合えるくらい、もしくはそれ以上に強くなったら、その時に教えてあげるヨ』なんて言ってきてーー」

「は?」

「なんや、それ?」


唖然とする二人。

俺は間髪入れずに続ける。


「しかも!驚きポイントはまだありまして。仮面を外したレクの素顔が俺のお母さんと瓜二つ!!

めちゃめちゃそっくりだったんです」


俺は"創造の手(クリエイター)"で鉛筆と紙を出し、自動解析さん補助を借りてレクの似顔絵を描いた。

(※全体図と仮面アリ/ナシ)


「「・・・・・」」


 似顔絵を見たクロムさんとゼニシアさんは、ここに来て沈黙、硬直。

フリーズさせちまっただ……。


「・・・リクトくんと若干面影がある?特に、目元辺り……」

「せ、や、なぁ。ギルマスの言う通り、目元すんごいクリソツやねん。笑たらきっと、あんさんみたいなおこぼい笑みを見してくれるんやろなぁ」


やめてくださいよゼニシアさん。

まだ真母ちゃん=レクって決まったワケじゃないんだから!!


「すまんすまん、冗談や。冗談」


ゼニシアさんはそう言って笑って誤魔化すと、クロムさんから似顔絵の紙を取り、うーんと唸った。


「…………あんさんの母親とそっくりさん。でも、あんさんのご家族はあんさんが元いた世界にいるハズだよなぁ」

「そうなんですよ。あ、そうしう。

レクの去り際、丁度夢から覚める直前の話なんですけど。

『当分の間はサヨナラだよ。アタシ達は君達が冒険者ギルドでも身も心もみくしゃにされて、強く立派になるのを待ってるからねぇ』って言ってきたんです」


俺は『意味解らないですよねーー』、と付け加えた。


「当分の間はサヨナラ?」

「強くなるのを待ってるからね………。ねぇリクトくん。

それ、本当に仮面の道化師(レク)からそう言われたの?」


腕を組むクロムさんは睨むようにそう言った。

ちょっとばかし圧を感じたが、臆せず俺は頷いた。


だってね、本当に体験した事なんですもん。


「はい。本当(マジ)です」

「清々しい程真面目な顔だね。本当(マジ)、ねぇ……」

「ははは、なんやそれ。ははっ、あんさんは昨日の今日で相当疲れてはったんや!

それ故に、おかしな!ヘンテコな!夢を見はったんやできっと」


困惑するクロムさんと、それを笑い飛ばすゼニシアさん。

だが、彼女の笑い声はどこかぎこちなかった。


「うーむ。『リクトくんが気絶して眠っている隙に、レクが精神を操って夢を弄った』、とも考えれるけど。

そんな事、実際あり得るかな?いや、敵は未知数。警戒するに越した事はないね」


眉間にシワを寄せながら言うクロムさん。

そんなギルマスに抗議するゼニシアさん。


「でもなギルマス、夢の中って対策できへんで?」

「そうですよ。いくら警戒してても眠ってちゃえば誰でも無防備。どうしようも無いです」


生き物たるもの、睡眠は絶対必要だもん。

それは人間や魔物に限らず、クロムさんやディミオスさんといった勇魔六英雄(ゆうまろくえいゆう)でも一緒。


・・・のハズ。

(※おーい!!)


予測不能回避不能な攻撃を、俺達(・・)が躱わす!?


無理無理無理無理。

俺がクモを克服するくらい無理な話よ。

(※それじゃあ無理だね)


「むぅ、そうだよねぇ。ディミオスの所のメリーみたく、精神攻撃に対する高い耐性を持つ者はそう多くないからね」

「(メリーさん?ディミオスさんの所の……あ。紙を三つ編みにしてた金髪聖妖族(エルフ)の女性……。確か、セインさんの妹の人だったっけ?あの気だるげな雰囲気の人に精神攻撃耐性とかあるんだ)」

※↑失礼


俺達三人はうーんと唸り声を出した。



 その時!まさかの事態が起きた。


「ん、オイ!あれ見ろよ!」

「なんだ?朝っぱらからうるせぇよ」

「いや見てみろよ!ギルマスとゼニシアちゃんの隣!昨日の試合のアイツじゃねぇか?」

「あ?・・・え!?」

「あの世紀の害悪パーティ"ダークストリーム"相手に逆転勝ちしたっていう"クリエイト"のリーダー!!」

「ギルドに来たばかりだってのに"ダークストリーム"を吹っ飛ばしたっていう!?本当なの?」

「本当だよ!だから騒ぎになってんだろうが!!」

「ホンモノだあっ!!!」

「すげぇ、マジじゃん!」


早起きの冒険者なのか何なのか、沢山の人達がギルドの食堂に押し寄せてきた。


しかも。その誰もが朝食目当てではなく、まさかの俺目当て。



なんで?



「待て待て待て!!!!?」


ギランと目を光らせて、此方に迫り来る先輩冒険者達。


「!?!???!!!?」


 俺はパニックになった。


多い!いくらなんでも数が、多いわ!!!


あっという間にここ食堂は、人!人!!人!!!のパニック状態に。


「ちょっ、あんたら何してっ!あんさん!!」

「コレは酷い……リクトくん!!」

「ちょ、押すな……押さないで!!!?ってここどこ!やべぇ、周りが見えねぇ……!!」


ごった返した人々によって、俺はいつの間にか食堂の外に出ていた。

しかも、不運は続く。クロムさんやゼニシアさんともはぐれてしまっていた。


「あんた!リクトだろう?」

「握手してくれ!!握手!!」

「あ、待て!抜け駆けすんな馬鹿!!」

「昨日の戦い!凄い良かった!!」

「最後、アレなんだったんだ!?」

「なぁ!俺、パーティに入れてくれよ!」

「僕も僕もー!!」

『『抜け駆けっ!!』』

「ほら道開けろ道!ギルドの英雄サマのお通りだぞ!!」

『『うおおおお!!!』』


混沌!!カオス!!

なんじゃこりゃあ!!


「は?ちょ、ちょちょ!!なにこれ!は?え?(無理無理無理無理!!!)」


誰か、誰か助けてください。


出れない!!四方八方から押されてる!

それはまるで、満員電車の中、もしくは押しくら饅頭をしてるみたいに、、、、、クソっ、誰かあぁぁぁ!!!

(※パニックすぎて"時空間支配(タイムゲイザー)"の空間転移で脱出なんて考えつかない)


いつしか俺は、俺よりもデカイ、ガタイの良い様々な種族の人達に取り囲まれており、人だかりからの脱出は、ほぼ不可能になっていた。


「(助けて!ちょ、狭すぎて声が、だっ、出せねぇ!!)」

「キミ!手を貸して!!」

「っ!??」

「ほら早く!!」


突如として、俺は誰かに右手を掴まれた。


『『『!!!?』』』


そして、思い切り引っ張られ、ポーン!!と、瞬く間に人だかりから脱出した。


「あ!おいお前!!何してっーー!!?」

「貴女!ま、まさか、"フローズン"のリーダー!?」

『『キャー!フユ様よぉ!!』』


女性冒険者達が一斉に歓喜の叫びをあげる。

混乱中だってのに、耳にダメージを与えないでおくれ!!


「なんだなんだ!?」

野次馬(おばかども)を巻くよ。いいから走って!」

「(誰なんだ!?ーーっえ?)」


 ようやく俺の手を引っ張る者の顔が見えた。


俺を人だかりから脱出させた人物。

それはなんと、ユキナの姉のフユだった。


「え、フユさん!?貴女はソウルフォレストに残ってたハズじゃ?」

「キミ!口よりまず、足を動かしな!」

「へ!?は、ハイ!」

『『フユ様ぁ!サインくださーーい!!』』

『『フユさんを追えー!!ギルド(おれたち)の英雄を返せぇぇ!!』』


 突如として、リアル逃走中が始まった。

始まってしまった。


「(どうしよう、怯えきってる……。そうだ…!)キミ。ユキナの姉であるアタシが助けてあげてるんだから、感謝なさい」


フユさんの高圧的な態度にたじろぐ俺。

一瞬、ほんの一瞬、後ろが見えた。


「そりゃどうも。ってゑ!?」


チラリと後ろを振り返ると、トラウマになりそうなレベルの人数が追いかけてくる。


ヤバイ、怖い!!


「ひええぇぇぇぇええええ!!!!」

「あーん待ってぇー!!」

「せめて話だけでも聞かせてくれぇ!!」

「俺達とぉ、一杯飲もうぜぇぇぇぇええええぇえぇ!!」

「無理です!すんません!!俺、未成年なんでぇ!!」

『『ウッヒョー!!サイコーじゃねぇか!!』』

『『フユ様ぁー!!!』』


うわ。ヤバイ無理。

いくらなんでもこれは酷いよ!


いつの間にか、俺の後方には騒ぎを聞き付けた人で溢れかえっていた。

どういうわけか、その全員が此方を追いかけてきてるんですけとぉ!!?


なんですか、これは地獄ですか?

これが地獄ですか!!


早起きは三文の徳じゃあないんですか!?


なんでこんな目に会わなきゃいけないんだよ!!


「ヒイィ、怖い怖い怖い!!!なんで!?なんでこんな事になるの!?

早起きは三文の徳じゃ無いのかよ!今日は厄日かぁ?うん!厄日だぁ……!!!」

「キミ!ソコ突き当たり右!曲がって!!」


 ふと、耳に入ったフユさんの警告。


!? 目の前に壁が!!!


「み、右!?うわっ!?危な……!」


危ない危ない。

危うく壁とぶつかる所だった。


「次、左!」

「っっ、(ま、迷子になりそう……)」

「まっすぐ!」

「まっすぐ……?」

「この部屋通り抜けて左!!」

「通り抜けて、ひだーー!!?」


フユさんと共に通り抜けた部屋の中には、鬼?のような角を生やした忍者コスチュームの二人と、頭にゴーグルを着けた少年がいた。


「(黒髪ポニテ?ボサボサ青髪?茶髪オールバック!?髪型といい格好といい、随分個性的だな)」

「「「(えっ、何事!?)」」」

「ごめんなさいね。三人共、お詫びは後で!」


フユさんはその三人の使う、大きな机を飛び越えながらそう言った。


「(嘘だろっ!?っっ、身体強化(オーバーブースト)ッ!)っだあぁ!!!」


その三人は、フユさん。そして同じく机をぴょーんと越えていった俺を見て、思わず声をあげた。


「うおっ!?なっ、なんすかぁ!?」

「わお!へぇー、この机、縦横1m近くあるのに。って、フユちんに引っ張られる男!!昨日の!!?」

「ッ、何やtーー何だと?フユ殿と、"クリエイト"とやらのリーダー!!?まっ、真でござるかッ!?」


へぇー、昨日の試合見ててくれたんだぁ!!嬉しいなぁ!!!


本当に、馬鹿な事に巻き込んですみませんでした!!!


「すみません!ごめんなさい!!お邪魔しました!!!」

「「「・・・」」」


声だけの謝罪。果たして許して貰えただろうか。

そして、俺は一体、どこまで走ればいいのか・・・



 俺はフユさんの助けもありながら、約10分、ギルド内を全力で走り回った。

そして、ようやくあの軍団から解放された。



だが、食後に走ったせいでかなり、いや、凄くしんどい。


「ふぅ。とりあえず、ここまで来れば安心ね」

「あ゛ぁ゛!!」


俺は地べたに座り、胡座をかいた。

そして、フユさんに身体を向けると、深々と頭を下げた。

 

「あ、ありがとうございました、、、(いくら、、体力に、自信があっても、、、流石に食、後は、、、話が違うよなぁ)はぁ、はぁ、はぁ、……」

「ふん。世話がかかる後輩ね」


冷たくあしらわれた。

けど、何処か満更でもないご様子のフユさん。


「ははは。ちなみにここ、ギルドのどこなんです?」


背を丸めた俺を見て、フユさんはポツリと呟いた。


「・・・ここは2階のテラス室。屋上以外だとこの国を見渡せる唯一の場所、アタシのお気に入りの場所よ」

「(2階?結局、あんなに走って、あんなに階段登り下りしたのに、2階に落ち着いたんか……)テラス、室……。確かに、いい景色ですね」


っと、少し楽になってきた!

俺は立ち上がり、周囲を見渡した。


「ってヤバ、めちゃめちゃ遊園地じゃねぇか……!!」


【速報】ジャンヌ・ヴァルク。冒険者の都さん、ギルドの外もめちゃめちゃ楽しそうなところだった。


というか、某夢の国みたい。

いや、夢詰め込み過ぎだろ!!


アーケード街みたいな商店街に武器・防具店がずらりと並んでいて。ん、アイテムショップ?なにそれ。


その隣側には、沢山のフードコートのエリアがあり、カレーにラーメン、カツ丼などのガッツリしたものから、わたあめや林檎飴、トルネードポテト、チュロス、電球ソーダ(?)等の、お祭りの屋台の定番のものまで売られている屋台があった。


あの食べ物達。味はまだ解らないが、見た目と名前は全部が全部、俺の知ってるものと一致している。


だからここ、異世界なんですよね?

なんで日本語がッ!平仮名、片仮名、漢字、なんで全部使われてるんだよ!!


不思議だ……


「っえ?えぇ!??」

「(ふふ。さっきまでの疲労困憊、クッタクタなヤツレ顔は何処へ行ったのやら。いい顔してるわね。

さて、あの子達は………っ!よし。そろそろ来る。

奴らに発見される前に、急いで。頑張れっーーー)」


もっと奥にはメリーゴーランドやコーヒーカップ、ゴーカート乗り場に、ジェットコースターが揃ったエリアを発見!!


なんじゃありゃ!!

って目ん玉が飛び出るようなクソデカ観覧車があったり、ぐるッと囲むような壁?の上部に龍のような形の乗り物をレールに乗せたジェットコースターがあった。


え。


アレ、見たところ国一周してないか?

-アマテラス-のギルドを中心に冒険者の都(ジャンヌ・ヴァルク)のエリアがぶわーっと広がっていて・・・



いつか見た"この世界"の地図では、冒険者の都(ジャンヌ・ヴァルク)の北には『アイス・コロッサス』、南に『中央王都』。

西に『魔法都市(ウインドサクレッド)』、そして東に『シェイクビーチ』があった。


なので、あそこが国境を示す壁と、国同士を繋ぐ門ってことでいいと思うのだが……。嘘でしょ?w


マジでアレ!一周してるんですけど。


ひとつのコースターに、乗り場が4ヶ所くらいに分断されてるw


「すげぇ………至る所までテーマパークみたいだ」


ふと、ツンツンのフユさんの表情が緩んだ気がした。


「ぷっ、みたいて。何言ってるのよ、この国はテーマパークそのものよ」

「あ、いたぞ。おーいリクト!」

「ヒっ!!?」


あの軍団に見つかったかと、一瞬きもが冷えた。

しかし、声の正体はライデンでした。


その、驚いてごめん。


「(ビックリした。ライデン達か……)」

「(?なんでこんなに驚いてるんだ?)」

「ありがとうお姉ちゃん。なんとかリクト君と合流できたよ」

「ふん。姉として困ってる妹を助けるのは当然よ」


 成程、俺はフユさんのお陰でみんなと合流できたのか。

俺はみんなと向き合うと、ガバッと勢いよく頭を下げた。


「みんな………、心配かけてごめん!!」

「「「本当よ!!!」」」


ホノカとユキナ、ルナは声を揃えた。


「!!!」

「もぅ!!心配かけすぎ!ヒヤヒヤしたじゃない!!」

「本当よ!回復して目を覚ました後に、リクト君だけが倒れたっきり目を覚まさないって。

それを聞いてからずーーっと、私達は生きた心地がしなかったんだよ?」

「うちってば、心臓が止まるかと思ったよ……」

「ごっ、本当ごめんよ……」


 俺は再度みんなに謝った。

頭を下げながら、チラッと視線を上げて皆の顔を見る。


とーー、あら。


照れくさそうに安堵の表情を浮かべるライデンとユキナに、半ば呆れ顔のヒビキとルナ。

そして、ぷくーっと頬を膨らますホノカがいた。


「もぅ、いいわよ。・・・リクト、勝ってくれてありがとねっ」

「そうだね。リクト君の頑張りのお陰で私達は首の革一枚目繋がってなんとか冒険者でいられるんだもの。

もぅ、そんな悲しい顔はしないで」


そうは言っても。

今回の件は、俺自身が元凶だから切り替えしづらい。


「そう言ってくれるのは嬉しいよ。だけど……」

「『だけど』はもう要らないよ」


ライデンの早業!

俺は言葉を詰まらせた。


「ぅ、ライデン・・・」

「はは。稽古中、師匠や父さん達に死に物狂いで食らい付きながらもぼこぼこにされて。それでも、痛みを、経験を、糧にできたと、強くなれたと。そんな気でいた。

・・・・・お前らもだろ?」


苦笑しながら言ったヒビキに対し、ライデン、ホノカ、ユキナ、ルナは静かに頷いた。


「俺は昨日言った通り。ただ、自分自身(おのれ)の弱さを痛感して。結局の所は勝手にうちひしがれていただけだったけどなぁ・・・」


 俺は肩をすくめながらそう言った。


「そう言ってやるなよリクト。

・・・パーズズのデバフにアルセーヌの呪言、魔法封じ。それに、ペニィとブブの高火力の攻撃、魔法連打。

良いところまでは行けたと思ったが、完敗だな」


ヒビキは天を仰ぎながら言った。


「でもさ、今俺達のいる場所は冒険者ギルドだ。

今日から始まるクロムさん達との稽古や、これから受けるであろう沢山のクエストをこなしてって更に進化しようぜ。なっ、リクト」


ヒビキは俺の肩を組んで言った。


「ま、例の稽古。"クリエイト"からはお前だけが対象なんだけどな」

「え?」


え?


 曰く、例の稽古は"ダークストリーム"と俺の為のものらしい。

やんちゃしまくったおバカさん達を更正させる目的と、俺が個人的に強くなりたいとクロムさんに頼んだ事が原因なのだと。


「陰ながら応援してるね」


頬に汗を浮かべながらそう言ったユキナ。


「いや、そこは表立ってよ。なんなら、連帯責任とか言ってたんだし、側にいてよぉ、寂しいよ……」


などと弱音を吐いたその瞬間。

俺の脳内で、夢の中のレクと、先程のゼニシアさんの言葉が浮かび上がった。


『君達が冒険者ギルドでも身も心もみくしゃにされて、強く立派になるのを待ってるからねぇ~』


『ここは冒険者ギルドや。あんさん達みたいなひよっこが成長する場でもあるんや。

だから、なんぼでも考えて、なんぼでも悩みな?

その悩みや憂い事は人生っちゅう途方もない時間からしたらしょうもない程ちっぽけなんや』


「………」

『『(表情(カオ)が変わった?)』』


"この世界"に来て、俺はまだまだ覚悟が足りなかったのかもしれない。


冒険者としての覚悟と、"クリエイト"のリーダーとしての覚悟。それに対モンスターや対人との戦闘経験。


いずれも、まだまだ全然足りていなかった。


経験不足を埋めるのは、今すぐどうこう出来る話ではない。

だが、覚悟を決めることなら、今すぐにでもできる。


よぅし、わかった。


兄を喪って、一年後に勇気と健斗のお陰でようやく前を向けた時みたいに。

足掻いて、もがいて、必死こいて、そうやって弱い自分を乗り越えるんだ!!



そうだ。俺は一人じゃない……!前を、向くんだ!!



「そうね、そうだね。リーダーを貰った俺がなよなよしてちゃいけないよな………」

「・・・?」

『『?』』


俺は思い切り、自分の頬を叩いた。


(ふんっ)ッッ!!」


突然の奇行に皆驚いた。


「!!!」

「え!?」

「ちょ、リクト!?」

「リクト君……!」

「おぉ、やる気出たか?」

「(うわぁ痛そー)ほっぺた、真っ赤っ赤だけど大丈夫?」


口々にリアクションを見せてくれるが、大丈夫です。

問題はナッシング!!


「だ、大丈夫!よし・・・・・。目が覚めた」

「そうか」


ヒビキはどこか嬉しそうに微笑んだ。


「よーし、みんな!次に"ダークストリーム"と戦う機会があったらパーズズ達があっと驚くぐらい、強くなろう!ここで、-アマテラス-で、ぐんと成長しよう!!」


 俺はみんなに向けて右拳を出した。

すると、みんなも自身の右手をグッと握り、俺の拳に当てた。


「・・・おぅ!!」

「勿論よ!」

「頑張ろっ!」

「よっしゃ!」

「おぉーー!」

「(ふふ。役得だったわね)っ!………ねぇ、貴女達。何してるの?」


 ふと、フユさんは声をあげた。


『『!!』』

『『!??』』


テラス室の扉にしがみつき、こっそり此方を伺うアリスさんと"マジカウインガー"の三人がいた。


「ふふっ、青春(すてき)ね」

「(無視?)アリスさん。何をしてるんですか?」

「おっと、失礼。ごめんね?」

「ありゃ、お邪魔しちゃった?」


てへっと舌を出すアリスさんと、頬をかくクロウ。


「あれ、クロウ、アリスさん?それにウルもパーラも」

「皆さん、おはようございます」

「リクトくん目を覚ましたんですね!はぁ、良かったです」


微笑みながら手を振るウルと、ため息を吐きながら胸を撫で下ろすパーラ。


「(心配かけさせたこと、後できちんと謝らなきゃ。……ん?)」


その後ろからは、ライムとメロンがひょこっと顔を出した。


「リクト、ウチらもいるよ!」

「ど、どうも……」

「メロンちゃん!それにライム君も」

「リクト。目、覚ましたんだな」

「うん。・・・?」


ライムと目線が合わない。


もしかして、元を辿ればオレが・・・なんて思ってるのだろうか?



俺は扉まで歩き、膝を屈めてライムと目を合わせると、心配かけた事を謝ろうとした。


だが。俺自身、あまり慣れない事をしたせいか、此方側が照れてしまった。

(※顔真っ赤っ赤)


「っ、///うん。し、心配かけてごめんな」

「っっ!う、ううん此方こそ。はぁ、本当に、本当に良かったよぉ・・・」


ライムは空気の抜けた風船のように萎れてしまった。


「もぅ、ライムってば。あ、そうだ。言うのが遅くなっちゃったね。"クリエイト"、勝利おめでとう」


 メロンは、はにかみながら拍手した。

続けて、クロウ達やアリスさんも(※何だかんだで)"ダークストリーム"に勝った俺達の事を祝福したのだった。  



 数分後。

テラス室のワイワイムードが少し静まったタイミングで、ライムはこんな事を言った。


「そうだリクト。オレとメロンはこれからクエストに出るんだけど、リクト達はこの後どうするんだ?」

「え、この後?」


やっべ、何も考えてないぞ!?(※は?)


慌てた俺は"クリエイト"の皆を見る。

ん?ホノカはニヤニヤしてどうしたんだ?


「ふふふっこんな事もあろうかと、ジャジャーン!既に今日行くクエストは手配してあるのよ!」


ドヤ顔をするホノカは、『クエスト依頼書』と書かれた紙を開き、それを見せた。


「え?!」


クエスト依頼書には、またしても隅々まで日本語で書かれていたが、俺はもう突っ込みません。


だってぇ、いちいち異世界なのに日本語!?とか、考えるだけで疲れるんだもん!何回それやるねん!!

(※広い心で許してください♨️)


「えぇ何々?南の平原(サウスプレイン)にて、大量発生したマーブルタイガーを討伐せよ?」


ユキナはうん。と言いながら頷くと、続けた。


「実はね、リクト君が目を覚ますまでの間に私達はアリスさんと一緒に初めてのクエストをどれにするか決めてたんだ」


あら、そんな事があったんだ。


「その時アリスさんが『初めてクエストに行くのなら南の平原(サウスプレイン)がおすすめよ』って言ってくれたんだ。その中でも推奨レベルが一番高かったこれを選んだの」

「へぇ。一番高いの選んだんだ」


ヒビキは頷くと、こう言った。


「あぁ、意味のない温い修行はしたくねぇ。かといって身の丈に合わない修行も身を滅ぼすだけ。

簡単過ぎず理不尽過ぎない、そんな俺達にとって都合のいいクエスト無いかねぇなんて探してたんだがーー」

「へっへっへー。見つかったんだよねぇ」


ルナは肩をすくめて苦笑した。


「ま。やるからには当然、全力で挑ませてもらうけどな!!」

「勿論!!」


ヒビキ同様に、奮起したルナはガッツポーズをした。


「推奨レベル14。うちとホノカの冒険者レベルと一緒。正直な所、"ダークストリーム"との戦闘後でちょっと自信は無いけど、精一杯、全力でやるよ!!」

「私もよっ!全身全霊、フルパワーで後衛を頑張るわ!!」


フンス!フンス!と鼻息を荒らげるルナとホノカ。

そんな二人を見て、ライデンは苦笑しながら言った。


「フルパワーになり過ぎてガス欠にならないようにな?・・・まぁ、それは僕にも言えることなんだけどね」

「そこは、加減はしようね?でも、私だって、出し惜しみはしない。全力で頑張るよっ!」

「ライデン、ユキナ……!」


やる気満々のみんなを見て、自ずと闘志が燃えてきた。

メラ、メラ、と。全身が温かい……!!


「(・・・もぅ、この子達に対して堅苦しい喋り方をしなくても良さそうね)ふふっ、皆、素晴らしい心意気ね」


 アリスさんは俺達を見て笑った。

そんなアリスさんは徐に俺達の前に出ると、


「"クリエイト"。改めまして、私はアリス。アリス・ワンダーソンよ。ここ、冒険者-アマテラス-所属の教職員で、仕事内容は、主に貴方達みたいな新米冒険者のサポートする事。特に私の場合は、新人達のクエスト挑戦などの実践で指導することが多いわね。

そんな私は、クロムから直接貴方達の担当を任されているんだ~。『任せたよ』ってね。


という事でこれからしばらくの間、私は貴方達が新人脱却出来るまで。その成長過程を間近で見させて貰います。よろしくね?」


と、いう事は……?


「えと、アリスさんも一緒に、クエストに同行してくれるんですか?」


驚いたユキナは、口に手を当てたまま聞いた。


「そうよ。ギルド寮で暮らしてる間や自由時間以外はほぼ一緒に行動させてもらうわ」


成程成程。引率の先生みたいな感じか。


「・・・」


アリスさんは、俺達の顔をじっ見ると、満足げに笑った。


そして、手を広げて言った。


「"クリエイト"!あなた達の奮闘を、あなた達の持つ輝きを、思う存分私に見せて頂戴!!」

『『・・・はいっ!!』』

「うんうん♪では、初のクエストに行くわよ!!」

『『おー!!』』


心なしか、俺達よりも楽しそうなアリスさん。

そんなアリスさんに呼応するように、クロウ達は声をかけてくれた。


「みんな、わたし達"マジカウインガー"も応援してるよ!」

「ファイトですっ!!」

「皆さん、頑張ってください!」


メロンは盛り上がる俺達を見て、ライムの手をとった。


「・・・ライム!ウチらも負けてられないよ!!」

「だね。リクト、パーティのリーダー同士お互い頑張ろうな……!」

「!」


初めてかも。ライムがしっかり俺の目を見てくれたの。



 嬉しくなった俺はニカッと笑うと、ライムとグータッチした。


「うん!お互い頑張ろう!!」


 斯くして、冒険者としてのスタートラインに立った"クリエイト"なのであった。



「・・・」


俺とライムが拳を合わせるのを見たフユは一人、早々とテラス室を後にした。


「ユキナ、"クリエイト"。頑張れ、ファイト……!」


ポツリとそう、呟きながら。




次回、43話 はじめてのクエスト

やっとぉ!冒険者ぽくなる!!

(※脅威の2万文字越えw いや、クソ長ぇわ!!)

はい。死ぬ程纏めるのに時間かかりました。


時間がかかった挙げ句、まさか藍の円盤の配信日に敗けてしまうというね。


追記

BP(ブルーベリーポイント)が足りなくて御三家解禁できません。メガニウムどころかベイリーフやチコリータにもまだまだ全然会えない。

ツライ・・・


※しかもこの男、ストーリー中にオーガポンを連れ忘れるという痛恨のミスもかましてます。

Q.それはつまりどういうこと?

A.途中で見れるハズの特殊演出が見れんかったのじゃ。

Q.草

A.涙


色々、本当にすまんかった


2024 7/2追記

ざっくりキャラ図鑑のお時間です

今回は"ゴブレイダーズ"のライムさんとメロンさんの二人!

本来ならもっと早く書いてたハズなんですけどね。

作者の記憶違いで書いてなかったという。


二人とも、ごめん!!

ライム「はぁ・・・」

メロン「ま。さっさとやりなさいな」

僕「はい!いえっさー!リクトさーん、出番でっせー」

リクト「はーい。やりますぜぇ~!」



Name:ウォブニラァ・ライム

種族:小鬼族(ゴブリン) 属性:光

16歳、157cm、10/20生まれ

好物:カレーうどん


【所有スキル】

"閃光王(スパーキング)"

・身体強化 ・光の加護

・虹の輝き


【概要】

・冒険者"ゴブレイダーズ"のリーダーで、役職はセイバー。坊主頭に巻いた青いハチマキと愛用してい『閃光剣ブレイブ・サンシャイン』は冒険者として家から出た時に両親から貰った、命よりも大切な大切なもの。

・とっても臆病で、なんにでもビビれるのは最早ある種の才能の持ち主。だが、達成すると決めた目標は絶対に諦めないという異次元の根性と諦めの悪さを持つ。

あの時"ダークストリーム"に楯突いたのも、メロンを絶対に守らねばという信念から。

・メロンとは家が隣どうしの幼馴染みで、絶対に頭が上がらない相手。そんなメロン以外に初めてできた友達のリクトには憧れに近い特別な感情を抱いている。

ただ、彼は良くも悪くも真っ直ぐ過ぎるので、とても自分には真似はできないとも思っている。



Name:フゥルティ・メロン

種族:小鬼族(ゴブリン) 属性:水

16歳、148cm、6/22生まれ

好物:ざるそば


【所有スキル】

"自己修復(リカバリー)"

・自動回復 ・回復ブースト

・虹の輝き


【概要】

・冒険者"ゴブレイダーズ"のサブリーダーで、役職はヒーラー。冒険者レベルこそ低いが、ヒーラーとしての実力は相当ヤってる寄り。

・滅多にめげることなく、バフや回復で周囲のサポートに勤しむその姿は大和撫子と呼ぶに相応しい程。なのだが、あの時、"ダークストリーム"によって虫の息寸前まで追い詰められたライムを治癒しきれなかった自身の腕を呪った程。

・ライムとは家が隣どうしの幼馴染み。それ故幼少期からライムの頼りない姿を沢山見てきた。でも、自分を一番守ってくれたのはライムである事を一番理解している。

そんなライムを助けてくれたリクトと"クリエイト"とは今後も仲良くしたいなと思っている。



しゅーりょー!!


リクト「二人とも、お疲れ様」

ライム「お、お疲れさま、、、」

メロン「コレ、結構恥ずかしいね///」


へぇ、恥ずかしいんだ……

ま。キャラ図鑑を止める気は無いですが。


メロン「あんた鬼かー!!」

リクト「いや、バケモンだよ。バケモン」

ライム「ふ、二人とも。それは、流石に言い過ぎだって」

僕「いや、鬼でもバケモンでもねぇよ?普通に人間だよ」

衝撃(とうぜん)の事実♨️


はい。今回は終わります。

次回から、冒険者活動開始だぁ!!



2025 5/23追記

ちょびっと手直ししました。

結果、2万文字越えてしもた。


???『また、やってもうた(´・ω・)』

リクト「おぉい!!!」



---To be(おし) continued(まい)---

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